カーズに登場する車種

『カーズ』登場キャラの車種一覧~マックィーンは伝説のレーシングカーがモデル?

ドック・ハドソンはハドソン・ホーネット、サリーはポルシェ911。『カーズ』『カーズ2』『カーズ/クロスロード』に登場するキャラクターのモデル車種を、実車の特徴とあわせて解説します。

『カーズ』登場キャラの車種一覧~マックィーンは伝説のレーシングカーがモデル?

カーズに登場するキャラクターの車種は?モデル車を一覧紹介

映画『カーズ』に登場するキャラクターの多くには、モデルとなった車種が存在します。伝説のレーシングカーだったドック・ハドソンは1950年代にNASCARで圧倒的な強さを誇った「ハドソン・ホーネット」がモデルですし、他のラジエーター・スプリングスの仲間たちも名車として知られる車ばかりです。

車種に関する知識があれば『カーズ』の世界をより深く楽しめます。
ライトニング・マックィーンやラジエーター・スプリングスの仲間をはじめ、『カーズ』『カーズ2』『カーズ/クロスロード』に登場したキャラクターのモデル車を紹介します。

ライトニング・マックィーンは複数の車をモデルに作られたオリジナルカー

『カーズ』の主人公といえば、赤いボディにゼッケンNO.95、稲妻のステッカーが特徴的なレーシングカーのライトニング・マックィーン。最高750馬力を発生するレース仕様のV8エンジンを搭載しており、最高速度は317km/hの設定です。

モデルの1つとして明言されたのは伝説のレースカー『フォードGT40』

フォードGT40 Mk. IIのエクステリアマックィーンのモデルの1つとされる「フォードGT40 Mk. II」

カーズに登場する車の多くにはモデルとなった市販車が存在しますが、ライトニング・マックィーンに関しては、ほぼオリジナルのデザインです。
ただし、参考にした車種は存在しており、マックィーンをデザインした『カーズ』の監督ジョン・ラセターはフォードGT40を参考にした車の1つとして挙げています。ストックカーの体格にル・マン系プロトタイプの丸みを重ねた造形で、どの角度から見ても特定の一台に着地しないよう設計されている点が特徴です。

フォードGT40とは?

正式な車名はフォードGT。フェラーリ買収に失敗したフォードが威信をかけて、ル・マン24時間レースでの優勝を目指して開発。イギリスのローラ・カーズと提携し、ローラ・マーク6をベースに製作。全高が約40インチ(1,016mm)しかないことが「GT40」の呼び名の由来で、1966年に米国メーカーとして初のル・マン優勝を飾った伝説のレーシングカー。

マックィーンは「コルベットやマスタングの影響を感じる」という声も!

ライトニングマックィーンapr MR-Sのエクステリアライトニングマックィーンapr MR-S ピクサー公認のレーシングカー

ライトニング・マックィーンの造形に関して、『カーズ』ファンからはシボレー・コルベットやフォード・マスタングなどのアメリカの人気車との類似性が指摘されることもしばしば。
特定のモデル車が存在しないからこそ、場面によっていろいろな表情を見せてくれるのが面白いところです。

マックィーンは今や世界中で人気となり、レプリカ車なども制作されています。
日本でもチューニングパーツメーカーaprを母体とする「カーズ・レーシング」が設立され、トヨタMR-Sをベースにした「ライトニングマックィーンapr MR-S」がSUPER GTのGT300クラスに参戦したことがあります。ベース車がミッドシップのMR-Sという点も、特定の実車に縛られないマックィーンだからこそ成立した組み合わせといえます。

『カーズ』に登場したキャラクターのモデルになった車種

映画『カーズ』(2006年)に登場したキャラクター、メーターやサリーなどラジエーター・スプリングスの仲間やレースシーンで活躍したライバルたちの車種を紹介します。
日本車も意外なシーンで登場していました。

メーター/インターナショナル・ハーベスター Lシリーズ

インターナショナル・ハーベスターL-110メーターは放置車両だったハーベスター社製のレッカー車がモデル

マックィーンの親友メーターは、アメリカ農機具メーカーであるインターナショナル・ハーベスター社製のレッカー車がモデル(画像は1950~1952年に生産されたLシリーズのL-110)。実際のルート66の放置車両からインスピレーションを得て誕生した。丸みを帯びたフェンダーと、鼻先が突き出したボンネットの組み合わせは、この時代の米国製トラックに共通する形である。メーターの錆びた塗装や欠けたパーツも、放置されていた実車の状態をそのまま写し取ったものだ。

