日常の車両メンテナンス項目まとめ
車両のメンテナンスを怠ると、様々な不具合が生じることがあります。
- 「燃費が悪くなる」
- 「乗り心地が悪くなる」
- 「エンジンの調子が良くない」
- 「アクセルを踏んでも加速が鈍くなった」
こうしたトラブルが起こりやすくなり、最悪の場合、エンジンの重大な故障や走行中のタイヤバーストなど、事故や廃車に繋がる状況に見舞われるリスクもあります。
「車検ごとに点検してもらっているから大丈夫」と思っていても、数ヶ月ごとに点検・交換をしておきたいポイントや、運転開始前にチェックしておきたい項目も実は存在します。
そこで、大切な愛車を良いコンディションで維持するためにも、ご自身でできる日常的なメンテナンス項目をチェックしていきましょう。
エンジンオイル/交換目安は6ヶ月または5,000kmごと
エンジンオイルは、車を走らせるために必要なエンジン内部を循環し、動作をスムーズにする潤滑油です。車両メンテナンスの中でも最も重要度の高い項目の一つです。
「車の血液」とも呼ばれるオイルの点検・交換を怠ると、エンジンの調子が悪くなり「本来の性能を発揮できない」「燃費が悪くなる」などの様々なトラブルが発生しやすくなります。
エンジンオイルは、新品のうちはきれいな状態ですが、「エンジンが発する熱」「金属の摩耗により発生する金属粉」「燃焼によるスラッジ」「ガソリン」などの様々な要因により汚れていき、徐々に黒く粘度が高くなっていきます。
汚れたままのオイルで走り続けると、エンジン内部に「スラッジ(ヘドロ状の汚れ)」が溜まり、オイルが循環する通路が詰まっていきます。
これは人間でいうところの「血管が細くなる状態」に近く、そのまま走行を続けるとオイルの循環が滞り、エンジンに重大な損傷を与える原因となるため、エンジンオイルの定期的な交換が必要となるのです。
一般的にオイル交換が必要となる目安は「走行距離5,000kmごと」または「6ヶ月ごとの交換」といわれています。
ただし、正確な交換頻度は、お車の取扱説明書に記載されている自動車メーカー各社の推奨基準を確認してください。
また、エンジンの種類(NA、ターボ、ガソリン、ディーゼル)や、走行状況が厳しいシビアコンディション(短距離走行が多い、悪路走行が多い、砂塵の多い場所での使用など)では、交換の目安が早まります。
お車を常に良い状態で保つためには、シビアコンディションを考慮し、NA(ターボ非搭載車)は「5,000kmまたは6ヶ月」、ターボを搭載している車は「2,500km~5,000kmまたは3~6ヶ月」を目安としてオイル交換を行うなど、走行状況に応じて適切な時期に交換することが推奨されます。
エンジンオイル交換の一般的な目安
- 標準的な走行:6ヶ月ごと、5,000kmごと
- シビアコンディション(ターボ車含む):3~6ヶ月ごと、2,500km~5,000kmごと
オイルフィルター(エレメント)/オイル交換2回に1回
オイル交換を依頼すると「オイルフィルター(エレメント)は交換しますか?」と聞かれることがあります。
オイルフィルターは、エンジンオイルが循環する通路に取り付けられる円筒状の部品です。円筒の中にあるろ紙(ろ過材)が、オイルに含まれる金属粉やスラッジなどの汚れを取り除く役割を担っています。
ろ紙に汚れが溜まっていくと徐々にろ過能力が低下し、最終的にはエンジンオイル全体の劣化を早める原因となるため、オイルフィルターも定期的に交換する必要があります。オイルフィルターは、エンジンオイル交換2回に1回の頻度で取り替えるのが一般的です。
オイルフィルターの交換目安
- エンジンオイル交換2回につき1回交換する
- または、1年ごと、10,000km~15,000kmごと
タイヤの新品交換/4~5年程度
タイヤは路面と直接触れ合い、安全性、乗り心地、燃費を左右する非常に重要なパーツです。タイヤの状態が悪いと、走行中にバースト(破裂)して車両のコントロールを失い、事故に繋がる可能性もありますので、日常的にチェックしたいポイントです。
特にタイヤの側面に生じたひび割れは、バーストに繋がる可能性が高いため危険です。ひび割れが目立ち始めた場合は、溝の残量に関わらず新品に交換することを検討してください。
また、タイヤは走行により自然に摩耗し溝が減っていきます。極端にすり減ったタイヤは車検に通らなくなるほか、雨の日など濡れた路面で滑りやすくなり大変危険です。ブレーキ性能も悪化し、制動距離が伸びることで追突などの危険性も高まるため注意が必要です。
タイヤの新品交換時期(寿命)
- 溝の残量が使用限界(スリップサイン)に達する前
- 使用開始から4~5年程度でゴムが劣化するため交換を検討
