車のバッテリー上がりの対処・予防法

車のバッテリー上がりの原因と交換や充電による対処法

車のメジャーなトラブルであるバッテリー上がりの原因、救援車を呼んでブースターケーブルをつないで充電する方法や交換やをする対処法、エンジンを頻繁にかける、ライトをつけっぱなしにしないなどの予防法、バッテリーが上がりやすい季節も紹介。

車のバッテリー上がりの原因と交換や充電による対処法

車のバッテリーが上がる原因は何?対処法を知っておこう

バッテリー上がりは、自動車のトラブルの中でも非常に代表的なものです。車を所有しているドライバーであれば、一度は経験するかもしれないバッテリー上がりですが、車のトラブル対応を専門とするJAFでは、年間で数十万件ものロードサービス事例に対応しています。バッテリー上がりは、走行中に突然発生するものではなく、日常のメンテナンスや使用状況が大きく影響します。

いつか自分の車にも起こってしまうかもしれないバッテリー上がりの原因と、万が一発生してしまった際の緊急対処法、そしてトラブルを未然に防ぐための予防法を詳しく紹介します。

「車のバッテリーが上がる」とはエンジン始動に必要な起電力が不足している状態を指す

バッテリーが上がり途方に暮れる女性

「車のバッテリーが上がる」という現象は、具体的には車のエンジンを始動させることができなくなる状態を指します。エンジンをかける際には、まずセルモーターを回すために大きな電力、すなわち起電力が必要です。この電力を供給し、また走行中に発電した電気を蓄えるのがバッテリーの役割です。バッテリーが「上がる」ということは、この起電力を生み出すための蓄電量が不足している状況を意味します。

車のエンジンがかからなくなるもう一つの主な原因はガス欠ですが、どちらが原因であるかは燃料計を確認するとすぐに判断がつきます。もし燃料が十分に残っているにもかかわらず、エンジンが始動しない場合は、バッテリー上がりを強く疑うべきです。バッテリーに蓄えられた電気量よりも、カーナビやオーディオ、エアコンなどの電装品を使った際の電気量の合計が上回ってしまうと、バッテリーの放電が進み、上がりやすくなります。

バッテリーに蓄えられている電気は、車内のオーディオ設備やエアコンシステムの作動電力となるだけでなく、エンジンを動かすための初期動作(セルモーターの作動)にも不可欠な電気です。そのため、バッテリーが上がってしまうと、キーを回しても「カチカチ」という小さな音がするだけで、エンジンを始動させることができなくなります。

自動車のバッテリー上がりの原因になる主な5つの理由

彼氏とバッテリーの上がった車を置いてヒッチハイクする女性

1.過放電(電気の使いすぎ)

  • 短時間で何度もセルモーター(エンジンを動かすのに必要なモーター)を使用する。
  • エアコンやオーディオシステムなど、消費電力の大きな電装品を長時間利用する。
  • ヘッドライトや室内灯などの消し忘れ。(エンジン停止時)

2.充電不足(電気の補給不足)

  • 車のエンジンを頻繁にかけない、または長期間放置する。
  • 1回の運転で走行する距離が非常に短く、充電が間に合わない。
  • 渋滞にはまっている時間が長く、エンジン回転数が上がらない状況が続く。

3.容量不足(バッテリー規格の間違い)

  • 本来使用するべき容量よりも、電気容量が少ないバッテリーを使用している。

4.バッテリーの劣化(内部性能の低下)

  • バッテリー内部でサルフェーションなどの化学変化が起こりにくくなり、充電能力や蓄電能力が低下する。

5.バッテリーの寿命(交換時期の超過)

  • 使用しているバッテリーの種類や環境にもよりますが、一般的な耐用年数は3年~5年程度である。
    ※ドライバーの運転状況や、寒冷地などの環境にも交換時期は左右されます。

バッテリーが上がってしまう主な原因の一つは、充電不足です。車は、エンジンをかけて回転数を上げることにより、オルタネーター(発電機)が作動し、バッテリー内部の化学反応を促進して充電を活発化させます。この充電プロセスが不十分だと、バッテリーの電気は徐々に減少し続けます。

運転をするのが休日だけ、あるいは冬は雪道運転が苦手なので運転を控えるなど、車を放置する時間の長い方は、バッテリー上がりを起こしやすい傾向にあります。これは、車が待機している間も、時計やカーナビのメモリー機能などに微量の電気が消費され続けるためです。

