車の内輪差と外輪差との違い

車の内輪差とは?外輪差との違いと縁石・巻き込みを防ぐ運転のコツ

左折時に右へふくらむ運転は、道路交通法第34条が定める左折方法に反し、違反点数1点の対象です。内輪差が生じる仕組みと車種別の目安、巻き込み事故を防ぐミラーの使い方、ハンドルを切るタイミングをまとめました。

車の内輪差とは?外輪差との違いと縁石・巻き込みを防ぐ運転のコツ

車の内輪差とは?外輪差との違いと路側帯への接触を防ぐ運転のコツ

運転免許をお持ちの方であれば、「内輪差」という言葉を聞いたことがあると思います。特にトラックやバスなどの大型車を運転される方は、内輪差を常に意識して運転しなければ、歩行者との接触や、建物の角、電柱などへの衝突といった事故のリスクが格段に高まります。

内輪差とはそもそもどのような現象なのか、よく混同される外輪差やオーバーハングとは何が違うのか、そして自分の車では何メートルのズレが生じるのかを、具体的な数値とともに紹介します。縁石への乗り上げや巻き込み事故を防ぐための運転のコツも、あわせて確認していきましょう。

内輪差とはカーブ時に前輪と後輪の軌道のズレが内側に発生する現象

内輪差とは前輪と後輪の軌道のズレ

交差点やカーブを曲がる際、道路脇にある縁石に内側の後輪が乗り上げてしまった経験はありませんか。前輪は道路上を通ったのに、後輪は思ったよりも内側を通っていた。これが内輪差の正体です。内輪差は、車の構造上、避けられない物理現象です。

内輪差とはカーブのときに内側のタイヤの軌道に起こるズレです

車の内輪差とは、カーブや交差点を曲がる際に、内側の前輪が進んでいく軌道と、内側の後輪が進んでいく軌道との間に発生するズレのことを指します。

前輪は、ドライバーがハンドル操作によって曲がりたい方向へ直接動かすことができますが、後輪はハンドルでは動かすことができず、前輪の動きに付随して動きます。後輪は旋回の中心に近い位置を通ることになるため、前輪より小さい半径の円を描きます。この半径の差が、そのまま内輪差になります。

普通車に比べてホイールベース(前輪の中心と後輪の中心との間の距離)が長いトラックなどの大型車ほど、前輪と後輪の位置関係が離れるため、内輪差も大きくなります。

外輪差とは後退するときに外側で起きる軌道のズレです

内輪差とよく比較され、混同されがちなのが外輪差です。外輪差とは、外側の前輪の軌道と、外側の後輪の軌道との間に生じるズレを指します。

外輪差が実際に問題になるのは、ハンドルを切りながら後退するときです。バックで旋回すると、外側の前輪が外側の後輪よりも大きな円を描いて外へ張り出していきます。前向き駐車した状態から後退して出るときや、縦列駐車のスペースから前へ出るときに、隣の車や壁に接触する原因になります。

前進中は、車体の後ろ側が内側へ入り込む内輪差に気を配り、後退中は、車体の前側が外側へ張り出す動きに気を配る。この切り替えができると、駐車場での接触は大きく減ります。

内輪差はホイールベースの3分の1が目安になります

自分の車でどれくらいのズレが生じるのかは、ホイールベースから概算できます。実務的に使われている簡易式は次のとおりです。

内輪差と外輪差の簡易的な求め方

  • 内輪差 ≒ ホイールベース × 3分の1
  • 外輪差 ≒ ホイールベース × 4分の1

この式を車種に当てはめると、感覚としてつかみやすい数値が出てきます。

車種の目安 ホイールベース 内輪差の目安
軽自動車 約2,460mm 約0.8m
コンパクトカー 約2,550mm 約0.85m
ミニバン 約3,000mm 約1.0m
小型トラック 約3,400mm 約1.1m
大型トラック 約6,000mm 約2.0m

軽自動車でも0.8mほどのズレが出ます。自転車が1台通れてしまう幅です。軽自動車だから気にしなくてよいという前提が、いかに危ういかがわかります。

ホイールベースは車検証に記載されています。乗り換えた直後は、以前の車との差を数値で確認しておくと、曲がり方の修正点が具体的につかめます。ホイールベースが30cm伸びれば、内輪差は10cm増える計算です。

オーバーハングによる振り出しは内輪差とは別の現象です

もう一つ、混同されやすいのがオーバーハングです。これは前輪より前、後輪より後ろに張り出した車体の部分を指します。

タイヤの軌道のズレである内輪差や外輪差に対して、オーバーハングによる振り出しは、車体そのものが外側へ動く現象です。ハンドルを切って曲がり始めると、リアオーバーハングが外側へ振り出し、隣の車線や後続車の前に出ていきます。トラックが交差点を曲がるときに荷台の後端が大きく膨らむのは、この動きによるものです。

