ブレーキフルード(オイル)の役割・交換時期・DOT規格の選び方を解説
ブレーキオイルとも呼ばれるブレーキフルードは、油圧式ブレーキを作動させるために不可欠な作動油です。劣化するとブレーキの効きが悪化し、最悪の場合「ベーパーロック現象」によってブレーキが突然効かなくなる危険があります。
エンジンオイルに比べて交換頻度が少ないため見落とされがちですが、安全運転を維持するうえで定期的な点検と交換が欠かせません。本記事では、ブレーキフルードの役割・劣化の危険性・交換時期の目安・DOT規格の選び方・交換費用の目安をわかりやすく解説します。
ブレーキフルードの役割:油圧ブレーキの圧力を正確に伝える

ブレーキフルードは油圧式ブレーキシステムの作動油です。ドライバーがブレーキペダルを踏むと、その力がマスターシリンダーを通じてフルードに伝わり、密閉された配管内の圧力がブレーキキャリパーなどへ伝達されます。これによりブレーキディスクやドラムに摩擦力が生まれ、タイヤの回転が弱まって車が減速します。
この圧力を正確かつ確実に伝えるために、フルードが適切な状態を保っていることが不可欠です。
ブレーキフルードが劣化する理由と交換が必要な理由

ブレーキフルードの主成分であるグリコールエーテル系は吸湿性(空気中の水分を吸収する性質)が高く、時間の経過とともに水分を取り込んで劣化します。水分量が増えると沸点が大幅に低下し、ブレーキ性能に深刻な影響を与えます。
交換時期の目安は2年ごと・走行距離2万km(車検のタイミングが目安)
乗用車のブレーキフルードは、2年ごとまたは走行距離2万kmを目安に交換するのが一般的です。車検のタイミング(2年ごと)に合わせて交換するのがわかりやすく、スムーズです。
ただし、吸湿量は運転環境や使用状況によって変わります。リザーバータンク内のフルードの色で状態を確認できます。新品は黄色または無色に近い透明感がありますが、劣化が進むと水分やサビの混入により茶褐色に濁ってきます。この状態になったら時期を待たず早めの交換が必要です。
交換は「全量交換」が基本
劣化したフルードに新しいものを足す「部分補充」は推奨されません。混合した場合、全体の性能は水分を多く含んだ古いフルードの性能(低下した沸点)に左右されてしまうためです。安全性を確保するためには全て新しいフルードに入れ替える「全量交換」を行ってください。交換量の目安は乗用車で一般的に1L前後です。
ブレーキフルードの交換費用(カー用品店)の目安

ブレーキフルードの交換作業はエア抜き(配管内の空気を抜く作業)が必要で、専門的な知識と技術が求められます。自分で行うリスクを考えると、プロに依頼するのが安心です。
| カー用品店 | 費用の目安(税込) | 作業目安時間 |
|---|---|---|
| オートバックス | 4,400円〜(フルード代込み)※フルード銘柄指定の場合は別途工賃が発生 | 30分〜(HV車は60分前後) |
| イエローハット | 工賃3,300円〜(別途フルード代が必要) | 20分〜 |
| ジェームス | 部品代+工賃込みで5,000〜7,000円程度(店舗・車種による) | 30分〜 |
※上記はあくまで目安です。車種・使用するフルードの種類・店舗によって変動します。作業前に各店舗で見積もりを取ることをおすすめします。
ブレーキフルードの交換を怠ると起こるトラブル
ベーパーロック現象:ブレーキが突然効かなくなる
フルードの吸湿が進んで沸点が低下した状態で、山道などで連続したブレーキングを行うと、制動時の摩擦熱によってフルードが沸騰し気泡(蒸気)が発生します。気泡は圧力によって圧縮されやすいため、ペダルを踏み込んでも圧力が適切に伝わらなくなり、急激にブレーキ力が低下します。これがベーパーロック現象です。長い下り坂でのブレーキ過熱によるフェード現象(ブレーキパッドの摩擦力低下)と重なると、さらに危険性が増します。
ブレーキシステム内部の錆・フルード漏れ
水分量が増えたフルードは、ブレーキキャリパーやホイールシリンダーなどの金属部品に錆を発生させます。錆が進行するとシール類が損傷し、内部からフルードが漏れ出す可能性があります。フルードが漏れると油圧が失われ、ブレーキが作動しなくなるという重大な故障につながります。
ブレーキフルードのDOT規格の見方と選び方