また、バッテリーに蓄えられている電気を使いすぎてしまうことも主要な原因です。特に、エンジンを停止している状態(アクセサリー電源がオフ)であれば充電が行われず、電気の消費だけが進んでしまいます。例えば、ヘッドライトをつけっぱなしにしていると、短時間でバッテリーが上がってしまいます。最近の車には自動消灯機能が付いていますが、過信は禁物です。

下記の表は、JAFのロードサービスが調べた車の電力消費量のTOP5です。これらの電装品はエンジンが停止している状態ではバッテリーの電気を使い続けるため、車から離れる際には、エアコンやヘッドライトなどを付けっぱなしにしないように細心の注意を払う必要があります。特に冬場はヒーターやシートヒーターの使用により消費電力が増加します。

車のバッテリー上がりの原因となりやすい電力消費量の多い装備TOP5

1位 エアコン(特に冬場のヒーター利用時)
2位:ブレーキランプ
3位:リアデフォッガー(リアウインドウの曇りを取る装置)
4位:ヘッドライト(ロービーム・ハイビーム)
5位:ワイパー

自動車のバッテリー上がりを予防するために知っておきたいこと

常に自動車のエアコンを付けている

車のバッテリーが上がってしまうと、駐車場所や時間帯、選択する対処法によっては、JAFや他者の助けが必要になり、時間と費用がかかります。出来れば避けたいバッテリー上がりの予防法は、以下の通りです。これらの対策を日常的に実行することで、バッテリーの健康状態を長く保つことができます。

バッテリー上がりの効果的な予防法

  • 車から離れる時はライトや室内灯を付けっぱなしにしていないか二重に確認する
  • エアコンやオーディオシステムなどの電装品を、エンジン停止中に多用し過ぎない
  • 数年経過した古いバッテリーは、耐用年数(3~5年)を目安に早めに交換する
  • 休日以外も意識的に運転し、バッテリーへの充電時間を確保する
  • 数ヶ月以上の長期放置が避けられない場合は、バッテリーのマイナス端子を外して自然放電を防ぐ

特に重要なのは、バッテリーの定期的な点検と交換です。「バッテリーの交換時期」は多くのドライバーが気にするポイントです。バッテリーの液量が適切か、端子に白い粉(サルフェーション)が付着していないかなどを日常的に確認し、購入から3年以上経過している場合は、電圧テスターなどで状態を確認することをおすすめします。早めの交換は、突然のトラブルを避ける最も確実な予防策となります。

自動車のバッテリーが上がっても冷静に!万が一の対処法

バッテリーを充電する女性

お買い物やレジャー帰りで、いざ出発しようとした際にバッテリーが上がりエンジンがかからなくなると、誰でも慌ててしまいます。しかし、まずは深呼吸をして冷静に対応しましょう。バッテリーが上がった時に取るべき主要な対処法をまとめました。主な方法は「ロードサービスを呼ぶ」「ブースターケーブルでジャンピングスタートする」「ジャンプスターターを使う」の3つです。

バッテリーが上がったら迅速な対応が期待できるJAFを呼ぶ

バッテリー上がりをはじめとする車のトラブルに、最も迅速かつ専門的に対応してくれるのがJAF(日本自動車連盟)です。「バッテリー上がり」は最もポピュラーな救援依頼の一つです。JAFを呼んだ時にかかる費用を、会員である場合と、非会員である場合に分けて紹介します。

JAFの会員であるケースの費用

JAFの会員は、入会金2,000円(クレジットカードによるオンライン入会であれば1,500円)と年会費4,000円を納めることで、車両番号を届け出るなどの面倒な手続きを経ることなく、ドライバー個人として加入できます。これにより、レンタカーや知人の車を運転している時でもサービスを受けられます。

JAFの会員であれば、バッテリー上がりをはじめとするほとんどのロードサービスを無料で受けられます。ただし、バッテリー交換が必要となった際のバッテリー本体の代金は、実費負担となりますので注意が必要です。

JAFの非会員の場合にかかる費用

JAFに救援を依頼するタイミングが、8時~20時までの昼間の時間帯であれば、基本料金が8,230円に作業量4,650円を加えた合計12,880円(税込)が請求されます。夜間として区分される時間帯(20時~8時)に依頼をすると、基本料金10,290円に作業量4,650円を加えた合計14,940円(税込)が請求されます。また、会員と同様に、バッテリー交換時のバッテリー代金は実費となります。さらに、バッテリー上がりの場所が高速道路上であれば、安全確保のための別途料金が加算されます。

