IMQのモデルチェンジ

日産IMQは市販化されず終了 デザインは2021年キャシュカイのフルモデルチェンジへ、日本導入もなし

日産IMQは市販化された?答えはノーです。IMQという車名の量産車は登場せず、造形は2021年の3代目キャシュカイへ、電動4WD構想はエクストレイルのe-4ORCEへ。日本の読者が最も近い形で触れられる車種も解説します。

日産IMQは市販化されず終了 デザインは2021年キャシュカイのフルモデルチェンジへ、日本導入もなし

日産IMQは市販化されず 2019年ジュネーブで公開されたコンセプトは3代目キャシュカイのデザインに姿を変えた

日産が2019年3月のジュネーブモーターショーで世界初公開したクロスオーバーコンセプト「IMQ」は、その名前のまま市販されることはありませんでした。IMQという車名の量産車が発表された事実はなく、コンセプトカーとして役目を終えています。

ただし、まったくの空振りだったわけではありません。IMQが示した造形は2021年2月に発表された3代目キャシュカイにほぼそのまま受け継がれ、記事が期待していた「VCターボを発電に使うe-POWER」も2022年に市販化されました。一方で、日本市場にキャシュカイが導入されることはなく、当時この記事が予想した「日本ではジュークの名前で2022年までに発売」も実現していません。ここでは、IMQが何を予告し、その後どこへ流れ着いたのかを整理してから、コンセプトそのものの中身を振り返ります。

2026年4月に3代目ジュークがEVとして公開 IMQが予告した個性的な造形は別の車名へ受け継がれた

日産は2026年4月14日、3代目となる新型ジュークを公開しました。ルノー・日産・三菱アライアンスのCMF-EVプラットフォームを採用したEV専用モデルで、新型リーフと基本構造の多くを共有し、英国サンダーランド工場でリーフと並行して生産されます。試作は数週間以内に始まり、2027年初頭に本格生産、同年春に欧州で発売される予定です。

デザインの下敷きになったのは、2023年のジャパンモビリティショーで公開されたコンセプトカー「ハイパーパンク」です。頂点を削り落としたポリゴン調のボディがほぼそのまま市販形に落とし込まれており、IMQの流れを汲む造形ではありません。つまり「IMQが日本でジュークとして出る」という当時の見立ては、車名だけが当たり、中身は完全に別物になったかたちです。

ジュークは初代の2010年発売以来150万台以上を売り、欧州ではキャシュカイに次ぐ日産の主力です。3代目の日本導入は2026年7月時点で発表されておらず、まずは欧州市場が優先されます。日本の読者にとっては、IMQの子孫にあたるモデルを新車で買う手段が現状では用意されていない、という結論になります。

2025年6月に第3世代e-POWERを搭載したキャシュカイが登場 IMQが掲げた電動化構想は着実に前へ進んだ

IMQの中核だったe-POWERは、その後も世代を重ねました。2021年に登場した3代目キャシュカイには、2022年3月の欧州発表を経て同年夏にe-POWER搭載車が追加されます。発電を担ったのは1.5Lの可変圧縮比VCターボエンジンで、記事が「新型のe-POWERターボエンジンを搭載するかもしれない」と書いた見立ては、車名こそ違えど的中しました。ただし日本市場への導入予定はなく、現在も正規販売されていません。

2024年4月にはキャシュカイがフェイスリフトを受け、さらに2025年6月26日、日産は第3世代e-POWERを搭載したキャシュカイを欧州で発表しました。英国サンダーランド工場製で、発売は2025年9月です。

第3世代e-POWER搭載キャシュカイの主な性能
燃費(WLTP) 4.5L/100km
最大航続距離 約1,200km
CO₂排出量 116g/km → 102g/km(12%削減)
静粛性 第2世代比で最大5.6dB低減
生産拠点 英国サンダーランド工場

実走行ベースでも、ドイツ自動車連盟(ADAC)の試験で従来型比・最大16%の燃費向上が確認されています。第3世代e-POWERは日本では2026年度発売予定の新型エルグランド、北米では新型ローグに搭載される計画で、キャシュカイそのものが日本に入るという発表はありません。IMQが提示した電動パワートレインの思想は前進したものの、日本の読者がその成果に触れる窓口はエルグランドなど別の車種になる、という整理になります。

