シルフィ ゼロ・エミッション

日産シルフィEV 中国発売からわずか3年で生産終了 日本導入なし 後継のN7も中国専用EVセダン

シルフィEVは北京モーターショーで発表された車種で、中国専売車種になると考えられます。シルフィは日本ではあまり人気のないセダンタイプの車ですが、中国市場では売れに売れていて大人気の車種になっています。

日産シルフィEV 中国発売からわずか3年で生産終了 日本導入なし 後継のN7も中国専用EVセダン

シルフィEVは2018年9月に中国発売、2021年に生産終了 後継の座は2025年のN7へ

日産が2018年4月の北京モーターショーで世界初公開した「シルフィ ゼロ・エミッション(中国名:軒逸・純電)」は、その年の9月25日に中国で正式発売されました。ニッサンブランドとして初めて中国で生産された量産EVという看板を背負って登場したモデルですが、結論から書けば商業的には成功しませんでした。販売は月販二桁台まで沈み、生産は2021年に終了。中国の主要な自動車情報サイトでも2022年ごろには「停産」扱いに切り替わっています。

そして2026年7月現在、東風日産のEVセダンの座に座っているのはシルフィEVの直接の後継ではなく、まったく新しい車名を与えられた「N7」です。2025年4月27日に11.99万〜14.99万元という戦略価格で発売され、約1か月で17,215台を受注しました。

  • リーフのエクステリアシルフィEVはリーフのプラットフォームを流用して生まれた
  • リーフの説明リーフの説明

ここでは、シルフィEVがたどった8年間を新しい順に整理したうえで、北京モーターショー2018で発表された当時の内容もあわせて振り返ります。

北京モーターショー2026でN7の中南米・アセアン輸出計画を公表

2026年4月、日産は北京モーターショー2026(Auto China 2026)で新エネルギー車のSUVコンセプトカー2台を世界初公開しました。この場で示されたのは、中国を単なる販売市場ではなく「グローバルなイノベーションと輸出のハブ」と位置づける方針です。

日産は2025年以降、中国で「N7」「フロンティア プロPHEV」「N6」「NX8」を相次いで投入しており、このうちN7は中南米とアセアン市場への輸出を予定、フロンティア プロは中南米・アセアン・中東への輸出を計画しているとしています。さらに「NX8」と「テラノPHEVコンセプト」の量産モデルについても輸出が計画され、2030年度までに中国での販売台数を年間100万台にするという目標が掲げられました。

シルフィEVが「中国で生産する中国のためのEV」に徹していたのに対し、N7以降は中国で開発したNEVを外へ持ち出す前提で企画されています。この設計思想の違いこそが、シルフィEVとN7を分ける最も本質的な差だと見ています。台数が伸びなければ即座に行き詰まったシルフィEVに対し、輸出まで含めて量を確保する構えは、中国NEV市場の価格競争を前提にした現実的な打ち手だと言えるでしょう。

ジャパンモビリティショー2025でN7が日本初公開 ただし中国専用モデル

2025年11月、東風日産のEVセダンN7が「ジャパンモビリティショー2025」で日本初公開されました。中国で発売から約1か月で1.7万台超という数字を叩き出したモデルだけに来場者の関心も高く、日本導入を期待する声も少なくありませんでした。

ただし、展示の時点でN7は「中国専用モデル」という位置づけが明示されており、日本向けの発売時期や導入スケジュールはアナウンスされていません。前述のとおり輸出先として名前が挙がっているのは中南米とアセアンで、日本は含まれていません。日本にはすでにリーフとアリアがあり、価格帯も重なることを踏まえると、N7がそのまま日本へ入ってくる可能性は現時点では低いという見方が自然です。

2025年4月27日にEVセダン「N7」が発売 事実上の後継は11.99万元から

東風日産は2025年4月27日、上海モーターショー2025でEVのミッドサイズセダン「N7」を発売しました。価格は11.99万〜14.99万元(約240万〜300万円)で、全5グレード。デリバリーは同年5月15日から始まっています。