サリー・カレラ/ポルシェ911カレラ

前から見たポルシェ911カレラフロントマスクがサリーに近い2002年型ポルシェ911カレラ

後ろから見たポルシェ911カレラポルシェ911カレラ(996型)のリヤ

ヒロインのサリー・カレラは、作中でもはっきりと「ポルシェ」と明言されている。モデルは996型、5代目の911カレラだ。996型は911として初めてエンジンを空冷から水冷に切り替えた世代で、前期型の「涙目」と呼ばれるヘッドランプが最大の話題になった。サリーが下敷きにしたのは2002年型、つまりヘッドランプが整理された後期型にあたる。旧車ばかりのラジエーター・スプリングスにおいて、都会から流れてきたサリーだけが現代の車という配置になっている。

ドック・ハドソン/ハドソン・ホーネット

ハドソン・ホーネットのエクステリアハドソン・ホーネット(1951年モデル)

ファビュラス・ハドソン・ホーネットのエクステリアファビュラス・ハドソン・ホーネット(1951年モデル)

ドックは、1950年代前半のストックカー(市販車)レースで無敵の強さを発揮したハドソン・ホーネットがモデル。正確にはレース仕様のファビュラス・ハドソン・ホーネットで、ハドソン・モーター・カー・カンパニーによる製造は1951~54年まで。強さの理由は「ステップダウン」と呼ばれる構造にあり、床面をフレームより低い位置に落とし込むことで重心を大きく下げていた。目の前にすると同時代のアメリカ車より明らかに背が低く、コーナーで速かった理由が形から読み取れる。

余談だが、ドック・ハドソンの声を演じたポール・ニューマンはR30スカイラインのCMに出演しており、これがもとでR30には「ニューマン・スカイライン」の愛称がある。ニューマンが2008年に死去したため、カーズ2ではドックも亡くなった設定となった。

ルイジ/フィアット・500

フィアット500のエクステリアフィアット500(ヌォーヴァ500)

横から見たフィアット500設計・デザインはダンテ・ジアコーサが担当

後ろから見たフィアット500フィアット500 リアエンジン方式の完全4人乗り設計

タイヤ店を営むルイジはフィアット500(チンクェチェント)がモデル。1957年に登場したヌォーヴァ500で、乗用モデルの生産は1975年まで続いた(派生のジャルディニエラは1977年まで)。空冷2気筒をリアに積み、全長3m未満のボディに大人4人を収める設計は、設計者ダンテ・ジアコーサの手による。フェラーリ大好きなルイジだが、自身も誇れるイタリアの名車だ。ルパン三世の車としてもお馴染みで、日本でも非常に人気が高い。

シェリフ/マーキュリー・ポリス・クルーザー

マーキュリー・エイトのエクステリアマーキュリー・エイト(1949年モデル)

滑らかなボディが特徴のマーキュリー・エイトマーキュリーは1938~2011年まで続いたフォードのブランド

ラジエーター・スプリングスの保安官シェリフのモデルは1949年型マーキュリー・ポリス・クルーザー。1949年型マーキュリーはフェンダーとボディが一体化した「シューボックス」と呼ばれる造形で、カスタム界ではチョップドルーフのベース車として今も定番の一台である。日本のパトカーは上下で白黒なのが基本だが、米国では州によって違い、黒いボディに白いドアのカラーリングは時折見られる。

ラモーン/シボレー・インパラ

シボレー・インパラのエクステリア1959年型シボレー・インパラ 大衆車ながら全長は5m越え

横に傾いたシボレー・インパラ「ローライダー」と呼ばれるカスタムが施されたシボレー・インパラ

ボディアート店を経営するラモーンは1959年型シボレー・インパラ。1959年型は左右へ大きく水平に張り出したテールフィンと、猫の目のようなテールランプが特徴で、間近で見るとリアまわりの造形が量産車とは思えないほど大胆だ。カリフォルニア州南部で生まれた、油圧ポンプやシリンダーで車高を調節したり車体を跳ねさせたりする「ローライダー」というカスタム手法を取り入れており、ラモーンが場面ごとに塗装を変えるのも、この文化がボディを表現の場として扱ってきたことに由来する。

フィルモア/フォルクスワーゲン・タイプ2

フォルクスワーゲン・タイプ2のエクステリアフォルクスワーゲン・タイプ2(T1)