なお、IMQが掲げた「前後にモーターを置く電動4WD」という構想は、日産では2022年発売の4代目エクストレイルなどが採用する「e-4ORCE」として実用化されています。IMQの提案そのものが立ち消えたわけではなく、車名を変えて世に出たと見るのが正確です。

ジュネーブモーターショーは2024年で開催を終了 IMQが世界初公開された舞台そのものが姿を消した

IMQを語るうえで避けて通れないのが、発表の舞台がもう存在しないという事実です。1905年に始まったジュネーブモーターショーは、新型コロナ禍による長期の中断を経て2024年2月に開催されたものの、出展を見送るメーカーが相次ぎました。そして2024年5月31日、主催団体が次回以降の開催を行わないと発表しています。

IMQのような大がかりなコンセプトカーは、こうした国際ショーの華やかな場があってこそ成立してきた企画でもあります。近年はメーカーが自社イベントやオンラインで新型車を単独発表する流れが強まっており、IMQは「ショーのためのコンセプトカー」という手法が終わりに近づいた時期の一台としても位置づけられます。

日産の次世代SUVであるIMQがジュネーブモーターショー2019に登場 前後モーターとe-POWERを搭載した4WDモデル

日産がジュネーブモーターショー2019で発表したコンセプトモデルが、次世代SUVのIMQです。立体的なフロントマスクやブーメラン型のヘッドライトは、初代ジュークが登場したときと同じように、それまでの常識から外れた新しさを感じさせるものでした。

パワートレインにはノートやセレナに搭載されているe-POWERを積み、前後にモーターを搭載した4WDモデルです。発電するためのエンジンは1.5Lのガソリンターボエンジンを搭載しています。

ボディサイズはジュークより少し大きいCセグメントサイズですが、全幅がランドクルーザー並みの1.94mもありました。コンセプトモデルならではの誇張で、市販車になれば現実的な数字に収まると当時から見られていた部分です。

ほかにも、日産IMQにはInvisible To Visible(I2V)と呼ばれるシステムが搭載され、プロパイロットによる自動運転支援だけではなく、車外環境や車内環境をセンサーやカメラで把握しシームレスにドライバーへ伝える技術が組み込まれていました。

ジュネーブモーターショー2019で発表された日産の次世代SUVであるIMQ(Intelligent Mobility Q)のボディサイズやスペックをチェックしてみましょう。

「IMQが2023年にデビュー」という見方はどうなったか VCターボ×e-POWERだけが別の車名で実現した

IMQは日産の次世代SUVのフラッグシップとして2019年のジュネーブモーターショーで世界初公開され、その後「2023年に市販版が発表される」という観測が流れました。結論から言えば、この見方は外れています。IMQという車名の量産車も、IMQを名乗る後継コンセプトも、その後発表されていません。

ただし、当時の観測の中身を分解すると、当たった部分もはっきりあります。「新型エクストレイルと新型アリアを足したような外観になる」という予想は、3代目キャシュカイが薄型ヘッドライトと発光しないタイプの立体グリルを採用したことで、方向性としては近い着地になりました。「新型キャシュカイやセレナにも載る新型e-POWERターボを積む」という予想も、1.5L VCターボを発電に使うキャシュカイe-POWERが2022年に市販化されたことで実現しています。

外れたのは車名と市場です。日産は2020年前後に経営再建へ舵を切り、車種を増やすより既存の主力を確実に更新する方針へ移りました。IMQという新しい名前でフラッグシップSUVを一台起こすより、欧州で年間20万台規模を売るキャシュカイを刷新するほうが合理的だった、というのが実情に近いところでしょう。「モーターのみのピュアEVグレードも用意される」という話も、キャシュカイでは実現していません。日産のEV系SUVはアリアが担い、コンパクト側は2026年公開のジュークEVが引き受けるかたちに整理されています。

日産IMQのボディサイズはCセグメントサイズで、かなりワイドになったジュークに見える

次世代SUV日産IMQのユニークなフロントマスク次世代SUVの日産IMQは個性的なフロントマスクを採用していて、ジュークの次世代モデルにも見える

日産がジュネーブモーターショー2019で発表したIMQは、立体的なフロントマスクを採用しブーメラン型のヘッドライトを装備するなど、ジュークのようにとても個性的なモデルでした。ボディサイズは全長4,558mm・全幅1,940mm・全高1,560mmのCセグメントサイズですが、かなりのワイドボディです。当時は「市販車は1,800mm付近の現実的な数値になるのではないか」と見ていましたが、実際に登場した3代目キャシュカイは全長4,425mm・全幅1,835mm・全高1,625mmでした。全幅の読みはほぼ当たっており、コンセプトから約100mm絞られた計算になります。

