車の内輪差と外輪差との違い

車の内輪差とは?外輪差との違いと縁石・巻き込みを防ぐ運転のコツ

車の内輪差とは何かを、外輪差との違いを交えながら説明。ホイールベースが長い大型車では、前輪と後輪の軌跡の差が生じやすい理由、路側帯にぶつからない・接触事故を起こさないためのハンドルを切るタイミングを遅らせるなどの運転をコツも紹介。

車の内輪差とは?外輪差との違いと縁石・巻き込みを防ぐ運転のコツ

車の内輪差とは?外輪差との違いと路側帯への接触を防ぐ運転のコツ

運転免許をお持ちの方であれば、「内輪差」という言葉を聞いたことがあると思います。特にトラックやバスなどの大型車を運転される方は、内輪差を常に意識して運転しなければ、歩行者との接触や、建物の角、電柱などへの衝突といった事故のリスクが格段に高まります。

内輪差とはそもそもどのような現象なのか、また、それとよく混同されがちな「外輪差」との違いについても詳しく紹介します。この記事を通じて、「内輪差」が発生するメカニズムを再確認し、路側帯に車体をぶつけたり、巻き込み事故を起こしたりしないための「運転のコツ」をつかみましょう。

内輪差とはカーブ時に前輪と後輪の軌道のズレが内側に発生する現象

内輪差とは前輪と後輪の軌道のズレ

交差点やカーブを曲がる際、道路脇にある縁石や路側帯に内側の後輪が乗り上げてしまった経験はありませんか?「前輪は道路上を通ったのに、後輪は思ったよりも内側を通って驚いた」—まさに、これが内輪差の正体です。内輪差は、車の構造上、避けられない物理現象です。

内輪差とはカーブのときに内側のタイヤの軌道に起こるズレです

車の内輪差とは、カーブや交差点を曲がる際に、内側の前輪が進んでいく軌道と、内側の後輪が進んでいく軌道との間に発生するズレのことを指します。「内輪差の仕組み」を理解することが安全運転につながります。

前輪は、ドライバーがハンドル操作によって曲がりたい方向へ直接動かすことができますが、後輪はハンドルでは動かすことができず、前輪の動きに少し遅れて付随して動きます。この後輪が前輪よりも遅れて進行方向に対して向きを変えることが、内輪差が発生する根本的な原因です。

普通車に比べてホイールベース(前輪の中心と後輪の中心との間の距離)が長いトラックなどの大型車ほど、この後輪の遅れが大きくなるため、内輪差も大きくなります。そのため、特に大型車を運転する際には、「内輪差対策」が必須となります。

外輪差とは内輪差とは逆の外側に起きる軌道のズレです

内輪差とよく比較され、混同されがちなのが外輪差です。外輪差は、車を右折や左折する際に、外側の前輪の軌道と、外側の後輪の軌道との間に発生するズレのことを指します。

車を前進させてハンドルを切るとき、前輪が後輪よりも外側に膨らむ軌道を描きます。この現象が外輪差です。外輪差は前進時にも発生しますが、ドライバーが特に注意すべきタイミングは、バックで車庫入れや縦列駐車から車を出すときです。前向きに駐車したケースでは、バックさせる際に外輪差で車体が大きく外側に膨らんでしまい、隣に停まっている車などとの接触事故が起こりやすくなります。この現象も「外輪差対策」が必要です。

内輪差を意識した縁石や路側帯との接触事故をなくすための運転テクニック

ドライビングテクニックに自信があるドライバー

サイドミラーを有効活用して内輪差によるズレをチェックします

道幅が狭い道路を左折する時には、内輪差が生じることで、車の左側面や後輪が縁石や電柱などの障害物と接触するリスクが高まります。このような状況では、サイドミラーを有効活用し、接触リスクがある車の左後輪付近の路面と障害物との間隔をチェックします。

もしも、サイドミラーで確認して接触の恐れがあると判断したら、焦らずに後続車などを確認して、車をいったん停止させ、ハンドルを少し戻してから再度切り直すことで、安全を確保しましょう。無理に曲がり切ろうとすると、接触事故につながります。

