クリーンディーゼル技術に優れた国内外のメーカーと搭載車種の特徴
ディーゼル車は軽油を燃料とするため経済的で、ガソリン車よりも二酸化炭素の排出量が少ないというメリットがありますが、排気ガス中に人に害を与えるPM(粒子状物質)や、大気を汚染するNOx(窒素酸化物)等の有害物質が多く含まれてしまうというデメリットがあります。
そのデメリットを、DPF除去(Diesel Particulate Filter:ディーゼル排気微粒子除去フィルム)やNOx後処理装置などの技術力で改善したのがクリーンディーゼル(CDV:Clean Diesel Vehicle)です。
今回は、クリーンディーゼルの開発に積極的なマツダやボルボなどの国内外の自動車メーカーが開発したクリーンディーゼルエンジンを搭載する車種の特徴やスペック情報についても取り上げます。
マツダのクリーンディーゼル「SKYACTIV-D」の技術力
マツダは、新世代クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D(スカイアクティブ ディー)」を多くの車種に搭載し、日本のクリーンディーゼル市場を大きくリードしてきました。
スカイアクティブディーの特徴は、低圧縮で燃料を燃焼させる事です。軽油を高圧縮で燃焼させれば、PM等の有害物質が多く発生してしまいます。マツダはスカイアクティブ Dに「マルチホールピエゾインジェクター」と「可変排気バルブ機構」といった新技術を導入して、低圧縮状態での燃料の燃焼を実現し、有害物質の生成を大幅に低減させます。
クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」を搭載した車両は数多くラインナップしている
スカイアクティブ Dでは、燃料をキレイに燃焼しつくして、有害物質が発生しにくいシステムを構築しました。そのため、他社が搭載する高価なNOx後処理装置を必要とはしないので、販売価格の上昇を抑える事が可能です。
CX‐8 XDのスペック
SKYACTIV-Dを搭載し大ヒットしている新型CX-8
スカイアクティブ ディーは、アクセラやデミオなど多数のマツダ車に搭載されます。
ここでは、マツダを代表するクロスオーバーSUVである「CX‐8」のクリーンディーゼルエンジン搭載モデルのスペックを紹介します。
CX‐8に搭載される2.2 水冷直列4気筒16バルブ直噴ターボでは、低圧縮によって燃料を燃焼させるため、エンジン自体を頑丈につくる必要はありません。そのため、車両重量の増加を抑える事ができます。また、低圧縮化には低振動と静粛性がアップするといったメリットもあります。
同エンジンでは、ディーゼル本来の魅力であるエンジンの回転数が少なくとも実現されるパワフルな走りでもドライバー刺激します。
スカイアクティブ ディーを搭載するCX‐8では、坂道や高速道路でアクセルを強く踏み込まなくとも、思い通りの加速力を与えることが可能です。
全長 | 4,900mm |
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全幅 | 1,840mm |
全高 | 1,730mm |
ホイールベース | 2,930mm |
最低地上高 | ‐ |
車両重量 | 1,860kg |
乗車人数 | 7名 |
駆動方式 | 4WD |
エンジン | SKYACTIV‐D 2.2 水冷直列4気筒16バルブ直噴ターボ |
総排気量 | 2.188L |
燃料 | 軽油 |
燃料供給装置 | コモンレール式燃料噴射システム |
最高出力 | 140kW/4,500rpm |
最大トルク | 450Nm/2,000rpm |
燃費 | 17.0km/L |
トヨタのクリーンディーゼルの技術力
トヨタのクリーンディーゼル・テクノロジーは「1GD‐FTV型ディーゼルエンジン」に集約されます。
1GD‐FTV型ディーゼルエンジンは、基本設計の段階から全てを見直して完成したクリーンディーゼルエンジンです。同エンジンは、燃焼改善技術である「TSWIN」を取り入れることで世界トップレベルの最大熱効率44%をクリアします。
1GD‐FTV型の特徴は、燃焼時の冷却損失を減らすためにシリカ強化多孔質陽極酸化膜をピストン頂部にコーディングさせる事、ピストン燃焼室形状を新設計とし、燃焼室内で燃料をより効果的に噴射させます。
1GD‐FTV型ディーゼルエンジンから排出されるガスは、エンジン近くに設置するDPR(排出ガス浄化装置)や、尿素SCRによって大幅カットします。
DPRでは、フィルターに吸着したPMを自動焼却して排出量を減らします。排気ガス中のNOxは、尿素SCRシステムにより、無色・無臭の尿素水溶液から、アンモニアを生成し、触媒作用等の力を働かせて、窒素と水へと分解させます。
ランドクルーザー プラド(ディーゼル)のスペック
プラドのような大型モデルは燃費が良くトルクが太いディーゼルエンジンが好まれる
トヨタのクリーンディーゼルエンジン搭載モデルは、ランドクルーザー プラドからラインナップします。
ランドクルーザー プラドのディーゼル車では、小型高効率可変ジオメトリー型ターボを採用し、従来モデルよりも約30%もダウンサイズしながらも、インペラ・タービンホイールを新開発して高効率を実現させて、アクセル操作でのレスポンス、幅広い回転域での最大トルクの出力をサポートします。
