ディーゼル車のエンジンオイル交換

ディーゼル車のエンジンオイル交換~メーカー別推奨時期と商品

ディーゼル車のオイル交換、マツダやボルボといった国内外のディーゼル車の開発・販売に積極的なメーカー別推奨時期や純正オイルの特徴を紹介。SAE規格などの読み解き方、湿潤・冷却などのエンジンオイルの役割、カー用品店に依頼した際にかかる費用の目安も取り上げ。

ディーゼル車のエンジンオイル交換~メーカー別推奨時期と商品

ディーゼルエンジンのオイル交換~メーカー別推奨時期・費用目安と重要性

ディーゼル車の開発・販売に積極的な主要メーカーが推奨するエンジンオイル交換の目安時期と、純正エンジンオイルの特徴をご紹介します。また、カー用品店にオイル交換を依頼した場合にかかる費用の目安についても取り上げます。

ディーゼル車~メーカー別オイル交換推奨時期と純正エンジンオイルの特徴

ディーゼルエンジンは、燃料である軽油の燃焼過程でガソリンエンジンに比べ多くの「スス(PM:粒子状物質)」や「硫黄酸化物」といった汚れ成分が発生します。これらの汚れはエンジンオイルを急速に汚し、性能を低下させるため、ガソリンエンジンよりも頻繁な点検と早期のエンジンオイル交換が推奨されています。

特に、日本のクリーンディーゼル車に搭載されているDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の目詰まりを防ぐためにも、適切な時期に、指定された低灰分(ローアッシュ)のエンジンオイルへ交換することが極めて重要です。

マツダのディーゼル車

マツダのディーゼル車CX-5世界トップクラスのディーゼル技術を持つマツダのCX-5

マツダは、CX‐5やMAZDA6などの車種に「SKYACTIV‐D(スカイアクティブD)」を搭載したディーゼル車をラインナップしています。

マツダでは、日常点検時にはエンジンオイルの「量」に、定期点検時には量以外にも「汚れ」や「漏れ」が生じていないかを確認し、交換の必要性を判断します。マツダが推奨しているディーゼル車のオイル交換の目安時期は、ノーマルコンディションで10,000kmまたは12ヶ月ごと、シビアコンディションでは5,000kmまたは6ヶ月ごとです。

マツダがディーゼル車で推奨するオイル交換の目安時期

  • ノーマルコンディション:10,000km、12ヶ月ごと
  • シビアコンディション:5,000km、6ヶ月ごと

シビアコンディションとはエンジンに特に負担がかかる運転パターン

  • 営業車として、日常業務に利用され1日の走行距離が多い
  • 近所への買い物・近場への送り迎え・通勤といった短距離走行の繰り返し(1回8km以内)
  • 低速走行やアイドリング状態が多い
  • オフロード走行を頻繁に行う
マツダの純正オイル「ディーゼルエクストラ SKYACTIV‐D」

ディーゼルエクストラ SKYACTIV-D(0W‐20、0W‐30)は、マツダが自社のクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV‐D」専用に開発した純正オイルです。

このオイルは、ディーゼルエンジン特有の高温高圧着火に耐えうる高い清浄性、摩擦特性の向上による燃費向上に寄与できる特殊な添加剤が配合されていることが特徴です。

【SAE粘度表記について】

マツダの純正オイルや、他のエンジンオイルに記載される「0W‐30」などの数字とアルファベットの組み合わせは、SAE(米国自動車技術会)が定めたオイルの粘度表記です。

  • 左側の「0W」(WはWinterの頭文字)は、低温時の粘度を表します。数字が小さいほど、外気温が冷えてもオイルが柔らかさを保ち、エンジン始動時の抵抗を減らします。
  • 右側の「30」は高温時の粘度を表します。数字が大きいほど高温時での粘度がアップし、高速運転時などにエンジンを保護する性能が高まります。

トヨタのディーゼル車

トヨタのディーゼル車ランドクルーザー プラドディーゼルモデルをラインナップするランドクルーザー プラド

トヨタは、ランドクルーザー プラドなどの車種にディーゼル車をラインナップしています。トヨタは、エンジンの状態を維持し、燃費への影響を抑えるために、ノーマルコンディションでは5,000km~20,000km、半年~1年ごとのオイル交換を推奨しています。

トヨタがディーゼル車で推奨するオイル交換の目安時期

  • ノーマルコンディション:5,000km~20,000km、半年~1年ごと
  • シビアコンディション:2,500km~10,000km、3ヶ月~1年ごと

ランドクルーザー プラドのディーゼル車では、トヨタの純正ディーゼルエンジンオイル「DL‐1 0W‐30」などが指定オイルとなっています。

【JASO規格のDL-1について】

JASO(日本自動車技術会規格)は、国産のクリーンディーゼルエンジンの性能維持に貢献するディーゼルエンジン専用オイルに対して、独自の規格を設けています。DL‐1は、乗用車に適用されるディーゼルオイルのグレードです。

