コンセプトカー「エンゲルベルクツアラー」はジュネーブモーターショー2019で世界初公開 デザインは新型アウトランダーへ
三菱自動車は「ジュネーブモーターショー2019」で、次世代クロスオーバーSUVのコンセプトカー「エンゲルベルクツアラー(Mitsubishi Engelberg Tourer)」を世界初公開しました。
モーターショーの開催国スイスにある世界有数のスキーリゾート地である「エンゲルベルク」をインスパイアして車名が付けられた同車は、雪道での安全運転をサポートする先進の4WDシステムやコネクティッドカーシステムを搭載していました。
エンゲルベルクツアラー自体が市販されることはありませんでした。ただし、その造形とツインモーター方式PHEVは2021年12月発売の新型アウトランダーPHEVへ受け継がれ、コンセプトが掲げた内容は量産車の形で実現しています。ちなみにデビューの舞台となったジュネーブモーターショーは、2020年から2023年の開催中止を経て2024年に一度復活したのち、2025年以降の開催を取りやめることが2024年5月31日に発表されました。
ここでは、エンゲルベルクツアラーがその後どこへ向かったのかを整理したうえで、同車が採用したパワートレインの特徴や内外装の魅力についても紹介します。
エンゲルベルクツアラーのデザインとPHEVは新型アウトランダーへ引き継がれた
エンゲルベルクツアラーのデザインコンセプトは「BOLD STRIDE(ボールド・ストライド)」と名付けられ、そのまま新型アウトランダーへ色濃く反映されました。三菱は2020年2月に新型アウトランダーの情報を一部公開し、2021年12月16日にアウトランダーPHEVを日本で発売しています。日本市場では3代目、グローバルでは4代目にあたるモデルです。
市販車はルノー・日産・三菱アライアンスの共通プラットフォーム「CMF-CD」を採用し、三菱としてはアライアンス共通基盤を用いた最初の車種となりました。パワートレインは2.4Lガソリンエンジンにツインモーターを組み合わせたPHEVで、フロントモーターは60kWから85kWへ、リヤモーターは70kWから100kWへ強化。駆動用バッテリーは13.8kWhから20kWhに拡大され、EV走行可能距離はWLTCモードで最大87kmとなりました。従来型の57kmから大幅に伸びた計算です。バッテリーを車両中央のフロア下に置いて3列シートを成立させるという、コンセプトが示したパッケージングもそのまま実現しています。
さらに2024年10月9日には大幅改良が発表され、10月31日から販売が始まりました。バッテリーパックを刷新してEV走行可能距離は106km(Mグレード)へ延長。ヤマハと共同開発したオーディオシステムを搭載し、内外装の質感も引き上げられています。価格は5,263,500円からで、この改良型は欧州への導入も決まりました。アウトランダーPHEVは2013年1月に世界初のSUVタイプPHEVとして登場して以来、SUVタイプ4WDのPHEVとして世界トップの販売台数を積み上げてきたモデルであり、エンゲルベルクツアラーが提示した方向性はその延長線上にあります。
後継となるコンセプトは2025年の「エレバンス コンセプト」
三菱の電動クロスオーバーSUVコンセプトという系譜は、2025年10月29日にジャパンモビリティショー2025で世界初披露された「MITSUBISHI ELEVANCE Concept(ミツビシ エレバンス コンセプト)」へと引き継がれました。エンゲルベルクツアラーと同じく3列シートを備え、電動化技術と四輪制御技術を前面に押し出した一台です。
パワートレインはカーボンニュートラル燃料に対応する高効率エンジンとPHEVシステムの組み合わせで、燃料の選定を含めて現在も開発中とされています。BEVではなくPHEVを選んだ理由について三菱は、航続距離を気にせず遠くまで出かけられることを重視したためと説明しました。駆動系は4個のモーターを協調制御する電動クアッド4WDで、フロントにはインホイールモーターを採用。S-AWCの将来像を示す内容になっています。ボディ側面は大きく開く観音開きのドアを備え、キッチンやシャワーブースを持つトレーラーを牽引してPHEVから給電するという使い方も提案されました。
加藤隆雄社長兼CEOはブーステーマに「FOREVER ADVENTURE」を掲げ、技術革新が進む時代においても自ら操縦する走る歓びを大切にすると述べています。プレミアム化したパジェロの予告編と受け止める見方もあり、市販化の有無を含め、今後の動きが注目される一台です。
e-Yi CONCEPTが向けられた中国市場からは2023年に撤退
上海モーターショー2019で公開されたMITSUBISHI e-Yi CONCEPTは中国市場を強く意識したコンセプトでしたが、三菱は2023年10月24日の取締役会で、中国における車両の現地生産と販売からの撤退を決議しました。