ボディサイズは全長4,930mm×全幅1,895mm×全高1,484/1,487mm、ホイールベース2,915mmと、シルフィEV(4,677×1,760×1,520mm、WB2,700mm)より一回り以上大きく、クラス自体が違います。バッテリーは58kWh(最高出力160kW/510系)と73kWh(同200kW/625系)の2種類で、最大航続距離は635km。荷室容量は最大504Lです。装備面ではMomenta社と共同開発した運転支援「ナビゲート・オン・オートパイロット」、AIでシートを調整する「ゼロプレッシャーシート」などを搭載します。グレードはマックス/プロ/エアの3種類で、マックスとプロはバッテリー容量を選べる構成です。一部報道では、日産の完全独自開発ではなく東風汽車の電動セダン「eπ007」をベースにしているとも指摘されています。

N7は日産が2027年夏までに中国で投入する新エネルギー車9車種の第1弾で、経営再建計画「Re:Nissan」の商品戦略を担う存在です。2025年6月5日の日産発表によれば、発売から約1か月で17,215台を受注。購入者は35歳以下の若いファミリーが中心で、その70%が初めて日産車を購入した層でした。シルフィEVが既存ユーザーの置き換えすら起こせなかったことを思えば、この一点だけでも意味が違います。

もっとも、その後の推移は平坦ではありません。2025年9月以降は月販6,000台前後で落ち着き、1〜10月の累計交付は約3.9万台。中国のEVセダン市場では下位に沈んでいます。同じく2025年に投入されたPHEVセダン「N6」が限時価格9.19万元という思い切った設定で比亜迪・秦PLUSなどに挑んでいることを含めても、東風日産のNEV転換はまだ道半ばというのが実情です。それでも、月販二桁で終わったシルフィEVと比べれば桁が2つ違うわけで、7年かけて日産がようやく中国のEV市場で戦える製品を持てた、という評価が妥当だと考えます。

2024年に「日産エポック・コンセプト」を公開、11月には量産版N7が姿を現す

シルフィEVが静かに退場したあと、東風日産のEVセダンには長い空白期間がありました。その空白を埋める動きが表面化したのが2024年です。

2024年4月、北京モーターショーでコンセプトカー「日産エポック・コンセプト(Nissan Epoch Concept)」を公開。これがデザインスタディとなり、同年11月15日には広州モーターショーで量産版「N7」がお披露目されました。東風日産の新しいモジュラーアーキテクチャーを採用するミッドサイズセダンで、日産の中期計画「The Arc」に含まれるモデルとして位置づけられています。

この間、日産の中国販売は坂を転げ落ちていました。2021年の約138万台から、2022年は104.5万台(前年比-22.1%)、2023年は79.3万台(-24.2%)、2024年は69.6万台(-12.2%)。「シルフィが売れているから大丈夫」という構図が完全に崩れたことが、N7という新しい車名・新しいアーキテクチャーへの投資を後押ししたと見るのが自然でしょう。

シルフィEVは2021年に生産終了 販売は月販二桁台まで沈んだ

シルフィEVの商品寿命は短いものでした。花都第2工場での生産期間は2018年から2021年までで、その後は再開されていません。中国の主要な自動車情報サイトでは2022年ごろまでに「停産」扱いへ切り替わり、東風日産の販売ラインナップからも姿を消しました。2025年1〜5月にも10台という登録が記録されていますが、これは在庫処分によるものとみられます。

売れなかった理由は、いま振り返れば明快です。第一に価格。補助金後で15.9万〜16.6万元という設定は、当時のガソリン版シルフィ(2019款で14.03万〜16.15万元)とほぼ同じでした。同じ値段でガソリン車が買えるなら、充電の手間を負ってまでEVを選ぶ理由が薄い。第二に航続距離。NEDC338kmという数字は、吉利・帝豪EV450や長安・逸動EV、比亜迪・秦新能源といった中国勢が競っていた水準に対して中位止まりでした。しかも、シルフィのボリュームゾーンである配車サービス用途には338kmでは足りません。第三に商品の性格。中身は「三厢版リーフ」と評されたとおりで、中国市場が求めていた大画面や車載アプリといった要素はほとんどありませんでした。

