パサートは現行9代目でワゴン専用へ TDIディーゼルは継続

フォルクスワーゲンの上級ワゴン/セダンとして知られる「パサート」は、世代を重ねて姿を変えてきました。日本では8代目B8が2015年に登場し、2018年2月14日には経済性に優れるディーゼル「TDI」が、同年10月31日にはクロスオーバー4WDの「パサート オールトラック」が追加されました。そして現在は、9代目(B9)へと移行し、ステーションワゴン専用のプレミアムモデルとして販売されています。人気のTDIクリーンディーゼルは新型でも継続しています。
ここでは、現行9代目への移行と最新の状況、そして8代目で追加されたパサートTDI/Alltrackのエクステリアやインテリア、ディーゼルエンジンの性能、装備、グレードや価格帯までを、現在の視点で整理します。
現行は9代目(B9) プレミアムワゴンとして2024年11月に日本発売
パサートは2023年に本国で第9世代(B9)へフルモデルチェンジし、日本でも2024年11月25日に販売が始まりました。価格は524万8000円からです。最大の変化は、これまでのセダンが廃止され、ステーションワゴン専用モデルへと一本化されたことです。プラットフォームは改良版の「MQB evo」で、姉妹車のシュコダ・スーパーブとともにスロバキアのブラチスラヴァ工場で生産されます。
日本仕様のラインアップは、1.5L eTSIマイルドハイブリッドの「eTSI エレガンスベーシック/エレガンス/Rライン」、2.0L TDIクリーンディーゼルに4WDを組み合わせた「TDI 4モーション エレガンス/Rライン」、そしてEV航続を大きく伸ばしたプラグインハイブリッドの「eハイブリッド エレガンス/Rライン」という構成です。PHEVのEV走行換算距離は142kmに達し、日常の多くを電気だけで賄えます。ホイールベースは先代比で50mm延長され、荷室容量は最大1,920Lと日本のワゴンとして最大級。アダプティブシャシーコントロールは2バルブ独立制御の「DCC Pro」へ進化し、駐車支援「Park Assist Plus」やEuro NCAPの最高評価となる5つ星の安全性能も備えます。かつて経済性を武器としたTDIディーゼルは、この新型でも4MOTIONとして生き続けている点が見どころです。
8代目(B8)は2023年に販売を終了 セダンは姿を消す
この記事が主に扱う8代目B8は、日本では2015年から2023年まで販売されました。9代目でセダンが廃止されたことにより、日本で選べるパサートはワゴンのみとなっています。世界的にもパサートのセダンは中国市場向け(マゴタン)を除いて姿を消し、ヴァリアントを主体とする体制へ移行しました。長くセダン/ワゴンの2本立てで親しまれてきたパサートにとって、これは大きな転換点といえます。
2022年にPHEV「パサートGTEヴァリアント」をバッテリー増強
電動化の流れの中で、8代目にはプラグインハイブリッドの「パサートGTEヴァリアント」も設定されていました。2022年4月には改良(B8.5)を受け、バッテリー容量を13kWhへ増強してEV走行可能距離を伸ばしています。あわせて外観デザインが刷新され、同一車線内全車速運転支援「Travel Assist」やLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」も採用されました。ただし当時は半導体不足の影響で供給が絞られ、年内の供給は50台程度にとどまる見込みとされていました。
2021年4月のマイナーチェンジで最新の運転支援を標準化
8代目パサートは2021年4月にマイナーチェンジを受け、フロント・リヤまわりの意匠を刷新しました。最新の運転支援システムを全車標準とし、価格は429万9000円からに設定されています。TDIでは「TDI Elegance」「TDI Elegance Advance」「TDI R-Line」などが用意され、Travel AssistやIQ.LIGHT、7速DSGといった装備で快適性と安全性を高めました。ディーゼルらしい力強いトルクと経済性はそのままに、装備面が現代的にアップデートされた改良でした。
2018年10月31日にクロスオーバー4WD「Alltrack」を追加
追加されたパサートオールトラックは雪の多い地域にうれしい4WD
2018年10月31日には、パサート ヴァリアントTDIをベースとする4WDモデル「Alltrack」が設定されました。同年2月に追加されたTDIの4WD版という位置づけで、車高を30mm高め、オールトラック専用の制御が与えられています。
フェンダーアーチをブラックの樹脂で覆うことでSUVらしい力強さを増し、クリーンディーゼルを搭載。アンダーガード付きバンパーやAlltrackエンブレムなどの専用エクステリアも備えます。グレードは標準の「TDI 4MOTION」と上級の「TDI 4MOTION Advance」の2種類でした。
ボディサイズは全長4,780mm・全幅1,855mm・全高1,535mmの3ナンバーサイズで、ホイールベースは2,790mm、最低地上高は160mmです。標準のヴァリアントと比べ、全長・全幅・全高のすべてで拡大しています。
| オールトラック | ヴァリアント | |
|---|---|---|
| 全長 | 4,780mm | 4,775mm |
| 全幅 | 1,855mm | 1,830mm |
| 全高 | 1,535mm | 1,485mm |
| ホイールベース | 2,790mm | 2,790mm |
| 最低地上高 | 160mm | 130mm |
全長はプラス5mm、全幅はプラス25mm、全高はプラス50mm、最低地上高は30mm高くなっており、雪道でもよほど深い場所でなければ底を擦りにくく、安心して走れる仕立てでした。ボディカラーは全6色で、ブルー系のほか2種類のホワイトやシルバーなどが用意され、オプションのオリックスホワイトは129,600円が加算されました。
パサートオールトラックのボディカラー
- アトランティックブルーメタリック
- パイライトシルバーメタリック
- ピュアホワイト
- ディープブラックパールエフェクト
- オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト
- マンガングレーメタリック
価格帯はTDI 4MOTIONが509万円、TDI 4MOTION Advanceが569万円でした。いずれも4WDの4MOTIONを搭載し、上級のAdvanceにはメモリー付きパワーシート、運転席・助手席のベンチレーション、18インチアルミホイールなどが加わります。
パサートオールトラックの価格帯
- TDI 4MOTION:5,099,000円
- TDI 4MOTION Advance:5,699,000円
Advanceで追加される標準装備・メーカーオプション
- ダイナミックコーナリングライト
- ダイナミックライトアシスト
- ヘッドライトウォッシャー
- Active Info Display
- 電動パノラマスライディングルーフ(オプション)
- ナパレザーシート
- トップコンフォートシート
- パワーシート(前後・高さ・角度・リクライニング)・運転席メモリー付き
- シートベンチレーション(運転席・助手席)
- アダプティブシャシーコントロール
- 電子制御式ディファレンシャルロック
- 245/45R18タイヤ・18インチアルミホイール
2018年に追加されたパサートTDI(8代目B8)の詳細
ここからは、8代目B8に追加されたパサートTDIの内容を振り返ります。ディーゼルならではの力強いトルクと低燃費、そして軽油による経済性が魅力のモデルでした。
パサートTDIで追加されたディーゼルエンジン