ブレーキフルードはアメリカ運輸省(DOT)の規格によって分類されており、主成分・沸点・粘度の違いによってDOT3・DOT4・DOT5.1・DOT5に分けられます。市販車に使われるフルードには「粘性が低い」「圧力での体積変化が小さい」「低温でも凝固せず高温でも沸騰しにくい」性質が求められます。
| 規格 | 主成分 | ドライ沸点 | ウェット沸点 | 低温粘度(-40℃) | 高温粘度(100℃) |
|---|---|---|---|---|---|
| DOT3 | グリコールエーテル | 205℃以上 | 140℃以上 | 1,500cSt以下 | 1.5cSt以上 |
| DOT4 | グリコールエーテル | 230℃以上 | 155℃以上 | 1,800cSt以下 | 1.5cSt以上 |
| DOT5.1 | グリコールエーテル | 260℃以上 | 180℃以上 | 900cSt以下 | 1.5cSt以上 |
| DOT5 | シリコン | 260℃以上 | 180℃以上 | 900cSt以下 | 1.5cSt以上 |
ドライ沸点とウェット沸点の違い
ドライ沸点:吸湿率0%(新品)の状態での沸点。数値が高いほど制動時の熱への耐久性が高い。
ウェット沸点:吸湿率3.7%(使用後の目安)の状態での沸点。吸湿後の安全性を示す重要な指標。
粘度(cSt)について
流動性を示す数値です。特に低温時(-40℃)の粘度が低いほど、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)などの電子制御システムがスムーズに作動します。寒冷地や冬季の使用でも安定したブレーキ性能を発揮できます。
※DOT規格ではPH値(酸性・アルカリ性)が7.0〜11.5の範囲に定められており、金属部品の腐食を防いでいます。
※DOT5はシリコン系であり、DOT3・4・5.1のグリコールエーテル系と絶対に混ぜることができません。特殊な車両(クラシックカーなど)以外では一般的に使用されません。
車のタイプに合ったDOT規格を選ぶ
フルードを選ぶ際は、まず取扱説明書でメーカー指定の規格を確認してください。より高い性能が必要な場合は、指定規格以上のDOT規格(例:DOT3指定車にDOT4)を選ぶことも可能です。
| 規格 | 主な特徴と用途 |
|---|---|
| DOT3 | 一般的な軽自動車・小型車に指定されることが多い。標準的な街乗り用途に適している。 |
| DOT4 | DOT3より沸点が高く、高性能車・重量のある車・スポーツ走行をする車に適している。 |
| DOT5.1 | DOT4よりさらに高性能。低温時の粘度が低く、寒冷地での使用やABSの性能を重視する車に適している。 |
| DOT5 | シリコン系。クラシックカーなど特殊用途向け。グリコール系フルードとは混合不可。 |
ブレーキの効きが悪くなったら、安全のためにすぐに点検・交換を

ブレーキフルードの交換は数年に一度の頻度ですが、交換時期を後回しにするとベーパーロック現象などの重大なトラブルにつながり、大きな事故を引き起こす危険性があります。運転に自信があっても、ブレーキ系統に支障をきたしていれば安全を確保することは困難です。
ブレーキの効きが悪いと感じたり、フルードが茶褐色に濁っていたりする場合は、時期にかかわらず早めにディーラーやカー用品店に点検・交換を依頼してください。定期的なメンテナンスが愛車に長く安全に乗るための基本です。
「ブレーキフルードの交換」に関連するFAQ
ブレーキフルードの交換目安は?
ブレーキフルードの交換目安は使用状況やDOT規格の種類によって変わりますが、年数で見た場合は2~3年がひとつの目安、走行距離で見た場合は1万kmを超えたら確認で2万kmあたりには交換するのが目安、そのほかには車検の時、ブレーキパッド交換時など。色で判断する場合は無色・琥珀色は問題なく茶色から黒色の場合は交換が必要。DOT3の場合は1年おきが目安、DOT4以上の場合は2年・2万km・車検が目安です。
ブレーキフルードのDOT規格はどれを入れても問題ないですか?
問題がある場合とない場合があります。純正品と同じものの利用がいいですが、DOT3からDOT4への変更は問題なく耐フェード性(高温時のブレーキ性能維持)が向上します。
DOT4からDOT3への変更は車を酷使する状況ではヴェイパーロック減少を引き起こすこともあります。
DOT4以下(グリコール系)とDOT5(シリコン系)の変更は問題があり、DOT5.1(グリコール系)であれば変更できます。
ブレーキ警告灯が付きブレーキフルードのタンクの中身が減っていたらどうすれば?
ブレーキ警告灯はパーキングブレーキが作動している状況を除けば、ブレーキ系のトラブルの時に点灯します。その時にチェックするのがブレーキフルードのタンクです。ブレーキオイルが減っていた場合は、まずブレーキパッドの減りを疑います。ブレーキパッドに問題がなければブレーキオイルの漏れが考えられますので整備工場で点検しましょう。
