中国メディアからは「NEVクレジット(双積分)対応のための一台だったのではないか」という手厳しい指摘も出ました。ガソリン車のシルフィがそのまま年間50万台級で売れ続ける一方、そのEV版が月販二桁で終わったという対比は、EVが「よく売れているクルマの電動版」では成立しないことを、日産にとって最も痛い形で証明したと言えます。

2021年9月に「シルフィ e-POWER」が登場 電動化の主役はBEVからe-POWERへ

シルフィEVが失速する一方で、日産が中国の電動化の切り札として送り出したのが2021年9月29日発表の「シルフィ e-POWER」です。中国市場で初となるe-POWER搭載モデルで、燃費は25.6km/L(中国基準)と発表されました。

e-POWERはエンジンで発電し、駆動は100%モーターが担うシリーズ式ハイブリッド。EVの走行フィールを持ちながら充電が不要という性格は、充電インフラへの不安がまだ残っていた当時の中国で、シルフィEVよりはるかに現実的な提案でした。結果として、シルフィという看板の下での電動化は、BEVからe-POWERへ主役が入れ替わることになります。2026年7月時点でもe-POWER版は参考価格13.89万〜17.49万元でリストに残っており、シルフィEVが2021年で消えたのとは対照的です。なお、この構図は本記事が2018年時点で描いていた「EV20車種のスタートを切るモデル」という筋書きとは、まったく別のものになりました。

日本のシルフィは2020年9月に生産終了、2021年10月に販売終了

シルフィEVそのものの話ではありませんが、母体となったシルフィの日本での動向にも触れておきます。日本仕様の3代目B17型は2020年9月30日に生産を終了し、以後は流通在庫のみの販売となりました。そして2021年10月26日に販売終了、公式ホームページからも削除されています。

これにより日産は、1938年のダットサン17型セダンから1959年誕生のブルーバードへと連なる基幹クラスのセダンから完全に撤退し、ラインナップから前輪駆動のセダンが消滅しました。記事本文にある「日本市場では人気がなくなってきたセダンタイプの車」という当時の指摘は、その後わずか3年で日本のシルフィそのものの終焉という形で決着したことになります。

ガソリン版シルフィは14代目・15代目へ 中国では現在も現役

シルフィEVのベースとなったのは3代目B17型でした。そのB17型に代わる14代目(B18型)は2019年4月の上海モーターショーでワールドプレミアされ、同年7月16日に中国で発売。CMF C/Dプラットフォームを採用し、2020年には年間54万台を記録、2021年・2022年と中国の乗用車市場で乗用車販売の年間チャンピオンに輝いています。2023年3月上旬にはマイナーチェンジも実施されました。

さらに2026年2月24日には第15代シルフィが中国で発売。4グレード構成で指導価10.49万〜11.99万元、上市限時価は9.49万〜10.99万元とされ、第15代・第14代・軒逸経典の「三代同堂」で6万〜11万元のレンジを覆う体制になっています。ガソリンのシルフィが世代を重ねて生き残り、そのEV版だけが1代限りで消えたという結末は、本記事が2018年に描いた未来図とはほぼ正反対です。ガソリン版シルフィの詳細は、それぞれの車種ページをご参照ください。

2018年9月25日に中国で正式発売 補助金後15.90万〜16.60万元の2グレード

ここからは時計を戻して、シルフィEVがどのように世に出たのかを整理します。

北京モーターショーでの初公開から約2か月後の2018年6月20日、東風日産は北京の水立方で予約受付を開始し、予售価16.6万元(補助金後)を公表しました。この時点でのアナウンスは「10月に正式発売」というものでした。

続く2018年8月27日、東風日産の花都第2工場で量産第1号車がラインオフ。ニッサンブランドとして中国で初めてのEVという節目です。

そして2018年9月25日、海南省万寧で「2018軒逸之夜」として正式発売されました。設定されたのは智領版が24.30万元、智尊版が25.40万元の2グレードで、当時の補助金を差し引いた実売価格は15.90万元/16.60万元。同日発売の2019款ガソリン版シルフィが14.03万〜16.15万元だったことを考えると、ガソリン版とほぼ同価格という位置づけでした。ボディサイズは全長4,677mm×全幅1,760mm×全高1,520mm、ホイールベース2,700mmで、ガソリン版とほぼ変わりません。

