軽油が凍結した時の対処法

軽油が凍結したらどうなる?トラブル事例や添加剤を用いた対処法

軽油が凍結する原因。「特1号」や「特3号」等の各5タイプが何度で流動性が失われていくのか、凍結した場合に起こる車のトラブルや、未然に防げる添加剤を用いた対処法など。

軽油が凍結したらどうなる?トラブル事例や添加剤を用いた対処法

ディーゼル車の燃料である軽油は何度以下で凍る? 凍結した場合の対処法や人気の添加剤

ディーゼル車の販売台数が増加するにつれ、スキー場や冬のレジャースポットなどの駐車場で軽油が凍結したことによる理由によって、エンジンが動かくなる等のトラブルが多発している。

DPFシステムや尿素SCR等の技術力によって高い環境性能を実現するクリーンディーゼルエンジンを搭載する各車両は、パワフルな走りや燃料代の節約が出来るディーゼル車の魅力に期待する消費者から支持されている。

ここでは、ディーゼル車デビューしたオーナーが初めての冬を迎える前に覚えておくべき、燃料である軽油がどんな条件下で凍結してしまうのか、凍結した場合の対処法や、お薦めの添加剤などをお届け。

軽油が凍結する原因・凍結したらどんなトラブルが起きてしまうのか・ガソリンは凍結しないのかについて解説

このセクションでは、軽油がどうして凍結してしまうのか、凍結したらどのようなトラブルが起きてしまうのか等についての解説を行います。

軽油の凍結は寒さの影響を受けて含有させるワックス分が結晶化して流動性が失われてしまう事で起こる

ディーゼル車の燃料の軽油ディーゼル車の燃料の軽油は凍結してしまう場合がある

ディーゼル車が燃料として用いる軽油の凍結は、寒さの影響を受けて成分として含まれているワックス分が各部で結晶化し始めて、それら結晶同士が結びついて網状となって巨大化する事で起こります。

ここでいう軽油の凍結とは、水が氷へと状態変化してカッチカッチに固体化して凍るというような状態ではなくて、ドロドロとしていて流動性を失ってゲル化しているような状態を意味します。

軽油が凍結すれば燃料フィルターやインジェクター等のパーツで目詰まりが起きてエンジンが起動しなくなってしまうという事態も起こる

軽油の凍結でエンジン始動に影響軽油が凍結するとエンジンの始動に影響を及ぼすことも

外気温の影響を受けて軽油の流動性が失われていくと、ディーゼルエンジン機構内で軽油のスムーズな循環が行われなくなっていきます。すると、燃料フィルターやインジェクター等のユニット内で目詰まりが起きて、エンジンを起動させて車を動かすために必要となる霧状噴射がスムーズに行われなくなってエンジンが起動しにくくなる、あるいは一時的に動かなくなってしまうという事態が発生します。

軽油の凍結は寒冷地の駐車場などに長い時間クルマを停めていた場合に起こりやすい

軽油の凍結はエンジンが高温状態となっている作動中には起こりません。凍結が起こりやすいケースは、添加剤などの濃度調整が行われていない軽油を利用していて、寒冷地の駐車場や地元に帰省していて長い時間クルマを停めていてエンジンが冷やされ続けているという場合です。

ガソリンの凝固点は約-90℃~約-95℃なので地球上の自然環境下では凍結するという事は起こりにくい

軽油が固まり始める直前の温度は種類によっても異なりますが、+5℃~-30℃までの範囲。一方の軽油よりも揮発性の高いガソリンの場合の凝固点は約-90℃~約-95℃。データ上においての世界最低気温は、南極ボストーク基地で観測された-89.2℃です。

そういった情報から判断すれば、ガソリンは地球上の自然環境下では凍結するという事が起こりにくい燃料であると考えられます。

「特1号」~「特3号」軽油各5タイプの流動点・目詰まり点の比較と地域・季節ごとの販売の推奨を促すガイドライン

国内市場で販売されている軽油は、流動点・目詰まり点・セタン指数等の数値の違いよって「特1号」~「特3号」の5タイプに分類されています。このセクションでは各タイプの特徴や、日本の石油業界団体が運営する石油連盟が定めた、各地域が月別に販売すべき軽油の種類を促しているガイドラインについても紹介します。

