ブレーキフルード(オイル)は車検前にも交換する必要あり
ブレーキオイルとも言われる事があるブレーキフルードは、油圧式ブレーキを作動させるために必要な液体です。ブレーキフルードが劣化すると、ブレーキの力が弱まってしまうという特徴もあります。
ブレーキフルードは、エンジンオイルに比べると交換する時期がさほど頻繁ではないため、車検時に交換することが一般的です。
ブレーキの効きが悪くなった際にはブレーキフルードが劣化しているケースも多く、事故を事前に防ぐためにはカー用品店などで事前に交換する必要があります。
今回は、ブレーキフルードをカー用品店で交換する際の費用や作業時間の目安・DOT規格について・交換時期を遅らせた時に起こり得る危険性など、ブレーキフルードに関わる情報をたっぷりと紹介します!
ブレーキフルードは油圧式ブレーキの圧力源
ブレーキフルードは油圧式ブレーキに使用する作動用の油です。多くの種類の車では一般的に油圧式ブレーキが採用されます。
油圧式ブレーキの機構では、ブレーキフルードを利用して密閉空間内に圧力を発生させます。圧力が発生すると、密閉空間内と接しているパーツであるブレーキシリンダー等が連動して動きます。
圧力によって動いたブレーキ系統のパーツが、回転しているタイヤを動かしているパーツと接触すると摩擦力が発生するためタイヤが回転する勢いが弱まり、車のスピードが落ちていきます。
ブレーキフルードは油圧式ブレーキに圧力を発生させるために必要な液体です。
ブレーキフルードは状態が劣化するため交換が必要
ブレーキフルードは時間が経過するとともに、劣化してしまいます。ブレーキフルードを交換する際の適切な「量」と「時期」を紹介します。
ブレーキフルードを交換する量は800ml~1,000ml
趣味がカーレースという人以外は、頻繁にブレーキフルードを交換する機会はないと思います。乗用車であれば車の種類によって変わってきますが、だいだい800ml~1,000mlが交換量(全量交換)の目安です。部分的な交換であれば、300ml~400mlほどで足ります。
ただ、劣化している状態のブレーキフルードに新品のものを混ぜ合わせる使い方は、お勧めできません。フルードを混ぜ合わせた時の効果は両者の中間になる訳ではなく、低い方の性能が効果を発揮します。そのため、新しいブレーキフルードと古いブレーキフルードを混合させるよりは、全て新しいブレーキフルードで充填させる全量交換をお勧めします。
乗用車のブレーキフルードの一般的な交換時期は2~3年
ブレーキフルードの交換を意識しているドライバーが少ないのは、エンジンオイルの交換時期が半年に1回のペースであるのに対して、ブレーキフルードの一般的な交換時期は2~3年に1度のペースだからです。そのため、車検を通すときに交換してもらうケースがほとんどです。
一般的には、2~3年と言われていますが、運転状況・車の状態によってはもっと早いタイミングで交換が必要になったり5年近く使用しても問題ない場合もあります。適切な交換時期を見定めるには、フルードの色が一つの目安です。新品であれば鮮やかな黄色をしていますが、劣化したフルードの色は茶褐色でよどんでいます。
ブレーキが「効く」「効かない」は、安全運転にも直結しますし、事故が発生するリスクを低下させる事にも結びつきます。
ブレーキフルードの交換費用は3,000円~4,000円台(カー用品店)
大手カー用品店にブレーキフルードの交換を依頼した時の費用は、3,000円~4,000円台です。作業時間もそれほどかからず短時間が交換を行う事が可能です。
普段慣れない作業はプロの手に任せた方が無難です!
カー用品店 | 交換費用 | 作業目安時間 |
---|---|---|
オートバックス | 4,000円~(税込)(店舗により異なる) | 30分~ |
オートウェーブ | 4,950円~(税込) | 60分~ |
イエローハット | 3,300円~(税込) | 20分~ | ジェームス | 4,950円~(税込)(店舗により異なる) | 30分~ |
ブレーキフルードを交換しないと故障の原因に
ブレーキフルードをそのままにしておくとブレーキシステムに錆びが発生してしまい、事故につながる可能性もあります。どのようなトラブルが考えられるのか紹介します。
1.ブレーキフルードが漏れ出してしまう
ブレーキフルードには、ポリグリコールエーテルというアルコール成分が含まれています。ポリグリコールエーテルには、吸湿性(周囲の環境より水分を吸収する)があります。吸湿性は時間に比例して高まり、交換しない時期が長くなるほど水分量が増す傾向にあります。
ブレーキフルードの水分量が多くなると、ブレーキキャリパーの内部やホイールシリンダーの内部といった ブレーキシステム内に錆が発生しやすくなります。ブレーキシステムに錆の範囲が広がっていけば、内部からブレーキフルードが漏れ出してしまいます。
ブレーキフルードが漏れ出すと、直ちにブレーキの性能が落ちてしまう訳ではありません。しかし、状態を放置してしまうと、いざという時にブレーキが効かなくなってしまって事故の原因となる事は否定できません。
2.ブレーキ制動・性能が低下してしまう
一般的な車のブレーキシステムでは、油圧式構造を採用しています。油圧によって摩擦力の抵抗値を調整して、タイヤの回転数を下げる方式を採用しています。勢いのあるタイヤの回転数を下げる際には、大量の摩擦熱が発生します。
本来であれば、ブレーキフルードの沸点は250℃前後に設定されているので、発生した摩擦熱には十分に耐える事が出来ます。しかし、ブレーキフルードの交換を怠り、吸湿性が強まってしまうと水分量が増えてしまい、ブレーキフルードの沸点が100℃近くも低下してしまいます。
