テンロクとは?1.6Lエンジン搭載の名車一覧と流行した理由・衰退した原因を解説
「テンロク」とは、総排気量1,600㏄(1.6L)クラスのエンジンを搭載する車の通称です。1980〜1990年代にかけて、シビックやカローラレビンをはじめとする各メーカーのテンロク車が全日本ツーリングカー選手権や全日本ラリー選手権で活躍し、当時の若者たちを走りで魅了しました。
当時を象徴するのが「テンロクウォーズ」という言葉です。限られた排気量のなかで各社が出力を競い合い、自然吸気で185PS、ターボで200PSという数字まで到達しました。排気量あたりの出力でいえば、現在の多くのスポーツモデルを上回る水準です。
テンロク車がヒットした理由|モータースポーツでの活躍と手頃な価格が若者を惹きつけた
競技車両が全日本ツーリングカー選手権で大活躍した「シビック」は、ライバル車と競い合いながらエンジン技術を磨いて、歴代モデルで数多くのテンロク車をラインナップしてきた
1980〜1990年代、1,600㏄クラスのエンジンを搭載したスポーティなコンパクトカーは、各自動車メーカーが競い合うように開発を進め、若者を中心に絶大な支持を集めました。
テンロク車が流行した直接的なきっかけは、1985年に始まった全日本ツーリングカー選手権(JTC)グループAに1,600㏄以下のクラスが設けられたことです。レースでの好成績を狙う各メーカーは排気量上限に近い1,600㏄の高性能エンジンを開発し、そのまま市販車へ投入しました。ホンダ シビックとトヨタ カローラレビンは市販車・競技車両の両面でライバルとして激しく競い合い、そのバトルが話題を集めました。
技術的な背景も後押ししました。エンジンは1気筒あたり約400㏄が燃焼効率の面で理想とされており、4気筒で400㏄の4倍にあたる1,600㏄は、ハイパフォーマンスを実現しやすい排気量でした。加えて、バブル景気で開発費が潤沢だった時代に誕生した各モデルは、若者でも手が届きやすい価格に設定されており、走りの刺激を求める幅広い世代から支持されました。
走りの質という点でも、この排気量には必然性がありました。車重1トン前後の車体に150〜180PSという出力は、ドライバーが腕前で使い切れる領域です。ハイパワー車のようにアクセルを踏み込めない場面が少なく、コーナーの立ち上がりでアクセルを全開にできる感覚が、若い世代を惹きつけた理由として今も語られます。
テンロク車が衰退した理由|技術革新・環境規制・自動車税の三重苦
環境性能の重視とエンジンのダウンサイジングが世界的なトレンドとなった2000年代以降、テンロク車は急速にラインナップから姿を消していきました。衰退の主な原因は次の3点です。
第一に、エンジン技術の進化により1,500㏄クラスでもテンロクと同等の高出力を実現できるようになったことです。あえて1,600㏄を選ぶ技術的優位性が薄れました。第二に、排ガス・燃費規制の強化により、走行性能より環境性能の高さが求められるようになり、ハイブリッドシステムとの組み合わせが主流となっていきました。第三に、日本の自動車税の区分の問題があります。1,600㏄エンジンは「1.5L超〜2.0L以下」の区分に分類され、「1.0L超〜1.5L以下」の車両より年間数千円高くなります。技術的な優位性が失われたなかで税負担の差が続いたことで、コンパクトカーの主流は1.5L以下へとシフトしました。
さらに決定的だったのが過給機の普及です。1.4Lや1.5Lのターボで1.6L自然吸気を上回るトルクが得られるようになると、同じ性能を税区分の低い排気量で実現できるようになりました。スイフトスポーツが4代目で1.6L自然吸気から1.4Lターボへ移行したのは、この流れを象徴する例です。
| 区分 | 総排気量 | 新車登録時期別の税額 | |
|---|---|---|---|
| 2019年9月30日以前 | 2019年10月1日以降 | ||
| 軽自動車(自家用) | 一律 | 10,800円〜 | 10,800円〜 |
| 乗用車(自家用) | 1L以下 | 29,500円〜 | 25,000円〜 |
| 1L超〜1.5L以下 | 34,500円〜 | 30,500円〜 | |
| 1.5L超〜2.0L以下 | 39,500円〜 | 36,000円〜 | |
| 2.0L超〜2.5L以下 | 45,000円〜 | 43,500円〜 | |