後ろから見たワーゲンバス フィルモアペイントされたワーゲンバス フィルモアは側面に花のイラストが描かれていた

オーガニック燃料を販売するフィルモアは、フォルクスワーゲン・タイプ2、通称ワーゲンバスの初代モデルT1(1950~1967年)がモデル。ビートルと同じ空冷リアエンジンを流用しながら、平らな側面を持つ箱形ボディを載せた構成で、この広く平らな面がペイントの下地として好まれた。1960年代後半のヒッピームーブメント隆盛期には、若者たちが思い思いの絵を描いて楽しんでいる。

サージ/ウィリスMB

ウィリスMBのエクステリア軍人気質なサージのモデルは軍用車「ウィリスMB」

軍用品販売店を経営しているサージは1941年に生産が開始された軍用小型四輪駆動車ウィリスMBがモデル。「元祖ジープ」とも呼ばれ、頑丈なはしご型フレームにリーフ式サスペンション、パートタイム4WDという基本構造を持つ。整備性を最優先した設計で、フロントの縦格子グリルは工具ひとつで外せる。この割り切りが戦後の四輪駆動車の原型となり、現在のジープへ受け継がれている。

リジー/ フォード・モデルT

フォード・モデルTのエクステリアフォード・モデルT(1925年モデル)

土産物店を経営するリジーは1908~1927年生産のT型フォードがモデル。1913年に移動組立ラインを導入し、自動車の大量生産を初めて実現したヒストリックカーである。累計生産台数は1,500万台を超え、価格を下げ続けたことで自動車を一部の富裕層のものから大衆のものへと変えた。アメリカでは「ティン・リジー(ブリキのエリザベス)」の俗称があり、エリザベスとは信頼できる使用人を指す当時の呼び名だ。

スタンレー/スタンレー・スチーマー

スタンレー・スチーマーのエクステリアスタンレー・スチーマー(1912年モデル)

リジーの夫であり、ラジエーター・スプリングスの開拓者スタンレーは、蒸気自動車スタンレー・スチーマーがモデル。スタンレー社は1902年に米国で設立された。1906年には同社の記録車がフロリダで時速200kmを超える速度記録を樹立しており、当時は蒸気こそが最速の動力だった時代がある。始動に時間がかかる欠点とガソリン車の急速な進歩に押され、1924年に姿を消した。町の名前「ラジエーター・スプリングス」が湧き水と冷却装置を掛けたものである以上、蒸気自動車が開拓者役なのは筋が通っている。

キング/プリムス(ロードランナー)スーパーバード

スーパーバードのエクステリアリチャード・ペティが搭乗したスーパーバード

プリムス・スーパーバードのボンネット大型リアウィングにFRP製ノーズが特徴的なプリムス・スーパーバード

人格者でピストン・カップ最多優勝を誇るキングのモデル車は、プリムス・ロードランナー。ロードランナーは1968年に登場した安価なマッスルカーで、スーパーバードはNASCARのホモロゲーションモデルとして1970年に約2,000台が発売されたモデルだ。突き出したノーズコーンと高々とそびえるリアウイングは、当時のNASCARで200mphに挑むための空力装置である。間近で見るとウイングの高さは大人の腰よりさらに上にあり、トランクの開閉を妨げないための高さだという説明にも納得がいく。

キングの声を演じたリチャード・ペティは、NASCARで数多くのタイトルを手にした名レーサーであり、「キング」の名前で愛された人物。実際にプリムス・スーパーバードに43のナンバーをつけて参戦している。

リンダ・ウェザーズ(キングの妻)/マーキュリー・コロニーパーク

マーキュリー・コロニーパークのエクステリアマーキュリー・コロニーパーク(1974年モデル)

常にキングを気遣う妻リンダはマーキュリーのフルサイズステーションワゴン・コロニーパーク第5世代(1969~1978年)がモデル。全長5,601mm、全幅2,060mm、ホイールベース3,073mmという寸法で、ヘッドライトはカバー付き。木目調パネルを側面にまとうのがこのクラスの定番で、家族の車という役どころにこれ以上ないほど合った選択だ。レーサーの夫を支える立場のキャラクターに、当時のアメリカの家庭を象徴する車を当てている。

チック・ヒックス/ビュイック・GNX

ビュイックGNXのエクステリアビュイックGNX 「ダース・ベイダーの車」とも呼ばれた黒いボディカラー

後ろから見たビュイックGNXビュイックGNX 3.8LのV6ターボを搭載

マックィーンに敵愾心を燃やすチックのモデルは、1987年型ビュイック・リーガルGNX。リーガルは1973年に高級パーソナルカーとして誕生したが、スポーツ志向を強めてNASCARでも活躍した。GNXは生産台数547台の希少車で、3.8LのV6ターボの公称出力は276馬力。ただし実測ではこれを上回るとされ、当時のコルベットより速いという評判が「ダース・ベイダーの車」という異名につながっている。全身黒一色で、悪役に振られたのも納得の佇まいだ。

