スタッドレスタイヤのインチダウンによるメリットやデメリット
インチダウンとは、ほぼ同じタイヤ外径のままで、リム径(ホイールサイズ)を小さくすることをいいます。インチダウンをすると、図のようにタイヤが占める割合が高くなるほか、タイヤの幅が狭くなることで、乗り心地や燃費などに影響を与えるのです。
ここでは、インチダウンのメリットとともに、デメリットや注意点について解説。インチダウンの正しいやり方を理解して、車に合ったスタッドレスタイヤを選びましょう。
覚えておくべきタイヤのサイズ表記の見方
インチダウンについて知るために、まずは、タイヤサイズの見方を覚えておくと便利です。タイヤサイズとは、タイヤ側面のサイドウォール部に刻印されている、次のようなISOで定められたタイヤの情報のことをいいます。
「タイヤ幅」がタイヤの断面幅を指すのに対し、「扁平率」とはその断面幅に対する断面高さの割合を示す値で、扁平率が低いタイヤほど平べったくなります。また、「リム径」とはタイヤに装着しているホイールサイズのことをいいます。
さらに、「ロードインデックス(LI)」とは、タイヤが支えることができる負荷の大きさで、「速度記号(スピードレンジ)」が表す走行可能な最高速度とともに、タイヤの能力を表します。
なぜスタッドレスタイヤのインチダウンを行うのか?
スタッドレスタイヤのインチダウンにはメリットとデメリットがある
スタッドレスタイヤを購入する際、純正のタイヤサイズを選ぶことが基本ではありますが、特定の効果を得るために、あえて違うタイヤサイズを選ぶ場合があります。具体的にどんな効果があるのか、インチダウンのメリットについてみていきましょう。
メリット1.衝撃が抑えられて乗り心地が柔らかくなる
一般的に、扁平率が高いタイヤほどクッション性が高いため、快適性能が上がる傾向にあることから、インチダウンによって扁平率がアップすると、衝撃が吸収されて柔らかい乗り心地になります。
メリット2.純正サイズのタイヤより価格が安い
低扁平のスタッドレスタイヤは生産コストがかかる上、需要が少ないため、価格が割高になってしまいます。そのため、できるだけ安いスタッドレスを買うためには、インチダウンが効果的なのです。
メリット3.流通量の多いタイヤにすることで選択肢が広がる
需要が少ないタイヤサイズは、扱っているタイヤメーカーがあまり多くないため、流通量の多いサイズにインチダウンすることで、幅広いメーカーのスタッドレスの購入が可能になることがあります。
メリット4.転がり抵抗の低下により燃費が良くなる
インチダウンすると、タイヤ幅が狭くなってタイヤの接地面積が小さくなることで、タイヤにかかる転がり抵抗が抑えられるほか、ホイールサイズが小さくなると重量が減るため、燃費が向上します。
メリット5.ロードノイズが抑えられて走行音が小さくなる
低扁平のタイヤは路面の影響を受けやすいため、ロードノイズが大きくなるのに対して、高扁平のタイヤは、クッション性が高くふわっとした乗り心地になるため、ロードノイズが小さくなります。
知っておきたいインチダウンのデメリット
ここまで、インチダウンの良い面について見てきましたが、続いては、インチダウンをすることによって起こる悪い面について見ていきましょう。インチダウンには次のようなデメリットがあります。
インチダウンのデメリット
- 見た目が野暮ったくなる
- 操縦安定性が低下する
- コーナリング性能が下がる
- ブレーキ性能が下がる
- ハンドル応答性が悪くなる
インチダウンをするとリムの存在感が小さくなるため、ややスタイリッシュ感に欠けた印象になってしまいます。
さらに、扁平率が高くなるとタイヤがたわみやすくなるため、走りが不安定になってふらつきが起こりやすくなります。また、たわみが大きくなるほど、コーナリングの際やブレーキをかけた際の安定性が低くなります。
そのほかに、インチダウンによってタイヤの接地面積が小さくなることで、ハンドルの動きがタイヤに伝わりにくくなるため、応答性が低下するというデメリットもあります。
スタッドレスタイヤのインチダウンをする際の3つの注意点
タイヤのインチダウンは、ただ闇雲にリムを小さくすればいいというわけではありません。インチダウンをする際は、必ず次の3つのポイントに注意しましょう。
1.純正サイズとほぼ同じタイヤ外径のものを選ぶこと
インチダウンによってタイヤ外径が大きく変わってしまうと、スピードメーターに誤差が生じるため、インチダウンをする場合、できるだけタイヤ外径を変えないことが大切です。
あらかじめ、購入するタイヤの外径が純正タイヤのサイズに近いかどうかを、メーカーのサイトやお店で確認しておきましょう。また、タイヤ外径は、図にあるA(断面高さ)とB(リム径)の合計から算出することもできます。
扁平率は、タイヤの断面幅に対する断面高さの割合のため、逆に断面高の高さは、断面幅に扁平率を掛けることで求めることができます。また、リム外径をインチからミリに換算するために、1inch=25.4mmを掛ける必要があります。
これらを踏まえると、タイヤ外径は次のような計算式で求めることができます。
タイヤ外径を求める計算式
- タイヤ外径=(タイヤ断面幅 × 扁平率 × 2)+(リム径 × 25.4mm)
例えば、タイヤサイズが「195/65R15」の場合は、下の式のようにタイヤ外径を算出します。(195×0.65×2)+(15×25.4)= 634.5mm
2.純正サイズのロードインデックスと同じかそれ以上であること
インチダウンによって、タイヤが支えられる重さを示すロードインデックスが下がってしまうと、空気圧不足や過荷重によって、たわみやセパレーションが起こりやすくなります。最悪の場合、バーストにつながることから注意が必要です。
さらに、ロードインデックスの基準を満たしていない車は、原則として車検に通らないことから、車に合ったロードインデックスのタイヤ選びが重要になります。
3.タイヤが車体や部品に接触しない
基本的にタイヤのインチダウンでは、純正のタイヤサイズよりもタイヤ幅が広くなるようなことはありませんが、大きく外径誤差が生じて車体に接触したり、ホイールサイズが変わったことでブレーキキャリパーを干渉したりする可能性があり、整備不良車両として運転を禁止される恐れがあるだけでなく、走行にも影響を与える危険性があるため注意しましょう。
スタッドレスタイヤのインチダウンを失敗しないために
スタッドレスを購入する際は、できることなら純正装着しているタイヤと同じサイズを選ぶことが望ましいといえますが、「低予算に抑えたい」「純正サイズのスタッドレスが見つからない」など、やむを得ない事情があって行うという方もいることでしょう。
しかし、インチダウンのデメリットで述べたとおり、インチダウンをすることによって、ブレーキ性能やコーナリング性能が低下することから、アイスバーンや積雪路面で高い走行性能を求める場合は、あまりインチダウンはおすすめできません。
インチダウンの目的が明確になっていて、さらに、冬道の走行において安全性に問題がないということを確認の上、ショップに相談したり、メーカーのタイヤサイズ対応表を利用するなどして、あくまでも正しい方法でインチダウンを行いましょう。