e-エボリューションコンセプト

三菱e-エボリューションコンセプトは市販化された?EVランエボの現在とランエボ復活の可能性

e-エボリューションコンセプトは市販化された?答えは「未発売」です。2017年の予想に反して2026年の今も販売はなく、ランエボ復活も三菱幹部が「夢」と語る段階。ジャパンモビリティショー2025のエレバンス コンセプトなど、最新のEV・PHEV戦略まで分かりやすく解説します。

三菱e-エボリューションコンセプトは市販化された?EVランエボの現在とランエボ復活の可能性

e-エボリューションコンセプトは市販化されず 系譜はエレバンスへ

三菱自動車が2017年の東京モーターショーで世界初披露した「e-エボリューションコンセプト」は、EVならではの走りと三菱伝統の四輪制御技術を融合させ、往年の「ランサーエボリューション」を思わせる名を与えられた一台でした。会場では「ランエボがEVで復活するのか」と大きな話題を呼びましたが、結論から言えば、このコンセプトがそのまま市販車になることはありませんでした。当時の記事が「7年後の2026年以降に市販化か」と見込んでいた時期をすでに迎えた現在も、e-エボリューションそのものの発売は実現していません。ただし、そこで示された技術と思想は、その後の三菱のコンセプトカーへと確かに引き継がれています。

方向性はエンゲルベルクツアラー、そしてエレバンス コンセプトへ

e-エボリューションコンセプトが指し示した「電動化×四輪制御×SUV」という路線は、まず2019年3月のジュネーブモーターショーで公開された「エンゲルベルクツアラー」に受け継がれました。こちらはピュアEVではなくプラグインハイブリッド(PHEV)のSUVコンセプトで、e-エボリューションの発展形とみる向きが多かったモデルです。

そして現在、その延長線上にあるのが2025年10月29日に開幕したジャパンモビリティショー2025で世界初披露された「MITSUBISHI ELEVANCE Concept(エレバンス コンセプト)」です。カーボンニュートラル燃料対応エンジンを組み合わせたPHEVシステムに、四輪すべてへモーターを配するクアッドモーター4WD式の独自制御「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用し、リアには三菱おなじみのデュアルモーターAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を積みます。ペロブスカイト太陽電池やグランピング対応のトレーラー給電など新しい提案も盛り込まれ、三菱の今後のデザインと電動化の方向性を象徴する一台となりました。e-エボリューションが掲げたAYCによる緻密な四輪制御という発想が、形を変えて生き続けていることが分かります。

ランエボ復活はいまだ「夢」 三菱の現在のスポーツ戦略

では、肝心の「ランサーエボリューション」の後継はどうなったのでしょうか。ランエボは2016年に販売を終えて以降、正式な後継車は登場していません。三菱の技術部門の幹部は、次期ランエボ(エボXI)の復活を「自分たちの夢であり、諦めていない」と語っており、承認されれば実現する手段は持っているとの前向きな姿勢を示しています。ただしこれは意欲の表明であって、開発や発売が決まったわけではありません。仮に登場する場合も、かつてのガソリンターボではなく、アウトランダーPHEVなどで培った電動化技術とS-AWCを軸にしたPHEVになる可能性が高いという見方が出ています。

加えて、三菱はモータースポーツブランド「ラリアート」を再始動させ、アウトランダーなどへ特別仕様として展開するなど、「走りのブランド」を静かに再定義しつつあります。エレバンス コンセプトのような高性能PHEVの布石と合わせて考えれば、ランエボの魂が復活へ向けて動き出す余地は残されている、と見ることもできそうです。とはいえ現時点では、いずれも確定情報ではない点に注意が必要です。

e-エボリューションコンセプトとは 2017年東京モーターショーで世界初披露

ここからは、e-エボリューションコンセプトがどのようなモデルだったのかを改めて振り返ります。2017年の東京モーターショーで世界初披露された同車は、ボディタイプがクロスオーバーSUV、パワートレインはEVとして発表されました。名称に「エボリューション」を冠していたことから、2016年に販売を終えた「ランサーエボリューション」の後継ではないか、と当時から大きな注目を集めていました。

e-エボリューションコンセプトのエクステリア

e-エボリューションコンセプトのフロントビュー

フロントマスクには三菱の「ダイナミックシールド」を採用し、LEDのヘッドライトやフォグライト、ハニカム模様の近未来的なフロントグリルの中央には、三菱のエンブレムが配されていました。迫力と先進感を両立させた顔つきが与えられていました。

e-エボリューションコンセプトのサイドビュー

サイドビューは、傾斜の緩いフロントガラスによって前席からの見晴らしの良さを感じさせるパノラミックな造形で、クーペ風のスタイリングが特徴でした。ドアはフロントが大きくリアが小さい構成とされ、伸びやかなキャビンを描いていました。