DL‐1とは

国産クリーンディーゼルエンジンに対応した日本独自の規格で2005年に制定されました。ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)の目詰まりを防ぐ「低灰分(ローアッシュ)」性能、高温酸化防止性、低燃費性、環境負荷低減効果などを備えています。

三菱のディーゼル車

三菱のディーゼル車パジェロ三菱はパジェロ(現在は生産終了)やデリカD:5などにディーゼルモデルをラインナップしていました

三菱は、デリカD:5などでディーゼル車をラインナップしています。三菱はエンジン寿命を延ばすために、ノーマルコンディションでは10,000km走行ごとまたは1年ごと、シビアコンディションであれば5,000km走行ごとまたは6ヶ月ごとをオイル交換のタイミングとしています。

点検時にオイルレベルゲージのオイルマークがXマークを超えている場合は、エンジンオイルの劣化や希釈が進んでいるサインです。故障を招くリスクが高まるため、早急な交換が必要です。

三菱がディーゼル車で推奨するオイル交換の目安時期

  • ノーマルコンディション:10,000km、1年ごと
  • シビアコンディション:5,000km、6ヶ月ごと

三菱はディーゼル車のエンジンオイルとして、自社の4N14型クリーンディーゼルエンジンなどの状態維持に大きく貢献する「純正ダイヤクイーンディーゼルオイルDL‐1」を推奨しています。

ボルボのディーゼル車

ボルボのディーゼル車V60世界最高水準の排ガス基準をクリアするV60

ボルボは、「S60」「V60」などの車種に、世界最高水準の排ガス基準をクリアしたクリーンディーゼルエンジンを搭載しています。

ボルボ エンジンオイル スーペリア

「ボルボエンジンオイル スーペリア」は、ボルボが自車に搭載するエンジン性能を最大限引き出すために開発した純正オイルです。

高性能全合成油をベースオイルとして利用し、高品質の添加剤を配合することで、清浄性能や低温時の流動性を高めているのが特徴です。その効果により、エンジン内部のクリーンさが保たれ、エンジン始動時の動きがスムーズになります。

高性能全合成油をベースオイルとして利用するメリットには、長期間劣化しにくい性質があるため、エンジンのベストな状態が長続きするという点も挙げられます。

【ACEA規格について】

ACEAは、欧州自動車工業会が定めたオイル品質を表す統一規格です。クリーンディーゼル車に対応した規格としては、以下のものがあります。

  • A/B規格:ガソリンエンジン油(A)とディーゼルエンジン油(B)の一般規格です。多くのディーゼル車・ガソリン車兼用のオイルはA/Bという風に表記されます。
  • C規格(ローアッシュ):DPFなど、排ガス後処理装置付きのエンジンに対応した規格です。DPFの目詰まり原因となる灰分(アッシュ)を低減した低灰分(ローアッシュ)オイルであり、クリーンディーゼル車にはC規格のオイル使用が必須です。

なお、ACEA規格では、A/B/Cの横につく数字が大きいほど性能アップするというわけではなく、それぞれが特定のエンジン構造や性能要件に対応するよう特徴づけられています。

BMWのディーゼル車

BMWのディーゼル車3シリーズ セダン世界中で支持される3シリーズのディーゼルモデル

BMWは、軽量化・高回転化を実現するツインパワー・ターボ・ディーゼルを、3シリーズの「セダン」「ツーリング」「グランツーリスモ」の各グレードなどに搭載しています。

BMWの純正は天然ガスから作られる高品質オイル

BMWの純正エンジンオイルは、「Shell PurePlusテクノロジー」の特許製法によって実現される、天然ガスから作られた不純物を含まないクリーンなオイルをベースとしています。

このオイルに採用されている「アクティブ・クレンジング・テクノロジー」は、エンジンをクリーンな状態に保ち、腐食・摩耗を防いで、エンジンの長寿命にも貢献します。

これらの技術は、スタンダードタイプのディーゼル車用エンジンオイル「BMW Longlife-04 5W‐30」や、プレミアムタイプのエンジンオイル「BMW Longlife-12 FE 0W-30」など、BMWの指定オイルにも導入されています。

ディーゼルエンジンオイルの特徴と役割

エンジンに活力を与え、状態を維持するために不可欠なエンジンオイルには、潤滑・冷却・清浄など5つの重要な役割があります。

エンジンオイルには5つの役割がある

潤滑(湿潤)

エンジンの内部パーツである「ピストン」や「クランク」は、高速で運動しています。この運動時に起こる金属パーツ同士の摩擦や焼き付きを、エンジンオイルの油膜によって軽減・防止します。

密封

シリンダーとピストンとの間には、運動を可能とするためにわずかな隙間が設けられています。エンジンオイルはその隙間に入り込んで気密性を与えます。気密性が不十分だと、燃焼によって作られたエネルギーが逃げる「パワーロス」が生じ、また、環境汚染の原因となるブローバイガスが増加してしまいます。

冷却

エンジン内部は燃焼や摩擦によって非常に高温になります。エンジンオイルには、その熱を吸収し、エンジンがオーバーヒートするのを抑える冷却作用も備わります。熱を吸収したエンジンオイルは「オイルパン」で冷却されます。

