GRスープラGT4 EVO

GRスープラGT4のモデルチェンジ情報:EVO2が2026年も現行、市販スープラ生産終了後も供給継続

市販のGRスープラは2026年3月で生産終了。ではレース車はどうなったのか。GRスープラGT4 EVO2は2026年シーズンもGT4ヨーロピアン・シリーズやタイ・スーパーシリーズで現役で、日本・アジアの窓口はTGR-Dが担当しています。

GRスープラGT4のモデルチェンジ情報:EVO2が2026年も現行、市販スープラ生産終了後も供給継続

GRスープラGT4 EVO2は2026年も現行モデル 市販GRスープラの生産終了後もレース専用車の供給は続く

GRスープラをベースにしたレース専用車、GRスープラGT4。2019年3月のジュネーブモーターショーでGT4コンセプトとして姿を見せて以来、2020年の市販開始、2023年シーズン向けのEVO、2025年シーズン向けのEVO2と段階的に鍛えられてきました。

ベースとなる市販のGRスープラは2026年3月に生産を終えましたが、レース専用車であるGRスープラGT4 EVO2は2026年シーズンも現行モデルとして販売・供給が続いています。日本・アジア向けの窓口は株式会社トヨタガズーレーシングディベロップメント(TGR-D)が担当しており、日本のチームが新車で購入できる状態は維持されています。GT4カテゴリー用の後継車両については、2026年7月時点で正式な発表はありません。

2026年1月7日に開発・製造元がTOYOTA RACING GmbHへ改称 GRスープラGT4 EVO2の供給体制は継続

2026年1月7日、ドイツ・ケルンに拠点を置くTOYOTA GAZOO Racing Europe GmbHがTOYOTA RACING GmbHへ社名を変更しました。同社はWECのハイパーカーを手がける一方で、カスタマーレーシングの中核も担っており、GRスープラGT4 EVO2の開発と製造、GRヤリスRally2用エンジンの生産を引き続き受け持ちます。ベース車が生産を終えたあともレース車両の供給元が明確に残された形です。

販売とカスタマーサポート(スペアパーツ供給や技術支援)の体制は、欧州がTOYOTA RACING GmbH、北米がTRD U.S.A., INC.、日本・アジアがTGR-D、中国が丰田汽车(中国)投资有限公司、そしてオーストラリア・ニュージーランドがToyota New Zealandという5極構成です。ニュージーランドが加わったことで、南半球のGT4シリーズへの供給ルートも整いました。

2026年シーズンの実戦投入も途切れていません。欧州最高峰のGT4ヨーロピアン・シリーズには、Speedy Motorsport、Mirage Racing、CRT-SportといったチームがEVO2でエントリーしています。アジアでは2026年3月にUMWトヨタがTOYOTA GAZOO Racing Malaysiaを立ち上げ、タイ・スーパーシリーズのGT4クラスへEVO2を2台(81号車・83号車)投入。チームディレクターには飯田章氏が就いています。

GT4カテゴリーの次期車両については、現時点で正式発表がありません。トヨタが開発を進めるGR GT/GR GT3系のプロジェクトはGT3規定を主眼にしたもので、GT4の直接の後継とは位置づけが異なります。そのためGT4クラスではGRスープラGT4 EVO2が当面の主力であり続ける見込みです

2025年シーズンはGRスープラGT4勢が総合26勝・クラス88勝 EVO2はニュルブルクリンク24時間で総合29位

EVO2の実戦デビューは2025年1月、デイトナ24時間レース併催のIMSAミシュラン・パイロット・チャレンジ開幕戦でした。デビューウィークで4回のクラス優勝を挙げ、上々の滑り出しとなっています。同年5月のニュルブルクリンク24時間耐久レースでは、EVO2が総合29位でチェッカーを受けました。

2025年シーズンを通じたGRスープラGT4勢の活動規模は、19の国と地域で110ラウンド・190レース、延べ562エントリーという数字に表れています。戦績は総合優勝26回、クラス優勝88回、クラス表彰台271回。カスタマーレーシング車両としての稼働率の高さがうかがえます。

