タイヤのひび割れの発生・進行を遅らせてロングライフを実現する方法
タイヤは消耗品で、路面に動力を伝える際に発生する摩擦力や熱によって表面がすり減ったり、オゾンや紫外線等の環境物質の影響によっても経年劣化していきます。
新品タイヤへの交換の目安は約4年と言われていますが、車の年間走行距離や走り方、保管状況、ロングライフ性能・耐摩耗性などの商品力の違いによって、タイヤの寿命は早まったり長くなったりします。
タイヤの適切な交換時期を知るためのチェックポイント
- タイヤのひび割れレベル
- タイヤの摩耗レベル(スリップサインでチェック)
- タイヤの外傷・変形
タイヤの適切な交換時期は、摩耗の状態を確認できるスリップサインや、路肩と接触した際にできやすいタイヤの外傷や変形がないかどうかでチェックします。
タイヤの状態不良の中でも最も多いひび割れが、どのくらいのレベルまで進行していればタイヤ交換を行うべきであるのかと、ひび割れの発生・進行を遅らせてロングライフを実現するために役立つ対処法も紹介します。
タイヤのひび割れでスチールワイヤーが見えていればバーストのリスクが高いためタイヤ交換が必要
出典:一般社団法人 日本自動車タイヤ協会
一般社団法人「日本自動車タイヤ協会」は、タイヤのひび割れ(クラック)の状態を5段階レベルで区分けしています。上記の図は、タイヤのひび割れの発生レベルを確認するのに解りやすいので参考とします。
タイヤにひび割れが発生しているけれども、さほど目立たない軽度な状態であるレベル1とレベル2であれば、動作性能や安全性能に与える影響は少ないために、そのまま継続して使用する事ができます。
ひび割れが起きているエリアが広がって、割れが深くなり始めているレベル3とレベル4の状態であっても継続して使用はできますが、今まで以上にひび割れの状態は進行していないか等の経過観察を注意深く行う必要性が生じます。
タイヤの内部構造を形成しているパーツが見え始めるレベル5の状態に達していれば、ひび割れしている箇所から内側へと雨水などが浸入して、スチールワイヤー等のパーツが錆びついてしまいます。錆びによって、ワイヤー類と空気圧を高める役割をしているチューブなどパーツとの剥離が進んでしまうと、バーストが起こるリスクが高まるため、早いタイミングでのタイヤの買い換えが必要となります。
タイヤのひび割れがレベル5に達していればスリップサインは出ていなくとも早いタイミングでタイヤ交換をする必要がある
大きな亀裂のクラックが発生する前にタイヤを交換した方がいい
新品タイヤと交換する際の目印とするスリップサインは、タイヤの摩耗レベルを確認するために設置されています。新品時であれば7mm~9mmほどあるタイヤ溝がどんどんと削られていけば、スリップサインが目立ち始めます。
スリップサインの高さは、「タイヤ接地部の溝の深さは、主溝のいずれの部分においても1.6mm以上でなければならない」という、道路運送車両に関する保安基準の定めを確認するために、1.6mmに設定されています。
度重なる摩耗によって溝の深さが一部でも1.6mm未満となっているタイヤは、雨などで濡れた路面を走行する際には滑りやすく、ハイドロプレーニング現象が起こりやすいため、新しいタイヤに交換しなければなりません。
タイヤのひび割れは、「溝の深さがスリップサイン以下となっていれば交換すべき」というような明確な定めはありませんが、様々な素材を接合して出来ているタイヤのひび割れが内部にまで達していれば、内部構造物にもダメージが加わるために、タイヤの変形・強度不足を招いてしまいます。
タイヤのひび割れをレベル5の状態に達したまま放置していると、最悪のケースでは走行中にバーストが発生しまう恐れがありますので、スリップサインは目立ってはいなくとも、ひび割れがレベル5の状態であれば早いタイミングでタイヤ交換を行う必要があります。
タイヤのひび割れが進んでワイヤー等の内部パーツが見えている状態であれば車検は通らない