日産IMQとジューク、市販された3代目キャシュカイのボディサイズ比較
IMQ ジューク(初代) 3代目キャシュカイ
全長 4,558mm 4,135mm 4,425mm
全幅 1,940mm 1,765mm 1,835mm
全高 1,560mm 1,565mm 1,625mm

IMQをジュークと比較すると全高はほぼ一緒ですが、全長が長くなり幅はかなりワイドになっています。1,940mmというとトヨタのランドクルーザーなみのワイドボディで、ショーカーとしての見栄えを優先した数字でした。実際の市販版にあたるキャシュカイでは、全幅を1,835mmに収めつつ全高を上げ、実用的なパッケージへ落とし込まれています。

日産IMQのフロントグリルヘッドライトは3つのLED光源が並んでいてキラキラしている。ポジションは導光タイプでヘッドライトを囲むよう配置されている

日産IMQのヘッドライトはLEDが3つ並んでいるデザインです。周りにはLEDデイタイムランニングライトが装着されていて、すべて光が繋がっている導光タイプが採用されています。ブーメラン型にかたどられていて、Vモーショングリルを思い起こさせます。日産はIMQについて「新表現のVモーショングリルは次世代の日産ブランドシグネチャーを示すレベルに高められている」と説明しており、この立体グリルとブーメラン型ランプの組み合わせは、その後のキャシュカイやアリアに共通する日産顔の出発点になりました。

観音開きドアが特徴的な日産IMQのサイドビュードアは観音開きドアになっていて独立したシートが見えていて、タイヤはブリヂストンを装着している

窓枠のないハードトップになっているドアは観音開きドアで、Bピラーがないためスッキリとした見た目です。後部座席も独立したシート構成になっていて、4人乗りなので広々と空間が使えます。もっとも、観音開きドアと4人乗りはショーカーならではの仕立てであり、市販版のキャシュカイは通常の5ドア・5人乗りとなりました。ちなみに2004年のジュネーブショーで公開された初代キャシュカイのコンセプトカーも観音開きドアを備えており、日産のクロスオーバー系コンセプトに繰り返し現れるモチーフでもあります。

ホイールは5本スポークの立体的なデザインで、大きさは22インチです。タイヤはブリヂストン製で、コネクトタイヤと呼ばれる車両と情報でつながるタイヤを履いています。TPMSのように空気圧だけではなく、荷重や温度、グリップの具合や摩耗状態を車両へ伝え、IMQが最適な駆動力を制御するという構想でした。

ニッサンIMQのリアビューリアビューは日産のエンブレムとe-POWERのロゴが入っているが主張しすぎないデザインのためスッキリとした印象を受ける

日産IMQのリアビューは細長いテールレンズに、日産のロゴにホワイトLEDが入っているエンブレム、右下にはe-POWERのステッカーが貼られています。ナンバープレートの位置には車名の「NISSAN IMQ」のプレートが装着されていました。

日産エンブレムとテールレンズの間には切れ目のような線が見え、少しのスペースでもトランクを開けられるよう工夫がされているものと考えられます。エンブレムやテールレンズ以外には装飾がなくシンプルでスッキリとした印象です。細く横に伸びるテールランプという構成は、その後のキャシュカイでも踏襲されました。

新型IMQのパワートレインは前後モーターのe-POWERを搭載し最高出力250kW・最大トルク700Nmを発揮

日産IMQのパワートレイン日産IMQのパワートレインにはe-POWERが搭載されていて、前後にモーターを装着した4WDモデルである

ジュネーブモーターショー2019で発表されたSUVのIMQは、パワートレインにe-POWERを搭載していて前輪・後輪にそれぞれモーターが搭載されている4WDの駆動方式です。発電用のエンジンには1.5Lターボが搭載され、システム全体で最高出力250kW(335hp)・最大トルク700Nmを発揮します。

日産IMQコンセプトのパワートレイン
種類 e-POWER
モーター 前輪1基・後輪1基
発電用エンジン 1.5Lガソリンターボ
最高出力 250kW(335hp)
最大トルク 700Nm
航続距離 600km

バッテリーは大容量タイプを搭載し、最大600kmの走行が可能とされていました。タイヤは22インチの扁平スポーツタイヤを履いており、SUVながら高速域での走りを想定した仕立てです。