| 2.5L超〜3.0L以下 | 51,000円〜 | 50,000円〜 | |
| 3.0L超〜3.5L以下 | 58,000円〜 | 57,000円〜 | |
旧車として所有する場合は、この表の金額がそのまま適用されるわけではありません。ガソリン車は初度登録から13年を超えると自動車税種別割が約15%重課されるため、1990年代のテンロク車なら年額は4万円台に上がります。自動車重量税も13年超・18年超の2段階で重くなるため、維持費は表の数字より膨らむ前提で考えておく必要があります。
テンロク車一覧|1600㏄クラスのエンジンを搭載した名車をスペック付きで紹介
1980〜1990年代を中心に各メーカーが展開したテンロク代表モデルを、スペックとともに紹介します。
ホンダ「シビック」|全日本ツーリングカー選手権で活躍しテンロクエンジン技術を牽引したホンダの代表モデル
シビックは3代目・4代目・5代目・6代目がテンロクモデルを展開していた
1972年に初代モデルが誕生した「CIVIC(シビック)」は、3代目(AG/AH/AJ/AK/AT型)・4代目(EF型)・5代目(EG型)・6代目(EK型)でZC型・B16A型・B16B型などの1.6Lエンジンを搭載するテンロクグレードを展開しました。
1983年にフルモデルチェンジした3代目では、ZC型1.6L直列4気筒DOHCエンジンを搭載したスポーティグレード「Si」を新たに追加設定。競技車両が全日本ツーリングカー選手権で活躍し、走りのポテンシャルを証明しました。このZC型と、カローラレビンの4A-GEとの争いが、国産テンロクバトルの原点にあたります。
4代目「シビック」のテンロクモデルはインテグラに搭載されていたエンジンを軽量化させたB16A型エンジンを搭載していた
1987年に誕生した4代目シビックは、インテグラ搭載のテンロクエンジンを軽量化・改良してB16A型とし、自然吸気で160馬力をクリアしたグレード「SiR」を展開。1リッターあたり100馬力という当時の象徴的な数値に自然吸気で到達した点が画期的で、競技車両は全日本ツーリングカー選手権で圧倒的な好成績を収め、1.6Lクラスのスポーティモデルとして絶対的な地位を確立しました。
5代目シビックは新開発のVTEC‐Eを導入して環境性能を引きあげた
1991年に誕生した5代目シビックは、B16A型エンジンをさらに改良してマニュアル車で170PSを実現。四輪ダブルウィッシュボーンサスペンションの採用で乗り心地と運動性能を両立し、新開発VTEC-Eで環境性能も向上させています。ホンダのホットハッチとして国内外で高い知名度を誇るモデルです。
VTECが高回転側のカムへ切り替わる5,500rpm付近で、吸気音と加速感が別物に変わる演出は、この世代のシビックを語るうえで外せない要素です。回転計の針が上がるほど速くなるという分かりやすさが、運転そのものを目的にさせる力を持っていました。
| エンジン | B16A 1.6L水冷直列4気筒横置DOHC VTEC+PGM-FI |
|---|---|
| 総排気量 | 1,595cc |
| 最高出力 | 170PS / 7,800rpm |
| 最大トルク | 16.0kgm / 7,300rpm |
| 最小回転半径 | 5.4m |
ホンダ「シビックタイプR(EK9型)」|テンロク最高出力185PSを誇るサーキット対応のハイパフォーマンスモデル
シビックタイプRは初代(EK9型)が1.6Lエンジンを搭載するテンロクカーであった
1997年に6代目シビックのマイナーチェンジ時に追加設定された「シビックタイプR(EK9型)」は、現在に至る歴代シビックタイプRのなかで唯一のテンロクモデルです。レカロ製バケットシートやチャンピオンシップホワイトの専用ボディカラーを採用しています。
B16A型をベースに専用チューニングを施したB16B型エンジンを搭載し、当時の自然吸気テンロク最高となる185PSを実現。1リッターあたり116馬力という数値は、現在の量産自然吸気エンジンと比べても突出しています。足回りとボディ剛性を強化してサーキット走行にも対応した「テンロク最強モデル」との呼び声も高い1台です。
ポート研磨を手作業で行うなど量産車としては異例の工程が含まれており、現存する個体は車両価格が高騰しています。改造歴のない個体ほど評価が高く、純正状態が残っているかどうかで価格が大きく分かれる車種です。
| エンジン | B16B 1.6L DOHC VTEC+PGM-FI |