沸点が低下した状況下で大量の摩擦熱が発生してしまうブレーキングを繰り返していると、ブレーキオイルが沸騰し、ペダルを踏む力が制限されてしまってブレーキ力が低下します。この現象は、専門的にはヴェイパーロック現象(ベーパーロック現象)と呼ばれています。
ブレーキフルードの主成分はポリエチレングリコール
市販車に使われるブレーキフルードの主成分は、ポリエチレングリコールです。ポリエチレングリコールは、化学成分としては油脂類よりはアルコールに近いと言えます。
ブレーキフルードには、「粘性が低い」・「圧力が加わっても体積の変化が小さい」・「-50℃でも凝固しない・200℃の熱でも沸騰しない」という化学的な性質が求められます。それら諸条件を満たしているのが、ポリエチレングリコールであるためブレーキフルードの主成分として用いられています。
ブレーキ性能の更なる高品質化が要求されるスポーツカーでは、シリコン系の化学物質も配合してブレーキの性能を高めています。
ブレーキフルードのDOT規格 ~ 主成分と沸点・粘度の違い
基準 | 主成分 | ドライ沸点 | ウェット沸点 | 粘度(100℃) | 粘度(-40℃) | Ph値 |
---|---|---|---|---|---|---|
DOT3 | グリコール | 205℃以上 | 140℃以上 | 1.5cst以上 | 1500cst以下 | 7.0‐11.5 |
DOT4 | グリコール | 230℃以上 | 155℃以上 | 1.5cst以上 | 1800cst以下 | 7.0‐11.5 |
DOT5.1 | グリコール | 260℃以上 | 180℃以上 | 1.5cst以上 | 900cst以下 | 7.0‐11.5 |
DOT5 | シリコン | 260℃以上 | 180℃以上 | 1.5cst以上 | 900cst以下 | 7.0‐11.5 |
ブレーキフルードのDOT規格とは、日本でいうところのJIS規格のようなものです。ちなみにDOT(Department of Transportation)日本語に訳せばアメリカの交通省を意味します。自動車の発祥の地アメリカでは、主成分・沸点(液体が沸騰する温度)・Ph値の違いからブレーキフルードを上記の表のように分類しています。
ドライ沸点
吸湿率0%の場合の沸点。新品で購入した場合の沸点
ウェット沸点
吸湿率3.7%の場合の沸点。ブレーキフルードを1~2年使用している状態の沸点
粘度
流動性(ねばねば・なめらか)に関わる数値。数値が大きくなると、ねばねば状態となり固まりやすくなってしまいます。低温時に粘度が高ければ、ブレーキ機能に悪影響を及ぼします。
Ph値
酸性・アルカリ性を表している数値。7.0以下となれば酸性度が強まり、周りの金属系統の部品を腐食させてしまいます。
車のタイプに合ったブレーキフルード
市販されているブレーキフルードの種類は豊富で、自力での交換を考えている方は自分の車にどのタイプのブレーキフルードが適しているのかについて知りたいはずです。
ブレーキフルードの商品選びで役立つ知識を紹介します!
規格 | おすすめしたい車の種類 |
---|---|
DOT3 | 排気量が少ない車・軽自動車 |
DOT4 | 排気量が多い車・スポーツカー・重量のある車 |
DOT5.1 | 寒い地域で利用する車・スポーツカー・排気量が多い車・重量のある車 |
DOT5 | ハマーなどの特殊車両 |
ブレーキの効きが悪くなったら・ブレーキフルードを交換する時期かも
運転中にブレーキの効きが悪くなったら、ブレーキフルードを交換する必要があるかもしれません。
次の車検の時期まで大丈夫だと交換の時期を後回しにしてしまうと、大きな事故につながりかねません。ブレーキフルードの交換は、数年に1回程度なので後回しにしがちです。
運転に自信のある方でもブレーキ系統に支障をきたしていれば、事故を起こしてしまう危険性が高まります。事故を事前に防ぐためには、ブレーキフルードの交換が求められます。
「ブレーキフルードの交換」に関連するFAQ
ブレーキフルードの交換目安は?
ブレーキフルードの交換目安は使用状況やDOT規格の種類によって変わりますが、年数で見た場合は2~3年がひとつの目安、走行距離で見た場合は1万kmを超えたら確認で2万kmあたりには交換するのが目安、そのほかには車検の時、ブレーキパッド交換時など。色で判断する場合は無色・琥珀色は問題なく茶色から黒色の場合は交換が必要。DOT3の場合は1年おきが目安、DOT4以上の場合は2年・2万km・車検が目安です。
ブレーキフルードのDOT規格はどれを入れても問題ないですか?
問題がある場合とない場合があります。純正品と同じものの利用がいいですが、DOT3からDOT4への変更は問題なく耐フェード性(高温時のブレーキ性能維持)が向上します。
DOT4からDOT3への変更は車を酷使する状況ではヴェイパーロック減少を引き起こすこともあります。
DOT4以下(グリコール系)とDOT5(シリコン系)の変更は問題があり、DOT5.1(グリコール系)であれば変更できます。
ブレーキ警告灯が付きブレーキフルードのタンクの中身が減っていたらどうすれば?
ブレーキ警告灯はパーキングブレーキが作動している状況を除けば、ブレーキ系のトラブルの時に点灯します。その時にチェックするのがブレーキフルードのタンクです。ブレーキオイルが減っていた場合は、まずブレーキパッドの減りを疑います。ブレーキパッドに問題がなければブレーキオイルの漏れが考えられますので整備工場で点検しましょう。