テックス・ダイナコ/キャデラック・ドゥビル

キャデラック・クーペドゥビルのエクステリアキャデラック・クーペドゥビル(1975年モデル)

石油会社ダイナコ社長テックスは、キャデラック・クーペドゥビル4代目(1971~1976年)がモデル。1975年に採用された長方形のコーナリングライトが個性的だ。7.7Lや8.2Lという大排気量のV8を積み、8.2Lは量産乗用車用ガソリンエンジンとして史上最大級にあたる。石油会社の社長という設定に、燃料をもっとも消費する時代のアメリカ車を当てているところに作り手の遊び心がある。

ミア&ティア/マツダMX-5

マツダMX-5のエクステリアマツダMX-5(1992年モデル)

マックィーンのファンとして登場する双子のミアとティアはマツダMX-5、日本的にいうとユーノス・ロードスター(1989~1998年)。北米では「MX-5 Miata(ミアータ)」と名乗っていたので、キャラ名もここから取られた可能性がある。リトラクタブルヘッドライトを持つNA型は、ライトを上げると表情が一変する。目を輝かせて主人公を追いかける二人の描写に、この機構がそのまま使われている。

暴走族軍団/シルビア・エクリプス・サイオンxB・プリムスバラクーダ

日産シルビアS15のエクステリア日産シルビアS15 『カーズ』では紫に緑のネオンの車両が登場

トヨタ・サイオンxBのエクステリアトヨタ・サイオンxB 『カーズ』では青の車両 マックの眠りを誘う音楽をかけた

三菱エクリプスのエクステリア三菱エクリプス 『カーズ』では紫の車両(判別が難しく「ホンダS2000」という説も)

プリムス・バラクーダのエクステリアプリムス・バラクーダ(1970年モデル)『カーズ』ではオレンジ色の車両が登場

マックィーンを乗せて移動中のマックをからかった暴走族は4台のうち3台が日本車。光り輝くネオンの車両からアフターファイヤーを放ち、なかなか良いエンジン音を奏でていた。サイオンxBは日本のトヨタbBの北米版にあたり、当時の北米で日本車がカスタム文化の中心にいたことを示す顔ぶれである。ワイスピのオマージュと思われる。

ラスティー・ラスティーズ/ダッジ・ダート

ダッジ・ダートのエクステリアダッジ・ダート(1963年)4ドアセダン フロントグリルの形がラスティーにそっくり

マックィーンのスポンサー会社「ラスティーズ」の社長兄はダッジ・ダートがモデル。ダートは初代がフルサイズカーなのに対し、モデルチェンジの度に小型化が進んだ。ラスティーは1963~66年生産、商業的にも成功を収めた3代目に近い姿をしている。スラントシックスと呼ばれる傾斜配置の直6を積む堅実な大衆車で、錆び取りクリームのメーカーという設定にふさわしい、飾り気のない一台だ。

ダスティー・ラスティーズ/ダッジ・A100バン

ダッジA100スポーツマンのエクステリアダッジA100スポーツマン

錆び取りクリームを販売する「ラスティーズ」の社長弟は、1964~1970年に生産されたダッジのコンパクトバンA100がモデル。フォルクスワーゲン・タイプ2のライバル車として開発された。運転席が前輪の真上にあるキャブオーバー構造で、目の前にするとフロントガラスがほぼ垂直に立っているのがわかる。短い全長にV8まで収まる懐の深さから、カスタムカーのベース車としても人気を集めた。

ボブ・カトラス/オールズモビル・オーロラ

オールズモビル・オーロラ第一世代のエクステリアオールズモビル・オーロラ第一世代(1995~1999年)

「ピストン・カップ」の実況を務めているボブ・カトラスは、名前こそオールズモビルの人気車カトラスに由来するが、造形はブランドの旗艦だった4ドアセダンのオーロラに近い(カトラスにはクーペが存在した)。オールズモビルは1897年に設立された古いメーカーで、後にGMのブランドとなり「走る実験室」と呼ばれるほど新技術を投入したが、2004年に廃止されている。実況役が消滅ブランドの車というのは、なかなか渋い配役だ。

ダレル・カートリップ/シボレー・モンテカルロ

シボレー・モンテカルロのエクステリアシボレー・モンテカルロ(1970年モデル)