|---|---|
| 総排気量 | 1,595cc |
| 最高出力 | 185PS / 8,200rpm |
| 最大トルク | 16.3kgm / 7,500rpm |
| 最小回転半径 | 5.4m |
ホンダ「インテグラ」|実用性と燃費性能を備えながらスポーティな走りを楽しめたテンロクモデルも展開
1985年に初代モデルが誕生し数々のテンロクカーを発売してきた「INTEGRA(インテグラ)」は、北米市場や中古車市場では販売を続けている
1985年に初代モデル(AV/DA1/2型)が誕生した「INTEGRA(インテグラ)」は、日本市場では2007年に4代目(DC5型)で販売終了するまでの間、3ドアクーペや4ドアセダンなど複数のボディタイプで数多くのテンロクモデルを展開しました。初代から3代目まではテンロクグレードを設定しており、3代目の4ドアタイプはZC型エンジン搭載により5人乗りの実用性と高燃費性能、スポーティな走りを高い次元で両立していました。
ホットモデルに目が行きがちですが、ZC型を積む実用グレードは扱いやすさでも評価されました。日常の速度域でトルクが不足せず、それでいて回せば気持ちよく吹け上がるという二面性が、スポーツモデルに縁のない層にもテンロクの魅力を伝えた側面があります。
| エンジン | ZC型水冷直列4気筒横置 |
|---|---|
| 総排気量 | 1,590㏄ |
| 最高出力 | 120PS / 6,400rpm |
| 最大トルク | 14.7kg・m / 5,000rpm |
| 最小回転半径 | 5.4m |
ホンダ「CR-X」|3ドアファストバッククーペからオープンカーまで多彩なボディタイプでテンロクを展開
CR-Xは3代目(EG1/2/EJ4型)でオープンカーモデルのテンロク車もリリースしていた
シビックの姉妹車・バラードの派生として誕生したショートホイールベースのFFスポーツカー「CR-X」は、1983年から1999年にかけて3世代にわたり販売されました。初代の正式名称は「BALLADE SPORT CR-X」、2代目は「CR-X」、3代目は「CR-X delsol」と世代ごとに変化しながらも、各世代でテンロクグレードを設定していました。
1992年にリリースされた3代目「CR-X delsol」は2人乗りのオープンカーに刷新され、スイッチ操作でルーフをトランクに格納できる機構を採用。上級グレードSiRはB16A型エンジン搭載で最高出力170PSをクリアしています。中古車市場では、競技車両がモータースポーツで活躍した2代目の人気が特に高い傾向にあります。
2代目が支持されたのは、ホイールベースの短さが生む回頭性の鋭さです。同じエンジンを積むシビックより一回り軽く、ひらりと向きが変わる感覚は専用の味わいとして語られます。3代目は電動ルーフ機構を持つぶん重く、性格が実用寄りに振られました。
| エンジン | B16A水冷直列4気筒横置 |
|---|---|
| 総排気量 | 1,595㏄ |
| 最高出力 | 170PS / 7,800rpm |
| 最大トルク | 16.0kgm / 7,300rpm |
トヨタ「カローラレビン」|シビックとのライバル関係がテンロク技術を進化させた大衆スポーツの名車
「カローラレビン」は初代・4代目・5代目・6代目・7代目でテンロクモデルを展開していた
「カローラレビン」は、トヨタ・カローラの2代目モデルに追加設定されたスポーティグレードです。姉妹車の「スプリンタートレノ」は大ヒット漫画『頭文字D』の主人公・藤原拓海の愛車として特に知名度が高く、現在も両車は中古市場で高い人気を誇ります。
カローラレビンは、初代(TE27型)・4代目(AE86型)・5代目(AE92型)・6代目(AE101型)・7代目(AE111型)が1.6Lクラスのテンロクグレードを展開しました。「ハチロク」の愛称で親しまれる4代目のうち1.6Lを積むのはAE86で、1.5Lの廉価グレードはAE85型として区別されています。AE86は新開発の4A-GE型エンジンを搭載して16バルブ化を実現し、ラリーなどのモータースポーツでシビックと激しく競い合いながらテンロク技術を進化させました。
新開発の4A-G型エンジンを搭載した4代目「カローラレビン」はハチロクの通称で親しまれていた
カローラレビン