走行距離が短く溝がたっぷり残っていても、製造から5年以上経過した古いタイヤは、ゴムの柔軟性が失われ硬化(カチカチの状態)しています。この状態では本来のグリップ性能を発揮できず、濡れた路面で滑りやすくなるほか、ひび割れからのバーストの可能性も高まるため、溝の残量に関わらず新品への交換が推奨されます。
タイヤと空気圧の関係
自動車も自転車と同様に、タイヤの空気圧が適正値で充填されている時が、タイヤ本来の性能を発揮できる状態です。一方、空気圧が適正より低いと「燃費が悪くなる」「タイヤの偏摩耗(両端の減り)」「カーブでの安定性の低下」などのデメリットが生じます。逆に適正より高すぎると「乗り心地の悪化(突き上げ感の増大)」「タイヤ中央の偏摩耗」などの問題が生じます。
ご自身の車に推奨されている適正空気圧は、運転席のドア付近(または給油口の蓋の裏側など)に貼付されているシールで確認できます。その値を目安に空気圧を調整しましょう。空気は自然に抜けていくため、月に1回の頻度で点検・調整を行うことがベストです。
空気充填機は、ガソリンスタンドやカー用品店に設置されていることが多いため、自分で調整するか、自信がない場合はスタッフに依頼すると確実です。
- 適正な空気圧のタイヤは、本来の性能と安全性を発揮できます
- 空気圧が適正より低いと、「燃費悪化」「タイヤの異常摩耗」を招きます
- 空気圧が適正より高いと、「乗り心地の悪化」「タイヤ中央の異常摩耗」を招きます
ワイパーゴム/1年ごとの交換が目安
ワイパーは車検の点検項目にも含まれており、雨の日や雪の日に前方の視界を確保してくれる安全上非常に重要なパーツです。雨の日にワイパーを作動させた時、「拭き残し」や「スジ状の跡」が発生して視界が悪くなったと感じた時は、交換時期です。
ワイパーは「ブレード」と「ゴム」の2パーツで構成されており、特にフロントガラスの水分を拭き取る「ゴム」の部分が劣化しやすいです。古くなって硬化したゴムや、裂け・ヒビがあるワイパーは、視界不良を招き車検に通らない可能性もあります。
ワイパーの交換は「ブレードごと交換する方法」と「ゴムだけ交換する方法」の2種類があり、ゴムだけの交換の方が費用は安くなりますが手間がかかります。
季節の変わり目(例えば冬タイヤから夏タイヤに交換するタイミングなど)でゴムの交換(またはブレードの交換)を行うことで、毎年キレイな視界を確保でき、交換時期を忘れにくくなります。
ウィンドウォッシャー液/1ヶ月に1回補充
泥はねなどでフロントガラスが汚れた際に、ウィンドウォッシャー液を噴射してからワイパーを作動させることで、クリアな視界を手に入れることができます。
ウィンドウォッシャー液はあまり使う機会がないため、タンクへの補充を忘れがちです。いざという時にウォッシャーが使えないというトラブルを避けるためにも、1ヶ月に1回タンクの液量を確認する・遠出する際に満タンに補充しておくなどの対処をしておきましょう。
ウォッシャー液が正常に噴射されない場合、車検に通らない可能性があります。また、ウォッシャータンクに水だけを補充していると、汚れが落ちにくいだけでなく、冬場に凍りついてウォッシャーが使えなくなる、タンクやノズルが破損するなどのトラブルに見舞われやすくなるため、必ず専用のウォッシャー液を使用してください。
ウィンドウォッシャー液の補充時期・注意点
- 遠出する前や1ヶ月に1回、液量をチェックし補充する
- 必ず専用のウィンドウォッシャー液を補充する
- 水だけを補充すると、洗浄力不足や冬場の凍結・部品破損のリスクがあります
冷却水(クーラント、LLC/SLLC)/交換時期は製品により異なる
冷却水(クーラント)は、エンジンを冷却するために非常に重要な役割を果たしています。エンジンが始動すると高温になりますが、冷却水が不足したり劣化したりしているとエンジン温度がどんどん上昇し、オーバーヒート(焼き付き)を起こしてエンジンが故障します。
冷却水の点検は、ボンネットを開けてエンジンルーム内にある「リザーバータンク」を見ます。リザーバータンクには「MAX・MIN」の目盛りがついており、その間に液面があれば正常です。もし、MINの目盛りより液面が下にある場合には、冷却水が漏れている可能性もあるため、早急に点検する必要があります。
また、車のメーターにある水温計でも異常を察知できます。アナログメーターの針が常に「H」の付近にある、デジタルメーターで水温警告灯(赤色が多い)が点灯している、水温計の異常を示すサインが消えないといった場合は、オーバーヒートなどの異常がある可能性がありますので、直ちに運転をやめ、ディーラーなどの専門業者に点検を依頼してください。
冷却水は、使用しているうちに不凍性や防錆性が劣化してきます。従来のLLC(ロングライフクーラント)は2年ごとの交換が目安でしたが、近年は高性能化しSLLC(スーパーロングライフクーラント)など7年/16万kmまたは11年/20万km程度まで交換が不要な製品もあります。ご自身の車の冷却水の種類と、取扱説明書に記載された推奨交換時期を必ず確認してください。
