トヨタTNGA新型パワートレインの特長まとめ|CVT・エンジン・ハイブリッド・AWD
トヨタは2018年2月、プラットフォーム「TNGA(Toyota New Global Architecture)」のもとで開発した新型パワートレイン群を発表しました。CVT・6速MT・2.0L直噴エンジン・ハイブリッドシステム・新型4WDと、複数のユニットを一斉に刷新し、燃費・走行性能・環境性能の大幅な向上を目指した内容です。これらのユニットは、その後カローラやカムリ、RAV4、ハリアーなど、現在も街中で多く見かける主力モデルへと広く展開されていきました。
この記事では、各パワートレインの技術的な特長・スペック・搭載車種を詳しく解説します。カタログの数値だけでなく、それが実際の走りにどう表れるのかという視点も交えて見ていきます。
新型CVT「ダイレクトシフト-CVT」|世界初の発進用ギヤを搭載

新型無段変速機「Direct Shift-CVT」は、従来CVTの課題だった発進時の伝達ロスを解消するため、乗用車向けCVTとして世界初となる発進用ギヤを採用しました。発進時はギヤ駆動を使い、速度が上がった段階でベルト駆動へ切り替えることで、スムーズな加速と低燃費を両立します。

主な技術改良のポイントは以下の3つです。
- 発進用ギヤの採用:ベルト効率の低いロー側使用時の伝達力を向上。ギヤとベルトの切り替えには、AT開発で培った高応答変速制御技術を使用。
- ベルト狭角化:ベルトの角度を従来の11度から9度に縮小し、動力伝達ロスを低減。変速速度も向上。
- プーリー小型化:発進用ギヤの採用により入力時の負荷が軽減され、プーリーのサイズダウンが可能に。変速応答性が向上。

これらを組み合わせることで、従来モデルと比べて燃費性能が向上し、より力強い加速フィーリングを実現します。実際に乗ると効果が分かりやすいのが発進時で、アクセルを踏んだ瞬間の駆動力の立ち上がりがダイレクトになり、CVT特有の「エンジン回転だけが先に上がって加速がついてこない」ラバーバンド感が抑えられています。このDirect Shift-CVTは、カローラやカムリ、C-HRなど、TNGA世代の幅広いモデルに採用されました。
新型6速マニュアルトランスミッション(6MT)|世界トップレベルのコンパクト設計

欧州などMT需要の高い市場に向けて開発された新型6速MTは、従来モデルと比べて全長24mm短縮・質量7kg軽量化を達成し、世界トップレベルのコンパクトサイズを実現しました。トランスミッションの軽量化は車両全体の燃費改善にも直結します。
また、シフトチェンジ時にエンジン回転数を自動で合わせる「iMT(インテリジェントMT)制御」を採用し、不快なショックなくスムーズなシフト操作を可能にしています。これはシフトダウン時に自動でブリッピング(回転合わせ)を行う仕組みで、ヒール&トウのテクニックがなくても変速ショックを抑えられるため、MTに不慣れな人でも扱いやすいのが特長です。日本国内ではカローラスポーツなどに設定され、自分でギヤを操る楽しさを残しつつ街乗りでの扱いやすさを両立しています。
| 許容トルク | 280Nm |
|---|---|
| 質量 | 40kg |
| コントロールタイプ | ケーブル式 |
| シンクロ設定 | 前進段・後進段フルシンクロ |
新型2.0L直噴エンジン「ダイナミックフォースエンジン」|最大熱効率40%を実現

新型直列4気筒2.0L直噴エンジン「Dynamic Force Engine(2.0L)」は、最大熱効率40%という世界トップレベルの数値を達成した高効率エンジンです(ハイブリッド用は圧縮比をさらに高め、熱効率41%に達します)。バルブ挟み角の拡大による高速燃焼技術と、電動ウォーターポンプを活用した可変冷却システムの組み合わせで実現しています。熱効率が高いほど同じガソリンからより多くの動力を取り出せるため、燃費の良さに直結します。
噴射システムには高回転域では直噴のみ、低・中回転域では直噴+ポート噴射を併用する「D-4S」方式を採用。全回転域でのトルク向上と低燃費領域の拡大を両立しています。また、ピストンスカート表面にレーザーでクロスハッチ溝を刻む「レーザークラッドバルブシート」をはじめとする低フリクション技術により、摩擦損失の低減と耐久性向上も達成しています。この2.0Lエンジンは、カムリやRAV4、ハリアー、カローラなどに搭載され、扱いやすいトルクと低燃費を両立する主力ユニットとなりました。
| コンベンショナル用 | ハイブリッド用 | |
|---|---|---|
| 排気量 | 1,986cc | 1,986cc |
| 内径×行程 | 80.5mm×97.6mm | 80.5mm×97.6mm |
| 圧縮比 | 13 | 14 |
| 燃料噴射システム | D-4S | D-4S |
| 最高出力 | 126kW/6,600rpm | 107kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 205Nm/4,800rpm | 108Nm/4,400rpm |
| 排出ガス規制 | ULEV50対応 | ULEV50対応 |
新型ハイブリッドシステム「2.0L THS II」|小型化でより軽快な走りを実現