車検にはタイヤのひび割れについて明確な規定はありませんが、タイヤの骨格を形成しているカーカスやワイヤーが露出するほどの状態であって、走行を続けるには危険が伴うと検査員に判断されると、車検は通りません。
タイヤの内部構造であるワイヤー等が露出されるまでにひび割れが進行していれば、バーストのリスクは高まります。高速道路を走行中にバーストが発生してしまえば、周囲の車をも巻き込む大事故に繋がりかねませんので、検査員は不測の事態を想定して車検を通しません。
タイヤのひび割れはオゾンによる酸化作用や紫外線等のダメージによる経年劣化によって必ず起こる
どんなタイヤも経年変化による劣化を防ぐことはできない
タイヤのひび割れは、空気中に含まれるオゾンによる酸化作用によって生じるゴム疲労、紫外線等のダメージによる経年劣化によって必ず起こります。
各タイヤメーカーはロングライフを実現させるために、タイヤ内部に劣化防止剤を混ぜ込みます。劣化防止剤は、走行などの刺激が与えられると表面へとあふれ出ていき、ゴムの劣化を防ぐために、紫外線等に対しての防御力を強化します。
タイヤ寿命を延ばす効果が備わる劣化防止剤は年数が経過すれば、劣化防止剤の残留量が少なくなっていきます。劣化防止剤の残量が少なくなれば、紫外線等に対するバリア機能が弱まっていき、ダメージが蓄積していきます。
タイヤには加速・旋回する際に、様々な方向に圧力が加わります。タイヤが柔らかくて伸縮性がある状態であれば復元力が強く、加えられた圧力に対して対応できますが、硬化が進んで伸縮性が弱まってしまえば、加わった圧力に対してうまく対応できずに、歪みが生じてひび割れが起きてしまいます。
タイヤのひび割れの発生時期や進行を早めてしまう4つの要因
タイヤのひび割れは、酸化作用などのダメージの蓄積によって必ず起こります。しかしタイヤのひび割れのタイミングは一様ではなくて、空気圧不足のままで走行を続けるなどの要因によっても早まってしまいます。
このセクションでは、タイヤのひび割れの発生時期や進行スピードを早めてしまう4つの要因を紹介します。
1.ひび割れの原因になる「高温多湿」の場所でタイヤを保管管理
高温多湿の場所はひび割れの原因になるため、タイヤの寿命を少しでも伸ばすためには高温にならずに湿度が適度な場所に保管することが賢明です。 これは、高温多湿の場所ではタイヤの劣化防止剤が内側から抜けやすくなることが関係していて、その状態で冬タイヤから夏タイヤ、または夏タイヤから冬タイヤへ履き替えるタイミングでひび割れを起こす可能性が高くなる、ということです。
2.運転の頻度が少なく走行距離が短い場合もひび割れの原因に
タイヤ劣化の原因になる紫外線など、悪影響を及ぼすものをバリアする劣化防止剤は、タイヤに適度な刺激を与えることで内部からにじみ出る仕組みです。運転する機会が少なく走行距離が短いと、タイヤには十分な物理的刺激を与える事ができず、環境因子に対する耐性が低下します。
タイヤ表面にでる劣化防止剤の量が少なければ、環境因子によるダメージは蓄積しやすく、ひび割れが起こる可能性が高くなります。
3.タイヤの空気圧を車両指定以下の状態で走行
タイヤがたわんでいる状態で走行を続けるとひび割れリスクが高まる
タイヤの空気圧が車両指定以下の低い状態で走行を続けることで、ひび割れが起きやすくなり、劣化スピードを早めてしまう要因になります。
空気圧が車両指定以下ではタイヤはたわみやすくなり、タイヤがたわんでしまうことで同じ部分に無理な力が加わわります。
特に無理な力が加わりやすいタイヤ側面部のサイドウォールは、接地面と比較するとゴム厚が薄いサイドウォール部は、たわんでいる状態では圧力が集中し、ひび割れが最も起こりやすい場所と言えます。
4.メンテナンスやドレスアップで油性のタイヤワックスを使用すること
塗りやすさが油性ワックスの特徴だが、それだけに塗りすぎには注意したい
タイヤメーカーが販売する油性のタイヤワックスは艶が出るためメンテナンスやドレスアップ目的で使用する方がいますが、一部の商品はひび割れを誘発したり促進する要因の一つであることがわかっているため、注意を呼び掛けています。