任意保険会社のロードサービスでもバッテリー上がりは対応可能

車の任意保険を扱っている多くの保険会社は、顧客満足度を高めるために無料のロードサービスを展開しています。対応状況は各社異なりますが、多くの場合、バッテリー上がりに対応しています。契約されている保険会社の窓口に問い合わせれば、年に数回など回数に制限はありますが、無料で現場まで駆けつけて対応してくれるケースが一般的です。まずは保険証券などで付帯サービスを確認してみましょう。

ブースターケーブルでバッテリーを充電(ジャンピングスタート)

バッテリーケーブル赤はバッテリーのプラス端子、黒はマイナス端子へ接続します

バッテリーが上がった時の対処法として、昔から最もポピュラーな方法がブースターケーブルを使った「ジャンピングスタート」です。自分の車のバッテリーと、正常な他の車(救援車)のバッテリーをブースターケーブルで接続し、救援車のエンジンをかけて電力を供給することで、バッテリー上がりの車を始動させます。

ただし、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)を救援車として使う際には注意が必要です。車種によっては救援車のバッテリーに過大な負荷がかかる危険性があるため、必ず取扱説明書を確認しましょう。

ブースターケーブルを利用する対処法の手順

正しい手順を守らないと、ショートや爆発、車両コンピューターの故障につながる危険性があるため、以下の順番を厳守して作業を行いましょう。

1.救援車を呼んで、安全な位置に駐車してもらう

バッテリーがあがった車と救援車

家族や友人、職場の同僚など、現場まで車で来られる範囲に居住している方に救援を依頼しましょう。救援を依頼した人が現場まで駆けつけてくれたら、お互いの車のバッテリーをブースターケーブルでつなぐことができる、近すぎず離れすぎない安全な位置に駐車してもらいます。必ず両車ともエンジンを停止し、サイドブレーキをかけましょう。

2.バッテリーをブースターケーブルでつなぐ

バッテリーをブースターケーブルでつなぐ

ブースターケーブルのクリップ部分に異常がないか、ケーブル部分に断線が起こっていないかを確認します。次に、バッテリー上がりの車と救援車のボンネットを開け、お互いのバッテリーが同じ電圧(一般的には12V)であるかを確認します。

プラスのあとにマイナス端子につなぐ

バッテリーの端子にブースターケーブルをつなぐ順番は、火花による引火やショートを防ぐため、非常に重要です。以下の順番をしっかりと守って接続しましょう!

1.赤いケーブルを、バッテリーが上がっている車の+端子に接続する
2.もう片方の赤いクリップを救援車の+端子に接続する
3.黒いケーブルを、救援車の-端子に接続する
4.もう片方の黒いクリップをバッテリー上がりの車のエンジンブロックなど、塗装されていない金属部分に接続する(バッテリー本体のマイナス端子には接続しない)

3.救援車にエンジンをかけてもらう

エンジンをかける

救援車のギアがAT車ならP(パーキング)、MT車だったらN(ニュートラル)の状態にあることを確認し、サイドブレーキがかかっているか確認してから、エンジンを始動します。救援車はアクセルを踏み込んでエンジンの回転数を上げると、充電能力が高まります。そのまま数分間待機し、ある程度時間が経過したら、バッテリーが上がっている車のエンジンをかけてみます。

4.車のエンジンがかかったらブースターケーブルを外す

ブースターケーブルを外す

バッテリーが上がっていた車のエンジンが無事にかかったら、今度は接続した時とは逆の手順でブースターケーブルを外します。ケーブルを外す順番もショート防止のために重要です。

1.バッテリーが上がっていた車のエンジンブロックにつなげていた黒いケーブルのクリップを外す
2.救援車の-端子に接続していた黒いケーブルのクリップを外す
3.救援車の+端子に接続していた赤いケーブルのクリップを外す
4.バッテリーが上がっていた車の+端子に接続していた赤いケーブルのクリップを外す

5.アイドリングやドライブで車のバッテリーに充電する

エンジンがかかったとしても、バッテリーはまだ満充電の状態ではありませんので、油断は禁物です。しばらくアイドリングを続けたり、その後、30分以上のドライブをして、バッテリーへの充電を忘れずに行いましょう。できれば、すぐにガソリンスタンドやカー用品店でバッテリーの状態を点検してもらうことをお勧めします。

