スリップサインはタイヤ点検時に確認しよう~溝の深さと制動距離の関係性もご紹介
梅雨の季節や、ロングドライブに出かける前などに必ずチェックしておきたいのが、スリップサインです。
スリップサインは、タイヤの溝の減り具合を確認できる「ものさし」の役割を果たしています。溝の減り具合が大きくなると、車が止まりにくくなったり、思うようにコーナリングできなかったりといった影響が出てきます。そのため、タイヤ点検時には、スリップサインが目立ち始めていないかを確認することが大切です。
この記事では、スリップサインの役割や、溝の深さと制動距離の関係、スリップサインの高さが1.6mmに設定されている理由、スリップサインが出た場合の車検についてご紹介します。
スリップサインとは?新品タイヤへの交換のタイミングを知らせる目印です
スリップサインはタイヤ交換の目安として使用されます
スリップサインとは、タイヤの使用限界を確認するために設けられた指標であり、新品タイヤへの交換のタイミングを把握できる目印でもあります。
スリップサインのある箇所はタイヤ側面の△マークの延長線上です
スリップサインは、タイヤ側面に設置されている「△」マークの延長線上にあります。タイヤの溝の間のスペースにある、少し盛り上がっている部分がスリップサインです。
スリップサインの高さは、法律で1.6mmと規定されています。タイヤの溝は、新品であれば一般的に8mmほどありますが、摩擦などの影響を受けて溝が擦り減っていき、スリップサインの高さである1.6mmに近づくほど、タイヤのグリップ力や排水力が弱まるなど性能が悪化してしまいます。
スリップサインはタイヤの使用期間が長くなるにつれて目立ち始めます
新品のタイヤであれば、溝が深いためにスリップサインは目立ちませんが、使用していくうちにタイヤの溝は擦り減っていき、スリップサインの存在が際立ち始めます。
メーカーや車種によって、スリップサインが設置される個数にはバラつきがありますが、1ヶ所でもトレッド面(接地面)の深さがスリップサインの高さ以下となっていれば、法令違反となります。
溝の深さが1.6mm以下とはならなくとも、その値に近づくほどタイヤのブレーキ性能などが低下してしまうため、車は止まりにくくなるので、早めの交換が求められます。
タイヤの溝が浅くなるほど車は止まりにくくなります
上の図は、タイヤの溝が浅くなるほど、制動距離(ブレーキが効き始めてから車が停止するまでに進む距離)が伸びる、つまり車は止まりにくくなることを示しています。
この傾向は、車のスピードが出るほど顕著に表れます。溝の深さが約2mmの場合、40km/hで走行する車と80km/hで走行する車を比較すると、速度の差は2倍であるのに対し、制動距離には約5倍もの開きがあります。
タイヤの溝は制動力を高めるために重要な役割を果たしています
タイヤの溝は、主に濡れている路面を走行中に、タイヤと路面との間にできる水の膜を除去するために設置されています。排水溝的な役割を果たすタイヤの溝は、排水力を上げるためにトレッドパターン(溝の模様)に特徴を持たせています。
路面との度重なる摩擦によってタイヤ表面が擦り減っていけば溝は浅くなり、トレッドパターンが乱れていきます。その影響によって水はけが悪くなり、グリップ力は低下するため、タイヤのブレーキ力も低下します。タイヤの溝が浅くなることの影響は、制動力が落ちるだけではありません。
タイヤの溝が浅くなることの影響
- バースト(破裂)の恐れが高まる
- 走行する際の音が大きくなる
- 走行中に車体が振動しやすくなる
- ハイドロプレーニング現象が起こりやすくなる
ハイドロプレーニング現象
ハイドロプレーニングが起きると水の膜によりタイヤが浮き車体がコントロールできなくなります
ハイドロプレーニング現象とは、タイヤが路面の水の膜によって浮いている状態のことをいいます。この現象が起きると、水の膜によって摩擦力が低減するため、タイヤは滑りやすくなります。
新品のタイヤであってもスピードが上がりすぎるとハイドロプレーニング現象は起こりますが、タイヤの溝が浅くなるほど、低い速度域からも発生しやすくなります。
ハイドロプレーニング現象が起こると、ハンドルがコントロールしにくくなり、ブレーキも効きにくくなってしまいます。
スリップサインの高さが1.6mm設定となっているのには保安基準が関わっています
スリップサインの高さ設定が1.6mmとなっているのには、保安基準を定める道路運送車両法の第167条(走行装置等)が関係します。
道路運送車両法の第167条では、タイヤ接地部の全幅にわたり滑り止めのために施されている溝は、いずれの部分においても、1.6mm以上の深さを有すべきと規定しています。
タイヤ各部に数ヶ所設置されているスリップサインは、タイヤの溝が法令で規定される1.6mm以上となっているかを確認するために用いる「ものさし」です。もしも1ヶ所でもスリップサインが出てしまい、周辺領域の溝の深さが1.6mm以下となってしまえば、道路運送車両法の保安基準に違反してしまいます。悪質と見なされるケースでは、整備不良として違反点数が2点科されるとともに、普通車であれば、9,000円の罰金も加わります。
スリップサインが出ていれば車検には通りません
スリップサインが出ているかどうかは、車検時のチェック項目の1つです。車検時には、4輪全てのスリップサインの露出度合いをチェックし、問題がなければ検査をクリアします。
タイヤは、直接路面と接しているため、その状態の良し悪しがダイレクトに運転に影響を与えてしまいます。そのため、車検時に不備を指摘されるよりも、日頃からスリップサインを意識して、より早いタイミングで新しいタイヤへと交換した方が、より安全で快適なドライブを楽しむことができます。
スタッドレスタイヤには、交換のタイミングを知らせる「プラットホーム」があります
スタッドレスタイヤにも、ノーマルタイヤと同様に、使用限界のタイミングを知らせる役目を果たす「プラットホーム」と呼ばれる目印が設置されています。
スタッドレスタイヤは、溝の深さが新品時の半分以下となってしまえば、雪道や凍結路面でのグリップ力が大幅に低下するため、冬用タイヤとして使用することはできません。
スタッドレスタイヤの表面に設置される「プラットホーム」は、各タイヤに4箇所ほど設けられ、溝の深さが新品時と比較して半分近くになった際に目立ち始めます。
スリップサインを定期的にチェックして快適・安全なドライブを楽しみましょう
スリップサインを定期的にチェックすることで、快適・安全なドライブを楽しむことができます。
タイヤは、直接路面と接する部分です。そのため、状態の良し悪しを確認することは、快適・安全にドライブを続けるために重要です。
スリップサインをチェックすることで、より適切なタイミングでの新しいタイヤへの交換が可能となります。溝の深さがスリップサインの高さ以上であっても、雨の日や夜間など路面が濡れていれば、タイヤの性能は安全運転に影響を与えるほどに低下してしまいます。
溝が浅くなり、使用限界に近いタイヤで走行することは危険です。新品タイヤへの交換のタイミングを教えてくれるスリップサインを意識して、快適・安全なドライブを楽しみましょう!