W型エンジンとは?フォルクスワーゲンが開発した大排気量エンジンの仕組み
W型エンジンとは、V型エンジンを2つ組み合わせて作った「4バンク型」と、シリンダーを3列W字形に配置した「3バンク型」の2種類があります。現在の主流は4バンク型で、フォルクスワーゲングループが特許を保有し、グループ傘下のブランドにのみ搭載されています。
採用メーカーはフォルクスワーゲングループに限られ、フォルクスワーゲン・アウディ・ベントレー・ブガッティの各ブランドに搭載実績があります。W型エンジンの種類や搭載車種、メリット・デメリットを詳しく解説します。
4バンクW型エンジンとは?フォルクスワーゲンが開発した独自構造
ドイツのフォルクスワーゲンがW型エンジンを開発
4バンク型のW型エンジンはフォルクスワーゲンが開発した独自のエンジン形式で、W8・W12・W16の3種類があります。構造上の特徴は、狭角V型6気筒(または4気筒)エンジンを2基組み合わせた点にあり、同じ気筒数のV型エンジンより全長を短縮できます。
搭載ブランドはフォルクスワーゲン・アウディ・ベントレー・ブガッティの4社で、スーパーカーから高級サルーンまで幅広い車種に採用されてきました。
W型エンジンのメリット:全長が短く多気筒化しやすい
W型エンジン最大のメリットは、1本のクランクシャフトに4バンクのシリンダーを集約できるため、V型エンジンに比べてエンジン全体の全長を大幅に短縮できる点です。これにより、V型では搭載が困難な多気筒エンジンを実用的なサイズに収めることができます。
例えば、ブガッティ・シロン(2016〜2024年)には最高出力1,500ps超の8.0L W16エンジンが搭載されていましたが、これは通常のV型では実現困難な構成です。多気筒ながらコンパクトに収まるのがW型エンジンの大きな強みです。
W型エンジンのデメリット:構造が複雑で整備性に課題あり
W型エンジンの主なデメリットは部品点数が多く構造が複雑なことです。V型エンジンと比べてエンジンの全長は短縮できる一方、横幅が大きくなるため、搭載できる車体が限られます。コンパクトカーや一般的なセダンへの採用が難しく、整備性もよくありません。
こうした特性から、W型エンジンはスーパーカーや高級サルーンなど、搭載コストを問わない高性能車に限定されています。搭載されているだけで、そのクルマのステータスを示す指標にもなっています。
W型エンジン搭載車種一覧:スーパーカーからラグジュアリーカーまで
フォルクスワーゲングループでW型エンジンを搭載してきた主要モデルを、エンジンスペックとともに紹介します。
W8エンジン搭載:パサート W8 4モーション(B5.5・終売)/フォルクスワーゲン
パサートは5代目後期型でW型エンジンを搭載 排気量は4.0Lのパワフルなエンジン
フォルクスワーゲン・パサートは、2001年のマイナーチェンジで誕生したB5.5型(5代目後期型)にのみW8エンジンが搭載されていました。モデル名は「W8 4モーション」で、4.0LのW型8気筒エンジンを搭載した意欲的なモデルです。その後のパサートはV6や直4ターボに移行しており、W8搭載モデルは現在中古車のみでの流通となっています。
| 型式 | BDN |
|---|---|
| 種類 | W型8気筒 |
| 排気量 | 3,998cc |
| 最高出力 | 202kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 370Nm/2,750rpm |
| 燃費 | 6.8km/L |
W12エンジン搭載:トゥアレグ W12スポーツ(初代・終売)/フォルクスワーゲン
初代トゥアレグに設定されていたW型エンジン 現在はV型エンジンを採用
2002年から2010年まで販売された初代フォルクスワーゲン・トゥアレグには、世界500台限定で「W12 SPORT」が設定されていました。6.0L W12エンジンを搭載したSUVという極めて希少な存在で、現在は中古車市場でのみ流通しています。現行の3代目トゥアレグにはW12の設定はありません。
| 型式 | BJN |
|---|---|
| 種類 | W型12気筒 |
| 排気量 | 5,998cc |
| 最高出力 | 330kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 600Nm/3,300rpm |
| 燃費 | 5.9km/L(10・15モード) |
W12エンジン搭載:フェートン(終売)/フォルクスワーゲン
欧州専売モデルのフェートン 大排気量のラグジュアリーサルーン
フォルクスワーゲンのラグジュアリーサルーン「フェートン」は、2002年から2016年まで欧州専売で販売されたモデルです(日本未発売)。前期型・後期型を通じてW12エンジンが設定されており、排気量6,050cc・最高出力331kW・最大トルク560Nmという高スペックを誇っていました。現在は生産・販売終了となっています。
| 型式 | BJN |
|---|---|
| 種類 | W型12気筒 |
| 排気量 | 6,050cc |