パサート/パサート ヴァリアントに搭載されたディーゼルは、直列4気筒ターボの2.0Lです。最高出力は140kW、最大トルクは400N・mで、1.4Lガソリンターボに比べ最高出力では及ばないものの、トルクは1.5倍以上を誇ります。低回転から分厚いトルクを発揮する特性は、余裕のある巡航を得意とします。
| 2.0TDI | 1.4TSI | 2.0R-Line | |
|---|---|---|---|
| 種類 | 直列4気筒ターボ | 直列4気筒ターボ | 直列4気筒ターボ |
| 使用燃料 | 軽油 | ハイオク | ハイオク |
| 排気量 | 1,968cc | 1,394cc | 1,984cc |
| 最高出力 | 140KW | 110KW | 162KW |
| 最大トルク | 400Nm | 250Nm | 350Nm |
| 燃費 | 20.6km/L | 20.4km/L | 15.8km/L |
燃費は20.6km/Lで、1.4Lガソリンモデルの20.4km/Lをわずかに上回り、当時のエンジンラインアップの中では最も優れた数値でした。使う燃料も軽油で、ハイオクを使うガソリンモデルより単価が安く、経済性の面で大きな強みがありました。
ラインアップは標準の「TDI Elegance line」と上級の「TDI High line」の2グレードです。ワゴンのヴァリアントにも同様に2種類が用意され、セダンよりおよそ20万円高い価格設定でした。
パサートTDIのエクステリア
セダン(パサート)
ワゴン(パサート ヴァリアント)
パサートにはセダンとワゴンの2ボディが設定され、セダンは「パサート」、ワゴンは「パサート ヴァリアント」と呼ばれます。2018年2月14日のディーゼル追加では、エクステリアの変更は行われていません。

リアビューはクーペ気味のスタイリッシュな造形で、テールランプにはLEDを採用。アンテナはシャークフィンタイプです。ボディカラーは全8色で、イメージカラーの「アトランティックブルーメタリック」などをそろえ、セダン・ヴァリアントで設定色は共通でした。
アトランティックブルーメタリック
パイライトシルバーメタリック
ピュアホワイト
ディープブラックパールエフェクト
ハーバードブルーメタリック
ブラックオークブラウンメタリック
マンガングレーメタリック
オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト
ボディサイズはディーゼル追加でも変わらず、セダンのパサートは全長4,785mm・全幅1,830mm・全高1,465mm・ホイールベース2,790mm。ワゴンのヴァリアントは全長4,775mm・全幅1,830mm・全高1,485mmで、全長はセダンのほうがわずかに長くなっています。
| パサート | ヴァリアント | |
|---|---|---|
| 全長 | 4,785mm | 4,775mm |
| 全幅 | 1,830mm | 1,830mm |
| 全高 | 1,465mm(High line:1,470mm) | 1,485mm(High line:1,510mm) |
| ホイールベース | 2,790mm | 2,790mm |
パサートTDIのインテリア

