車のNA(自然吸気)とターボの違いって?ターボの仕組みや搭載車種でのスペック比較
自然吸気のNA車は大気圧の空気をシリンダーに送り込み燃焼させますが、ターボ車は圧縮空気をシリンダーに送り燃焼させるため自然吸気と比べてパワーがあります。
車のエンジンスペックや諸元表を見ていると目にする「ターボ」は、どのようなものなのでしょうか?ターボ車というとパワーがあるイメージがあります。逆に過給機を搭載していない車はNA(自然吸気)車と呼ばれ、ノンターボ車とも呼ばれています。
では、ターボ車とNA車の違いは何があるのでしょうか?同じ排気量のエンジンだとターボを搭載したほうがパワーが出ますが、燃費が悪くなるというデメリットも存在します。そこで、ターボとNAの違いや仕組み、メリット・デメリット、スズキのスペーシアカスタムにおけるNA車とターボ車の違いなどを紹介します。
NA車とターボ車の最大の違いは、エンジンに過給機(ターボ)を搭載しているのか・いないのか
ターボチャージャーの構造 排気側のタービンが回るとシャフトを通じて吸気側のタービンも回る
NA車とターボ車の最大の違いは、「過給機」が搭載されているかどうかです。エンジンの排気ガスとタービンを利用し空気をより多く送り込むターボ機構を積んでいれば、ターボエンジンとなります。
ターボは排気ガスの圧を利用してタービンを回し吸気側の空気をより多く取り込みます。するとシリンダー内へ自然吸気以上の空気が入り混合気の燃焼がより大きくなり自然吸気のNA車よりパワーが出るようになります。
ターボ車とNA車の違い
- 排気ガスを利用してパワーを出すターボ機構があるかどうか
車のカタログなどにあるグレードを見ると「○○ターボ」と書いていたり、諸元表のエンジン種類に「直列3気筒インタークーラーターボ」などと記載されていたら、そのグレードはターボエンジン搭載車となります。
NA車のメリットは自然な吹き上がりで燃費が良いこと・デメリットはパワー不足になりやすい
4.8LのV型10気筒NAエンジン搭載レクサスLFA 「天使の咆哮」と呼ばれるサウンドも魅力
「ナチュラル・アスピレーション」又は「ノーマル・アスピレーション」を意味するNAエンジンは、ターボに比べて燃費が良く、部品点数も少なく済むため、多くの車種で採用されています。
また、NAエンジンは、アクセルを踏み込んだ際に、自然かつスムーズにエンジンの回転が上がっていくという特徴を持ちます。このレスポンスの良さ・自然なフィーリングを愛する車好きも多く、NAエンジンのスポーツカーは根強い人気があります。
NA車のメリット
- 開発のコストが安く、燃費が良く、多くの車種に搭載可能
- アクセルレスポンスの良さを楽しめる
- スポーツエンジンは高回転域でのエンジンサウンドが秀逸
NA車のデメリット
- 小排気量だとターボ車と比べてパワー不足を感じやすい
- ダウンサイジングターボの流行により減少する可能性が高い
しかし、NAエンジンは、ターボに比べてある程度の排気量がなくてはパワーやトルクが出せません。
環境規制の問題もあり、近年はスポーツモデルへの採用は減少しており、軽自動車の660ccエンジンではパワー不足を感じやすいのが難点です。
ターボ車のメリットはパワーがあること・デメリットは燃費がNAに比べて悪いこと
1,000PSの出力を持つターボ車であるブガッティのヴェイロン 8.0Lエンジンに4つのターボを搭載している
ターボを搭載している車種は、2000年代前半まではスポーツカーというイメージが強かったものですが、2019年付近では軽自動車のパワーを補うためにターボが搭載されていたり、排気量を小さくしてもパワーは従来モデル並みを維持するダウンサイジングターボとして活用されています。
エンジンにターボを搭載するメリットは、同じ排気量のエンジンに比べてパワーがあることですが、多くの燃料を食うため燃費は悪くなります。
ターボ車のメリット
- ターボが効き始めるとグッと加速するため爽快感がある
- 同じ車種で同じ排気量のエンジンと比べるとパワーがある
ターボ車のデメリット
- 排気ガスの圧を利用しているため低速域ではターボが効きにくい
- ターボ機構やインタークーラーを積んでいるため車両重量が増加する
- 同じ車種で同じ排気量のエンジンと比べ、よりパワーが出るぶん燃費が悪い
例えば、同じ車種でもNA車とターボ車が設定されているN-BOXカスタムは、NA車の出力は43kW・燃費が27.0km/Lなのに対し、ターボ車は47kWの25.6km/Lになっています。また、日産のスカイラインは先代のV36ではV型6気筒3.5Lと2.5Lを搭載していましたが、新型スカイラインのV37では直列4気筒2.0Lターボを搭載するなど、ダウンサイジングが行われています。
ターボは排気ガスでタービンを回してより多くの空気をシリンダー内へ送り込むことで、大きなパワーを得ることができる仕組み