プラドのクリーンディーゼルエンジン搭載モデルと、同タイプのガソリンモデルを比較すれば、3.0km/L近くもクリーンディーゼルエンジン搭載モデルの方が低燃費を実現します。
全長 | 4,825mm |
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全幅 | 1,885mm |
全高 | 1,850mm |
ホイールベース | 2,790mm |
最低地上高 | 220mm |
車両重量 | 2,210kg |
乗車人数 | 7名 |
駆動方式 | 4輪駆動(フルタイム4WD) |
エンジン | 1GD‐FTV直列4気筒 |
総排気量 | 2.754L |
燃料 | 軽油 |
燃料供給装置 | コモンレール式燃料噴射システム |
最高出力 | 130kW/3,400rpm |
最大トルク | 450Nm/1,600-2,400rpm |
燃費 | 11.8km/L |
三菱の日本向けクリーンディーゼルエンジンは4N14型の進化版
三菱の国産車に搭載されるクリーンディーゼルエンジンは、欧州車に導入される4N14型にNOxトラップ触媒を追加するなどして改良を加えたタイプです。
三菱のクリーンディーゼルエンジンでは、可変動弁機構・MIVECを導入した低圧縮比化によって、PMやNOxなどの有害物質の発生を抑制します。
同エンジンには、日本の排ガス基準であるポスト新長期規制をクリアするために、後処理システム「NOxトラップ触媒」に高精度な燃料噴射制御システムを組み込みます。
デリカD:5のスペック
ディーゼルモデルの方がガソリンモデルよりも2.4km/L燃費が良い
三菱はクリーンディーゼルエンジンをパジェロとデリカD:5シリーズにラインナップします。
同社のミニバンを代表するデリカD:5では、低回転域から高トルクを得られる小型可変ジオメトリターボを採用します。また、燃料噴射のタイミングを緻密に調整するコモンレール式の燃料供給装置を導入し、燃費・排ガス性能をアップさせます。
デリカD:5のクリーンディーゼル車は、同タイプのガソリン車と比較すれば2.4km/Lもの低燃費を実現します。
全長 | 4,730mm |
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全幅 | 1,795mm |
全高 | 1,870mm |
ホイールベース | 2,850mm |
最低地上高 | 210mm |
車両重量 | 1,890kg |
乗車人数 | 8名 |
駆動方式 | 4WD |
エンジン | 4N14 DOHC 16バルブ・4気筒 |
総排気量 | 2.267L |
燃料 | 軽油 |
燃料供給装置 | コモンレール式燃料噴射システム |
最高出力 | 109kW/3,500rpm |
最大トルク | 360Nm/1,500~2,750rpm |
燃費 | 13.0km/L |
BMWのクリーンディーゼル・テクノロジー
ドイツ御三家のBMWは最先端のクリーンディーゼル技術を持つ
世界的知名度を誇るドイツの自動車メーカーであるBMWのクリーンディーゼルエンジンは、「BMW Efficient Dynamics」思想からうまれた数々のテクノロジーを融合させて誕生しました。
BMWは、ガソリンエンジンと比較すれば、重くなりがちなディーゼルエンジンに、アルミニウム合金製クランク・ケースを搭載し、構造をシンプルとした排出ガス処理技術を採用することで、従来モデルよりも大幅な軽量化を達成します。
ディーゼルエンジンを搭載する車は、エンジンの重量が大きいため、フロント側に重さが偏ってしまう傾向がありますが、BMWではフロント重量:リヤ重量において約50:50の理想的な重量配分を実現させます。その重量配分にFR(後輪駆動)を組み合わせて、俊敏な走りをドライバーに体感させます。
排出ガス中に含まれる黒煙やすす等の粒子状物は、BMW BluePerformanceテクノロジーを代表するDPF(粒子状物質除去フィルター)やエンジン制御技術によって、燃焼あるいは除去されます。
光化学スモッグや酸性雨の原因となりうる窒素酸化物は、NOx吸蔵還元触媒内に一時保管され、化学作用を加えて、水や二酸化炭素、窒素に変化させて排出します。
320d Gran Turismo M Sportのスペック
日本でも人気の3シリーズへクリーンディーゼルモデルをラインナップ
BMWのディーゼルエンジンモデルは、3シリーズの「セダン」「ツーリング」「グランツーリスモ」の320dなどのグレードでラインナップします。
BMW3シリーズ、320d Gran Turismo M Sportグレードに搭載される2.0L直列4気筒BMWツインパワー・ターボ・ディーゼル・エンジンは、最高出力140kWを4000rpmで発揮します。同エンジンでは、高回転域までトルクを落とさずに出力できるため、従来タイプのディーゼル車よりもダイナミックなスポーティ・ドライブを楽しめます。
BMWのクリーンディーゼルエンジンは、熱効率にも優れ、ガソリンエンジンと比較すれば、最大で38%もの低燃費を実現させます。また、アクセルを踏み込んだ際のハイレスポンスさでもユーザーを引き付けます。
全長 | 4,855mm |
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全幅 | 1,830mm |