元「ピストン・カップ」チャンピオンであり、解説を務めているダレルは、シボレー・モンテカルロがモデル。初代モンテカルロは5.7L・6.6L・7.4LのV8を積む2ドアハードトップだった。声を演じたのは実在のNASCARドライバーであるダレル・ウォルトリップで、彼自身がモンテカルロで数々の勝利を挙げ、引退後は解説者に転じている。キャラクターの経歴が本人の経歴そのままという配役だ。

ラジエーター・スプリングスの住民に旧車が多い理由

キャラクターのモデル車を並べると、ある偏りが見えてきます。ドックが1951年、シェリフが1949年、ラモーンが1959年、フィルモアが1960年前後、リジーはT型フォードとスタンレーは蒸気自動車。町の住民はほぼ全員が1960年代以前の車で構成されています。

これは舞台となるルート66の歴史をそのまま反映したものです。ルート66は1926年に制定され、戦後の自動車社会の象徴として沿線の町が栄えましたが、1950年代後半から州間高速道路の整備が進み、迂回された町は急速に取り残されました。ラジエーター・スプリングスの時計が1950年代で止まっているのは、そこで町の時間が実際に止まったからです。

その中で、996型ポルシェのサリーだけが現代の車として置かれています。都会から流れてきた新しい世代が、取り残された町の価値を見つけ直すという物語の構造が、モデル車の年式だけで説明できてしまう。車種を知ってから見返すと、キャラクターの立ち位置が造形の段階で決まっていたことに気づかされます。

『カーズ2』に登場したキャラクターのモデル車一覧

世界各国でレースを繰り広げる「ワールド・グランプリ」を舞台にした『カーズ2』(2011年公開)。登場キャラクターが非常に国際色豊かで、ちょっとしたシーンでも個性的な車が出ていたのが印象深い作品です。

フィン・マックミサイル/アストンマーティンDB4&DB5など

アストンマーティンDB4のエクステリアアストンマーティンDB4(1958~1963年)

アストンマーティンDB5ヴァンテージのエクステリアアストンマーティンDB5ヴァンテージ

ボルボP1800のエクステリアボルボP1800(1961~1973年)

BMW507のエクステリアBMW507(1956~1959年)美しい2ドアカブリオレだが販売は不振

イギリスの諜報員フィンは007を意識したチョイス。アストンマーティンDB4やDB5をベースに、ボルボP1800やBMW507など、1950~60年代の美しいクラシックカーのデザインをミックスして創作されたオリジナル車である。いずれもアルミ外板を手叩きで成形していた時代の車で、面が緩やかにつながる共通点を持つ。ボルボP1800は『セイント』、BMW507は少量生産で経営を傾かせた名車と、それぞれに物語がある顔ぶれだ。

ホリー・シフトウェル/ジャガー・XJ220

ジャガー・XJ220のエクステリアジャガー・XJ220

フィンの相棒ホリーのモデルはやはりイギリス車。ジャガーのミッドシップスポーツカーXJ220に近い。1992~1994年に約280台が生産され、3.5LのV6ツインターボで最高出力は550PS級。最高速度349km/hを記録し、当時の市販車最高速記録を更新した。当初のコンセプトカーはV12+4WDだったが、市販化にあたってV6ツインターボの後輪駆動へ変更された経緯を持つ。全長5m近い巨体は、目の前にするとスーパーカーというより滑走路の乗り物のようだ。

ロッド・トルク・レッドライン/チャレンジャー&マスタング

ダッジ・チャレンジャー2009年モデルのエクステリアダッジ・チャレンジャー2009年モデル

後ろから見たフォード・マスタング中期型フォード・マスタングS197型のリアビュー

メーターに後を託したアメリカの諜報員ロッドは、3代目ダッジ・チャレンジャー(2008年~)をベースに、リヤデザインは5代目フォード・マスタング(S197型・2005~2014年)に寄せている。どちらも1960~70年代のデザインを現代に引き直したレトロ路線の車で、古典的な力強さと現行車らしい塊感を併せ持つ。アメリカのエージェントという役どころに、これ以上ないほど分かりやすい選択だ。

ルイス・ハミルトン/マクラーレン・MP4-12C

マクラーレンMP4-12Cのエクステリアマクラーレンが販売したスーパーカーMP4-12C

ワールドグランプリ・イギリス代表ルイスはマクラーレンMP4-12Cに類似。カーボンファイバー製のモノセルと呼ばれる一体成型構造に、最高出力600PSを発生するV8ツインターボを組み合わせている。販売期間は2011~2014年、日本価格は2,790万円。F1チームとして知られたマクラーレンが本格的にロードカー事業へ乗り出した最初のモデルであり、F1ドライバー本人が声を当てる役に充てるには筋の通った一台だ。