パサート、ヴァリアントのインテリアは5人乗りで、グレードによってシート素材が異なります。
パサートに設定されているシート素材
- チタンブラック/アルカンターラ&レザー(Elegance line)
- チタンブラック/ファブリック(Trend line)
- フリントグレー&チタンブラック/ナパレザー(R-Line)
- チタンブラック/ナパレザー(High line)
ファブリックやフリントグレーのナパレザーはガソリン(TSI)のTrend lineやR-Lineに設定され、ディーゼルのTDIには設定されていません。TDIでは、Elegance lineにアルカンターラとレザー、High lineにチタンブラックのナパレザーが与えられます。

コックピットは木目調加飾を用いた落ち着いたデザインで、センタークラスターにはアナログ時計を配置。その下にインフォメーションディスプレイやエアコンコントローラーが並び、シフトにはブーツが装着されます。ステアリングにはクルーズコントロールやナビの操作スイッチが備わります。メーターにはデジタルの「Active Info Display」が用意され、TDI High lineにオプションで装着できました。
パサートTDIの搭載装備

パサートTDI/パサート ヴァリアントTDIには、プリクラッシュブレーキの「Front Assist」、駐車を支援する「Park Assist」、後方視界を確保する「Rear View Camera」など、多彩な機能が搭載されます。
パサートTDIに搭載される安全装備
- ACC(アダプティブクルーズコントロール)
- Traffic Assist(渋滞追従支援システム)
- Lane Assist
- Side Assist Plus
- リヤトラフィックアラート
- パークディスタンスコントロール
- Front Assist(プリクラッシュブレーキシステム)
- 9つのエアバッグ
- ポストコリジョンブレーキシステムなど
これらは、事故を未然に防ぐ「予防安全」、万一の際に被害を抑える9つのエアバッグなどの「衝突安全」、事故後の二次被害を防ぐポストコリジョンブレーキシステムの「二次被害軽減」を柱とする「フォルクスワーゲン オールイン・セーフティ」として、全車に標準装備されていました。
パサートTDIの発売日・価格帯

パサートTDI/パサート ヴァリアントTDIの発売日は2018年2月14日で、価格は422万9000円からでした。セダンのパサートより、ワゴンのヴァリアントのほうがおよそ20万円高い設定です。
| パサート | ヴァリアント | |
|---|---|---|
| TDI Elegance line | 4,229,000円 | 4,429,000円 |
| TDI High line | 4,899,000円 | 5,099,000円 |
ガソリンの上級「TSI Elegance line」や最上級「TSI High line」と比べると、いずれも35万円ずつ高い価格でした。標準装備は渋滞追従の「Traffic Assist」、「パークディスタンスコントロール」、「ACC」などで、High lineにはリアビューカメラや純正インフォテインメントシステムが加わります。
TDI Elegance lineの標準装備
- リヤトラフィックアラート
- Traffic Assist
- パークディスタンスコントロール
- ACC
- LEDヘッドライトなど
ディーゼルターボモデルのパサートTDIモデルチェンジ遍歴
パサートTDI B8/2018年〜2023年
2018年2月14日、パサートとパサート ヴァリアントにディーゼルターボの「TDI」が追加され、「TDI Elegance line」「TDI High line」が設定されました。同年10月31日にはクロスオーバー4WDディーゼルの「Alltrack」が加わり、「TDI 4MOTION」「TDI 4MOTION Advance」を用意。2021年4月には日本仕様がマイナーチェンジを受け、「TDI Elegance」「TDI Elegance Advance」「TDI R-Line」などへと整理されました。8代目B8は日本で2023年まで販売されています。
パサート B9/2024年〜(現行)
2023年に本国で第9世代(B9)へ移行し、日本では2024年11月にワゴン専用のプレミアムモデルとして発売されました。TDIクリーンディーゼルは「TDI 4モーション」として継続し、1.5L eTSIマイルドハイブリッドやEV航続を伸ばしたPHEV「eハイブリッド」も加わっています。
| パサートのモデル | 販売年表 |
|---|---|
| B8(TDI追加) | 2018年〜2023年 |
| B9(現行・ワゴン専用) | 2024年〜 |
パサートTDIは経済的なディーゼルワゴン その魅力は現行9代目にも受け継がれる

8代目のパサートTDIは2.0Lディーゼルを搭載し、GTEのハイブリッドを除くラインアップの中でも20.6km/Lという優れた燃費を記録しました。燃料もハイオクではなく軽油のため、1リットルあたりの単価が安く済むのも魅力でした。

ガソリン車との価格差は35万円ほどありましたが、走行距離を重ねるほど燃料代で取り戻しやすく、ロングドライブが多い人や1台を長く乗る人に向いた選択肢でした。この「経済的なディーゼルワゴン」という性格は、TDI 4モーションを継続する現行9代目にも受け継がれています。ワゴン専用となり、マイルドハイブリッドやPHEVも加わって選択肢が広がったパサートは、実用性と経済性を求める人にとって、いまなお有力なステーションワゴンといえるでしょう。




























