Tjクルーザーは市販化されず「幻のSUV」に~その後の動きを整理
SUVとバンを掛け合わせた斬新なコンセプトで話題を集めたトヨタ・Tjクルーザーですが、2017年の東京モーターショー出展から時間が経った現在も、市販化は実現していません。ここでは、コンセプト初公開から現在に至るまでの流れと、その後にあらわれた「近いキャラクターを持つモデル」の動きを整理してお伝えします。
トヨタは2025年10月、コンパクトな本格クロカン「ランドクルーザーFJ」を世界初公開し、2026年5月14日に発売しました。丸目ヘッドランプとスクエアなボディ、水平基調のインパネなど、Tjクルーザーがまとっていた「道具感」に通じる要素も見受けられます。ただしランクルFJはラダーフレームの本格オフローダーであり、モノコック+スライドドアで積載性を追求したTjクルーザーとは成り立ちが異なります。Tjクルーザーそのものの後継や市販版というわけではありません。
また、荷室重視のニーズに応える動きとして、シエンタに商用4ナンバー仕様の特別仕様車「JUNO」が設定されるなど、Tjクルーザーが提案したような「積める道具」的な価値観は、別の形で市場に広がりつつあります。とはいえ、こちらもコンセプトが部分的に重なるだけで、Tjクルーザー市販化の布石とまでは言えません。
Tjクルーザーは東京モーターショー2017で初公開!
トヨタは2017年10月6日のプレスリリースで、東京モーターショー2017に出展する車両の一部を公開し、そのラインナップにTjクルーザーも名を連ねていました。
この年の東京モーターショーのテーマは「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」。トヨタのコンセプトカーであるTjクルーザーは、そのテーマにぴたりと重なる一台でした。
もっとアクティブに使ってほしいという願いを込めた「TOOL-BOX」のT、乗り物でさまざまな目的地へ出かける楽しさを味わってほしいという「Joy」のJ、そしてトヨタの歴代SUVに受け継がれてきた「CRUISER(クルーザー)」。これらを組み合わせた車名からは、当時のトヨタがこのコンセプトに寄せていた期待の大きさがうかがえます。
SUVにバンの積載能力を掛け合わせたTjクルーザーは、クロスオーバーSUV市場に一石を投じる可能性を秘めた提案でした。ここからは、そんなTjクルーザーの内外装などの特徴をあらためて振り返っていきます。
Tjクルーザーは結局市販化されず、現在も「幻のコンセプト」のまま
初公開の直後から、数年のうちに市販モデルが登場するのではないかという見方が広がったTjクルーザーですが、その後もトヨタから市販化に関する正式な発表は行われず、現在に至るまで販売されていません。
出展時の完成度が高く、来場者の反応も上々だったことから、市販化を待ち望む声は根強く残りました。しかし販売店筋への取材などをまとめると、「市販の予定は当面ない」というのが実情のようです。完成度の高さゆえに期待が先行し、噂が独り歩きした側面もあったと考えられます。期待値の高いコンセプトモデルだっただけに残念ではありますが、Tjクルーザーは市販化に至らないまま、いわば「幻のSUV」として語り継がれる存在になっています。
「2020年発売」「2026年以降に市販化」の噂は実現せず
Tjクルーザーの市販化をめぐっては、これまでさまざまな憶測が飛び交ってきました。2017年の東京モーターショーで披露されたあと、当初は2020年5月頃に市販化されるという見方があり、心待ちにしていた方も多かったはずです。コンセプトの近い市販車が三菱デリカD:5くらいしか見当たらなかったこともあり、一定の販売台数が見込めるのではという期待もありました。
その後、発売時期は2026年以降にずれ込むのではないかという声も上がりました。2020年5月はトヨタの販売店統合が行われた時期で、これに合わせて人気SUVのハリアーがフルモデルチェンジ、さらに同年8月にはRAV4 PHVが投入されています。売れ筋SUVの切り替えが立て込むタイミングで新型を重ねて出すとは考えにくく、Tjクルーザーの投入は先送りされるのではと見られていました。加えて2022年にはヴォクシー/ノアがフルモデルチェンジを迎えており、ミニバン的な性格も併せ持つTjクルーザーの居場所はますます見えづらくなっていました。
結果として、こうした「◯年に発売」という観測はいずれも実現しませんでした。振り返れば、この時期にトヨタが投入したRAV4やカローラクロス、ヤリスクロスといったSUV群がサイズ・用途の面でTjクルーザーと近く、社内で強力な競合がひしめいていたことが、市販化を難しくした一因ではないかと考えられます。
「北米専用車になる」という見方も浮上したが、こちらも幻に
市販化が噂されていた頃には、「Tjクルーザーはまず北米専用車として展開されるのではないか」「日本導入はC-HRの販売が一段落してからではないか」といった見方も一部でささやかれていました。日本だけでなくオーストラリアなどをメインマーケットに据えるのでは、という観測もありました。
もっとも、これらはあくまで市販化を前提にした推測にすぎず、Tjクルーザー自体が世に出なかった以上、いずれも実現していません。どの市場向けだったのかという議論も、結局は答え合わせができないまま残されています。
東京モーターショー2019への出展も見送り、市販化はさらに遠のいた
市販型やブラッシュアップ版のプロトタイプが2019年10月の東京モーターショー2019で披露されるのでは、という期待もありました。しかし実際には、Tjクルーザーは同ショーに出展されませんでした。この頃はハリアーのフルモデルチェンジやRAV4 PHVの投入など、売れ筋SUVの切り替えが続いた時期で、新型を差し込む余地が乏しかったという事情もあったのでしょう。
両側スライドドアを備え、積載性にも優れたTjクルーザー。SUVテイストの新しい実用車として市場を切り拓く一台になるのでは、と期待されていただけに、公の場に姿を見せる機会が失われていったことは、市販化の可能性がしぼんでいく流れを象徴していたと言えます。
エクステリアはVAN×SUVの魅力が満載!今までなかったコンセプトで登場

