マイルドハイブリッド

マイルドハイブリッドとは?ストロングハイブリッドとの違いと48Vが欧州で普及した理由

欧州車に多い「48Vマイルドハイブリッド」って何?日本のスズキのマイルドHVとどう違う?ストロングハイブリッドとの燃費・コスト・EV走行の違い、EUの罰金規制が普及を後押ししたしくみをまとめました。

マイルドハイブリッドとは?ストロングハイブリッドとの違いと48Vが欧州で普及した理由

マイルドハイブリッドとは?ストロングハイブリッドとの違いと48Vが欧州で普及した理由

ハイブリッドカーは設計方式やモーターの活用法の違いによって、「プラグインハイブリッド」「シリーズハイブリッド」「マイルドハイブリッド」など複数の種類に分けられます。

このページでは、欧州の主要メーカーが積極的に採用する「48Vマイルドハイブリッド」に焦点をあて、トヨタが得意とするストロングハイブリッドとの仕組みの違い、欧州での普及背景、注目車種を解説します。

マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドを比較

充電中の電気自動車

マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドを、製造コスト・燃費改善効果・EV走行能力・税制面で比較すると以下のとおりです。

マイルドハイブリッド ストロングハイブリッド
製造コスト 低額 高額
燃費改善効果 低い(最大10〜20%程度) 高い
EV走行 短時間または不可 長時間可能
エコカー減税・グリーン化特例 減税率が小さい 減税率が大きい

燃費改善効果だけを見ればストロングハイブリッドが優れていますが、マイルドハイブリッドは低コストで広く搭載できるのが最大の強みです。特に欧州では、EU環境規制への対応手段として効率よく導入できることから、多くのメーカーが採用しています。

ストロングハイブリッド方式の特徴とデメリット

ストロングハイブリッドTHS2の仕組み

ストロングハイブリッド方式は、トヨタのTHS2(トヨタ・ハイブリッドシステム2)に代表されるように、大容量バッテリーと高出力モーターを組み合わせたシステムです。バッテリーに蓄えた電力でモーターのみによる走行が長時間可能で、走行シーンに応じてエンジンとモーターを最適に使い分けることで大きな燃費改善効果を発揮します。

ストロングハイブリッド方式では、モーターもエンジンと同様に主力の動力源として機能します。その分、エンジン機構とモーター機構を作動させるシステムが複雑になるため開発費が高くなり、搭載車の販売価格も高くなります。また、各ユニットを構成するパーツが故障した際の交換費用が高額になる点もデメリットとして挙げられます。

マイルドハイブリッド方式の特徴とデメリット

マイルドハイブリッドの仕組み

マイルドハイブリッドは、日本ではスズキがクロスビーやワゴンR、スイフトなどに積極的に採用してきたシステムです。

マイルドハイブリッド方式では、モーターはサポート役に徹します。エンジン効率が悪くなる発進・クリープ走行時や加速時にモーター出力をアシストとして加えますが、モーターのみでの走行は基本的にできないか、可能であっても短時間に限られます。

仕組みはシンプルで、ガソリン車のパワーユニットに小型モーター1個と電池を組み込むだけで完成します。ストロングハイブリッドと比べて大幅に低コストで製造できるのが最大の利点です。回生ブレーキとモーターで作られた電気はエンジンのアシストに使われるほか、エアコンなどの電装品への電力供給にも活用されます。

48Vマイルドハイブリッドとは?欧州標準規格「LV148」の誕生

5代目 A6セダンのエクステリア5代目 A6セダン

欧州車で広く普及している「48Vマイルドハイブリッド」は、ドイツの主要メーカーが主導して策定した標準規格に基づくシステムです。アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェ、ダイムラー(現メルセデス・ベンツ)、BMWの5社が2011年に共同規格化に合意し、2013年に標準規格「LV148」を策定。ボッシュ、コンチネンタル、ヴァレオなど欧州サプライヤーがこの規格に沿った部品を供給し、2016年以降の量産車に続々と採用されています。

従来12Vが主流だったマイルドハイブリッドの電圧を48Vに引き上げることで、システムの効率化とモーターの高出力化を実現し、燃費を最大10〜20%改善できます。また、60V未満という電圧帯は安全規制上の強化対策が不要な水準で、ストロングハイブリッドに比べて大幅に低コストでシステムを構築できるのも採用が広がった理由のひとつです。