マックス・シュネル/メルセデス・ベンツ・Cクラス

CクラスW204のエクステリアW204型Cクラス

ワールドグランプリ・ドイツ代表マックスは、ベンツCクラスのW204(セダン/2007~2014年販売)がモデル。W204型のエクステリアはW221型Sクラスとの類似点が多く、エレガントな雰囲気が漂う。Cクラスはドイツツーリングカー選手権(DTM)のベース車として長く戦ってきた車でもあり、レーサーという設定と実車の経歴が重なっている。

ミゲル・カミーノ/ GTA・スパーノ

GTAスパーノのエクステリアGTAスパーノ V10エンジンを搭載したスーパーカー

ワールドグランプリ・スペイン代表ミゲルは、スペインの自動車メーカーGTAのスーパーカー「スパーノ」がモデル。V10を搭載し、0-100km/h加速は2.9秒とラ・フェラーリやランボルギーニ・アヴェンタドールなどと肩を並べる。生産は99台限定で、カーボンとチタン、そしてグラフェンを組み合わせたボディを採用した。スペイン製スーパーカーという珍しさもあって、代表選手に選ばれた理由がわかりやすい。

ラウール・サルール/シトロエンC4

シトロエンC4 WRCのエクステリアシトロエンC4 WRC

ワールドグランプリ・フランス代表ラウールは、シトロエン初代C4(2004~2010年)に近いデザイン。競技仕様のC4 WRCはセバスチャン・ローブとともに2007年から2010年まで4年連続でタイトルを獲得している。プラットフォームやエンジンはプジョー307と共通。ラリーカーがモデルであるため、劇中でも荒れた路面を得意とする描写がなされている。

シュウ・トドロキ/童夢S102&トヨタGT-One

童夢S102のエクステリア童夢S102 2008年ル・マン24

トヨタGT-OneのエクステリアトヨタGT-One 1998年仕様

ワールドグランプリ・日本代表トドロキは、童夢S102やトヨタGT-Oneなどの国産レーシングカーがモデル。ボディカラーは白と赤で日の丸を意識している。市販車ではなくル・マンを戦ったプロトタイプを下敷きにした点が、他国の代表と異なる特徴だ。作中では浅間山の麓で生まれ、鈴鹿サーキットで腕を磨いたという設定になっている。

マッハ・マツオ/日産・S30型フェアレディZ

S30フェアレディZのエクステリアS30フェアレディZ(第19回サファリラリー優勝車)

シュウ・トドロキのクルーチーフとして登場。米国では「Z-Car」「DATSUN Z」として爆発的ヒットを記録した初代フェアレディZ(1969~1978年)がモデルである。直6を積むFRという構成を手の届く価格で提供し、日本車が本格スポーツを作れることを世界に示した。「マツオ」は日産のチーフデザイナー松尾良彦から命名したと思われる。クルーチーフという裏方の役に、車を作った側の名前を当てているのが心憎い。

ナイジェル・ギアスリー/アストンマーティン・DBR9

アストンマーティンDBR9のエクステリアアストンマーティンDBR9(2007年ル・マン24時間耐久レース)

ワールドグランプリ・イギリス代表。モデルは5.9~6.0LのV12エンジンを搭載したアストンマーティンDB9(2004~2016年)をベースとするレースカーDBR9。ル・マン24時間耐久レースやFIA GT選手権などでタイトルを獲得している。市販型のDB9からアルミ製シャシーは残しつつ、外板をカーボンに置き換えて大幅に軽量化された仕様だ。

ジェフ・ゴルベット/シボレー・コルベット C6.R

シボレーコルベットC6.RのエクステリアシボレーコルベットC6.R

ワールドグランプリ・アメリカ代表。キャラ名の通りコルベットをモデルにしており、C6型(2005~2013年)のレーシング仕様C6.Rにあたる。先代C5-Rの基本メカニズムを受け継ぎ、市販型とほぼ同時期に完成した。ル・マンのGT1クラスで長く勝ち続けた実績を持ち、アストンマーティンDBR9とは実際のレースでも直接戦った間柄である。