タイトル獲得も各地域に広がりました。主なものは次のとおりです。

  • ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)SP10-AMクラス王座/Toyo Tires with Ring Racing 170号車
  • 100 Series GT4+クラス王座/ROOS Motorsport 11号車
  • SuperCars Iberian Championship GT4 Proクラス王座およびチーム王座/Speedy Motorsport 4号車
  • IMSA VP Racing Sportscar Challenge GSX総合王座・チーム王座、そしてマニュファクチャラー王座(TOYOTA)
  • スーパー耐久シリーズ ST-Zクラス王座/埼玉Green Brave 52号車
  • SRO Japan Cup GT4総合およびSilver-AMクラス王座/TOYOTA GAZOO Racing Indonesia 39号車、AMクラス王座/K-tunes Racing 97号車
  • SRO GT Cup GT4総合およびSilverクラス王座/TOYOTA GAZOO Racing China 33号車

なお同じ2025年には、市販のGRスープラが2026年3月での生産終了を告知し、北米向けにMkV Final Editionを設定しました。この最終モデルにはGRスープラGT4 EVO2のグラフィックを写したGT4スタイルパックが用意され、レース車両が市販車の締めくくりを飾る格好になっています。

2024年8月22日にGRスープラGT4 EVO2を発売 欧州販売予定価格20万2,000ユーロで2025年シーズンから投入

TOYOTA GAZOO Racingは2024年8月22日、GRスープラGT4 EVO2を発売しました。欧州販売予定価格は20万2,000ユーロで、EVOの18万6,000ユーロから1万6,000ユーロの上昇です。発売時点でGRスープラGT4シリーズの累計販売台数は120台に達し、11の国と地域のGT4シリーズ戦および国際レースで勝利、表彰台獲得は500回超(2024年7月末時点)、アジア・アメリカ・ヨーロッパの3地域でクラス別シリーズチャンピオンを獲得していました。

EVO2の改良は、速さそのものよりも「扱いやすさ」に軸足が置かれています。タイヤの銘柄や摩耗状態、路面コンディションに応じて最適な制動と旋回ができるよう、日欧のサーキットで走り込んでABSのマップを細かく再チューニング。ソフトウェア更新による回転数制御の見直しでシフトダウン時間を短縮し、ブレーキング時の減速コントロール性を改善しました。さらにエンジン・ブレーキ・ドライブトレーンの冷却性能を高め、コックピット温度も最適化しています。プロだけでなくアマチュアドライバーが長時間戦える方向へ振った改良といえます。

GR Supra GT4 EVO2の主要諸元
全長 4,460mm
全幅 1,855mm
車両重量 1,360kg(SROのBoPにより変動)
エンジン 直列6気筒ターボチャージャー/2,998cc
最高出力 SROのBoPによる(調整はUSBパワースティックを使用)
最大トルク 660Nm(SROのBoPによる)
トランスミッション パドルシフト付オートマチック(ZF製)
ブレーキ フロント:6ピストン+Φ390mm/リヤ:4ピストン+Φ355mm(いずれもBrembo製)
タイヤ/ホイール 305/660-18(ピレリ製)/11×18インチ(OZ製)
燃料タンク 120L FT3安全タンク(ATL製)
欧州販売予定価格 202,000ユーロ

EVO2の世界デビュー戦は2025年1月、デイトナ24時間レース併催のIMSAミシュラン・パイロット・チャレンジ開幕戦と設定されました。またこの発売の直後、2024年12月25日には日本・アジアの販売とカスタマーサポートを担う体制も変わっています。トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD)のモータースポーツ事業が新設会社へ承継され、株式会社トヨタガズーレーシングディベロップメント(TGR-D)が誕生。以後、日本のユーザーの窓口はTGR-Dが務めています。

2023年4月28日に累計生産100台到達 世界限定3台のGRスープラGT4 100 Editionを22万ユーロで発売

2023年4月28日、GRスープラGT4の累計生産台数が100台に到達しました。2020年3月の欧州を皮切りに、同年8月から北米、10月から日本を含むアジアへと販売地域を広げ、約3年での到達です。

戦績も着実に積み上がっていました。2022年末時点で世界317レースに延べ625台が出場し、クラス優勝79回、総合優勝20回、表彰台獲得207回。2023年シーズンには欧州27台、北米20台、日本を含むアジア12台の参戦が予定されていました。

