車線変更が「怖い」「苦手」を克服!安全確認の手順とスムーズな運転テクニック
自宅の駐車場から目的地まで、一度も車線変更を行わずにたどり着くのは、ほとんど不可能かもしれません。車線変更は、交差点の手前で左折レーン、直進レーン、右折レーンといった目的の場所にたどりつくための適切な走行車線を選ぶ際に必須となる、基本的な運転テクニックです。そのため、「車線変更が苦手」という悩みを抱えるドライバーは少なくありません。
後続車が少なければ、苦手意識を持つことなく、ウィンカーで曲がりたい方向を指示して、比較的気楽に車線変更を行うことができます。しかし、交通量の多い道路や、後続車がどんどん高速で接近してくる道路状況では、難易度が上がり、車線変更のタイミングがつかみにくくなってしまいます。
このような交通状況で、タイミングが分からずに「怖い」「不安だ」と感じているドライバーは、初心者マークをつけている方だけでなく、ベテランの方にもいるでしょう。今回は、そんな苦手意識や恐怖心を克服し、「車線変更のコツ」を掴むための安全確認の手順と、スムーズに行うための運転テクニックを紹介します。適切な技術を身につけて、安全で快適なドライブを目指しましょう!
車線変更をするときの安全確認の手順と運転のコツ

1.車間距離や後続車など周囲の状況を確認します
車線変更を行う前に、まず移動したい車線(隣のレーン)の走行状況を正確に確認します。特に重要なのは、移動先の車線を走行している先行車や後続車の速度と、自車との距離間隔です。安全に車線変更を完了するために十分なスペースがあるかどうかを確認しましょう。
車線変更をより安全に行うためには、自車が走行中の車線の周囲の状況も確認する必要があります。先行車や後続車がウィンカーを出して、予期せぬ車線変更を行おうとしていないか、といった周囲の車の動きを予測しながら状況を確認することが大切です。特に、後続車との距離が詰まっている場合は、「車線変更のタイミング」を慎重に見極めます。
2.車線変更をするときは3秒以上の合図(ウィンカー点滅)を行います
車線変更を行う前には、道路交通法に基づき、ウィンカーを点滅させて、自分の車が「左」か「右」のどちらの車線に移動したいのかを周囲の車に明確に合図する必要があります。
ウィンカーは点滅させたらすぐに車線変更を開始するのではなく、道路交通法で定められている通り、車線変更をする約3秒前、あるいは車線変更が完了するまで継続して点滅させましょう。ウィンカーを3秒以上継続して点滅させることで、後続車はそれが操作ミスではなく、ドライバーが実際に車線変更を行う意思があることを理解し、安全に移動できるように速度を緩めるなどの配慮をしてくれやすくなります。合図を出すタイミングが遅れると、後続車とのトラブルの原因になりかねません。
3.ウィンカーを点滅している間に最終的な安全確認を行います

ウィンカーを点滅させている間に、再度、最終的な安全確認を行います。この確認を怠ると、「車線変更による事故」のリスクが高まるため、以下の順番で確実に行います。
- 前方の状況を再確認します(移動先に障害物がないか)。
- ルームミラーで後方の状況を確認します。
- サイドミラーで移動したい車線の状況を確認します。
- 移動したい車線の状況を直視(目視)で確認します(特に斜め後方の死角をなくすため)。
※特に左車線へ移動する際には、路肩を走行しているバイクや、スピードの出ている自転車などがサイドミラーの死角に入りやすいため、直視(目視)による「巻き込み確認」を徹底することが特に重要です。
4.速度を維持または微調整し車を目的の車線へ移動させます
安全を最終確認できたら、いよいよ車線変更を行います。すぐ隣の車線に移動するだけなので、ハンドルは、大きく回すのではなく、ゆっくりと手首を少しひねる程度の微調整に留めるのが操作のコツです。急な操作は車の挙動を乱し、後続車を驚かせてしまいます。
移動する距離はわずかですので、気持ちで焦って急加速したり、急ブレーキを踏んだりしないように注意しましょう。速度は、移動先の車線を走っている先行車と後続車の流れに合わせることを意識すると、スムーズで安全に車線変更が完了できます。「車線変更の速度」の調整が、円滑な合流の鍵となります。
車線変更を安心して行うための心得と事前準備