ゼン・マスター/三輪トラック

ピアジオApeのエクステリアピアジオApe ピザの宅配車両

『カーズ2』で石庭作りの名人として登場。日本のオート三輪といえばダイハツ・ミゼットやマツダK360が有名だが、造形はいまいち似ていない。前一輪で丸みのあるキャビンを持つ姿は、むしろイタリアのピアジオが作る三輪トラックApeに近い。日本の庭園を舞台にしながらイタリア車の造形が混ざっているとすれば、ルイジやグイドを抱える『カーズ』らしい取り合わせといえる。

キングピン・ノブナガ、ピニオン・タナカ、キムラ・カイゾー/トヨタbB

トヨタbBのエクステリアトヨタbB 標準車はそっけなさを感じるほどシンプルなデザイン

『カーズ2』、日本で力士カー&行司カーとして登場する車たちはトヨタの小型トールワゴン初代bBがモデル(2000~2005年)。若者のカスタム欲を刺激しようと開発したが、視界の良さや空間の広さから世代問わない人気車となった。四角く背の高いシルエットは、力士の体格を表現するのにこれ以上ない形である。北米ではサイオンxBとして販売され、暴走族軍団の1台としても同じ車が顔を出している。

トポリーノおじさん/フィアット500初代

フィアット500 Topolinoのエクステリア初代フィアット500(1936年モデル)Topolino(トポリーノ又はトッポリーノ)の愛称あり

メーターと仲違いしたマックィーンに助言してくれた紳士は、ハツカネズミを意味する「トポリーノ」の愛称で知られるフィアット500の初代モデル。1936年に登場した当時、世界最小級の量産車でありながら水冷エンジンをフロントに積む正統的な構成を持っていた。作中ではルイジ(2代目ヌォーヴァ500)の叔父の設定だが、設計上の共通点は薄く、車名を受け継いだ別の車という関係にある。

イギリス女王/ロールス・ロイス・ファントムⅣ

ロールス・ロイス・ファントムⅣのエクステリアエリザベス2世を乗せたロールス・ロイス・ファントムⅣ

『カーズ2』でルーフに王冠を付けた姿が印象的なイギリス女王のモデルはロールス・ロイス・ファントムⅣ(1950~56年)。王室や国家元首だけに納められた特別な車で、総生産台数はわずか18台。エリザベス2世が王室公用車として長く使用した歴史を持ち、直列8気筒という当時としても異例のエンジンを積んでいた。実車の希少性を知ると、王冠を載せた一台にこの車を選んだ意味が伝わってくる。

ザンダップ教授/ツェンダップ・ヤヌス

ツェンダップ・ヤヌスのエクステリアツェンダップ・ヤヌス 最高時速80km/h

ヤヌス神の彫刻ローマ神話に登場するヤヌス(ヤーヌス)神

『カーズ2』の悪役ザンダップ教授は1957~1958年にドイツで製造されたマイクロカー「ツェンダップ・ヤヌス」がモデル。前面と背面にドアがあり、運転手と同乗者は逆向きに座る。エンジンは車体中央の座席下に置かれる構成だ。前後どちらが顔か分からない造形は、二つの顔を持つローマ神話の神ヤヌスに由来しており、正体を隠す悪役に当てるモデルとしてはこれ以上ない選択といえる。

『カーズ/クロスロード』登場キャラクターのモデル車種

2017年に公開されたシリーズ3作目にあたる『カーズ/クロスロード(原題:Cars 3)』。ライトニング・マックィーンがベテランレーサーとなり、「引退」を意識せざるを得ない状況に追い込まれます。
クルーズ・ラミレスやジャクソン・ストームなどの新キャラクターが登場しますが、明確なモデル車はあまりなく、複数の車を組み合わせてデザインされています。

クルーズ・ラミレス/日産370Zなど

370Z Yellowのエクステリアイギリス市場向けに発売された「370Z Yellow」

フェラーリF12ベルリネッタのエクステリアフェラーリF12ベルリネッタ(2012~2017年)

後ろから見たベルリネッタF12ベルリネッタのリアビュー

『カーズ/クロスロード』でマックィーンのトレーナーに就任したクルーズ・ラミレス。マックィーン同様に特定のモデル車は存在しないが、Z34型フェアレディZやフェラーリF12ベルリネッタなどが類似性のあるクルマとして挙げられることが多い。丸みを帯びたキャビンと絞り込まれたリアという構成は両車に共通しており、旧世代のマックィーンと新世代のストームの中間に位置するという役どころが、造形にも反映されている。