この節目に合わせて発売されたのが記念モデル「GR Supra GT4 100 Edition」です。GRスープラGT4 EVOをベースに、オレンジの専用ボディカラー、専用ボンネット、シリアルナンバー入りバッジを特別装備。価格はベースモデルから3万4,000ユーロ高い22万ユーロ(税・通関手数料・物流費別)で、世界限定3台という極端な希少モデルとなりました。

GRスープラGT4 EVOは2022年10月28日に発売 ブレーキとハンドリング、エンジン性能を高め2023年1月のデイトナでデビュー

サーキットを走るGRスープラGT4 EVO2023年シーズンに向けて登場したGRスープラGT4 EVO

TOYOTA GAZOO Racingは2022年10月28日、GRスープラGT4 EVOを発売し、同日から受注を開始しました。欧州販売予定価格は18万6,000ユーロ。販売地域は欧州、北米、日本を含むアジアで、既存のGRスープラGT4オーナー向けには改良部品を入手できるアップグレードキットも用意されました。

開発の重点はブレーキ、ハンドリング、エンジンの3点です。ブレーキ部品の改良とABSセッティングの変更に加え、KW社の最新技術で最適化したアブソーバーとスタビライザーバーの仕様見直しにより、ハンドリングとコーナリングスピードを向上。さらに冷却効率を高めることで、3.0L直列6気筒ターボエンジンの出力向上と、回転数に応じたスムーズなトルク発生カーブを実現しました。パワートレインの型式そのものは従来と同じですが、中身は手が入っています。

EVO投入の背景には、GT4カテゴリーの競争激化がありました。2020年のフルシーズン参戦開始以降、50台を超えるGRスープラGT4が世界のレースへ参戦し、11の国と地域のGT4シリーズ戦および国際レースで勝利。2022年8月にはGTワールドチャレンジ・アジア(スポーツランドSUGO)のAmクラスでGT4カテゴリー通算50回目のクラス優勝を達成しています。EVOは2023年1月、デイトナ24時間レース併催のIMSAミシュラン・パイロット・チャレンジ開幕戦で世界デビューを飾りました。

GRスープラGT4コンセプトはジュネーブモーターショー2019で世界初公開されたGT4規定のレーシングスタディモデル

ここからは、すべての出発点となったGRスープラGT4コンセプトを振り返ります。2019年3月のジュネーブモーターショー2019で世界初公開され、この場でボディサイズと搭載エンジンが公表されました。

ボディカラーはホワイトのほかにシルバー、レッド、オレンジ、ブラックなどへ塗り分けられ、市販車に対して軽量化を施したうえでロールケージやリヤウイングといった競技用の装備を組み込んでいます。FIA-GT4の世界を体感できる1台として、当時から大きな注目を集めました。

GRスープラGT4コンセプトの搭載エンジンは3.0Lの直6シングルターボ 軽量化とロールケージ追加でベース車より80mm長く40mm低い

GRスープラGT4コンセプトのエクステリアジュネーブモーターショー2019で披露されたGRスープラGT4コンセプト

GRスープラGT4コンセプトは、GT4クラスのレース仕様車として仕立てられたコンセプトモデルです。ボディサイズは全長4,460mm・全幅1,855mm・全高1,250mmで、ベースのスープラより長く低い一方、全幅はわずかに狭くなっています。

GRスープラGT4コンセプトのボディサイズ比較
GT4コンセプト ベースモデル
全長 4,460mm 4,380mm
全幅 1,855mm 1,865mm
全高 1,250mm 1,290~1,295mm

全長は80mm伸び、全高は40mm前後下がり、全幅は10mm狭められています。ボディカラーはマルチカラーで、正面向かって左側にオレンジ、右側にホワイト、ルーフにレッドやシルバー、リヤ向かって左にブラックが使われました。

GRスープラGT4コンセプトの内装GRスープラGT4コンセプトのインテリア。ロールケージが張り巡らされ、丸形のステアリングホイールを装備する

開発を担当したのはトヨタモータースポーツ有限会社(TOYOTA Motorsport GmbH)です。同社はその後TOYOTA GAZOO Racing Europe GmbHを経て、2026年1月にTOYOTA RACING GmbHへと社名を変えながら、一貫してGT4車両の開発と製造を担っています。コンセプトにはロールケージ、専用サスペンションとブレーキ、リヤウイングが備わり、外観からもレース専用車であることが読み取れました。