新型「2.0L トヨタハイブリッドシステム(THS II)」は、4代目プリウスで培った軽量化・省エネ技術をベースに、走行性能をさらに高めたシステムです。モーター・ジェネレーター・パワーコントロールユニット(PCU)のすべてを小型化・高効率化しています。1.8Lのハイブリッドが燃費寄りのキャラクターだったのに対し、2.0L THS IIは加速の伸びを重視しており、高速の合流や追い越しでも余裕が感じられるのが体感上の違いです。
PCUはトランスアクスル上部に搭載するコンパクトレイアウトを採用。新構造のモーターはコイル線量の削減・電磁鋼板の改良・リダクションギヤの平行軸歯車化によって作動中のエネルギーロスを低減しています。また、ハイブリッドシステムの小型化はタイヤの可動域拡大にもつながり、小回り性能の向上にも貢献します。この2.0L THS IIは、カムリやRAV4、ハリアー、カローラなどのハイブリッドモデルに展開されました。
| トランスアクスルタイプ | 2モーター機械分配式 |
|---|---|
| モータータイプ | 交流同期 |
| モーター最高出力 | 80kW |
| モーター最大トルク | 202Nm |
バッテリーは新型Ni-MH(ニッケル水素)バッテリーを採用。従来の1.8Lモデルと比較してセル数を168個から180個に増やし、総電圧も201.6Vから216.0Vに向上しています。電池パックの設計見直しと冷却システムのコンパクト化により、THS II全体の小型化に貢献しています。ニッケル水素電池は寒さに強く長寿命で、長く乗っても劣化しにくい特性があり、中古でTNGA世代のハイブリッドを選ぶ際の安心材料にもなります。
| 従来1.8Lモデル | 新型2.0L専用モデル | |
|---|---|---|
| 総電圧 | 201.6V | 216.0V |
| 容量 | 6.5Ah | 6.5Ah |
| セル数 | 168個 | 180個 |
新型4WDシステム「ダイナミックトルクベクタリングAWD」「新型E-Four」|RAV4にも搭載

トヨタは操縦安定性・走破性・低燃費を高次元で両立するため、エンジン車向けとハイブリッド車向けそれぞれに新型4WDシステムを開発しました。同じ4WDでも、ガソリン車は機械式、ハイブリッド車はモーター式と仕組みが異なる点がポイントです。
エンジン車向け「ダイナミックトルクベクタリングAWD」は、走行状況に応じて後輪の左右トルクを独立制御するトルクベクタリング機構を採用。コーナーで外側の後輪により多くの駆動力を配分することで、狙ったラインで曲がりやすくなります。前後輪の車輪軸には世界初の「ラチェット式ドグクラッチ」を装備し、2WD走行で十分な場面では後輪への動力伝達を切り離す「ディスコネクト機構」によってエネルギーロスを大幅に削減します。これにより、4WDでありながら燃費の悪化を抑えられるのが大きな利点です。
ハイブリッド車向け「新型E-Four」は、後輪を電気モーターで駆動し、そのトルクを従来モデル比1.3倍に増大。プロペラシャフトを使わずに後輪を駆動するため、雪道や滑りやすい路面での発進・走行を電子制御で素早くアシストできます。
両システムとも、エンジン・トランスミッション・ブレーキを統合制御する「AWD Integrated Management(AIM)」を採用することで、あらゆる路面でのスムーズな走行を可能にしています。雪国での発進や雨天の高速走行など、4WDの恩恵が実感しやすい場面で安心感につながる仕組みです。新型RAV4(2019年4月日本発売)にもこの新型AWDシステムが搭載されています。
TNGAパワートレインの普及状況と今後の展開

2018年の発表時点では、エンジン9機種・トランスミッション4機種・ハイブリッドシステム6機種を2021年までに投入する計画でした。その後は計画に沿って搭載車種を拡大し、現在では国内外の主要モデルの多くがTNGAをベースに開発されるまでに普及が進んでいます。発表時には「2023年に主要4市場(日本・米国・欧州・中国)での販売比率80%超・CO₂排出量18%以上削減」という目標を掲げており、TNGAの展開はこの計画に沿って進められてきました。一台ごとの燃費・走行性能の底上げが積み重なることで、ブランド全体の環境性能を引き上げる狙いです。


電動化の分野では、EV向けプラットフォーム「e-TNGA」を採用したbZシリーズが市場投入されてきました。2023年にはその先を見据えた次世代BEVの構想が示され、航続距離の大幅な延長を狙う新型電池とともに2026年の導入を目指して開発が進められましたが、世界的なEV需要の鈍化を受けて、2026年には次世代EVの量産計画が見直され、需要の高いSUVなどへ開発資源を集中する方針へと転換されています。一方で、全固体電池をはじめとする次世代電池の研究開発は継続中です。ガソリン車・ハイブリッド車で培ったTNGAの技術思想は、ハイブリッド・PHV・EV・FCVといった多様なパワートレインへと受け継がれており、トヨタは状況に応じて複数の選択肢を用意する「マルチパスウェイ」の姿勢で開発を続けています。




