ルームミラーやサイドミラーの位置を適切に調整します
車線変更をした際に事故のリスクが高いのは、先行車との衝突ではなく、後続車との側面衝突です。そのため、ルームミラーやサイドミラーを使って後方の視界を最大限に確保することが非常に重要です。ルームミラーは、自分の車と同一車線を走行する後続車が鏡面の中心にくるように調整すると、左右のどちらの車線の後続車も捉えることが可能になります。
サイドミラーは、ルームミラーでは死角となる斜め後方から高速でやってくる車などを確認できるように、車体の側面がわずかに映り込む程度に、外側に角度をつけて調整するのがコツです。これにより、特に真横の「死角」を極力減らすことができ、より安全な車線変更が可能となります。「ミラーの調整」は、安全運転の基本です。
早めの判断で余裕をもって車線変更を行います
走行中の車線で道路工事が行われている場合や、少し進むと2車線の道路が1車線に減少してしまうといった状況では、渋滞が発生する前に早めの判断で車線変更を行いましょう。「車線変更による渋滞」を避けるためには、周囲の状況を予測する能力が重要です。
判断が遅れてしまうと、後続車も同様に車線変更を行おうとするため、自分が移動したかった車線のスペースが奪われてしまったり、後続車に強引に追い越されたりして、なかなかタイミングをつかめなくなってしまいます。余裕を持って早めに車線変更の合図を出すことで、後続車もスムーズに車線変更を許容してくれる可能性が高まります。
車線変更を得意にするためのQ&A
車線変更が苦手な方が抱える疑問を解決し、安全意識を高めます。近年は、煽り運転や迷惑運転が問題視されているため、周囲にストレスを与えないスマートな運転操作が求められます。
車線変更をする時に禁止されている場所

交差点の手前や、見通しの悪い道路、急な坂の頂上付近などは、車線変更を許容してしまうと事故が起こる危険性が高いため、道路交通法に基づき禁止されています。道路の「規制表示」として、「追い越しのため右側部分はみ出し通行禁止」を示す黄色い線が引かれている場所は、車線変更が禁止されている主な場所の一つです。(注1)
特に道路に黄色い線だけが敷かれている場合(中央線が黄色の実線)は、どちらの側を走行している車も、線を越えて隣の車線に移動することはできません。しかし、黄色い車線の隣に等間隔で白い点線が敷かれている道路を走行している車は、白い点線側へ隣車線に移動すること(車線変更)ができます。この標示のルールを理解することが大切です。
その他に、車線変更をする時に特に気を付けるべき場所はトンネルの中や橋の上です。トンネル内では、車線変更を禁止している場合が多く、またライトをつけずに走行する車もいるため、車線変更をする際には、いつも以上に注意して安全確認を行う必要があります。
車線変更の際の事故における過失割合

車線変更を試みて事故を起こしてしまった際は、車線変更をした側の車が「進路変更車」となり、原則として加害者となるため、過失割合が高くなります。判例に基づく基本的な過失割合の目安は、進路変更車:後続車=7:3になります。これは、進路変更車には周囲の安全を確保する重い義務があるためです。
もしも、車線変更を行う際に、ウィンカーを出さなかった場合や、ミラー・目視での安全確認を怠った場合は、「合図不履行」または「著しい前方不注意」として、変更車側に過失割合が1割から2割程度加算され、進路変更車:後続車=8:2や9:1となる可能性があります。
その他の過失割合が変わってくる要因としては、わき見運転やスピード違反、酒気帯び運転など、どちらかの当事者に重大な過失があった場合です。これらの行為が変更車側または後続車側のどちらかにあれば、基本の割合から大きく変動します。「過失割合」を知ることで、車線変更時の義務を再認識しましょう。
車線変更をサポートしてくれる先進安全技術
ここ数年、多くのメーカーから発売されている車の特徴は、先進の安全運転支援システム(ADAS)を搭載していることです。その安全システムの中には、ドライバーの車線変更をサポートし、リスクを低減してくれる技術もあります。「車線変更のサポート」技術は、年々進化しています。
例えば、トヨタ車に搭載されている「ブラインドスポットモニター(BSM)」は、車線変更を行う際に死角となる斜め後方に車両が接近している場合、サイドミラーなどに危険を示す光の信号(インジケーター)を表示して警告するシステムです。これにより、目視での確認を補完し、接触事故のリスクを減らします。
トヨタ以外の各社も、後方の状況をレーダーや車載カメラを用いて確認し、車線変更をサポートしてくれる安全技術(例:車線変更支援機能付きのレーンキープアシストなど)を搭載した車を続々とラインナップしています。これらの技術は、ドライバーの操作を代行するものではありませんが、不安を軽減し、より安全な運転を支援してくれます。
車線変更の苦手意識がなくなれば、ドライブは格段に快適になります

例えば、前を走っていたバスが停留場で停車した場合を想像してみましょう。以前は、バスが動き出すまでずっと待っているしかなかったかもしれません。しかし、バックミラーとサイドミラー、そして目視で後続車との適切な距離を確認できたので、安全に車線変更をしてスムーズに進行できるようになります。
車線変更が苦手だと、運転中にしばしば窮屈な思いをしてしまいます。また、車線変更がなかなか出来ずに、目的地まで遠回りをしてしまうこともあります。しかし、車線変更が上達すると、最短ルートでストレスなく目的の場所まで辿りつくことが可能となり、ドライブ全体の効率と快適性が大幅に向上します。
前を走っている車のスピードが遅いからといって、イライラした気分で後方の安全確認を怠って行う車線変更は危険な行為であり、絶対にしてはいけません。適切な状況判断と、確実な安全確認をきちんとした上で行う車線変更は、ドライブ中の安全性と、交通の流れに乗る「解放感」を高めてくれます。「車線変更が怖い」という気持ちを克服し、自信を持って運転を楽しみましょう。
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