寒冷地では冬の時期には凍結を防ぐために添加剤の分量が調整されている「3号」や「第3号」が販売

日本市場で販売されている軽油は、流動点・目詰まり点・セタン指数・動粘度などの違いによって「特1号」「1号」「2号」「3号」「特3号」の5タイプに分類されます。(JIS規格)

下記の表より「特1号」から「特3号」へと移行するにつれて、流動点及び目詰まり点の絶対値が上昇している事を確認できると思います。流動点は液体が凝固する最低温度を示しているパラメーター。つまり、添加剤の分量などを調整して-20℃や-30℃付近までは流動性をキープできる「3号」や「第3号」の軽油は、冬の時期には凍結しにくいという判断ができます。

一方の「特3号」から「特1号」へと移行するにつれて値が大きくなるセタン指数は、エンジン機構内において、軽油が自己着火を起こしやすいかどうかを確認するためのパラメーターで、数値が大きくなるほど自己着火しやすい燃料である事を意味しています。

JIS規格による軽油の分類表
タイプ 流動点 目詰まり点 セタン指数 動粘度
特1号 +5度以下 50以上 2.7以上
1号 -2.5度以下 -1度以下 50以上 2.7以上
2号 -7.5度以下 -5度以下 45以上 2.5以上
3号 -20度以下 -12度以下 45以上 2.0以上
特3号 -30度以下 -19度以下 45以上 1.7以上

石油連盟が過去に公開した「軽油使用ガイドライン」からは皆さんの居住地で季節毎に販売されている軽油の種類を推測可能

日本の石油業界団体が運営する石油連盟が過去に公開した「軽油使用ガイダンス」を参考にすれば、皆さんが居住されている地域では、月別にどのような種類の軽油が販売されているのかを確認できるはずです。

下記のガイドラインは各販売店が遵守すべき義務事項ではありませんが、業界に強い影響力を持っている石油連盟が関わっているので、ほとんどのスタンドでは地域・月別に推奨されているタイプの軽油を販売しているものと思われます。

石油連盟「軽油使用ガイドライン」
  北海道 道南 東北 中部
山岳
関東 北陸 山陰 東海 近畿 山陽 四国 九州 沖縄
1月 特3号 3号 3号 3号 2号 2号 2号 2号 2号 2号 1号 2号 特1号
2月 特3号 3号 3号 3号 2号 2号 2号 2号 2号 2号 2号 2号 特1号
3月 特3号 3号 3号 3号 2号 2号 2号 2号 2号 1号 1号 1号 特1号
4月 2号 2号 2号 2号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 特1号
5月 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 特1号 特1号 特1号
6月 1号 1号 特1号 1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号
7月 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号
8月 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号
9月 1号 1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号 特1号
10月 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 特1号 特1号 特1号
11月 2号 2号 1号 2号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 1号 特1号
12月 3号 3号 2号 3号 2号 1号 1号 1号 2号 2号 1号 1号 特1号

※関東や近畿など同じ地域であっても温暖な都市部と寒冷な山間部とでは異なる種類の軽油の販売が推奨されています。

暖かい地域から寒い地域へとディーゼル車で移動して車を長い時間駐車していたら軽油が凍結してしまう事もある

寒冷地に長時間駐車すると軽油の凍結が起こることもある寒冷地に長時間駐車すると軽油の凍結が起こることもある

お正月の帰省やウィンタースポーツを楽しむために、暖かい地域から寒い場所へとディーゼル車で移動して、長い時間クルマを停車してしまえば軽油が凍結してしまうリスクが高まります。

例えば、道南地方では1月・2月に推奨されている軽油の種類は3号ですが、ディーゼル車でニセコやルスツなどのゲレンデでウィンタースポーツを楽しむ旅行中に、氷点下20℃以下となってしまえば、3号タイプの軽油であれば凍結してしまいます。

その他にも、東海地方で1号の軽油を入れて、お正月に中部山岳地にある地元へと帰省する場合にも、放射冷却現象によって氷点下2.5℃以下となってしまえば、1号のタイプの軽油のままではあれば凍結してしまいます。