冷却水の交換目安
- 取扱説明書に記載された推奨時期に従う
- 従来のLLCの場合:2年ごと、車検ごとの交換がおすすめ
- SLLCなどの場合:7年/16万km、11年/20万kmなど製品により大きく異なります
ブレーキフルード/2年ごと
ブレーキフルード(油)とは、油圧ブレーキを作動させる時に必要な作動油のことで、劣化しているとブレーキの効きが悪くなるなどの不具合が生じます。ブレーキフルードの交換時期の目安は2年ごとで、車検の時期に合わせて交換するのがおすすめです。
ブレーキフルードが劣化する主な原因は、空気中の水分を吸収する「吸湿性」です。水分を多く含んだブレーキフルードは、ブレーキの熱により水分が沸騰し、気泡(ベーパーロック現象)を発生させてブレーキの効きを著しく低下させる危険性があります。また、配管に錆びを発生させる原因にもなるため、安全性の観点から2年に1回の交換が推奨されています。
ブレーキフルードの交換時期
- 2年に1回、車検ごとの交換がおすすめ
バッテリー/2~3年ごと
カーバッテリーは、エンジン始動時だけでなく、各種電装品を作動させるために必要なパーツです。バッテリーの能力が弱まりエンジンがかからなくなることを「バッテリー上がり」といいます。バッテリーの交換時期は2年から3年ごとが一般的と言われていて、価格は5,000円から10,000円以内(車種や性能による)に収まることが多いです。
特に秋から冬にかけては、気温が下がることでバッテリーの性能も低下し、バッテリーが上がりやすくなる傾向にあります。夏場には問題なくても、冬になると突然バッテリーが上がるということがあるため、3年以上経過しているバッテリーを使用している場合は、一度点検し、必要に応じて交換した方が安心して冬を迎えられます。
バッテリーの交換時期
- 2年~3年ごとが目安
- 寒くなる前に点検・交換を検討することがおすすめ
エアクリーナー/2年ごと、20,000kmごと
エアクリーナー(エアフィルター)は、エンジンに入る空気の通り道に設置されているフィルターで、空気中のホコリやゴミなどがエンジン内部に入り込むのを防ぐ役割をしています。
このフィルターに汚れが溜まると、空気の通りが悪くなり、エンジン性能の低下や燃費の悪化を招きます。そのため、2年ごとや20,000kmごとに新品と交換することがおすすめです。
砂ぼこりの多い悪路や山道などを走ることが多い車は、通常よりも早くエアクリーナーが汚れる傾向があるため、1年ごとや10,000kmごとなど、交換サイクルを早めることも検討してください。
エアコンフィルター/1年ごと
エアコンフィルターは、車のエアコンを使用する際に、車外からのホコリや花粉、排ガスなどの汚れをキャッチしてくれる役割を果たしています。エアコンフィルターも消耗品ですので、使用している内にカビなどが発生し、ろ過機能が落ちるだけではなく車内に不快な異臭がする原因にもなりますので、1年に1回交換することをおすすめします。
エアコンは夏に本格的に使うことが多いので、冬タイヤから夏タイヤに交換するタイミングで一緒にエアコンフィルターの交換も行うと、交換時期を忘れにくくなります。
車両メンテナンスを適切に行い車の寿命を延ばしましょう
車両メンテナンスを怠らず定期的に手をかけてあげることで、車検ごとにしか交換していない車両よりも、エンジンをはじめとする主要部品の寿命が延びる可能性が上がります。
| エンジンオイル交換 | 6ヶ月ごと/5,000kmごと |
|---|---|
| オイルフィルター交換 | エンジンオイル交換の2回に1回 |
| タイヤ新品交換 | 4~5年ごと(溝の残量・ひび割れに注意) |
| ワイパーゴム | 1年ごと |
| ウィンドウォッシャー液 | 1ヶ月に1回補充 |
| 冷却水(LLC) | 取扱説明書に従う(従来のLLCは2年ごと) |
| ブレーキフルード | 2年ごと(車検ごと) |
| バッテリー | 2~3年ごと |
| エアクリーナー | 2年ごと/20,000kmごと |
| エアコンフィルター | 1年ごと |
特にエンジンオイル交換は、エンジンをスムーズに回転させるためにも大変重要なメンテナンス項目で、オイル交換を怠るとエンジン不調や燃費悪化などのトラブルが発生する場合があります。
「乗り換え時期」ともいわれている10年・10万kmを超えても、エンジントラブルなどが少ない車は、適切な定期メンテナンスが行われているパターンが多く見られます。できるだけ長く愛車に乗りたいのなら、日頃からの点検と定期的な交換・整備を専門家と相談しながら行うことが大切です。