1991年に誕生した6代目(AE101型)は「ヒャクイチ」の愛称でも親しまれ、4A-GE型が1気筒あたり5バルブの20バルブヘッドへ進化しました。スーパーチャージャーを組み込んだ4A-GZE型搭載の上級グレード「GT-Z」は165PSを発生し、スーパーストラットサスペンションとの組み合わせで走りの質を高めています。
最終型となる7代目(AE111型)では、スーパーチャージャーを整理して自然吸気の4A-GEに一本化。AE101比で70kgの軽量化を果たしながら165PSを維持し、「BZ」を名乗るグレードが設定されました。パワーより軽さで速さを取り戻すという選択は、テンロクの到達点として評価されています。
漫画・映画での再注目とクラシックカーとしての希少性も相まって、カローラレビン・スプリンタートレノともに、状態の良い個体は中古市場で数百万円を超える価格で取引されています。
| エンジン | 4A-GZE水冷直列4気筒DOHCスーパーチャージャー |
|---|---|
| 総排気量 | 1,587㏄ |
| 最高出力 | 165PS |
| 車両重量 | 1,150kg |
トヨタ「MR2(AW型)」|国産車初のミッドシップレイアウトを採用したテンロクスポーツカー
トヨタの「MR2」は初代(AW10/11型)でテンロクモデルをラインナップしていた
1984年にリリースされたトヨタ「MR2(AW10/11型)」は、国産車初の量産ミッドシップレイアウトを採用したモデルです。コスト抑制のためE80型カローラの足回りやトランスミッションを流用しつつ、初代のみテンロクモデルをラインナップしました。
1986年のビッグマイナーチェンジではボディをスポーティに刷新し、4A-GZE型1.6Lスーパーチャージャー付エンジンを搭載する上級グレードを追加設定。車重1トンを切る軽さとミッドシップの重量配分が生む回頭性は、同じエンジンを積むFF勢とはまったく異なる感覚を与えます。現在も中古市場でテンロクモデルの希少性が高まっています。
| エンジン | 4A-GELU 直列4気筒DOHC |
|---|---|
| 総排気量 | 1,587㏄ |
| 最高出力 | 130PS / 6,600rpm |
| 車両重量 | 980kg |
日産「サニーRZ-1ツインカム NISMO」|専用サスペンション・エアロパーツを装備したNISMO仕様のテンロク特別仕様車
「サニーRZ-1ツインカム NISMO」は専用サスペンション・専用エアロパーツなどを装備する特別仕様車
「サニーRZ-1ツインカム NISMO」は、6代目サニー(B12型)の派生クーペモデルをベースに、NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)が専用サスペンション・専用エアロパーツ・スポーツシートなどを装備した特別仕様車です。CA16DE型4バルブDOHCエンジンを高性能化し、走りのポテンシャルを引き上げたテンロク車として評価されています。
シビックやレビンと比べると知名度では一歩譲るものの、メーカー系チューナーが仕立てた少量生産のテンロクという点で、現存台数は極めて少なくなっています。状態の良い個体を探すこと自体が難しいカテゴリーです。
| エンジン | CA16DE型(直列4気筒・4バルブDOHC) |
|---|---|
| 総排気量 | 1,598㏄ |
| 最高出力 | 120PS / 6,400rpm |
| 最大トルク | 14.0kgm / 5,200rpm |
| 車両重量 | 1,050kg |
日産「パルサーセリエ VZ-R N1 Version2」|レーシング技術を投入しテンロクで200PSを達成した限定生産車
日産のレーシング技術を積極的に導入した「パルサーセリエ VZ-R Version2」は限定生産されたモデル
5代目パルサー(N15系)のハイパフォーマンスモデルとして登場したVZ-Rを進化させた「パルサーセリエ VZ-R N1 Version2」は、1998年10月に限定生産されました。フジツボ技研製専用マフラー・モノフォルムバケットシート・MONO製本革巻きスポーツステアリングを装備しています。
「パルサーセリエ VZ-R N1 Version2」には200PSをクリアするSR16VE(NEO VVL)エンジンが搭載されていた
当時の先端レーシング技術を投入して開発されたSR16VE(NEO VVL)エンジンは、2種類のカムを効率的に制御する可変バルブ機構により200PSを発揮。自然吸気のテンロクで1リッターあたり125馬力に到達した例はほかになく、量産エンジンとしての到達点のひとつに数えられます。
