トヨタの新型パワートレインの特長と今後の流れについて
2018年2月26日のプレスリリースにて、トヨタはTNGAのもとで開発を進めていく「新型パワートレイン」についての発表を行いました。
4代目プリウスから、導入されるトヨタのプラットフォーム「Toyota New Global Architecture(TNGA)」は、もっといいクルマづくりをテーマに掲げ、車の基本性能等の向上を目指します。
ここでは、TNGAのもとで開発される「ダイレクトシフト-CVT(Direct Shift-CVT)」や「ダイナミックフォースエンジン2.0(Dynamic Force Engine 2.0L)」などのトヨタ新型パワートレインの特長や、今後の動向についても詳しく紹介していきます。
新型無段変速機(CVT)「ダイレクトシフト-CVT(Direct Shift-CVT)」の特長
トヨタが今後、TNGAで採用する新型無段変速機「Direct Shift‐CVT」は、トランスミッションの性能に直結する「伝達効率」「エンジン高効率領域」「高応答変速」を高水準化するために、機械損失を低減させ、ワイドレンジ化を実施し、変速追従性をアップさせます。
それら技術力を組み合わせることで、「Direct Shift‐CVT」は現行モデルと比較すれば、優れた燃費性能が達成され、より刺激的な加速フィーリングを体感できます。
無段変速機(CVT)では世界初となる発進用ギヤを採用
トヨタの新型無段変速機では、ベルト効率の悪い、ロー側使用時の伝達力をアップさせるため、乗用車のCVTでは世界初となる発進用ギヤを採用します。設置効果で、発進時にはギヤ駆動が可能となり、スムーズで心地良いスタート感覚を体感できます。
ギヤとベルトの切換えはAT技術で培われたハイレスポンスの変速制御技術を採用します。
ベルト狭角化で動力のロスを無くし効率的な伝達を促す
Direct Shift‐CVTでは、ベルトの角度を11度から9度に狭め、動力をロスなく伝達することで、変速速度はアップします。
プーリー部の小型化で変速応答性を向上
Direct Shift‐CVTは、発進用ギヤを採用することで、従来タイプのCVTと比較すれば、入力作動時にかかる負荷を軽減します。また、プーリー部のサイズダウンを行うことで、変速応答性はアップさせます。
新型6速マニュアルトランスミッション(6MT)の特長は「コンパクトなサイズ」
トヨタは、ヨーロッパなどで拡大するグローバルな市場のニーズに応えるために、6速マニュアルトランスミッションの開発も行います。
新型6速MTは、従来モデルと比較すれば、全長は24mmも縮小され、質量を7kgもダウンし、世界トップレベルのコンパクトサイズとなりました。車両重量に占める割合の大きいトランスミッションの小型化は、搭載する車に更なる低燃費をもたらします。
新型6速MTでは、内部パーツの性能アップを組み合わせる事で、伝導効率においても世界トップの数値を実現します。また、シフトチェンジする際には、自動でエンジンの回転数にタイミングを合わせ、ドライバーに不快感を与えないようにスムーズな変速操作を可能とするiMT制御方式を採用します。
許容トルク | 280Nm |
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質量 | 40kg |
コントロールタイプ | ケーブル式 |
シンクロ設定 | 前進段、後進段フルシンクロ |
新型直列4気筒2.0L直噴エンジン「ダイナミックフォースエンジン2.0(Dynamic Force Engine 2.0L)」の特長
新開発の直列4気筒2.0L直噴エンジン「Dynamic Force Engine(2.0L)」は世界トップレベルの熱効率を実現する高出力エンジンです。
40%にも達する最大熱効率は、バルブ挟み角度を拡げる等の高度燃焼技術の進化に、電動ウォーターポンプ等の可変冷却システムを見直したりする事で実現します。
トヨタの新型エンジンは環境性能も高めて、ULEV50等の排ガス規制の基準値をクリアし、これからの時代のニーズにも応えます。
新型エンジン(コンベ用) | 新型エンジン(HV用) | |
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排気量 | 1.986cc | 1.986cc |
内径×行程 | 80.5mm×97.6mm | 80.5mm×97.6mm |
圧縮比 | 13 | 14 |
燃料噴射システム | D‐4S | D‐4S |
最高出力 | 126kW/6,600rpm | 107kW/6,000rpm |
最大トルク | 205Nm/4,800rpm | 108Nm/4,400rpm |
排出ガス規制対応 | ULEV50 | ULEV50 |
「Dynamic Force Engine(2.0L)」は、レーザーを用いてクロスハッチ状の溝をスカート表面に施す新技術「レーザーピットスカートピストン」を採用します。同技術によって、低フリクション化が達成され、耐スカッフ性はアップします。