清浄

エンジンオイルには、燃焼・回転運動によって発生した汚れの成分を吸着し、分散させる機能が備わります。これらの汚れを放置すれば、エンジン性能が低下するだけでなく、故障の原因にもなります。

防錆(ぼうせい)

エンジン内部は、燃焼時の熱による高温状態と外気温との差によって水分が発生しやすい状況です。水分は「錆び」の原因となります。エンジンオイルには、水分によって金属表面が錆びるのを防ぐ、保護膜を張る効果もあります。

エンジンオイルの性能・種類はベースオイルと添加剤によって決まる

エンジンオイルの性能や種類は、「鉱物油」「化学合成油」「部分合成油」の3タイプのベースオイルにブレンドする添加剤によって変わってきます。エンジンオイルの耐熱性や清浄効果、ディーゼルエンジンあるいはガソリンエンジンに適するかどうかは、ブレンドする添加物の種類や配合率で変化します。

鉱物油

原油を蒸留して生成するオーソドックスなタイプのベースオイルです。価格はリーズナブルな反面、耐熱性や酸化安定性に劣り、劣化スピードが速いため交換のタイミングが早まる傾向があります。

化学合成油

原油を高度に蒸留し、さらに化学分解や合成などのプロセスを経て製造されます。不純物が少なく、鉱物油よりも高品質で高性能、特に耐熱性やエンジン洗浄力に優れています。

部分合成油

鉱物油と化学合成油をブレンドしたオイルです。鉱物油のデメリットを、一定量の化学合成油を混ぜ合わせることで補い、販売価格は化学合成油よりも抑えられています。

ディーゼル車用エンジンオイル最大の特徴はアルカリ添加剤を多く含むこと

ディーゼル車用エンジンオイルと、ガソリン車用エンジンオイルとの最大の違いは「アルカリ添加剤(全塩基価)」を多く含んでいるかどうかです。

ディーゼル車の燃料である軽油が燃焼すると「硫黄酸化物」が発生し、これが水と結びついて硫酸などの強い酸性物質が生成されます。この酸はエンジン内部の金属を腐食させるため、中和する必要があります。そのため、ディーゼル車用のエンジンオイルでは、この酸性物質を中和する働きを持つアルカリ性添加物を多く配合しています。

ガソリン車用オイルをディーゼル車に入れてしまわぬように注意

オイル交換をする際には、ガソリン車用に作られたエンジンオイルをディーゼル車に誤って入れてしまわないよう、十分に注意しましょう。

ガソリン車用エンジンオイルは、ディーゼル車に必要な硫黄酸化物の中和作用が強いアルカリ添加剤をほとんど含んでいません。そのため、間違って交換してしまうと、ディーゼルエンジン内では酸性物質がどんどん蓄積し腐食が進行してしまい、エンジンの早期故障につながるリスクが非常に高く危険です。

大手カー用品店の交換費用はオイル代に工賃が加算された金額

オイル交換は、ボンネットを開けて行う作業ということもあり、不慣れな方にとってはハードルの高いメンテナンスです。そのため、ディーラーや整備工場、カー用品店のスタッフに依頼するケースは少なくありません。ここでは、大手カー用品店に依頼した際にかかるディーゼル車の交換費用の目安を紹介します。

オートバックスの交換費用は「オイル代+工賃」

オートバックスでオイル交換をする際にかかる費用は「オイルの金額+工賃」です。店頭のスタッフに声をかければ、ご自身の車に適したエンジンオイルを選んでもらえます。

オイル交換は、ディーゼル車であれ、ガソリン車であれ、使用するエンジンオイルは異なりますが、交換する作業手順に大きな違いはありません。そのため、オートバックスでは、工賃は車種に関係なく最低価格として設定されています。

もしも、オートバックスの有料会員となっていれば、工賃は無料となります。事前にネット予約すれば、店舗を訪れた際の流れがスムーズとなり、最短15分程度で作業が完了します。

ジェームス交換費用は「オイルの金額+作業工賃」

ジェームスはエンジンオイル交換時期の目安として、走行距離5,000kmごとあるいは半年に1回を推奨しています。

ジェームスでのオイル交換は最短15分程度で完了します。その費用は「オイルの金額+作業工賃」です。工賃は排気量が大きくなるほど加算される傾向にあり、会員であればサービス価格が適用されます。

ディーゼル車に搭載される高性能エンジンを維持するにはオイル交換が必要です

世界一厳しいと言われる日本の排ガス規制をクリアした「クリーンディーゼルエンジン」は、マツダのSKYACTIV‐Dを始め、低燃費でパワフルな走りが実現する高性能エンジンばかりです。

クリーンディーゼルエンジンのメリットを維持するためには、適切な時期に、必ず指定された規格(JASO DL-1やACEA C規格など)のエンジンオイルへ定期的に交換することが不可欠です。ご自身の車に合ったエンジンオイルを利用して、ディーゼル車の走りの魅力を追い求めましょう。