| エンジン | SR16VE DOHC 水冷直列4気筒 |
|---|---|
| 総排気量 | 1,596㏄ |
| 最高出力 | 200PS / 7,800rpm |
| 最大トルク | 18.5kgm / 7,800rpm |
| 最小回転半径 | 5.2m |
日産「ノート NISMO S」|専用チューニングのテンロクと5速MTで操る喜びを追求したコンパクトカー
ノートは初代モデルと2代目モデルでテンロクを搭載する車両をラインナップしていた
日産ノートは2020年11月のフルモデルチェンジで全車がe-POWER(発電用1.2Lエンジン+モーター駆動)を採用する3代目(E13型)へ移行しました。テンロクモデルは初代(E11型)と2代目(E12型)に設定されており、2代目に追加された「ノートNISMO S」は専用チューニングのHR16DE型エンジンに5速MTを組み合わせ、ドライバー自身のテクニックでマシンを操る喜びを追求しました。
エンジン強化に加え、専用エアロパーツで走行安定性を向上させ、リアブレーキをドラム式からディスク式へ変更するなど走行性能全体を引き上げた完成度の高いテンロク車です。2010年代の国産コンパクトカーで自然吸気1.6LとMTを組み合わせた数少ない例であり、テンロクの系譜としては最後の世代にあたります。
| エンジン | HR16DE DOHC水冷直列4気筒 |
|---|---|
| 総排気量 | 1,597㏄ |
| 最高出力 | 140PS / 6,400rpm |
| 最大トルク | 16.6kgf・m / 4,800rpm |
| 最小回転半径 | 5.2m |
マツダ「ファミリア」|WRCで総合優勝を果たし国産初のフルタイム4WDテンロクターボも展開したマツダの主力車
マツダの主力車として市場を賑わせていた「ファミリア」は、6代目・7代目・8代目でテンロク車をラインナップしていた
マツダの主力車として40年近い車歴を刻み2004年に販売終了した「FAMILIA(ファミリア)」は、6代目〜8代目でB6型・B6-DE型などの1.6Lクラスエンジンを搭載するテンロクモデルを展開しました。1985年に登場した6代目(BF型)のトップグレード「GT-X」は、1.6L直列4気筒DOHCターボに日本車として初めてフルタイム4WDを組み合わせた画期的なモデルで、最高出力140PSを発生しました。
競技では欧州名の323でWRCに参戦し、1987年のスウェディッシュラリーでティモ・サロネンのドライブにより総合優勝を達成。グループAへの移行期に、1.6Lクラスの車両が2Lクラスを相手に総合優勝を飾った出来事として記憶されています。1989年にもスウェディッシュとニュージーランドで勝利を重ねました。
| エンジン | B6-DE 直列4気筒DOHC 16バルブ |
|---|---|
| 総排気量 | 1,597㏄ |
| 最高出力 | 115PS / 6,000rpm |
| 最大トルク | 14.5kg・m / 3,500rpm |
| 最小回転半径 | 5.4m |
マツダ「ロードスター(NA・NB型)」|パワーより操作性の高さを追求したテンロクで世界市場でヒットしたライトウェイトオープンカー
ロードスターは初代モデル(NA系)と2代目(NB系)がテンロク車を展開していた
マツダのライトウェイト2シーターオープンカー「ROADSTER(ロードスター)」は、リトラクタブルヘッドライトが印象的な初代(NA系)と、各国の排出ガス・騒音規制に対応した2代目(NB系)でテンロクモデルを展開しました。
マツダが搭載した1.6L B6-ZE水冷直列4気筒エンジンは、最高出力より操作性の高さと運転時の心地よさを優先して開発されました。この戦略が世界市場で功を奏し、ロードスターはライトウェイトスポーツカーとして世界的な異例のセールスを記録。テンロクモデルもその成功を支えた重要なグレードです。
他社が出力を競い合うなかで、ロードスターだけは数字を追わない方向へ進みました。踏んだぶんだけ素直に前へ出る感覚と、車体の動きが手に取るように分かる車重の軽さを優先した設計思想は、のちのロードスターにも受け継がれています。
| エンジン | B6-ZE 水冷直列4気筒DOHC 16バルブ |
|---|---|