新型エンジンは、従来エンジンと比較すると、あらゆる回転域でのトルク値がアップされ、低燃費領域が拡大されます。
新型エンジンは高回転域では、直噴のみを使い充填効率をアップさせ、高圧縮比化で出力の向上を実現します。低・中回転域では、直噴射とポート内噴射を同時利用し、吸気と燃料の混合比を改善させ、高出力化と燃費の向上を達成します。
新たなハイブリッドシステム「2.0L トヨタハイブリッドシステム(THS2)」の特長
「2.0L トヨタハイブリッドシステム(THS2)」は、4代目プリウスから導入させる軽量化・省エネ等の技術力をベースとして、走行性能をアップさせます。
新たなハイブリッドシステムでは、モーターやジェネレーターなどのパーツの小型化や動作効率アップを実現します。
車のスピードを落とす際には、タイヤの回転運動でモーターの充電を行い、蓄えられた力は車を動かすために再利用します。停車状態では、全てのユニットを停止させることで、エネルギーロスを少なくします。
小型化されるパワーコントロールユニットは、トランスアクスルの上部エリアに搭載しコンパクトなユニットレイアウトを達成します。パワースタックを構成するユニットである冷却器は、動作性を高める事で、低燃費を実現させます。
新構造を採用するモーターは、コイル線の使用量を減らす・電磁鋼板の改良を加える、リダクションギヤの平行軸歯車化を行って、作動中のエネルギーロスを少なくします。
トランスアクスルタイプ | 2モーター機械分配式 |
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モータータイプ | 交流同期 |
モーター最高出力 | 80kw |
モーター最大トルク | 202Nm |
「新型Ni-MHバッテリー」は、電池パックの設計を改めて、冷却システムをコンパクトにすることで、THS2の小型化に貢献します。
ハイブリッドシステムの小型化は、タイヤの可動域を拡げることに繋がり、小回り利く車の開発をアシストします。
従来1.8Lモデル | 新型2.0L専用モデル | |
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総電圧 | 201.6V | 216.0V |
容量 | 6.5Ah | 6.5Ah |
セル数量 | 168個 | 180個 |
新型RAV4に搭載予定の新たな4WDシステム「ダイナミックトルクベクタリングAWD(Dynamic Torque Vectoring AWD)」「新型E-Four」の特長
トヨタは、更なる低燃費を目指すため、四輪駆動車での操縦安定性・走破性をアップさせるために、新たな4WDシステムを開発します。
今後、トヨタのエンジン車が採用する新システム「Dynamic Torque Vectoring AWD(ダイナミックトルクベクタリングAWD)」では、走行状況に応じて後輪のトルクを左右独立で制御できるトルクベクタリング機構を採用します。前後輪の車輪軸には、世界初となる「ラチェット式ドグクラッチ」を装備します。
2WD走行モードでは、後輪に動力を効率的に伝達する、駆動システムの回転を状況に応じてストップさせエネルギーロスを大幅にカットし、低燃費を実現させる「ディスコネクト機構」を採用します。
トヨタのハイブリッド車が今後、採用する「新型E-Four」では、電気の力で駆動する後輪のトルクを従来モデルよりも1.3倍に増やして、走行状況に応じた適切なレスポンスを後輪に伝える新制御方式を導入します。
「ダイナミックトルクベクタリングAWD」及び「新型E-Four」は、共にエンジン・トランスミッション・ブレーキ等の統合制御を可能とする「AWD Integrated Management(AIM)」をシステムに組み込む事で、あらゆる路面状況に応じた、ストレスのない操縦安定性と優れた走破性が実現されます。
また2019年4月10日に日本で販売する新型RAV4にもこの新たなAWDシステムが採用されます。
トヨタの新型パワートレインはドライバーと環境に優しい
トヨタは2021年までに、エンジン車では9機種、ハイブリッド車では6機種に新型パワートレインを搭載させる予定です。
「Dynamic Torque Vectoring AWD」あるいは、「新型E-Four」を採用する新型4WDシステムの搭載は3機種が予定されています。
トヨタは、2023年の日本・アメリカ・欧州・中国といったメイン市場において、TNGAのパワートレインを搭載する車の販売比率が80%を越えると予想します。
トヨタの新型パワートレインを搭載する車が8割を超える事で、同時期には、二酸化炭素の排出量が20%近くも削減できると見込まれます。
高い環境性能も誇るトヨタの新しいパワートレインは、2018年春以降より、搭載する車種を増やしていきます。今後は、エンジン車やハイブリッド車だけではなく、未来の車社会の主役である電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)にも、より進化したトヨタの新型パワートレインが搭載されていきます。