立ち上がりは決して悪くありませんでした。2018年11月時点で花都第2工場は日産90台のペースで生産しており、2018年内に累計9,000台の生産計画を掲げていました。9月から始めた受注についても東風日産の幹部は「順調」とコメントし、広州市などでは登録も始まっていました。しかし、この勢いは続かなかった――というのが、その後8年の答えです。

シルフィのEVモデルが北京モーターショーでワールドプレミア

2018年4月25日に始まった北京モーターショー2018で、リーフのセダン版と噂されていたモデルの詳細が発表され、ミドルセダンであるシルフィのEVバージョンであることが判明しました。

日本市場では人気がなくなってきたセダンタイプの車ですが、当時の中国市場では日産のシルフィが売れに売れていて、都市部へ出稼ぎに来た若者がこの車を買って故郷へ帰ると自慢できるとも言われていました。

ここからは、中国市場で販売されたシルフィEVのエクステリアやインテリア、パワートレインや発売日などを、発表当時の内容として振り返ります。

シルフィEVのエクステリア

シルフィEVのエクステリア北京モーターショー2018で発表されたシルフィEV

中国市場で販売されたシルフィEVは、2018年北京モーターショーで発表されたモデルで、リーフのプラットフォームをシルフィのボディに載せたイメージです。エクステリアはシルフィそのもので、フロントフェイスは日産の「V-Motion」デザイン言語を採り入れ、2代目リーフに似たものになっています。急速充電・普通充電の口はボンネット前端に置かれ、これもリーフと同じ流儀です。

シルフィEVのリヤトランク「ZERO Emission」がEVの証

リアトランクには車名のエンブレムのほかに、EVモデルを示す「ZERO Emission」のエンブレムが輝いています。前ドアと車尾を合わせて3か所に配されました。

シルフィEVのサイドビューセダンらしい完成されたスタイリング

サイドビューでは、セダンらしい落ち着いたスタイリングを見せていて、ボディはホワイトですがルーフはブラックの2トーンカラーになっています。ホイールは195/60R16と205/50R17の2種類が用意されました。

中国事業を担当する日産のCPO(当時)は、シルフィEVは今後5年(2018年〜2023年)で市場投入を計画している電気自動車20車種のうちの1車種だと述べていました。この予告がどうなったかは、いま答えが出ています。20車種のEVという規模の計画は実現せず、日産の中国におけるNEV計画は現在「2027年夏までに9車種」へと置き換わりました。EV一本足ではなくBEVとPHEV、e-POWERを併走させる形に組み替えられたわけで、2018年当時の強気な見通しは、中国NEV市場の価格競争と日産自身の経営難によって大幅に下方修正されたことになります。

シルフィEVのパワートレイン

シルフィEVのフロントビュー実際に搭載されたのはリーフより出力を抑えた専用モーター

本記事は当初、シルフィEVのパワートレインについて「リーフやe-NV200と同じEM57モーターを搭載していると考えられます」とお伝えしていました。この推定は外れています。実際に搭載されたのは、型式TZ200XS5URの永磁同期モーターで、最高出力80kW(109PS)、最大トルク254Nm。EM57(最高出力110kW/最大トルク320Nm)とは別物で、およそ3割低い出力に抑えられていました。

なぜ外れたのか。プラットフォームと電池レイアウトはリーフから受け継いだものの、日産は中国での価格を成立させるためにバッテリーを中国製に切り替え、モジュール組み立てを内製化しています。モーターとインバーターは当初日本から調達していましたが、コストと現地の需要特性を踏まえて出力を落とした仕様が選ばれた、というのが実態に近いと見ています。「プラットフォーム流用=パワートレインもそのまま」という当時の当たり前が、中国市場では通用しなかったということです。