ジャクソン・ストーム/ BMW i8など

BMW・i8のエクステリアBMW・i8(2013年~)プラグインハイブリッドスポーツカー

ランボルギーニ・ヴェネーノのエクステリアランボルギーニ・ヴェネーノ クーペの生産台数は3台

Onyxのエクステリア2012年発表プジョーのコンセプトカー「Onyx」

『カーズ/クロスロード』で新世代を代表する新人レーサーのジャクソン・ストーム。特定のモデル車は存在しないが、近未来的なデザインはBMW i8やランボルギーニ・ヴェネーノ、プジョー・オニキス・コンセプトなどを連想させる。いずれもカーボンを外板から構造材まで使い、面を鋭く切り立たせた造形を持つ車だ。丸みを基調とするマックィーンと並べたときの質感の違いが、そのまま世代交代というテーマを表している。

スモーキー/ハドソン・ピックアップトラック

ハドソン・ピックアップトラックのエクステリアハドソン・ピックアップトラック1947年モデル

ドック(ハドソン・ホーネット)の古い友人スモーキーのモデルは、1947年式のハドソン・ピックアップトラック。NASCAR黎明期にメカニックやクルーチーフとして活躍したスモーキー・ユニックから命名されている。ドックと同じハドソン製の車を当てているところに、二人の関係性が形で示されている。

スモーキー・ユニックは、『カーズ』ドックのモデル車ファビュラス・ハドソン・ホーネットの黄金期に整備を担当していた伝説のメカニックである。規則の隙間を突く発想で数々の逸話を残し、1990年に国際モータースポーツの殿堂入りを果たした。実際にデイトナビーチで修理工場を営んでおり、『カーズ/クロスロード』では当時の看板などが再現されている。

『マックィーン』の名前に込められた特別な思いとは?

印象的な名前の響きを持つ「ライトニング・マックィーン」。レースシーンなどでは「ライトニング」ではなく、「マックィーン」と呼ばれることが多い彼ですが、「マックィーン」の名前は、ピクサーのアニメーターで、若くしてこの世を去った「グレン・マックィーン」からとられています。

「マックィーン」はアニメーター「グレン・マックィーン」が由来

グレン・マックィーンは『トイ・ストーリー』(1995年)や『モンスターズ・インク』(2001年)などの作品でも活躍した才能あるアニメーターで、スーパーバイジング・アニメーターとしてキャラクターの動きを統括する立場にありました。

しかし、病が彼を襲い『カーズ』の公開を見ることはなく、2002年にこの世を去りました。
病床に伏していたグレンに、制作陣が「マックィーン」の名前を使わせてほしいと依頼し、その約束を果たす形で生まれたのが「ライトニング・マックィーン」なのです。翌2003年公開の『ファインディング・ニモ』は、彼に捧げられています。

現実においても車に大切な人の名前を付けた例は存在

車の世界では、人物名やそのイニシャルを車名の由来とすることが時折あります。大切な故人の名前を車名として採用したケースもあります。
有名なのがフェラーリ「ディーノ206/246」でしょう。

ディーノは、フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリの息子アルフレードの愛称。跡継ぎとして期待されながらも24歳の若さでこの世を去ったディーノ追悼の意を込めて命名されました。

ディーノ(アルフレード)は優れたエンジニアで、先見の明がありました。V12エンジンが主流だった当時のフェラーリにおいて、小型車の必要性を訴え、V6エンジンの開発に取り組んでいたのです。
「ディーノ206/246」は、65度V型6気筒DOHCエンジンを搭載するミッドシップ車で、跳ね馬のバッジを付けずに「ディーノ」という別ブランドで販売されました。現在のV8やV6を積む小型フェラーリの始祖とも呼ばれています。

『カーズ』はモデル車の特徴を生かしたキャラクター設定がすごい!

カーズの車

『カーズ』には、実際の車種をモデルにしたキャラクターが多数登場しますが、キャラクターの性格や境遇と車種の特徴が上手く融合されているのが面白いところです。

例えば、オーガニック燃料店を経営するフィルモアは、フォルクスワーゲン・タイプ2(通称ワーゲンバス)をモデルとしています。タイプ2は、ヒッピームーブメント全盛期には若者がボディをキャンバスにして楽しんだ車です。フィルモアにも花や虹などのピースフルなペイントが施されています。

ドックこと「ハドソン・ホーネット」は、そのまま実際の車の名前です。1951~1954年のNASCARで無類の強さを誇ったものの、その後は不遇の時代を経験した車ですので、まさにドックそのものです。
車を単純に擬人化しただけでなく、こうしたカーマニアが唸るポイントを押さえている点も『カーズ』の大きな魅力の1つです。