車が脱輪・スタックした時の自力脱出法とロードサービスの利用手順
運転中に、ちょっとした気の緩みや判断ミス、あるいは悪路によって、タイヤが道路脇の溝や、ぬかるんだ泥道、雪道などにはまってしまい、身動きが取れなくなることがあります。このような状態を一般的に「脱輪」や「スタック」と呼びます。
タイヤのはまり方や車の駆動方式(FF、FR、4WDなど)によっては自力で脱出可能なこともありますが、「自力脱出」が難しいケースも少なくありません。この記事では、脱輪してしまった時の具体的な対処法と、プロの業者に助けを求める際のロードサービス」の利用手順を紹介します。
脱輪とはタイヤが溝などにハマり身動きができない状態、またはタイヤが外れること

「脱輪」とは、タイヤが走行中の道路から外れて、溝や縁石、またはぬかるみにはまってしまい、自走不能な状態になっていることを指します。特に路面よりも低い位置に車輪がはまってしまった場合は、「落輪」という言葉も使います。もう一つの「脱輪」の意味は、ホイールナットの締め付け不足などの理由により、走行中の車からタイヤが完全に外れてしまう、非常に危険な状態です。
この記事では、主に車輪が溝などにはまって動けなくなる、「スタック」(stuck)に近い状態の脱輪について対処法を解説します。
車が脱輪・スタックした時の対処法
車が脱輪して自力で脱出できない場合はロードサービスなどの業者に連絡しましょう
1.駆動できるタイヤの力を利用して自力脱出を試みます
片方のタイヤだけが脱輪した場合、駆動方式によっては自力脱出が可能です。例えば、後ろのタイヤの片方が脱輪した場合は、FF(前輪駆動)車の前輪の駆動力を利用できます。前のタイヤの片方が脱輪した場合は、FR(後輪駆動)車の後輪の駆動力を利用できます。また、4WD(四輪駆動)タイプの車であれば、どの車輪が脱輪した場合でも、残りの駆動するタイヤの力を利用することで脱出できる可能性が高いです。
方法は、ハンドルを脱出したい方向に切りながら、アクセルをゆっくり踏み込み、タイヤの動力を少しずつ上げていきます。その力が溝にはまり続けようとする抵抗力を超えると脱出できます。ただし、溝が深かった場合や、雪道・泥道などのタイヤの動力が路面にうまく伝わりにくい状況下であれば、無理をせずに他の方法を選択しなければなりません。無理なアクセル操作は状況を悪化させるだけです。
2.同乗者が数人いれば車体を持ち上げて脱出を試みます
ドライバー以外にも同乗者が数人いて、なお且つ安全に持ち上げられる程度の脱輪状況であれば、力を合わせて車体を持ち上げる対処法が有効です。脱輪している部分を持ち上げる前に、準備運動をすることで怪我のリスクを減らします。持ち上げるときは、「せーの」といった掛け声をかけてタイミングを合わせることで、力が効率よく伝わり、車体を持ち上げやすくなります。
しかし、車体は非常に重いため、少しでも危険を感じた場合や、力のバランスが取れない場合は、無理に持ち上げようとせず、他の安全な方法を選びましょう。また、持ち上げている際に、車が予期せず動き出す可能性があるため、安全を確保できる平坦な場所で行うことが前提です。
3.ジャッキを利用して車体を持ち上げます
油圧ジャッキがあれば脱輪した車を救出することができます
同乗者が少ない、あるいはドライバーだけの時に役立つ対処法は、車載されているジャッキ(パンタグラフジャッキなど)を利用して、脱輪している側の車体を持ち上げる方法です。「ジャッキ」は一人でも可能な有効な手段です。ジャッキを使って、脱輪している箇所が路面から持ち上がったら、タイヤがはまってしまったスペースに丈夫な板や、毛布、マットなどを敷き詰めることで、タイヤの動力がうまく路面に伝わり、脱出しやすくなります。
エンジンをかけて車を動かす時に、アクセルを強く踏み込んでしまうと、下に敷いた板やマットが滑って位置がずれてしまい、タイヤの動力をうまく伝えられなくなってしまいます。さらに、タイヤが空転して状況を悪化させる恐れがあります。焦る気持ちを抑えて、アクセルはゆっくり、じわじわと踏み込むのが脱出のコツです。「スタック脱出」の基本は、焦らず、弱い力でじわじわと路面との摩擦を回復させることです。
4.他の車に牽引ロープで引っ張ってもらいます
牽引ロープを取り付けるためのフックを車のボディに取り付けます
タイヤがシャーベット状の雪道や、深い泥道にはまってしまった際に即効性のある対処法は、牽引ロープを使って、他の車に引っ張ってもらう方法です。「牽引」は、最も確実な脱出法の一つです。
車種によっては、バンパーの下に牽引フックが設置されているタイプ、あるいはネジを回して牽引フックをボディに取り付けるタイプもあります。牽引フックにロープを連結したら、引っ張ってくれる車にエンジンをかけてもらい、ゆっくりと引っ張ってもらいましょう。引っ張ってくれる車が、馬力のあるSUVやトラックなどであれば、脱出の成功率は高まります。ただし、牽引フックやロープの破損、急な牽引による事故には十分注意が必要です。
5.車の任意保険会社のロードサービスを利用します