軽油を凍結させないためには現地のスタンドで販売されている寒冷地仕様の商品を給油

CX‐3やCX‐5などの車両でディーゼル車を積極的に展開しているマツダは電子取扱説明書内で、ディーゼル車が使用する軽油が凍結してしまうと、パイプが目詰まりしてエンジンが起動できなくなる恐れがあるため、寒冷地へとドライブする際には、燃料の残量が1/2以下となるようなドライブ計画を立てて、目的地に到着した際には素早く寒冷地仕様の軽油を補給するという凍結への防止策を紹介しています。

最近のディーゼル車は、ハイブリッドカーに匹敵するほどの低燃費を実現している・過疎地ではスタンドが廃業する割合が増えている等の理由によって、ベストなタイミングで現地のスタンドで販売されている寒冷地仕様の軽油を給油するというのはハードルが高いかもしれません。

そのため、給油のタイミングは先延ばしせず、目的の場所に向かうまでのドライブ中にスタンドを見つけたら、店員さんに寒冷地仕様の軽油となっているかを聞くなりして、適度なタイミングで寒冷地仕様となっている軽油を補給して、凍結しにくい状態へと変化させましょう。

軽油が凍結してエンジンが動かくなった時に役立つ対処法

ディーゼル車のエンジンが動かない原因が、軽油の凍結による場合である際に知っておきたい燃料フィルターや配管を温めるなどの対処法を紹介します。

緊急時の対応に慣れているJAFや加入している保険会社のロードサービスへと依頼

軽油が凍結するような厳しい寒さの中で、ゲル状となっている軽油を解凍させるための作業は不慣れな方にとっては肉体的にも過酷です。体調が万全ではない、内部パーツにはさほど詳しくないなどの理由により不安を覚えるという方は、緊急時の対応に慣れているスタッフが揃うJAFに依頼して軽油を融かしてもらいましょう。

気温が上がって軽油が自然解凍されて流動性を取り戻すまで暖かい場所で待機

夜明け以降・天候が回復する兆しがあって、陽が差し込む時間帯が長くなって気温の上昇が見込める場合には、外気温の影響を受けてシャーベッド状となってしまった軽油が自然解凍されて流動性を取り戻すまでに暖かい場所で待機するというのも一つの対処法です。

燃料フィルターや配管を温めて目詰まりを解消

流動性を失っている軽油が燃料フィルター付近で目詰まりしていれば、エンジンには動作不良が起こります。燃料フィルター付近にお湯をかけて、瞬間的に温度を上げて軽油を解凍させると目詰まりは解消されてエンジンは起動します。

JAFへの救援依頼を要請した場合には、燃料フィルターにお湯をかける・救護車の排気ガスをエンジンルームにかけて温める、解凍できない場合には近くの整備工場まで車を移動させるというプランが実行されます。

燃料フィルターにお湯をかけるという対処法は一時的であり、再凍結する可能性も高いため、エンジンが起動したら最寄りのスタンドで寒冷地使用の軽油を補給する必要があります。

寒冷地にドライブする前にブレンドすれば安心できる軽油用の凍結防止剤のおすすめ商品

タンク内に適量をブレンドすれば、添加剤が効果を発揮して軽油が凍結しにくくなるという効果が備わる優れもの「軽油用 凍結防止剤」のおすすめ商品を紹介します。

FALCONの「軽油凍結防止剤P-936」を利用すれば軽油の流動性は冬の時期にも維持

FALCO 軽油用凍結防止剤 P936

FALCO 軽油用凍結防止剤 P936FALCONの「軽油凍結防止剤 P-936」はコモンレール式エンジンや、DPF装着車に対しても利用することが出来る。

メーカー FALCON
内容量 200mL
価格 19,030円~(20個)(2024年調べ)

「軽油用凍結防止剤 P936」は、自動車用の化学製品やアクセサリー等のホームセンターで見掛ける機会の多い商品を数多くライナップしているパワーアップジャパン株式会社がFALCONブランドで展開されているカー用品です。