| 総排気量 | 1,597㏄ |
| 最高出力 | 125PS / 6,500rpm |
| 最大トルク | 14.5kg・m / 5,000rpm |
| 最小回転半径 | 4.6m |
三菱「ミラージュ」|ワンメイクレースで磨いた技術をMIVECやターボエンジンに結実させた三菱の世界戦略車
ミラージュは1.6Lターボエンジンを搭載する3ドアの高性能モデルもリリースしていた
1978年に初代モデルが誕生した三菱の世界戦略車「ミラージュ」は、2023年に日本向けの販売を終了しました。車歴を通じて、3代目ではDOHC 16バルブ機構を搭載する4G61型1.6Lエンジンを復活させ、4代目では世界最小クラスの1.6L V6エンジン(6A10型)を搭載するなど、数多くのテンロクモデルをリリースしてきました。
1985年から1998年にかけて開催した「ミラージュカップ」で技術力を磨いた三菱は、独自開発の可変バルブタイミングリフト機構MIVECや1.6Lターボエンジンを搭載したモデル、スポーティグレード「CYBORG(サイボーグ)」など、多彩なテンロクラインナップを展開していました。
とりわけサイボーグの名を冠したターボモデルは、ダートトライアル選手権でジェミニイルムシャーRと激しく争った存在です。1.6Lでここまで細分化されたグレード展開があったこと自体が、当時の競争の激しさを物語っています。
| エンジン | 4G92 直列4気筒DOHC |
|---|---|
| 総排気量 | 1,597cc |
| 最高出力 | 145PS |
| 最大トルク | 15.2kg・m / 5,500rpm |
| 最小回転半径 | 5.0m |
三菱「ランサー」|MIVEC搭載テンロクも設定した三菱のコンパクトセダン
2010年まで日本市場で販売されていた「ランサー」は歴代モデルの中で数多くのテンロクカーをリリースしてきた
三菱のコンパクトセダン「ランサー」は2010年まで日本市場で販売された世界戦略車です。歴代モデルを通じて4G32型・G32B型・6A10型・4G92型などのテンロクエンジンを搭載する多くのグレードを展開してきました。1995年のフルモデルチェンジで誕生した5代目(CK0/CM0系)は「Total Evolution」をコンセプトに室内空間を拡大し、スポーティグレード「MR」に1.6L MIVECエンジン搭載のテンロク車も設定していました。
175PSという出力は自然吸気テンロクとしては上位に位置します。セダンボディにこの性能を収めた構成は、派手さはないものの実用性と走りを両立したい層に向けた選択肢として機能していました。
| エンジン | 4G92 直列4気筒DOHC 16バルブ |
|---|---|
| 総排気量 | 1,597㏄ |
| 最高出力 | 175PS / 7,500rpm |
| 最大トルク | 17.0kg・m / 7,000rpm |
| 最小回転半径 | 5.1m |
スズキ「スイフトスポーツ(ZC32型)」|排出ガス規制をクリアしながら高出力を維持したテンロク搭載のコンパクトハッチバック
「スイフトスポーツ」は2代目(ZC31型)と3代目(ZC32型)でテンロクモデルをラインナップしていた
スズキ「スイフトスポーツ」は2017年のフルモデルチェンジでK14C型1.4L直噴ターボへダウンサイジングした4代目(ZC33S型)に移行しています。テンロクを搭載するのは2代目(ZC31型)と3代目(ZC32型)で、なかでも「The Sporty flagship」をコンセプトに掲げた3代目(ZC32型)は、M16Aエンジンに可変吸気システムと改良冷却機構を導入して、厳格化された排出ガス規制をクリアしながら高出力を維持したテンロク車として高く評価されました。
ZC32型からZC33S型への移行は、テンロクが姿を消していく過程をそのまま示しています。1.4Lターボは最大トルクが230N・mに達し、自然吸気1.6Lの163N・mを大きく上回りました。日常域での速さではターボに軍配が上がり、それでも高回転まで回す快感を求める層が自然吸気の3代目を支持し続けています。
| エンジン | M16A水冷直列4気筒DOHC 16バルブ |
|---|---|
| 総排気量 | 1,586㏄ |
| 最高出力 | 136PS / 6,900rpm |
| 最大トルク | 16.3kg・m / 4,400rpm |
| 最小回転半径 | 5.2m |