乗用車でも、リアオーバーハングの長いセダンやワゴンでは、狭い駐車場から前進で出るときに後端が壁へ接近します。タイヤの位置だけを見ていると見落とす部分なので、車体の四隅がどこにあるかを意識する必要があります。

内輪差を意識した縁石や路側帯との接触事故をなくすための運転テクニック

ドライビングテクニックに自信があるドライバー

サイドミラーを有効活用して内輪差によるズレをチェックします

道幅が狭い道路を左折する時には、内輪差が生じることで、車の左側面や後輪が縁石や電柱などの障害物と接触するリスクが高まります。このような状況では、サイドミラーを有効活用し、接触リスクがある車の左後輪付近の路面と障害物との間隔をチェックします。

左のドアミラーが上向きに調整されていると、後輪の位置が映りません。ミラーの下側3分の1に自車のボディが入り、その下に路面が見える角度にしておくと、後輪と縁石の間隔がつかめます。

もしも接触の恐れがあると判断したら、焦らずに後続車などを確認して、車をいったん停止させ、ハンドルを少し戻してから再度切り直すことで、安全を確保しましょう。無理に曲がり切ろうとすると、接触事故につながります。

後ろのタイヤが描く軌跡をイメージしてハンドルを切ります

ハンドルを切る女性内輪差をイメージしてハンドルを切るのがポイント

どんなに注意して運転しても、車の構造上、カーブを曲がる際には内輪差が生じてしまいます。そのため、カーブを曲がる時には内輪差の発生を予測して、ギリギリのラインを通過しないような運転を心がけましょう。

目安になるのが、先ほど計算した内輪差の数値です。自分の車の内輪差が0.9mなら、前輪が縁石から1mほど離れたラインを通れば、後輪はぎりぎり縁石に触れないことになります。余裕を見るなら、前輪で縁石から1.2mから1.5mほど空けておくと安心です。

この距離感は、運転席からだと前輪の位置が見えないため、つかみにくい部分です。空いている駐車場で、白線を縁石に見立てて実際に曲がってみると、自分の感覚と実際のズレが確認できます。

カーブの曲率(曲がり具合)に対してハンドルを切り過ぎないようにします

それほど曲がり方がきつくはない緩やかなカーブなのに、必要以上にハンドルを切り過ぎてしまうと、大きく切ってしまった分だけ内輪差も大きく生じてしまいます。

内輪差は、ハンドルを切る角度が大きいほど増えます。同じ交差点でも、ハンドルを一気に回し切って小さく曲がるのと、少しずつ切り足して大きな弧を描くのとでは、後輪が通る位置が変わります。カーブの曲がり具合に対して切り過ぎたと感じたら、逆方向へ少し戻して調整することが、スムーズなコーナリングの秘訣です。

ハンドルを切るタイミングを少し遅らせてみます

後輪が縁石に乗っている

左折や右折するときに後輪や車のリヤ部分を頻繁に縁石にぶつけてしまうという方は、ハンドル操作のタイミングが早すぎる傾向があります。心当たりのある方は、交差点でハンドルを切り始めるタイミングを、一呼吸遅らせることを意識してみましょう。

目安として使いやすいのが、自分の体の位置です。運転席が交差点の角と並んだあたりから切り始めると、後輪が角を通過する頃にはすでに車体が曲がり切っている状態になります。角が見えた時点で切り始めてしまうと、後輪が角に向かって進んでいきます。

この一拍の差だけで、縁石との接触はかなり減ります。

速度を落としてから曲がり始めます

見落とされがちですが、最も効果の大きい対策が減速です。速度が乗ったまま曲がろうとすると、ハンドルを切る動作が急になり、後輪の位置を確認する時間も取れません。

曲がり始める前に速度を落としておけば、ミラーを見る余裕が生まれ、危ないと感じた時点で止まることもできます。接触の多くは、曲がりながら気づいたときにはすでに止まれない速度だった、という場面で起きています。

内輪差を気にして行う大回り運転は、接触事故や巻き込み事故の原因となる危険な行為です

後輪が乗り上げた車

左折する時、内輪差を意識しすぎて、いったん右にハンドルを切ってから、外側に大きく大回りをして曲がる運転方法をとるドライバーも見受けます。トラックなどのホイールベースの大きな車では、やむを得ずそういった操作が必要になる場合もあります。しかし、乗用車の場合には、この大回り運転はリスクの大きい運転方法です。