脱輪状況がひどく、自力や牽引ロープで引っ張っても脱出できないことはしばしばあります。そんな時は、車のトラブルを解決してくれるプロの業者に頼りましょう。「保険・ロードサービス」は、多くの場合、無料で利用できる非常に心強いサービスです。
最近の任意保険を扱う会社の多くは、顧客満足度を高めるために、ロードサービスの内容を充実させています。例えば、多くの保険会社では、「タイヤ一本分の脱輪で、レッカー車1台で対応可能なケース」であれば、無料で対応してくれます。また、雪道や砂浜にタイヤがうまってしまって動けない「スタック」のケースも無料対応の範囲に含まれることが多いです。ご自身が加入する任意保険の約款を事前に確認し、脱輪時の対応範囲を知っておくことが重要です。
車が動かなくなって困ったときには、まずは加入する任意保険会社に問い合わせて、トラブル解決のプロ(ロードサービス)にお願いしましょう。
6.車のトラブルを解決するプロ「JAF」に頼みます
保険会社のロードサービスを利用できない地域や、保険の契約内容によっては脱輪の無料サービス対象外となるケースもあります。そんな時に心強いのが、JAF(日本自動車連盟)の存在です。JAFに会員登録をしていれば、簡易な作業という限定条件がありますが、脱輪時の救出作業を無料で対応してもらえます。
非会員の場合には、溝にはまっているタイヤの本数が1本であるか、2本であるか、作業を行う時間帯(夜間料金)、救出作業の難易度、作業を行う場所(高速道路など)によって、異なる料金が請求されます。しかし、JAFはどんな時でも現場まで迅速に駆けつけてくれて、自分達だけでは解決できない脱輪などのトラブルを高い技術力で解決してくれるため、ドライブ中に何か困った事があれば、積極的に頼ることをお勧めします。
脱出後の注意点~車体や足回りに損傷がないか入念に点検します

同乗者の協力を得たり、ジャッキやJAFを利用したりするなどして、無事に脱出できたら、すぐに走行を続けるのではなく、車体やタイヤ、足回りに傷はないか、動きに異常はないか、修理の必要はないか等を入念に確認する必要があります。脱輪した際の衝撃で、ホイールの変形、タイヤのサイドウォールの損傷、サスペンション(足回り)やアライメント(タイヤの取付角度)のずれなどが生じている可能性があるためです。
もしも、脱輪した際の衝撃で車体に大きな損傷を負ったり、道路や溝の一部(縁石やガードレールなど)を破損してしまっている場合には、速やかに警察に連絡を入れましょう。警察への連絡を怠ると、後々の保険手続きや、器物損壊に関する対応で困ることになります。異音や振動がある場合は、無理に運転を続けずに、整備工場やプロのロードサービスに点検を依頼することが安全です。
車が脱輪・スタックしてしまったら、焦らず最善の対処法を見つけましょう!

さっきまで気持ちよくスイスイと運転できていたのに、脱輪やスタックで車が突然動かなくなってしまう。脱輪は、頻繁に経験する機会がないため、いざ自分の身に起こってしまうと、気持ちが動揺してしまいがちです。特に交通量の多い場所での脱輪は、精神的な負担が大きくなります。
焦った気持ちのまま、何とか脱出を試みようと、アクセルを強く踏み込んだり、無理なハンドル操作をしたりすると、かえって溝の深みにはまってしまったり、タイヤが空転して状況をより悪化させたりすることもあります。ピンチの時こそ、まずはハザードランプを点灯させて安全を確保し、冷静になりましょう!
冷静になることで、今回紹介した「自力脱出」のテクニックの中から、自分の状況に合った最善の対処法を見つけられます。自力脱出が難しいと判断した場合は、ためらわずに保険のロードサービスやJAFといったプロに助けを求めましょう。安全が最優先です。





