ドレスアップのために用いるワックス剤には、油性と水性の2種類があります。特に油性タイプは紫外線に反応しやすく、塗布すると化学反応によって劣化防止剤を必要以上に表面部へとにじみ出させてしまうため、ひび割れを発生・促進させやすいと指摘されています。
適度な量であれば紫外線等に対するバリア機能を備える劣化防止剤ですが、あまりにも多く表面部へと分泌されてしまうと硬化スピードを速めて、ひび割れを起こしてしまう原因物質となってしまいます。
タイヤの空気圧を車両指定以下としない・管理をきちんと行えばタイヤのひび割れは起こりにくくなって進行を遅らせることが出来る
タイヤのひび割れは、主成分であるゴムが物理的・化学的な刺激によって経年劣化することで必ず起こります。タイヤのひび割れは補修が難しく、劣化は完全には防げないものの空気圧は車両指定以下とならないようにして注意して走行する、利用しないシーズンにはきちんと保管するなどすれば、発生や進行を遅らせることが可能です。
タイヤの空気圧は月に一度くらいはチェックして車両指定圧以下としない
月一の空気圧チェックはもちろん、日常的に目視チェックも行うことが望ましい
タイヤの空気圧は、内部に充填された気体が走行中などに漏れ出ていくために徐々に低下していきます。空気圧が車両指定以下の不足状態で走行を続ければ、外力によるダメージを各部が受けやすくなるため、ひび割れ以外のトラブルも起こりやすくなります。
空気圧は月に一度、自分で確認、あるいはガソリンスタンドでチェックしてもらいましょう。指定空気圧で走行を続ければ、ひび割れ以外のトラブルの影響も避けることができます。
空気圧が不足している状態で走行を続けることの影響
- ひび割れが起こりやすくなる
- 燃費が悪化する
- 偏摩耗しやすくなる
- 路面の影響を受けやすくなる
- ヒートセパレーションが起こりやすくなる
車庫に入れる・ボディカバーを利用する・シーズンオフ中は高温多湿の場所に保管しない
タイヤ寿命を縮める要因は、紫外線・雨水・オゾン・熱・油類などです。それら要因と接触・反応する機会を少なくすればひび割れは起こりにくくなり、進行スピードが遅れるために、ロングライフが実現されます。
駐車する際には、青空駐車よりも車庫や地下駐車場などの環境物質と接触しにくい場所の方が望ましいですが、青空駐車であってもボディカバー等の便利アイテムを利用すれば、ひび割れの発生時期を遅らせる事ができます。
季節が変化してシーズンオフ中のスタッドレスタイヤやサマータイヤは、合成ゴム成分の加水分解が促進されやすい高温多湿の場所に保管しない、ラック等のアイテムを用いることで、より長く使用する事ができます。
洗車は頻繁にやりすぎない・洗車する際にはタイヤに薬剤が接触しないように注意
タイヤのひび割れを避けるという観点で言えば、洗車は頻繁にやりすぎない方が望ましいです。洗車する際に使用する薬剤には、タイヤの艶だしのために用いる油性タイプのワックスと同様に、必要以上に劣化防止剤を表面に分泌させてしまう刺激因子が含まれています。
洗車する際には、成分表に注意して水性タイプの薬剤を用いた方が、ひび割れのタイミングを遅らせる事ができます。また、洗車中に使用する薬剤がタイヤと接触しないように注意すれば、ひび割れの発生や進行をさらに遅らせることが出来ます。
タイヤのひび割れの発生や進行を遅らせれば4年以上も使用可
各メーカーが推奨しているタイヤ交換のタイミングは約4年です。新品のタイヤを利用してから、ひび割れが起こり始める平均値も4年目あたりのタイミングです。
空気圧チェックを定期的に行って、駐車や保管する際に注意を払えば、タイヤは4年以上も利用することが可能です。実際に6年間あるいは7年間も状態の良いタイヤを使用し続けているドライバーもいます。
皆さんも、タイヤの状態や交換時期を見定める上での重要項目である「ひび割れ」を意識して、4年目以降も愛着のあるタイヤで快適かつ安全にドライブを楽しみましょう。