日産 IMx EVクロスオーバー

日産IMxはどうなった?市販化されずアリアの原型に~完全自動運転の現在地まで解説

日産IMxは結局発売されたのか、後継はあるのか。IMxがアリア コンセプトを経て量産EVアリアへ発展した流れや、レベル5をうたった自動運転が今どこまで実現しているのかを最新情報でまとめました。

日産IMxはどうなった?市販化されずアリアの原型に~完全自動運転の現在地まで解説

ニッサン IMxは市販EV「アリア」の原型となったコンセプトカー

2017年の第45回東京モーターショーで日産が世界初公開したのが、次世代EVクロスオーバー「ニッサン IMx」です。「ニッサン インテリジェント モビリティ」という当時の経営ビジョンを体現し、「クルマとドライバーがより繋がり、もっとクルマで移動したくなる」世界を形にしたモデルでした。

IMxは100%電気で走るクロスオーバーで、いわばリーフのSUV版とも表現できる存在でした。セレナやエクストレイル、リーフに搭載されていた同一車線自動運転技術「プロパイロット」をさらに推し進めた「プロパイロット ドライブモード」を掲げるなど、クルマの近未来像を先取りしたコンセプトカーとして登場しています。

結論から先にお伝えすると、IMxそのものが市販化されることはありませんでした。ただし、そのフラットなEV専用プラットフォームや和の設計思想は、2019年の東京モーターショーで披露された「ニッサン アリア コンセプト」へと受け継がれ、最終的に日産初の量産クロスオーバーEV「アリア」(2020年7月発表、2022年1月販売開始)として結実します。日産のデザイン責任者もアリアの下敷きがIMxであったと語っており、IMxは市販EVアリアの原型として、いま振り返ると大きな意味を持つ一台だったと言えます。

そのアリアも、2025年12月にマイナーチェンジが発表され、翌2026年2月に刷新モデルが登場。同時期にはスポーツ仕立ての「アリアNISMO」も設定されるなど、IMxがまいた種は現在も枝葉を広げています。

流線形で一体感のあるエクステリア

ニッサン IMxは100%電気で走るEVとして、日産が掲げるゼロエミッション(二酸化炭素排出量ゼロ)を体現する、クリーンでエコなイメージを表現していました。日産のデザインアイコンであるVモーションを大きく押し出し、迫力のあるフロントマスクに仕上げられています。
EVはモーターで走るためエンジンを冷やす必要がなく、IMxもフロントグリルを持たない、シームレスでデザイン性の高い顔つきとなっていました。

フロントからリヤまで流線形でつながる一体感のあるデザインを採用し、クロスオーバーSUVらしい力強さを保ちながら、シャープで存在感のあるスタイリングを描いています。
IMxはリーフを二回りほど大きくしたボディサイズながら、後席の天井が低く絞られたクーペ風クロスオーバーのため、実寸よりコンパクトに見えるのも特徴でした。

アクセントに配されたレッドは日本の「着物」から着想を得たもので、EVならではの静けさとパワフルなトルクを表現していました。

  • ニッサン IMxのサイドビュー
  • ニッサン IMxフロントアップ
  • ニッサン IMxのアルミホイール
  • ニッサン IMxリヤビュー
  • 上から見たニッサン IMx
  • ニッサン IMxのエクステリア
  • ニッサン IMxの流れるようなエクステリア

日本家屋を再現した開放的なインテリア

ニッサン IMxのインテリアは、日本家屋を思わせる開放的で落ち着いた空間に仕立てられていました。インストルメントパネルやドアトリムには木目を大胆に使い、最先端の技術と伝統的な意匠が溶け合った室内が印象的です。

最新のレーザーカッターで加工された組木パターンのヘッドレストは、3Dプリンターで成形され、ドライバーの疲れをやわらげるクッション性を備えたシリコン素材を採用していました。
物理スイッチは必要最小限に絞られ、これまでスイッチで行っていた操作の多くをAI(人工知能)が引き受ける構想でした。最先端の装備を備えながら、シンプルで直感的な操作性を目指したのがニッサンIMxの特徴です。