バックドアまわりはクーペSUVらしい抑揚のある造形で、居住空間とラゲッジをうまく両立させたシルエットにまとめられていました。

e-エボリューションコンセプトのリヤビュー

リアまわりは、奥行きを感じさせる六角形をモチーフにした特徴的なテールレンズが目を引きます。チューブ状に光るライン部分やハニカムを想起させるグラフィックが、EVらしい未来感を演出していました。

ドアミラーは非常に細い形状とされ、カメラを用いた電子ミラーが採用されていました。空力と先進性を意識したディテールが随所に盛り込まれていたのです。

e-エボリューションコンセプトはEVに

e-エボリューションコンセプトのモーターとパワートレイン

e-エボリューションコンセプトのパワートレインは、日産リーフやテスラ車と同じく電気自動車(EV)でした。

小型で高性能なモーターと大容量バッテリーを組み合わせ、フロントに1基、リアにランエボシリーズでおなじみの「アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)」を備えたデュアルモーターを配置。合計3つのモーターで駆動するトリプルモーターの4WDを採用していました。左右後輪の駆動力を緻密に振り分けることで、EVならではの俊敏なハンドリングを狙った構成です。

e-エボリューションコンセプトにはAIが搭載

エコを示すコクピットのメーター

e-エボリューションコンセプトには車載AIが搭載され、車両の各種センサーが道路状況や交通状況を認識し、安全で快適なドライブを支援するとされていました。音声やディスプレイを通じて助言してくれるコーチング機能も備え、ドライバーの運転技術の向上をサポートする狙いがありました。

死角に他車がいる状況での車線変更や、不用意な急ハンドルに対して注意を促したり、標識を読み取って「進入禁止」の場所へ進もうとした際に音声で警告したりと、安全運転を後押しする先進機能が想定されていました。いま思えば、こうしたAIによる運転支援は、その後急速に普及していく先進運転支援システムを先取りする提案でもありました。

e-エボリューションコンセプトはランサーエボリューションの後継モデルか?

販売が終了した三菱ランサーエボリューション

「名称にエボリューションを冠している点」「リアモーターにランエボ譲りのアクティブ・ヨー・コントロールを備える点」「EVのハイパフォーマンスモデルである点」——挙げていけばキリがないほど、e-エボリューションコンセプトは2016年に販売を終えた「ランサーエボリューション」の後継を思わせる要素を備えていました。当時から後継説がささやかれたのも当然でした。もっとも、三菱がこのモデルを公式にランエボの後継と位置づけたことは一度もなく、あくまで三菱の電動化技術を示すスタディモデルという立場でした。実際に市販化へ至らなかったことも含め、後継の座は現在も空席のままです。

示された未来は、形を変えて受け継がれた

e-エボリューションコンセプト

当時の見立てでは、e-エボリューションコンセプトの市販車は「2017年の発表から数年後、2026年以降に登場するのでは」と期待されていました。しかし2026年を迎えた現在、その市販化は実現していません。自動運転についても、当時語られたレベル3の実用化は他社を含め一部で始まったものの、e-エボリューション自体が路上に現れることはありませんでした。

それでも、このコンセプトが示した「EVでも操る楽しさを追求する」「四輪制御でスポーツ性を高める」という思想は、決して無駄にはなりませんでした。エンゲルベルクツアラーからエレバンス コンセプトへと続く一連のモデル、そしてラリアートの再始動を通じて、その遺伝子は形を変えて三菱の中で生き続けています。市販化という夢はまだ果たされていませんが、e-エボリューションコンセプトは三菱の電動化とスポーツ性の交差点を早くから指し示した一台として、いまなお振り返る価値があると言えるでしょう。