シルフィEV(2018年/中国仕様)に実際に搭載されたパワートレイン
モーター型式 TZ200XS5UR(永磁同期)
最高出力 80kW(109PS)
最大トルク 254Nm
バッテリー 薄型三元系リチウムイオン/38kWh
駆動方式 前輪駆動

シルフィEVの航続可能距離は、中国の基準(NEDC)で338kmを達成していました。60km/h等速走行時は389km、電費は13.8kWh/100kmと発表されています。本記事は「日本の基準では400kmの航続可能距離であると考えられます」と予想していましたが、シルフィEVは日本に導入されなかったため、この予想は検証の機会そのものがありませんでした。参考までに、当時のリーフはNEDC378km/EPA243kmで、シルフィEVの338kmはリーフを下回る水準です。また、中国市場での競争軸から見れば、338kmは配車サービス用途には力不足で、私用車としても決定打に欠ける数字でした。この航続距離が、後の販売不振の一因になっていきます。

シルフィEVの発売日・価格帯

本記事は発表当時、「シルフィEVの発売日は2018年後半に予定していると発表されています。気になる価格帯は発表されていませんが、ガソリンモデルのシルフィは11.9万元ですし、日本のリーフの価格帯に合わせると18万元ほどになると予想します」とお伝えし、次の価格帯を予想していました。

結果はどうだったか。発売日は2018年9月25日で「2018年後半」という予告どおりでしたが、価格の予想は外れました。実際の設定は2グレードのみで、メーカー希望小売価格は24.30万元/25.40万元。ただし当時の中国は新エネルギー車補助金が手厚く、補助金適用後の実売価格は15.90万元/16.60万元に収まりました。つまり、予想した「18万元」は補助金後の実売価格としては高すぎ、補助金前の車両価格としては低すぎたということになります。日本のリーフの価格帯を物差しにしたことと、中国の補助金制度を織り込めなかったことが、外した理由です。

シルフィEVの実際の価格(2018年9月25日発売時)

智領版:24.30万元(補助金後15.90万元)
智尊版:25.40万元(補助金後16.60万元)

なお、この「補助金があってようやくガソリン版と並ぶ」という価格構造こそが、シルフィEVの命脈を縮めた最大の要因でした。中国の新エネルギー車補助金はその後段階的に縮小・終了へ向かい、シルフィEVは価格の下支えを失っていきます。7年後に登場したN7が11.99万元から始まっているのは、この失敗をそのまま裏返した答えだと言えるでしょう。

シルフィEVが残したのは「売れるクルマのEV版」では勝てないという教訓

シルフィEV

本記事は当初、「シルフィEVはセダンタイプの車両で、ガソリンモデルのシルフィは中国市場で売れに売れているモデルですので、法人需要も高いと考えられます」「今後5年間で市場投入する20車種のスタートを切るモデルになります」と締めくくっていました。8年が経ったいま、この見立てはほぼ外れたと認めざるを得ません。

法人需要、とりわけ中国で急拡大していた配車サービス市場は、シルフィEVを選びませんでした。338kmという航続距離では日々の稼働に足りず、補助金込みでガソリン版と並ぶ価格には、乗り換えを促すだけの合理性がなかったからです。20車種のEV計画も実現せず、日産の中国NEV戦略は「2027年夏までに9車種」へと組み替えられました。そしてシルフィEV自身は、2021年に生産を終えています。

ただし、この一台が無意味だったわけではありません。「よく売れているクルマのEV版を出せばEVも売れる」という発想が中国では通用しない、という事実を、日産は誰よりも早く、誰よりも高い授業料を払って学びました。2025年のN7が、シルフィの名を継がず、まったく新しい車名と新しいアーキテクチャーで、11.99万元という価格から出発したのは、その学習の結果にほかなりません。N7が発売1か月で17,215台を集め、その70%が初めての日産車ユーザーだったという事実は、シルフィEVが7年前にどうしても届かなかった場所です。

記事の最後に挙げた「充電インフラの整備が今後のEV普及の鍵になってくる」という指摘については、当時よりはるかに整った現在の中国で、それでもEVが売れるかどうかを決めているのは価格と商品力だったという結論が出ました。シルフィEVは、その答え合わせの最初の一枚だったのです。