全高 | 1,500mm |
ホイールベース | 2,920mm |
最低地上高 | ‐ |
車両重量 | ‐ |
乗車人数 | 5名 |
駆動方式 | FR(後輪駆動) |
エンジン | 直列4気筒DOHC BMWツインパワー ターボディーゼル |
総排気量 | 1.995L |
燃料 | 軽油 |
燃料供給装置 | コモンレール式燃料噴射システム |
最高出力 | 140kW/4,000rpm |
最大トルク | 400Nm/1,750~2,500rpm |
燃費 | 19.4km/L |
ボルボ・プレミアム・ディーゼルの技術
ボルボのディーゼルエンジンは有害物質の排出量の少なさが世界トップクラス
北欧スウェーデンの自動車メーカーであるボルボは、乗用車では世界初となる燃料噴射技術「i-ART」をクリーンディーゼルエンジンに搭載させるなどして有害物質の排出を大幅に低減します。
ボルボが、日本の自動車部品メーカー・デンソーと共同開発した「i-ART」は、1/100,000秒ものわずかな燃料噴射のズレも検知し、各シリンダーに理想的な量の燃料を、ベストなタイミングで噴射できる最先端テクノロジーです。i-ARTの導入効果で5%もの燃費が向上します。
最先端テクノロジー「ボルボ・プレミアム・ディーゼル」が搭載されるV40では、NOxの排出量は0.08g/km、PMの排出量は0.005g/kmと世界最高レベルの数値を実現します。
XC60 クリーンディーゼル車のスペック
トルクフルな走りで世界中から高い評価を得ている新型XC60
ボルボ・プレミアム・ディーゼルは、V40やS60など6車種に導入されます。ここでは、2018年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したXC60のクリーンディーゼルエンジン搭載車のスペックを紹介します。
XC60に搭載されるクリーンディーゼルエンジンは、環境性能だけではなく、ディーゼルの強みである高トルクやパワフルさも同時に追求します。そのため、オフロード走行においてのダイナミックな走り、坂道や高速道路での加速フィーリングにおいても世界トップレベルです。
低燃費も実現するボルボのクリーンディーゼルエンジンを搭載する「XC60」は、燃料代を気にする事なくロングドライブを楽しめる一台です。
全長 | 4,690mm |
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全幅 | 1,900mm |
全高 | 1,660mm |
ホイールベース | 2,865mm |
最低地上高 | 215mm |
車両重量 | 1,880kg |
乗車人数 | 5名 |
駆動方式 | 電子制御AWDシステム |
エンジン | D4204 水冷直列4気筒DOHC16バルブ (インタークーラー付ターボチャージャー) |
燃料供給装置 | 電子燃料噴射式 |
総排気量 | 1.968L |
燃料 | 軽油 |
最高出力 | 140kW/4,250rpm |
最大トルク | 400Nm/1,750‐2,500rpm |
燃費 | 16.1km/L |
クリーンディーゼル技術はポスト新長期規制をクリア
日本市場でディーゼル車を販売するには、2009年に制定されたディーゼル自動車排出ガス低減を定めた「ポスト新長期規制」と呼ばれる世界最高水準の排出ガス規制をクリアする必要があります。
日本は、高度経済成長期に多数の公害問題を発生させてしまった過去があるため、排出ガスに対しては厳格な基準を設けます。1980年代後半に国立環境研究所が、ディーゼル車の排気ガスに含まれる微小粒子状物質による影響について研究報告を発表してから、ディーゼル車への規制は強化されていきました。
社会の求めに応じて、ディーゼル車には、PMやNOx等の有害物質を大幅に低減する技術力が求められるようになりました。
マツダなどの各自動車メーカーは、低圧縮化技術や排出ガス浄化装置をディーゼルエンジンに組み込んだクリーンディーゼルエンジンを完成させて、世界一厳しいと言われる「ポスト新長期規制」をクリアします。
世界一厳しい日本の排ガス基準をクリアしたクリーンディーゼル車に乗ってみよう
ディーゼルエンジンはシリンダー内に混入した空気を圧縮させ、高温になったら燃料を噴射させ、燃焼を引き起して動力を得ますが、その過程で有害物質が生成されることが問題視されていました。
クリーンディーゼルエンジンは、燃料を噴射するタイミングを調整する、NOx後処理装置を設置する、低圧縮で燃焼させることで、PMなどの有害物質を大幅にカットします。
ディーゼルエンジンには、低速域でも高トルク走行を実現できる、ガソリン車よりも低燃費で二酸化炭素の排出量が少ないというメリットがあります。クリーンディーゼルでは、そういったメリットに有害物質を大幅にカットできる技術力も加わります。
日本は高度経済成長期の公害問題の反省を踏まえて、世界的にみても最も厳しい排気ガス規制を設けています。その排ガス規制をクリアした、クリーンディーゼル技術は世界トップレベルです。
ディーゼルエンジンを搭載する車の運転は、ガソリン車に慣れている方にとっては新鮮です。排気ガスを気にせずに、ロングドライブを楽しめるクリーンディーゼルエンジンを搭載した車に一度は乗ってみましょう!