大回りをしてしまうと、自分の車と道路の左端との間にスペースが広がり、そこへ入ってきたバイクや自転車を巻き込む事故が起こりやすくなります。また、隣の車線や反対車線に車体の一部が大きくはみ出しやすくなり、そこを走っている車と接触する可能性も高くなります。

左折は道路の左側端に寄ってから曲がるのが法律上の方法です

右にふくらんでから左折する運転は、感覚的に危ないというだけでなく、法律上も認められていません。道路交通法第34条第1項は、左折の方法を次のように定めています。

道路交通法第34条第1項(左折又は右折)(注1)

車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて徐行しなければならない。

右へふくらむ操作は、この「できる限り道路の左側端に寄り」という条件を満たしません。交差点右左折方法違反にあたり、違反点数1点が科されます。

条文が左側端に寄ることを求めているのは、まさに二輪車や自転車が入り込む隙間を作らないためです。内輪差を避けようとしてふくらむ行為は、縁石との接触は防げても、人身事故のリスクを引き上げます。曲がれないと感じたときの正解は、ふくらむことではなく、減速して切り返すことです。

巻き込み事故は自転車との事故で大きな割合を占めます

警察庁が公表した自転車関連事故の分析では、自転車と自動車の事故のうち、右左折時の衝突が25%にあたる9,046件を占めています(注2)。最も多い出会い頭衝突の56%に次ぐ数字です。

左折時に後方から直進してくる自転車やバイクは、ドライバーの死角に入りやすい位置を走ります。ドアミラーに映らない範囲があるため、曲がる前には目視による確認が必要です。

左側端に寄せて走っていれば、自転車は追い越すために右側へ出るしかなくなり、死角に入り込む余地が減ります。寄せる操作は、内輪差との兼ね合いで難しく感じられますが、安全面では寄せたほうが有利に働きます。

縁石に乗り上げたときの脱出のコツは焦らずハンドルを操作せずにバックすることです

左折の際に気になる縁石

これまで軽自動車のような小型車を運転していた方が、ホイールベースや最小回転半径が長くなる5ナンバーや3ナンバーの車に乗り換えたときに、その車の運転に慣れるまでの間、縁石に乗り上げてしまうことはよくあります。

縁石に乗り上げた軽自動車

久しぶりに縁石へ乗り上げると焦ってしまいますが、ここでの対処は決まっています。ハンドルはそのままの角度で保ち、後方の安全確認を確実に行ってから、車をゆっくりとバックさせましょう。乗り上げた状態でハンドルをさらに切ると、タイヤの側面が縁石に押し付けられ、ボディも路側帯の構造物と接触しやすくなります。

前進して乗り越えようとするのも避けたい操作です。ホイールのリムが縁石の角に当たり、変形や亀裂につながります。入ってきた軌跡をそのまま戻るのが、最も傷みの少ない抜け方です。

降りてから確認したいタイヤとホイールのダメージ

脱出できた後は、安全な場所に停めてタイヤを確認してください。縁石に押し付けられたタイヤは、見た目に異常がなくても内部の繊維が切れている場合があります。

縁石に乗り上げた後の確認項目

  • タイヤの側面にこぶ状のふくらみ(ピンチカット)が出ていないか
  • 側面に深い傷や、繊維が見える損傷がないか
  • ホイールのリムに変形や欠けがないか
  • 走り出してからハンドルが取られたり、振動が出たりしないか

側面を手でなぞると、目では気づきにくいふくらみが指先に伝わってきます。こぶ状の変形が見つかった場合は、空気が抜けていなくても走行中に破裂する危険があるため、そのまま乗り続けずに点検を受けてください。

ハンドルが取られる、直進しているのに車が流れるといった症状が出たときは、ホイールアライメントが狂っている可能性があります。放置するとタイヤの片減りが進みます。

車の内輪差を意識することで事故のリスクを大幅に減らせます

車の内輪差

ホイールベースの長い車を運転している方は、カーブを曲がるときに内輪差が大きく発生しやすいので、常に後ろのタイヤが描く軌跡を意識してハンドルを切る必要があります。一方、軽自動車を運転されている方も、自分は軽だから気にしなくてよいという気の緩みが、接触や乗り上げの原因につながることがあります。軽自動車でも0.8mほどのズレは生じます。

押さえておきたいのは3点です。自分の車の内輪差はホイールベースの3分の1でおおよそ見積もれること。前進では後輪が内側へ、後退では車体の前側が外側へ動くこと。そして左折では右にふくらまず、左側端に寄せてから減速して曲がること。

どんなに運転の上手な方であっても、カーブを曲がるときには車の構造上、内輪差は必ず発生します。数値として把握し、タイヤの位置をイメージしながら曲がる習慣をつけることで、縁石への接触も巻き込み事故も確実に減らせます。