普通車だけではなくてトラックやバスにも幅広く利用されている同商品には、低温時の流動性を向上させる成分が配合されていて、2号軽油にブレンドすれば凍結温度は-17℃までに引き下げる事が可能です。

KUREの「ディーゼルトリートメント」を注入すれば軽油は凍結しにくくなるだけではなくてエンジン出力もアップ

KURE ディーゼルトリートメント

KURE ディーゼルトリートメントディーゼルトリートメントにはノッキング現象を抑える効果も備わる

メーカー KURE
内容量 236ml
価格 465円~(2024年調べ)

自動車用品だけではなくてハウスクリーニングに用いる商品も展開しているKURE(クレ)の「ディーゼルトリートメント」は、タンク内に溶液を適量入れるだけで軽油の凍結を防げるだけではなくて、エンジン出力の向上・燃費まで改善されるという寒い季節以外にも使える人気商品です。

錆びの発生を抑える効果も備わる同商品を利用すれば、ディーゼルエンジンはロングライフ化します。

N2 FACTORYが輸入販売を行うドイツ製のディーゼルエンジンコンディショナー「パワーマックス」は軽油のゲル化を防いで底冷えする日のエンジンスタートをサポート

ディーゼルエンジンコンディショナー パワーマックス

ディーゼルエンジンコンディショナー パワーマックスドイツ製の「パワーマックス」には注入ノズルがセットされていて利用しやすい

メーカー N2 FACTORY
内容量 300ml

N2 FACTORYが輸入販売を行っているドイツ製の人気コンディショナー「POWERMAXX(パワーマックス)」には、底冷えするような気候時にタンク内の軽油がゲル化して、流動性や潤滑力を低減させないようにサポートする効果の備わる化学成分が配合されています。

コモンレール式など全タイプのディーゼルエンジンに対して使用可能な同商品は、各国で積極的にOEM展開されています。

BGジャパン「BG230 DFCプラス」は軽油の凍結を防ぐだけではなくてエンジンスタートをサポート

BGジャパン BG230 DFCプラス

BGジャパン BG230 DFCプラスBGジャパンの「BG230 DFC プラス」はエンジン機構内のクリーン化にも貢献

自動車に用いる潤滑油や洗浄剤を中心として、グローバルな事業展開を行うBG社の日本法人が販売する「BG230 DFC プラス」は、寒さの影響を受けて軽油内に含まれるワックス分が結晶化してフィルターやインジェクター等で詰まってしまうの未然に防ぐために、流動点降下剤を配合させます。

燃焼効率の引き上げも可能とする同商品は、プラドなどの国産ディーゼル車やボルボ XC60などの海外メーカーのディーゼル車のオーナー達からも支持されています。

凍結している軽油を融かすために灯油を入れるのは故障の原因ともなりますし・法令違反でもあるので注意

灯油をタンク内に入れて凍結している軽油を融かすのは原理的には可能かもしれませんが、灯油を入れてしまえば、排ガス規制をクリアするために、コモンレールシステム・微粒子捕集フィルター・尿素SCRシステム等の高精度ユニットを導入して、環境性能を高次元化させたディーゼルエンジンが故障してしまう恐れがあります。

軽油に灯油を混ぜるという行為は、過去に逮捕者が何人も出ている脱税とみなさる違法行為に該当する禁止事項でもあるので注意しましょう。

雪の季節には軽油の凍結に注意してウィンタードライブを楽しもう

ディーゼルオイルの凍結対策

冬の寒さの影響を受けて、本来備わっている能力を十分に発揮できなくなってしまうのはバッテリーやクーラントだけではありません。ディーゼル車では、燃料とする軽油がゲル状となり動作不良やエンジンを起動する事ができないというケースも発生してしまいます。

ディーゼル車に備わるパワフルな走りは、傾斜のある雪道を疾走する際などにおいては魅力的です。雪の季節にディーゼル車に乗ってスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツをアクティブに楽しみたいという方は、適切なタイミングを見計らって現地のスタンドで販売されている寒冷地仕様となっている軽油を十分に補給したり、ドライブ前に燃料タンク内に添加剤を配合したりして軽油の凍結を未然に防いで、ウィンタードライブも満喫しましょう!