  • ニッサン IMxの内装
  • ニッサン IMxのインストルメントパネル
  • 後席から見たニッサン IMxの内装
  • ニッサン IMxのステアリング
  • ニッサン IMxのシート
  • 観音開きのドアを持つニッサン IMx
  • ニッサン IMxのセンターコンソール

プロパイロットを進化させ完全自動運転(レベル5)を提案

  • ニッサン IMxの進化したプロパイロット
  • 一般道でも完全自動運転を想定したニッサン IMx

日産車に広がっていた運転支援技術プロパイロットをさらに進化させ、ニッサン IMxは完全自動運転を実現するというコンセプトを打ち出していました。
当時市販されていたプロパイロットはレベル2の運転支援でしたが、IMxが掲げたのはレベル5に相当する完全自動運転という位置づけです。
発表時点で市販車としての実用化時期が明言されることはなく、あくまで日産が描く近未来像を示す提案でした。実際、その後の各社の歩みを踏まえると、完全自動運転の道のりは当時の期待ほど速くは進んでいません。日産が市販化しているプロパイロットは現在もレベル2の運転支援にとどまっており、AIを活用した次世代プロパイロットも2027年度に市販車へ搭載される予定ですが、こちらも運転の主体はドライバーにあるレベル2の技術です。IMxが思い描いた「誰も運転しないクルマ」は、いまなお挑戦の途上にあります。

ニッサン IMxを「プロパイロット ドライブモード」にすると、ステアリングが格納されて完全自動運転へと切り替わります。同時に運転席が深く沈み込み、リラックスできる空間になるという趣向でした。
「マニュアル ドライブモード」を選べばステアリングとシートが元に戻り、自らの操作でドライブを楽しめる——そんな二面性も提案されていました。
映画やアニメが描いてきた「未来のクルマ」を、少しずつ現実へ近づけようとする意欲がにじむ一台でした。

ワイヤレス充電とツインモーターを搭載

ニッサン IMxのパワートレイン

ニッサン IMxは、EVの常識を塗り替えるワイヤレス充電にも対応するとされていました。
ワイヤレス化が実現すれば、充電設備の整った駐車場に停めておくだけで、買い物を終える頃には充電が完了している——そんな使い方が現実味を帯びます

また、高出力モーターを前後に2基備える世界初のツインモーター4WDを採用していました。これはEV専用プラットフォームだからこそ成立する構造で、低重心と高剛性を両立し、航続距離の向上にも寄与しています。
2基のモーターにより、航続距離・最高出力・最大トルクを引き上げ、バッテリー切れの不安を抑えつつダイナミックな走りを楽しめるEVとして構想されていました。

東京モーターショー2017で世界初公開されたニッサン IMxは、リーフのSUV版とも語られました。ここでは、2017年に登場した当時の2代目リーフのボディサイズや航続距離と比較しながら、IMxのスペックを紹介します(IMxの数値はコンセプトモデルとしての諸元です)。

IMx リーフ(2代目)
全長 4,700mm 4,480mm
全幅 1,880mm 1,790mm
全高 1,620mm 1,540mm
ホイールベース 2,800mm 2,700mm
バッテリー容量 80kWh 40kWh
航続可能距離 600km 400km
最高出力 320kW 110kW
最大トルク 700Nm 320Nm

ニッサン IMxが指し示した未来は、アリアとして現実になった

IMx

「Together we ride」をコンセプトに開発されたニッサン IMxは、移動の楽しさやクルマと過ごす時間の豊かさを見つめ直し、クルマを人生のパートナーとして捉える発想を提案していました。
AIが進化し、クルマと語り合いながら目的地まで運んでくれる——そんな未来像の第一歩となったのがIMxです。
そのフラットなEVプラットフォームや和のインテリアは、コンセプトカーで終わることなく、市販EVアリアへと引き継がれました。完全自動運転こそまだ道半ばですが、IMxが描いた方向性の多くは、着実に形になりつつあります。
各社が競い合う電動化と自動運転技術が、この先どこまで進むのか。IMxを起点に広がった日産の挑戦から、これからも目が離せません。