若者の車離れの原因

若者の車離れはなぜ起きているのか 都会と地方の実態と7つの原因を解説

「若者の車離れ」は本当に起きているのか?KINTOやデロイトトーマツなどの調査データをもとに、都市部と地方の自動車保有率の違い、Z世代の車への意識を徹底解説。地方では今も7割近くが「生活に車は必要」と回答しています。

若者の車離れはなぜ起きているのか 都会と地方の実態と7つの原因を解説

若者の車離れは本当に起きているのか?都会と地方で異なる実態を解説

「若者の車離れ」という言葉はすっかり定着していますが、実態はどうなのでしょうか。結論から言えば、都市部では車離れが進んでいる一方、地方では車は今も生活必需品であり、一概に「若者全体が車を必要としなくなった」とは言えません。

KINTO(トヨタ系モビリティサービス)が2024年2月に実施したZ世代(18〜25歳)への調査では、都内在住の約5割が「自分は車離れしている」と感じている一方、地方在住では「車離れを感じる」と答えたのは約3割にとどまっています。さらに、将来的に自分名義の車が欲しいと回答したZ世代は、都内で約7割・地方で約8割にのぼり、若者が完全に車を拒絶しているわけでもありません。

では、なぜ都市部を中心に「若者の車離れ」が語られるようになったのか。その背景にある7つの要因を詳しく見ていきます。

公共交通機関が充実している都会に若者の人口が集まり、車を必要としない人が増えたため

バスや車が行き交う都市の様子路面電車やバス・JRや地下鉄の交通網が発達している地域は車の維持費よりも交通費が安いため車を持つ必要性がないと考える

若者の車離れの根本的な要因の一つに、若者人口の都市集中があります。地元より給与水準が高い都市部へ就職するケースが多く、人口は北海道なら札幌、東北なら仙台といった地方中枢都市に集まる傾向があります。

日本7大都市の人口推移(2005年→2025年頃)
2005年 直近(2025年前後) 出典・時点
札幌市 1,880,863人 約195万人 住民基本台帳(2025年1月)
仙台市 1,025,098人 約109万人 推計人口(2025年1月)
東京23区 8,489,653人 約988万人 推計人口(2025年1月)
名古屋市 2,215,062人 約233万人 推計人口(2025年1月)
大阪市 2,628,811人 約280万人 推計人口(2025年1月)
広島市 1,154,391人 約120万人 国勢調査(2020年)
福岡市 1,401,279人 約166万人 推計人口(2025年1月)

7大都市の直近人口を2005年と比較すると、東京23区・大阪・福岡などでは引き続き人口が増加しています。一方、仙台市と札幌市は2020年前後に増加がピークを迎え、直近では減少に転じています。それでも2005年比ではいずれの都市も人口は増えており、地方中枢都市への人口集中は長期的な傾向として続いてきたことがわかります。こうした都市部では地下鉄・バス・JRなど公共交通が発達しているため、車がなくても生活できる環境が整っています。

加えて、都市部では渋滞や駐車場問題も深刻です。月極駐車場代は都内で月2〜3万円以上かかることも珍しくなく、年間を通じると維持費だけで数十万円に達します。便利な公共交通機関を使うほうが時間もコストも節約できると判断する若者が増えるのは、自然な流れといえます。

新車価格が年々上昇し、中古車も手が届きにくくなったため

安全装備の標準化や素材・技術のコスト上昇により、国産車の新車価格は以前と比べて大幅に上がっています。スズキのロングセラー軽自動車・ワゴンRの価格推移を見ると、その変化がよくわかります。

ワゴンRの歴代新車価格の推移(ベースグレード・最上級グレード)
ワゴンR ベースグレード 最上級グレード
初代(1993年) 86.2万円 147万円
2代目(1998年) 75.4万円 159万円
3代目(2003年) 83.2万円 160万円
4代目(2008年) 93.4万円 156万円
5代目(2012年) 114万円 173万円
6代目(2017年〜現行) 143万円〜 182.9万円

初代(1993年)は86万円台で買えたワゴンRも、現行の6代目(2017年発売)では143万円〜182.9万円と、ベースグレードだけで比較しても約60万円以上高くなっています(価格.com調べ)。これは自動ブレーキや車線逸脱警報など安全装備の標準化、衝突安全基準の厳格化が主な要因です。

さらに、オプション追加やグレードアップをすれば200万円に迫るケースも珍しくありません。ベースとなる新車価格が上がることで中古車相場も連動して高くなり、若い人が「手ごろに買える車」の選択肢が狭まっているのが現状です。

スマートフォンの普及で手軽に楽しめる娯楽が増え、車の優先度が下がったため

スマートフォンを操作する男性スマートフォンが若い人を中心に普及して車で出かけなくても遊べるようになり、通信費の負担も増えたため

スマートフォンの普及は、若者のライフスタイルを大きく変えました。無料ゲームや動画配信サービス、SNSなど、外出しなくても楽しめるコンテンツが手元にあふれています。

わざわざ車を使って出かける機会が減少するのは当然の流れです。加えて、スマートフォンの通信費も月々の家計に響きます。データ通信料や動画サービスの月額料金などを合算すると、毎月1万円以上になるケースも多く、そこへ車の維持費(ガソリン代・保険・駐車場・税金・車検など)が加わると、若者世代には負担が大きすぎると感じるのも無理はありません。

ソニー損保の調査では、20歳の57.9%が「マイカーを持つ経済的余裕がない」と回答しており、車への関心はあっても経済的ハードルが高いという実態が浮かびあがっています。