広州汽車集団および三菱商事との合弁会社である広汽三菱汽車について、三菱自動車と三菱商事が保有する持ち分は広州汽車へ譲渡され、湖南省・長沙の生産機能は広州汽車傘下のEVブランドAionが引き継いでいます。急速なEVシフトへの対応が遅れ、年間10万台以上を生産していた時期もあった販売が2022年には3万台まで落ち込み、2023年3月から工場の稼働を停止していたことが背景です。三菱は2024年3月期に構造改革費用243億円を特別損失として計上しました。エンジン生産と既販車のアフターサービスは継続されています。
この結果、e-Yi CONCEPTが示した3列シートPHEVが中国で市販されることはありませんでした。三菱は東南アジアやオセアニアへ経営資源を集中させる方針へ舵を切っています。
三菱のコンセプトカー「エンゲルベルクツアラー」は東京モーターショー2019でジャパンプレミア
次世代クロスオーバーSUVのコンセプトカー「三菱エンゲルベルクツアラー」は、2019年10月開催の東京モーターショーで日本初公開の日を迎えました。会期終了後も2020年4月末まで東京・銀座の「MI ガーデン銀座」で展示され、ショーでは見られなかったディテールまで間近に確認できる機会が用意されています。
三菱エンゲルベルクツアラーにはアウトランダーPHEVにも採用されたツインモーター方式PHEVシステムの進化版を採用し、車両センターのフロア下部に駆動用バッテリーを配置。パッケージングを工夫することで広々とした室内空間を実現しました。
三菱エンゲルベルクツアラーのエクステリアはダイナミックなボディと顔つきでありながらもインテリジェンスな要素が加わり、先進性に満ちたデザインです。テールゲートはソリッドな六角形デザインとなっています。直線的なCピラーで力強さを表現しているのも特徴的です。
また、インテリアは機能美を体現したシックなスタイリング。欧州車を思わせる質感で、フロントからリヤまで細かな造形にこだわりが感じられます。
新PHEVシステムを搭載した三菱エンゲルベルクツアラーのEV航続距離は70km以上。満充電・燃料満タン時の航続可能距離は700kmを超える値が示されました。EVの強みである静粛性と、スムーズな走り味を両立しています。
さらに、三菱エンゲルベルクツアラーはツインモーター式のフルタイム4WDをベースに車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用。走行性能を飛躍的に向上させています。
その他の東京モーターショー2019での三菱エンゲルベルクツアラー5枚
MITSUBISHI e-Yi CONCEPT(イーイーコンセプト)は上海モーターショー2019で発表されたエンゲルベルクツアラーの進化版
上海モーターショー2019で発表されたMITSUBISHI e-Yi CONCEPT(イーイーコンセプト)は、3列シートのPHEVです。位置づけはエンゲルベルクツアラーの進化版で、一部のエクステリアやADAS機能が最新のものに置き換えられていました。駆動システムや電動化技術のPHEVシステムはエンゲルベルクツアラーと共通です。
PHEVでありながらEV航続距離70km以上、総航続距離は700km以上を想定した内容で、気象や路面状況に左右されない走行が可能なSUVとして提案されました。
エクステリアは三菱ならではのダイナミックシールドをさらに進化させており、バンパーは左右から中央に向かって一体となるプロテクト形状になっていて、フロントグリルはスクエアラインになっています。また、PHEVらしく、給電時にメッキ部がブルーに点灯します。
インテリアは清潔感のある白を基調としており、洗練された空間になっています。インパネは「ホリゾンタルアクシス」という水平を基調としていて、開放感があるだけではなく、視界もさえぎらないため、快適なドライビングが可能となります。
液晶メーターは12.3インチと大型で、速度やエンジン回転数、エネルギーフローだけではなく、「Mitsubishi Connect」との連携によるナビゲーション情報なども表示することができます。
パワートレインはツインモーターのフルタイム4WDで、2.4リットルのPHEV専用ガソリンエンジンとなり、AYCやS-AWC(車両運動統合制御システム)を搭載しています。
先進運転支援技術(ADAS)では、車が自動車専用道路の同一車線でアクセルブレーキ、ハンドルの自動操作で運転をアシストしてくれます。
コネクテッドカーシステムは、iPhoneやスマートフォンで目的地や経由地などをあらかじめ設定し、ナビと連携させることで車にのってからのわずらわしい設定が不要になります。また、目的地までのルート途中の天候や道路状況などに応じて、最も適している走行モードを選択、バッテリーマネジメントまですることを想定していました。
「エンゲルベルクツアラー」は充電・給電時にダイナミックシールドのメッキ部をライトブルーに点灯させる遊び心を取り入れる
フォグランプ付きの自動開閉式ルーフボックスや前後のバンパーにアンダーガードを装備する「エンゲルベルクツアラー」のエクステリアは、都市部だけではなくてリゾート地の開放的な景色にもマッチする上質感とアクティブさも伴う仕上がりです。
同車が採用するボディカラーには特殊加工が施され、光量・光のあたる角度によって青く輝いて、ボディラインの美しさを際立たせます。