搭載エンジンは3.0L直列6気筒のシングルターボと発表されました。公開時に示されていたのは、ベース車GRスープラRZ相当の最高出力340PS、最大トルク500Nm、0-100km/h加速4.3秒という数値です。実際に市販されたレース車両では、このユニットが320kW(430hp)/650Nmまでチューンアップされ、車両重量も1,350kgまで削られました。

GRスープラGT4コンセプト公開時に示された3.0L直6ターボ(ベース車GRスープラRZ相当の数値)
GT4コンセプト
種類 直列6気筒
過給機 ツインスクロールターボ
排気量 2,998cc
最高出力 250kW(340PS)/5,000~6,500rpm
最大トルク 500Nm/1,600~4,500rpm
市販レース車両GR Supra GT4の主要諸元
全長×全幅×全高 4,460×1,855×1,250mm
車両重量 1,350kg(SROのBoPにより変動)
エンジン 直列6気筒ターボチャージャー/2,998cc
最高出力 320kW(430hp)※BoPにより変動
最大トルク 650Nm※BoPにより変動
トランスミッション 7速スポーツオートマチック(パドルシフト付・後輪駆動)
ブレーキ フロント:6ピストン+Φ390mm/リヤ:4ピストン+Φ355mm(Brembo製)
タイヤ/ホイール 305/660-18(ピレリ製)/11×18インチ(OZ製)
車両販売価格 175,000ユーロ(消費税・関税・輸送費等別)

GRスープラGT4はスーパー耐久やニュルブルクリンク耐久シリーズを戦うFIA-GT4規定のレース専用モデル

GRスープラGT4コンセプトのリヤビューGRスープラGT4コンセプトは、GT4レギュレーションに沿って開発された

GRスープラGT4コンセプトは、FIA-GT4レギュレーションに沿って開発されたレーシングスタディモデルです。ベース車両の段階で競技用の手が入っているため、購入したチームはスーパー耐久シリーズやニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)へそのまま持ち込めます。参戦の敷居を下げるという狙いは、その後の実績が証明しました。

実際の主戦場は、欧州のGT4ヨーロピアン・シリーズやNLS、ADAC GT4ジャーマニー、北米のIMSAミシュラン・パイロット・チャレンジやピレリGT4アメリカ、そして日本のスーパー耐久シリーズやSRO Japan Cupなど多岐にわたります。2025年にはニュージーランドや台湾のシリーズにも活動範囲が広がりました。

なお、GRスープラの名を冠したレース車両はGT4だけではありません。SUPER GTのGT500クラスには2020年からレクサスLC500に代わってGRスープラのGT500車両が参戦しており、北米のNASCARでもスープラの名を持つマシンが走ってきました。ただしこれらはGT4とは成り立ちも規定もまったく異なる専用マシンで、市販されるカスタマー用レース車両はGRスープラGT4系のみです。

GRスープラGT4 EVO2はGRスープラをベースにGT4規定へ沿って開発されたレース専用車

GRスープラGT4

出発点は、ジュネーブモーターショー2019で公開されたGRスープラGT4コンセプトでした。GT4レギュレーションを想定した開発をトヨタモータースポーツ有限会社が手がけ、2020年3月の欧州を皮切りに市販が始まります。そこからEVO、EVO2へと改良を重ね、2024年時点で累計120台が世界のサーキットへ送り出されました。

ベースとなった市販のGRスープラは、日本では2019年5月17日に発売され、価格は490万円から690万円。GT4と同じ3.0L直6ターボはRZグレードに搭載されていました。オーストリアのマグナ・シュタイヤーで生産されてきたこのA90型は、姉妹車のBMW Z4とともに2026年3月で生産を終了しています。

それでも、レースの現場でGRスープラの名が消えたわけではありません。GRスープラGT4 EVO2は2026年シーズンも各国のGT4カテゴリーで走り続けており、新車の供給とカスタマーサポートも継続中です。ベース車が生産を終えたレース専用車がどこまで現役を続けるのか、そしてGT4クラスの次の一手がいつ示されるのか。TOYOTA RACING GmbHとTGR-Dの動きから目が離せません。