完全にバッテリー上がりを起こしている場合は新品バッテリーと交換

バッテリー

バッテリーが完全に上がっている状態、あるいはバッテリー本体が劣化して寿命を迎えている場合は、ブースターケーブルを利用しても、その他の方法で充電を行っても効果は一時的か、全く期待できません。このような場合は、バッテリー本体を新しいものと交換することが必要となります。交換するバッテリーは、必ず車に適合している電圧、容量、規格(JIS形式)を選ばなければなりません。異なる規格のバッテリーを使用すると、車両の故障や性能低下の原因となります。「バッテリー規格の見方」も事前に確認しましょう。

バッテリーの規格(JIS形式)の見方

例えば、「60 E 25 L」という規格のバッテリーを例として、それぞれの数字やアルファベットが持つ意味を理解しておきましょう。

  • 60:性能ランク(数字が大きいほどエンジン始動性能などバッテリーの総合的な性能が良いことを示します)
  • E:短側面のサイズ(A→Hの順にサイズが大きくなります)
  • 25:長側面のサイズ(この場合は約25cmです)
  • L:端子の位置(Lタイプ:プラス端子が左側、Rタイプ:プラス端子が右側)
バッテリー交換の一連の流れ

バッテリー交換はDIYも可能ですが、感電やショートの危険があるため、自信のない場合は専門店に依頼しましょう。作業を行う際は、必ずエンジンを停止し、安全を確保した上で行ってください。

  1. スパナかソケットレンチを使って、必ず-端子から先に、次に+端子の順に取り外す
  2. バッテリーを固定しているステイ取付金具とステイを外す
  3. 中の液体がこぼれないように、両手でしっかり古いバッテリーを持って取り外す
  4. 新しいバッテリーを正しい向きでセッティングする
  5. 新しいバッテリーをステイと取付金具でしっかりと固定する
  6. 今度は、+端子を先に、次に-端子の手順で取り付ける

ジャンプスターターを自動車に載せておくとバッテリー切れも安心

車のバッテリー上がりへの対処法の一つとして、近年利用者が増えつつあるのが、ジャンプスターターと呼ばれるポータブルタイプの充電器を利用した方法です。ジャンプスターターは、モバイルバッテリーのように本体を事前に充電しておくことで、バッテリーが上がった際に自力でエンジンを始動させられる便利なツールです。

充電方法は、ブースターケーブルを利用する手順と非常に近く、他の救援車がいなくてもジャンピングスタートを行えるのが最大の特徴です。付属されている専用ケーブルで、バッテリーのプラス端子とマイナス端子にジャンプスターターを接続することで、電力を供給します。

ジャンプスターターを万が一の事態に備えて車に積んでおけば、バッテリーが上がってもJAFに依頼したり、他の人に迷惑をかけてしまう事態を大いに避けることができます。ほとんどの商品がコンパクトサイズで収納場所に困りませんし、最近ではスマートフォンの充電も可能な多機能モデルが多いため、多くのドライバーに選ばれています。車に積んでおけば何かと便利に活用できるでしょう。

冬はエアコンなどの電力消費が多くバッテリー上がりになることが多い

バッテリー補充液

バッテリーが上がりやすい主な季節は、気温が低い冬です。バッテリーは、内部の電極板と電解液との化学反応によって電気を発生させ、放電・充電を繰り返す仕組みです。

気温が低下するにともなって、バッテリー内部で電解液が反応する力が弱まり、充電効率や放電能力が十分に発揮されません。そのため、冬は他の季節に比べてバッテリー上がりを起こしやすくなってしまいます。これは「低温時の性能低下」として知られています。

その他の理由としては、外気温が下がるとエンジンオイルなどの粘り気が増すため、エンジンを作動させるには、より大きな初期電気量(セルモーターを回すための電力)が必要となることも、冬にバッテリーが上がりやすくなってしまう原因です。さらに、冬場はデフロスター、シートヒーター、ヘッドライト、そしてエアコンのヒーター(特に電気を多く使うため)など、電力消費の大きい装備を多用することも、バッテリーへの負担を増大させます。

車のバッテリー上がりは日頃の注意と運転を楽しむことで予防

バッテリー

バッテリーが上がってしまうと、車が動かなくなるため、仕事に遅れてしまったり、楽しみにしていた休日の予定が狂ってしまうなど、生活に大きな支障をきたします。また、自分以外の方にも救援を依頼するなど、迷惑をかけてしまう場合もあります。

バッテリー上がりを予防するには、ライトなど電気系統の消し忘れがないように注意すること、そして日頃から適度な距離を運転してバッテリーへの充電をしっかりと行うことが大切です。「バッテリー上がり予防」のための習慣を身につけ、日々の運転を快適に楽しみましょう。定期的な点検と早めの交換が、安心安全なカーライフの鍵です。