テレビドラマや映画の影響が弱まり、若者が車に憧れを抱きにくくなったため

砂煙を巻き上げて砂漠を疾走するジープテレビなどの娯楽で「この車に乗りたい!」と影響を受けることが少なくなったため、車に憧れを抱かなくなった説もある

かつては映画やドラマが車への憧れを生み出す大きな文化的装置でした。007シリーズのアストンマーチン、バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアン、西部警察のフェアレディZやスカイラインなど、人気作品に登場する車に夢中になる若者は多くいました。

しかし、現代の若者にとってのエンターテインメントの中心はスマートフォンやSNSです。テレビドラマの視聴率が全体的に低下する中、「カッコいいドラマの主人公が乗っているあの車に乗りたい」という体験を持つ若者は少なくなっています。

デロイトトーマツの調査(2023年)によると、車に対して「単なる移動手段」または「特に意味なし」と感じる人が7割を占め、この傾向は2018年から変わっていないことが示されています。車のコモディティ化(特別感のない実用品化)は、若者限定の現象ではなく、社会全体のトレンドとして定着しつつあります。

「車を持っていること」がステータスではなくなったため

5代目シルビアS13これに乗っていたらモテると言われていた日産の5代目シルビア・S13

バブル期の日本では、ホンダ・プレリュード、日産・シルビア、トヨタ・ソアラといったデートカーを持つことが男性のステータスそのものでした。「車がなければデートに誘えない」という空気感すら存在していた時代です。

しかし現在、車はかつてほど「所有者の価値」を示すアイテムではありません。軽自動車の普及・高品質化が進み、「乗っている車で人の偉さは変わらない」という意識も広がっています。インターネットとスマートフォンが普及した結果、車がなくてもデートや遊びを楽しむ手段は無数にあります。その結果、エンジンもかけずに駐車場へ置いておくだけで年間数十万円かかる自家用車を「あえて持たない」選択をする若者が増えています。

エコ意識の向上やミニマルなライフスタイルの浸透により、車を持たない選択が増えたため

トヨタプリウスハイブリッドカー・エコカーの代表格ともいえるトヨタのプリウス。燃費がよくエコなイメージがあり、コンパクトタイプのアクアも販売台数が好調

車を持ちたいと思う若者でも、選ぶ基準は「燃費」「維持費の安さ」「実用性」に集中しています。ハイブリッドカーが長年にわたって販売ランキング上位を占めているのは、ガソリン代を抑えたいというエコ意識と経済的合理性が一致しているためです。

一方で、「なるべく持ち物を減らしたい」「本当に必要なものだけを持つ」というミニマルな価値観も若い世代を中心に広がっています。短い距離なら自転車、少し遠くなら公共交通、たまにしか使わないなら必要なときだけ借りればいい、という考え方はとても合理的です。実際、環境への意識が高まるにつれ、車を所有することそのものを見直す人は今後も増えていくとみられます。

カーシェアリングや車のサブスクが普及し、「所有」から「利用」へ意識が変わったため

都市部の20〜30代を中心に、車は「個人で所有するもの」ではなく「必要なときだけ使うもの」という意識が広がっています。この変化を後押ししているのが、カーシェアリングや車のサブスクリプションサービスです。

KINTOの調査(2024年)では、将来の車の保有に「クルマのサブスク」を検討したいと答えたZ世代が都内で約8割、地方でも約7割にのぼりました。いずれも前年・前々年と比べて増加傾向が続いており、若者の「所有から利用へ」という意識変化が数字にも表れています。

フリマアプリや音楽・映像のサブスクが定着したように、「使うときだけ料金を払えばいい」という感覚はほかの分野でも浸透しています。維持費の負担なしに必要なときだけ車を使えるカーシェアは、そうした価値観に自然に合致するサービスといえます。

東京や大都市以外の地域では車は今も必需品。地方での「車離れ」は起きていない

ここまで見てきた「車離れ」の要因の多くは、公共交通が充実した都市部に当てはまるものです。地方では月極駐車場代が安く、自宅に駐車スペースがある家庭も多いため、維持コストの負担感は都会ほどではありません。そして何より、車がなければ日常の買い物や通院、通勤さえままならない地域が今も多く存在します。

カーリースの「定額カルモくん」が実施した調査(2024年)では、全国の若者(18〜29歳)の67%が「生活に車は必要」と回答しています。また、KINTOの調査でも地方在住Z世代の6割弱が「すでに自分名義の車を所有している」と答えており、地方では車離れはほとんど起きていないことがわかります。

若者に車離れが起きている主な原因のまとめ

  • そもそも車に興味がない・ステータスと感じない
  • 公共交通が発達した都会に若者人口が集中しているため
  • 新車・中古車価格の上昇で経済的に手が届きにくくなったため
  • スマートフォンや動画など車なしで楽しめる娯楽が増えたため
  • カーシェアやサブスクで「所有しなくていい」選択肢が増えたため

都市部では「車がなくても快適に暮らせる」環境が整っており、地方では「車がなければ生活が成り立たない」という現実がある。この都市と地方の構造的な違いが、「若者の車離れ」という言葉の実態をわかりにくくしています。

若者全体が車を嫌いになったわけではなく、生活環境・経済状況・価値観の変化が複合的に絡み合った結果として、都市部を中心に「必要ないから買わない」若者が増えた、というのが正確なところでしょう。地方への人口分散が進んだり、収入環境が改善されたりすれば、若者と車の関係は再び変化していく可能性があります。