この250kW/700Nmという数値は、あくまでショーカーとしての提案でした。実際に市販されたキャシュカイe-POWERは前輪駆動が基本で、システム出力は190psクラス。前後モーターによる電動4WDは、日産では「e-4ORCE」としてエクストレイルやアリアに実装されており、IMQの構想は複数の車種に分かれて世に出たことになります。

コンセプトモデルの日産IMQには「I2V」と呼ばれるシステムが搭載され全方向見渡せて周囲状況もリアルタイムに把握できる

IMQの車周情報システム:Invisible to VisibleIMQにはInvisible to Visibleというシステムが搭載されていて車両周りの情報をリアルタイムに伝えてくれる

日産のIMQには「I2V」というシステムが搭載されていて、プロパイロットでの自動運転支援だけではなく車両周囲の状況や車内の状況までもリアルタイムに把握できます。車両周囲の状況などを360°バーチャルマッピングし、道路標識や歩行者・交差点の状況などを教えてくれるという構想でした。

室内状況もセンサーで把握するため、ドライバーの目元が閉じてきたと判断したら休憩を提案する、室内の二酸化炭素濃度を測定し濃くなってきたら眠くならないよう窓を開けて換気を促すなど、乗員を気遣う機能も想定されています。

ほかにも、仮想空間と繋がることで1人で運転していても助手席に家族や友人のアバターを表示し、一緒にドライブしたり運転をサポートしたりする機能も掲げられていました。

では、その後I2Vはどうなったのか。日産は2019年3月にNTTドコモと5Gを用いた走行実証実験を行うなど開発を進めてきましたが、市販車への搭載には至っていません。日産の技術紹介ページでI2Vは「技術アーカイブ」の将来技術として扱われており、実用化の目標時期は「2030年代」と記されています。公開当初は「2025年以降」とされていたことを踏まえると、想定は大きく後ろへずれた格好です。通信インフラや高精度地図、そして自動運転そのものの実用化ペースが当時の見立てほど速く進まなかったことが背景にあると考えられます。IMQが提示したうち、パワートレインは現実になり、インターフェースはまだ研究段階にとどまっている、という整理になります。

ジュネーブモーターショー2019で発表された日産IMQは次期ジュークかキャシュカイになる?その答え合わせ

IMQ

ジュネーブモーターショー2019で発表されたインテリジェントモビリティ技術を搭載した日産のIMQは、前後に合計2基のモーターを搭載し、発電用エンジンには1.5Lガソリンターボを組み合わせたe-POWERを積んでいました。

最高出力は335hpで、最大トルクはモーターで動く自動車らしく700Nm。タイヤにはブリヂストンのコネクトタイヤという技術が使われ、空気圧だけではなくグリップ状態や摩耗具合まで把握できる構想でした。ただし、量産車に同種のコネクトタイヤが標準装備された例はまだなく、この部分は現在も実験的な提案のままです。

ボディサイズは、全長4,558mm・全幅1,940mm・全高1,560mmのCセグメントサイズで、全幅がかなりワイドでした。当時この記事は「幅を標準的な数値に合わせるとジュークか欧州のキャシュカイのサイズになり、それぞれの次期型になるのではないか」と予想しています。

その答え合わせをすると、欧州のキャシュカイについては当たりでした。IMQのデザインを受け継いだ3代目キャシュカイは2021年2月18日に発表され、同年夏から欧州で発売。2022年にはVCターボを発電に使うe-POWERが加わり、2025年9月には第3世代e-POWER搭載車へと進化しています。一方、「日本ではジュークの名前で2022年までに発売される」という予想は外れました。キャシュカイは日本に導入されず、ジュークも2代目・3代目とも日本では正規販売されていません。日産が国内でエクストレイル、キックスといった既存SUVの布陣を優先したことが大きな理由です。

IMQという名前の市販車は、ついに生まれませんでした。それでも、立体的なVモーショングリルとブーメラン型ランプ、そしてe-POWERによる電動4WDという提案は、キャシュカイやエクストレイル、アリアといった実在の日産車に分散して受け継がれています。コンセプトカーの役割が「一台の予告編」から「次世代の設計思想の共有」へと変わっていく過渡期に置かれた一台だった、と見るのが妥当でしょう。日本の読者にとっては、IMQの遺伝子に最も近い形で触れられるのが、エクストレイルのe-4ORCEと、2026年度に登場する第3世代e-POWER搭載の新型エルグランドということになります。