後ろのタイヤが描く軌跡をイメージしてハンドルを切ります

ハンドルを切る女性内輪差をイメージしてハンドルを切るのがポイント

どんなに注意して運転しても、車の構造上、カーブを曲がる際には内輪差が生じてしまいます。そのため、カーブを曲がる時には内輪差の発生を予測して、ギリギリのラインを通過しないような運転を心がけましょう。「計算」のように正確な数値は必要ありませんが、常に後ろのタイヤが前輪よりも内側を通るという軌跡をイメージしてハンドルを切ることで、路側帯に車体をこすったり、後輪を縁石に乗り上げさせたりするのを防ぐことができます。

カーブの曲率(曲がり具合)に対してハンドルを切り過ぎないようにします

それほど曲がり方がきつくはない緩やかなカーブなのに、必要以上にハンドルを切り過ぎてしまうと、大きく切ってしまった分だけ内輪差も大きく生じてしまいます。その結果、なだらかなカーブであっても、車体の一部を縁石などにこすりやすくなってしまいます。カーブの曲がり具合に対して、ハンドルを切り過ぎたと感じたら、逆方向へ少し戻して調整することがスムーズなコーナリングの秘訣です。

ハンドルを切るタイミングを少し遅らせてみます

後輪が縁石に乗っている

左折や右折するときに後輪や車のリヤ部分を頻繁に縁石にぶつけてしまうという方は、ハンドル操作のタイミングが早すぎる傾向があります。「縁石の乗揚げ」は、このタイミングのずれが原因で発生しやすいトラブルです。心当たりのある方は、交差点でハンドルを切り始めるタイミングを、車体が交差点の角を通り過ぎるのを待ってから、一呼吸遅らせることを意識してみましょう。これにより、縁石と車体がぶつかることのない、よりスムーズで安全なコーナリングが可能となります。

内輪差を気にして行う大回り運転は、接触事故や巻き込み事故の原因となる危険な行為です

後輪が乗り上げた車

左折する時、内輪差を意識しすぎて、いったん右にハンドルを切ってから、外側に大きく大回りをして曲がる運転方法をとるドライバーも見受けます。トラックなどのホイールベースの大きな車では、内輪差が大きくなる車の構造的特徴があるため、やむを得ずそういった大回りが必要になる場合もあります。しかし、乗用車の場合には、この大回り運転はリスクの大きい危険な運転方法です。

大回りをしてしまうと、自分の車と路側帯付近の間のスペースが広がり、そこにできた隙間を走行するバイクや自転車との巻き込み事故が起こりやすくなります。「巻き込み」は、特に左折時に注意すべき最大の危険です。また、大回りすることで、隣の車線や反対車線に車体の一部が大きくはみ出しやすくなり、そこを走っている車と接触事故を起こしてしまう可能性も高くなります。内輪差を意識しすぎるあまり、周囲の安全を損なわないよう注意しましょう。

縁石に乗り上げたときの脱出のコツは焦らずハンドルを操作せずにバックすることです

左折の際に気になる縁石

これまで軽自動車のような小型車を運転していた方が、ホイールベースや最小回転半径が長くなる5ナンバーや3ナンバーの車に乗り換えたときに、その車の運転に慣れるまでの間、縁石に乗り上げてしまうことはよくあります。「乗り上げ」は、車両感覚の変化によるものです。

縁石に乗り上げた軽自動車

教習所に通っていた時には経験があるかもしれませんが、久しぶりに縁石に乗り上げてしまうと焦ってしまいます。しかし、縁石に乗り上げてしまったら、ハンドルはそのままで、後方の安全確認を確実に行ってから、車をゆっくりとバックさせましょう。縁石に乗り上げた状態で、ハンドルをさらに切ってしまうと、車のボディと路側帯が接触して車体が傷つく可能性が高くなります。焦らず、落ち着いて操作することが大切です。

車の内輪差を意識することで事故のリスクを大幅に減らせます

車の内輪差

ホイールベースの長い車を運転している方は、カーブを曲がるときに内輪差が大きく発生しやすいので、常に後ろのタイヤが描く軌跡を意識してハンドルを切る必要があります。一方、軽自動車を運転されている方も、「自分は軽だから内輪差は気にしなくても大丈夫だ」という気の緩みが、接触事故や縁石への乗り上げの原因につながることがあります。

どんなに運転の上手な方であっても、カーブを曲がるときには車の構造上、内輪差は必ず発生します。「車には内輪差がつきものだ」と常に意識しながら運転することで、路側帯との接触や、巻き込み事故といったトラブルを確実に防ぐことができます。