Tjクルーザーのエクステリアは、バンならではのスクエアな構造に、SUVのゴツゴツとした迫力を組み合わせた独特の存在感が魅力でした。
流麗なボディラインをまとう車種が多い近年のクルマと並べると、Tjクルーザーには威厳と圧倒的な迫力が備わっています。
大型のフロントグリルとバンパーが生む相乗効果は抜群で、SUVらしい大径タイヤによって足回りにはどっしりとした安定感が漂います。

ボンネットからルーフ、フェンダーにかけては、アクティブに使うユーザーがうれしい強化塗装「ケアフリー素材」を採用し、力強いフロントビューを演出していました。
Tjクルーザーのインテリアは先進的な水平基調を採用

インテリアでは水平基調のインパネが目を引きます。エスティマのオプティトロンメーターをシャープに仕立て直したようなデザインが印象的です。黒を基調とした室内に、シートなどへ配されたグレーのラインがアクセントを添えていました。
助手席フルフラットモードでロングサイズの荷物の積載も可

Tjクルーザーでは、助手席側をフルフラットモードにアレンジすることで、ロングボードやロードバイクといった3mクラスの長尺物も積み込める設計とされていました。
シートアレンジで広がるラゲッジルームは、レジャーはもちろん、ビジネスにも活用できる余裕のある空間を確保していました。シート裏やデッキボードなどに多数の固縛ポイントを設けることで、荷物をしっかり固定できる工夫も盛り込まれています。
大開口スライドドアは乗り降り便利で荷物の出し入れがスムーズ

Tjクルーザーが採用していたのが大開口スライドドアです。ワイドサイズのスライドドアは乗り降りがしやすく、お年寄りやお子さんまで、世代を問わず室内へ乗り込みやすい設計でした。スライドドアからは長尺の荷物も自在に出し入れできます。
TjクルーザーのスペックをFJクルーザー・FT-4Xと比較
| Tjクルーザー | FT-4X | FJクルーザー | |
|---|---|---|---|
| 全長 | 4,300mm | 4,250mm | 4,635mm |
| 全幅 | 1,775mm | 1,820mm | 1,905mm |
| 全高 | 1,620mm | 1,620mm | 1,840mm |
| ホイールベース | 2,750mm | 2,640mm | 2,690mm |
| 乗車定員 | 4人 | – | 5人 |
Tjクルーザーの開発には、C-HRなどにも採用されたトヨタの新プラットフォーム「TNGA」(GA-C)が想定されていました。駆動方式は前輪駆動と4輪駆動が計画され、四季を通じてアウトドアを楽しめる構成をうたっていました。
パワーユニットは、2Lクラスのエンジンにハイブリッドを組み合わせた、環境性能にも配慮したシステムを想定。ボディサイズはFJクルーザーよりもコンパクトで、上の表を見てもFT-4Xに近い数値だったことがわかります。なお、これらはあくまでコンセプトモデルの諸元であり、市販化されなかったため確定スペックとしては存在しません。
SUVとミニバンが融合したTjクルーザーの画像5枚
Tjクルーザー
Tjクルーザー
Tjクルーザー
Tjクルーザー
Tjクルーザー
Tjクルーザーが示した「VAN×SUV」の発想は、いまも色あせない

Tjクルーザーは、新しいカーライフを予感させる一台でした。市販化されるクロスオーバーSUVでは「コンパクトカー×SUV」や「スポーツカー×SUV」といった掛け合わせに人気が集まる傾向があります。
そんな中でTjクルーザーが提案したVANとSUVを融合させた新ジャンルは、アクティブユーザーの購買意欲を刺激する可能性を秘めていました。結果的に市販化には至りませんでしたが、車中泊やアウトドア、フラットな荷室へのニーズが高まった現在の市場を見渡すと、「いま出ていれば刺さったのでは」と再評価したくなる先進的なコンセプトだったと言えます。VANの積載性にSUVの力強さを重ねたTjクルーザーの発想は、登場から時間を経たいまも色あせていません。






