エンゲルベルクツアラーは給電時・充電時に、三菱車のフロントフェイスのトレンドである「ダイナミックシールド」のメッキ部をライトブルーに点灯させます。
「エンゲルベルクツアラー」は車両制御システムと連動する最新のコネクティッドカーシステムを搭載
「エンゲルベルクツアラー」は、ナビゲーションで目的地を設定すれば、走行予定ルートの天候・気温・路面状況・地形情報などを総合的に判断して、システム側が最適な走行モードへと自動調整して、車両制御システムと連動させる最新のコネクティッドカーシステムを搭載していました。
システム側が選択した走行モードでドライブすれば、駆動用バッテリーのエネルギーロスは低減され、四輪統合制御システムの動作効率は向上するため、外部環境などに適した安全・快適なドライブを楽しみながらも、低燃費走行が実現されます。
「エンゲルベルクツアラー」はPHEVの主要パーツである駆動用バッテリーを車両中央部フロア下に格納して室内空間を拡げる事で3列シートを実現
三菱のクロスオーバーSUVのフラッグシップ像を示した「エンゲルベルクツアラー」は、PHEVの主要パーツである大容量の駆動用バッテリーを車両中央部のフロア下に格納させて、広い室内空間を実現させて3列シートを可能としました。
同車は、各シートに着座する人達が快適に過ごせるような乗車スペースを確保するだけではなくて、収納スペースも充実させて、インテリアパーツの質感や機能性を向上させるなどして、目的地まで向かうまでの移動時間を楽しませます。このパッケージングの考え方は、そのまま新型アウトランダーPHEVの3列シート7人乗りへとつながりました。
エンゲルベルクツアラーは進化した「PHEVシステム」を導入してフル充電・燃料満タン時の航続距離700km越えを掲げた
三菱の新世代クロスオーバーSUVである「エンゲルベルクツアラー」は、アウトランダーPHEVが搭載するツインモーター方式PHEVシステムに改良を加えて、回生エネルギーを効率化できる高出力ジェネレーター等を装備し、フル充電・燃料満タン時の航続距離700km越えを掲げました。
フロントとリヤに搭載するモーターと、総排気量2.4LのPHEV専用ガソリンエンジンを動力源とする「エンゲルベルクツアラー」は、ラジエーター部に設置するグリルシャッターによってエアロ効果を高めて、回生エネルギーを有効活用するなどして、EVモード単独での航続距離は70km以上(WLTP)、フル充電・燃料満タンの状態の航続距離は700km以上(WLTP)という数値を掲げています。
エンゲルベルクツアラーは「AYC」や「S‐AWC」といった技術を導入して4WDシステムを進化
エンゲルベルクツアラーは、「ランサーエボリューション」で構築された前輪左右の駆動力配分を制御するヨーコントロール(AYC)や、四輪のブレーキ制動力などをコントロールして運動性能等を向上させる車両運動統合制御システム「S‐AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)」を採用して、ツインモーター方式のフルタイム4WDを高出力・高効率化させます。
同車は、前後駆動力配分のレスポンスに優れ・立ち上がりから最大トルクを発揮できるなどの特性を備える、ツインモーター方式のフルタイム4WDに、「AYC」や「S‐AWC」といった三菱がモータースポーツに参戦する過程で進化させてきた技術を導入することで、ストレスのないハンドリングを実現させて、未舗装路・雪道・滑りやすい路面での安定した駆動力を発揮させます。この四輪制御の考え方は、2025年のエレバンス コンセプトで4モーター化された電動クアッド4WDへとさらに踏み込んでいます。
「エンゲルベルクツアラー」は市販化されなかったが、その中身は新型アウトランダーPHEVとして走り出した
三菱がジュネーブモーターショーで世界初披露した次世代クロスオーバーSUVのコンセプトカー「エンゲルベルクツアラー」は、その名を冠した市販車になることはありませんでした。しかしデザインコンセプト「BOLD STRIDE」とツインモーター方式PHEVは、2021年12月発売の新型アウトランダーPHEVへ受け継がれ、2024年10月の大幅改良ではEV走行距離が106kmに達しています。
ランサーエボリューションで培われた四輪制御技術をSUVで再解釈するという流れも、アウトランダーPHEVのS-AWC、そして2025年のエレバンス コンセプトへと続いています。ランサーエボリューションそのものの復活は2026年時点で正式発表されておらず、三菱の幹部が「まだ諦めていない」と語る段階にとどまっていますが、エレバンス コンセプトが示した高性能PHEVがその受け皿になるという見方は根強く残っています。
三菱はエンゲルベルクツアラーの発表とあわせて、電動車・V2充放電機器・太陽光パネル・家庭用蓄電池を用いた新サービス「電動DRIVE HOUSE(DDH)」を発表しました。クルマを走るためだけの道具ではなく、家庭のエネルギーを支える存在として位置づける考え方で、給電機能を強調したエンゲルベルクツアラーの展示とも重なる内容でした。