| 最高出力 | 331kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 560Nm/2,750~5,200rpm |
| 燃費 | – |
W12エンジン搭載:A8 L W12クワトロ(終売)/アウディ
アウディA8のW型エンジンは最高出力368kWのモンスターエンジン
アウディのフラッグシップモデル「A8」には、2011年6月から「L W12クワトロ」グレードが設定され、W12エンジンが搭載されていました。ロングホイールベース仕様で全長は5,275mmのゆとりある車体に、排気量6,298ccのW12エンジンを搭載したモンスターサルーンです。現行のA8にはW12グレードの設定はなく、現在は中古車のみでの流通となっています。
| 型式 | CTN |
|---|---|
| 種類 | W型12気筒 |
| 排気量 | 6,298cc |
| 最高出力 | 368kW/6,200rpm |
| 最大トルク | 625Nm/4,750rpm |
| 燃費 | 8.9km/L |
W12エンジン搭載:コンチネンタルGT/ベントレー
初代モデルから続くW型12気筒エンジンを搭載
イギリスの高級車ブランド・ベントレーが販売する「コンチネンタルGT」は、初代(2003年)から一貫してW12エンジンを搭載してきたモデルです。現行の第3世代では「ツインターボチャージド W12 TSI」を搭載し、排気量5,950cc・最高出力467kW・最大トルク900Nmという圧倒的なスペックを誇ります。2パラレルツインスクロールターボによる過給で、低回転から力強いトルクを発生します。
| 型式 | W12 TSI |
|---|---|
| 種類 | W型12気筒 |
| 過給機 | ツインスクロールターボ |
| 排気量 | 5,950cc |
| 最高出力 | 467kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 900Nm/1,350~4,500rpm |
| 燃費 | – |
W16エンジン搭載:ヴェイロン 16.4(終売)/ブガッティ
ヴェイロン 走行性能も世界最高水準
ブガッティが2005年から2015年まで製造した「ヴェイロン 16.4」は、当時の市販車最速モデルとして世界を驚かせたハイパーカーです。価格は約1億6,300万円で、購入には資産だけでなく社会的地位の審査も行われると言われていました。W16クアッドターボエンジンは排気量8.0L・最高出力736kW・最大トルク1,250Nmという、市販車とは思えないスペックを誇ります。
| 型式 | – |
|---|---|
| 種類 | W型16気筒 |
| 過給機 | クアッドターボ |
| 排気量 | 8.0L |
| 最高出力 | 736kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 1,250Nm/2,200~5,500rpm |
| 燃費 | 0.8km/L(トップスピード時) |
W16エンジン搭載:シロン(2016〜2024年・終売)/ブガッティ
ヴェイロンの後継モデル シロンにもスペックアップしたW型エンジンを採用
「シロン」はヴェイロン16.4の後継として2016年に登場し、2024年に世界限定500台を完売して生産を終えたハイパーカーです。ベース価格は約260万USドル(当時の為替で約3億円前後)で、ヴェイロンのほぼ2倍の価格設定でした。搭載エンジンはW16クアッドターボ(8.0L)をスペックアップしたもので、最高出力1,103kW(約1,500ps)・最大トルク1,600Nmを発生します。時速480km/h超を達成した初の量産車として記録に刻まれています。なお、シロンの後継モデルとして「トゥールビヨン」が発表されており、新世代のパワートレインへの移行が進んでいます。
| 型式 | – |
|---|---|
| 種類 | W型16気筒 |
| 過給機 | クアッドターボ |
| 排気量 | 8.0L |
| 最高出力 | 1,103kW/6,700rpm |
| 最大トルク | 1,600Nm/2,000~6,000rpm |
| 燃費 | – |
W型エンジンはスーパーカー・ラグジュアリーカーに採用が多いエンジン

W型エンジンは、開発コストの高さから価格1,000万円を超えるフラッグシップモデルやスーパーカーに搭載されることが多く、フォルクスワーゲングループが特許を持つ独自技術です。初代トゥアレグやフェートン、アウディA8のW12グレードなど、すでに生産・販売が終了したモデルが多く、現在W12エンジンを新車で購入できるモデルはベントレー・コンチネンタルGTなどに限られています。また、ブガッティではW16エンジンを搭載したシロンが2024年に生産終了し、後継モデルへの移行が進んでいます。コンチネンタルGTのW12エンジンが放つ豊かなトルクと圧倒的な動力性能は、W型エンジンならではの魅力といえるでしょう。




