この規格の特徴は、特定メーカーの独自技術ではなく、複数のサプライヤーが規格に沿った製品を供給するオープンな標準規格である点です。自動車メーカーは好みのサプライヤーから部品を選択でき、導入のハードルが低くなっています。

欧州で48Vマイルドハイブリッドのニーズが高まった理由:EU環境規制

AMG GTクーペのエクステリアAMG GTクーペ

欧州メーカーが48Vマイルドハイブリッドを急速に採用拡大した背景には、EUの厳しいCO2排出規制があります。EUは2021年から、EU域内で販売する乗用車のメーカー平均CO2排出量を走行1kmあたり95g以下に制限する規制(CAFE方式)を施行しました。超過分には1gあたり約1万2,000円の罰金が課せられ、フォルクスワーゲンは2020年時点での未達成を理由に約200億円の罰金を支払っています。

ディーゼル車の排ガス不正問題が発覚して「クリーンディーゼル」戦略が崩れ、トヨタのようなストロングハイブリッド技術では後れをとるという状況の中、欧州メーカーにとって低コストで幅広い車種に展開できる48Vマイルドハイブリッドは現実的かつ即効性のある対策でした。

EU規制はさらに厳しくなっており、2025年からは2021年比で15%削減が義務付けられています。現時点(2024年実績)でこの目標値をクリアしているのはテスラとボルボのみで、大半のメーカーは対応を迫られています。また、EUは2035年に新車販売でのゼロエミッション100%(実質的なエンジン車販売禁止)を定めており、EVシフトが進む中間期の過渡的技術としても48Vマイルドハイブリッドの役割は続く見通しです。

48Vマイルドハイブリッド搭載の注目車

欧州メーカーを中心に、大衆車から高級車まで幅広い車種に48Vマイルドハイブリッドが採用されています。代表的な搭載車種を紹介します。

VWゴルフ8:世界的大衆車に標準装備

ゴルフ8のエクステリア48Vマイルドハイブリッド「eTSI」搭載のゴルフ8

2019年12月に登場したフォルクスワーゲン8代目ゴルフ(ゴルフ8)は、世界累計販売台数3,500万台を誇るCセグメント大衆車の代表格です。EU環境規制への対応として48Vマイルドハイブリッドシステム「eTSI」を採用し、ガソリン車と比較して約10%の燃費向上を実現しています。ガソリンモデル、ディーゼルモデル、eTSI(ガソリン+マイルドハイブリッド)の3タイプをラインナップし、大衆車にも48Vを標準的に搭載できることを証明しました。

スズキ:欧州向けモデルに48V採用、国内は12Vが主流

スズキは欧州販売のスイフトスポーツ、ビターラ(日本名:エスクード)、S-Cross(日本名:SX4 Sクロス)などに48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載しています。国内ではワゴンRやスペーシアなどに12Vマイルドハイブリッドを採用しており、欧州向けと国内向けで電圧の異なるシステムを使い分けています。新開発の「K14D」エンジンと48Vを組み合わせることで最大15%の燃費向上が見込めます。重量増加も15kg未満に抑えられており、スズキのコンパクト設計へのこだわりがここにも表れています。

トヨタ:欧州向けで初採用を拡大

ストロングハイブリッドを得意とするトヨタも、欧州市場向けに48Vマイルドハイブリッドの採用を進めています。欧州向けのハイラックスに初めて搭載し、さらにランドクルーザー250の欧州仕様にも2025年から設定されました。国内向けには用意されていない欧州専用のパワートレインとして位置づけられており、欧州規制への対応が主な理由です。

EVが普及するまでの現実解:マイルドハイブリッドの役割

マイルドハイブリッド

日本では、トヨタがストロングハイブリッドを、日産がシリーズハイブリッドをそれぞれ主力に展開する一方、マイルドハイブリッドを積極展開するのは主にスズキ(国内は12V)とマツダです。一方、欧州では48Vマイルドハイブリッドがすでに多くの新型車に標準的に搭載される技術となっています。

EU規制の強化は今後も続き、2030年には2021年比で37.5%のCO2削減が求められます。EVシフトが進む中でEV市場は一時的な停滞も見せており、EVへの完全移行が実現するまでの現実的な橋渡し役として、48Vマイルドハイブリッドの重要性は今後もしばらく続く見通しです。欧州の規制に対応しなければならない日本メーカーにとっても、欧州向けモデルへの48V採用拡大は避けられない流れといえるでしょう。