ターボ機構は排気ガスとタービン、コンプレッサー、インタークーラーの4つが役割を担っている
エンジン出力をアップさせてくれるターボは、排気ガスの力によりタービンとコンプレッサーを回し大気圧以上の空気・酸素を取り込むためのシステムです。濃い空気をシリンダー内へ送り大きな爆発を起こすことで、よりパワーが得られます。
コンプレッサーで吸い込まれ圧縮された空気は高温になっているため、インタークーラーで冷やしてからシリンダーへ送ることで、ノッキングやエンジン温度上昇を防いでいます。
ターボ機構の仕組み
- 排気ガスが一定の圧力以上になるとターボチャージャーのタービンが回る
- タービンと軸で直結されているコンプレッサーが回り酸素を多く取り込み圧縮する
- 圧縮された空気はインタークーラーを通り冷やされる
- 冷やされた圧縮空気がシリンダー内へ入り、ガソリンとの混合気となり爆発する
- シリンダーから排気ガスが排出されタービンを回す
- 排気ガス圧力が下がりタービンが回らなくなるまで、以後繰り返し
ターボチャージャーは、排気ガスの力を利用してタービンを回し圧縮した空気を送り込み、シリンダー内で爆発して初めてパワーがグッとあがるのを実感できます。そのため、アクセルをグッと踏み込んだ瞬間にガンと加速するわけではなく、踏み込んでからターボが効き始めるまでの間があり、その時間差をターボラグといいます。
また、排気ガスの圧力が高くなっていくとタービンも更に早く回り、より濃い空気がシリンダー内へ送られる(ブースト圧の上昇)こととなりますが、濃すぎる空気は爆発力も強くエンジンを壊す原因にもなります。そのため、タービン付近には一定以上のブースト圧がかからないように排気ガスを逃がすバイパスが設けられています。
ほかにもコンプレッサーで圧縮された空気は高温であるため、そのままシリンダー内へ送られればエンジン温度も上昇していき、機械にとっても悪い状態で動き続けなければなりません。そこで、圧縮された高温の空気をシリンダーへ送る前にインタークーラーへ通し冷やしています。
スズキ・スペーシアカスタムでのNA車とターボ車のスペック違いは?どっちを選べばいいの?
スペーシアは2017年12月にモデルチェンジした軽自動車で、NA車とターボ車のグレードを設定している
スズキの軽トールワゴンであるスペーシアはフロントマスクがカッコいいカスタムモデルに、NA車とターボ車を設定しています。自然吸気エンジンを搭載しているモデルと、ターボモデルを搭載している車種とでは、どのようなスペックの違いがあるのでしょうか?
NA | ターボ | |
---|---|---|
種類 | 直列3気筒 | 直列3気筒インタークーラーターボ |
排気量 | 658cc | |
最高出力 | 38kW/6,500rpm | 47kW/6,000rpm |
最大トルク | 60Nm/4,000rpm | 98Nm/3,000rpm |
燃費 | 28.2km/L | 25.6km/L |
価格帯 | 1,690,200円 | 1,787,400円 |
それぞれのスペックを見ると、自然吸気のNAエンジンは燃費がいいですが、ターボモデルよりパワーがないことが分かります。NA車では燃費重視で価格帯も安いため経済的、ターボ車は出足もパワフルなため4人で走ることが多い・荷物をかなり載せることがあるのなら、ターボモデルがいいでしょう。
NA車とターボ車の違いはターボチャージャーがついているかどうか!ノンターボに比べてパワーがあるが燃費は悪い
ノンターボ車とターボ車の最大の違いは、エンジンシステムにターボチャージャーを搭載しているかどうかです。排ガスの圧力を利用したターボチャージャーは、手軽にパワーアップすることができる装備ですが、車両重量が重くなるなどのデメリットがあります。
普通車に比べてパワーがない軽自動車ですが、ターボモデルなら登り坂でもグングンと上がっていくことができるため人気のグレードです。ですが、NA車に比べると価格帯が高くて燃費は悪い傾向にあります。
軽自動車でターボモデルをおすすめしたい人
- 燃費は気にしない
- 旅行などで長距離運転が多い
- いつもフル乗車に近い人数で運転している
- たくさんの荷物を積んで運転することが多い
- 高速道路をよく使うため加速がいい車が欲しい
軽自動車のターボなら通勤や買い物に使い平坦な道ばかりで乗車人数は1人から2人が多い・燃費を気にして走行したいのならノンターボ車がおすすめですが、旅行で長距離運転することがある・燃費は特に気にしない・フル乗車が多く荷物も積むことがあるのならターボ車がいいでしょう。
ほかにも、普通自動車では先代モデルよりも排気量をグンと落とし、その分下がったパワーをターボで補って燃費を向上させるダウンサイジングターボという使われ方が主流です。よりもっと多くのパワーを手に入れるのではなく、燃費向上の目的で使われています。