いすゞ「ジェミニイルムシャーR」|シビックタイプR登場前のテンロク最高出力180PSを誇りダートレースでも活躍した名車
いすゞは「ジェミニ1600LTクーペ」や「ジェミニ1600LDセダン」などのテンロクカーを展開していた
いすゞ FFジェミニ
いすゞ FFジェミニ
いすゞ FFジェミニ
いすゞはGMグループとのワールドカー構想のもと、基本設計を共通化しつつ日本市場向けに独自技術を投入したジェミニシリーズを展開。「ジェミニ1600LTクーペ」などのテンロク車もラインナップしていました。
なかでも、ドイツのイルムシャーがチューニングを手がけた「ジェミニイルムシャーR」は、4XE1型1.6L 4気筒DOHCターボエンジンにフルタイム4WDを組み合わせ、ホンダ シビックタイプR(EK9型)が登場するまではテンロクスポーツカー最高となる180PSを誇っていました。競技車両はダートトライアル選手権で、ミラージュサイボーグターボなどのライバル車と熾烈な争いを繰り広げながら好成績を収めました。
いすゞが乗用車の生産から撤退したことで、現存台数はテンロク車のなかでも特に少なくなっています。部品の確保が難しく、程度の良い個体に出会えること自体が稀です。
| エンジン | 4XE1 水冷直列4気筒DOHC 16バルブICターボ |
|---|---|
| 総排気量 | 1,588㏄ |
| 最高出力 | 180PS / 6,600rpm |
| 最大トルク | 21.2kg・m / 4,800rpm |
| 最小回転半径 | 4.8m |
テンロクは今も生きている|GRヤリスとラリー規定が示す1.6Lの現在地
テンロクが過去のものになったかというと、そうとも言い切れません。トヨタのGRヤリスとGRカローラが搭載するG16E-GTS型は、総排気量1,618ccの直列3気筒ターボです。排気量だけで見れば、まぎれもないテンロクにあたります。
出力は登場時のGRヤリスで272PS、2024年の改良型とGRカローラでは304PSに達します。1リッターあたり188馬力という水準は、自然吸気で185PSを絞り出したシビックタイプR(EK9型)をさらに上回ります。気筒数を4から3へ減らしながら出力を高めた点に、過給と燃焼制御の進化が表れています。
競技の世界ではさらに明確です。WRCの最高峰クラスRally1は1.6Lターボにハイブリッドを組み合わせる規定で、その下のRally2も1.6Lターボで統一されています。1985年のグループAで1,600㏄クラスが設けられたことがテンロク誕生のきっかけだったように、ラリーの世界では今も1.6Lが競争の土俵として機能しているわけです。
かつてのテンロクが高回転まで回して楽しむものだったのに対し、現在の1.6Lターボは低回転から分厚いトルクで前に出る性格です。同じ排気量でも運転の感覚はまったく異なり、どちらが優れているかではなく、求める刺激の種類が違うと捉えるのが実情に近いといえます。
テンロク車を中古で探すときに確認したいこと
新車では選べないため、テンロク車に乗るには中古車を探すことになります。最初に意識したいのが部品供給の状況です。生産終了から20年以上が経過したモデルでは、純正部品の多くが製造中止になっており、外装パーツや内装トリムは特に入手が困難です。一方、シビックやレビンのように競技で使われ続けた車種は、社外品やリプロ部品が流通しているため、維持のしやすさに差が出ます。
機関面では、タイミングベルトの交換履歴が判断材料になります。この年代のエンジンはベルト駆動が主流で、交換の目安は10万kmまたは10年です。切れればバルブとピストンが干渉して大きな損傷につながるため、整備記録で交換時期を確認できる個体を選ぶ価値は大きくなります。4A-GEやB16Aのように高回転を多用するエンジンほど、オイル管理の履歴も重要です。
価格については、改造の有無で評価が大きく分かれます。走り目的で使われた個体が多いカテゴリーのため、足回りやマフラーが交換されている車両は珍しくありません。純正状態に近いほど希少価値は上がる一方、価格も高くなります。車検非対応の改造が残っていると、名義変更後に戻す費用がかかる場合もあります。
維持費では、13年超の重課に加えて燃費の面も見込んでおく必要があります。当時のハイチューン自然吸気はハイオク指定が多く、実燃費も10km/L前後にとどまる車種が中心です。日常の足として使うなら、この部分を割り切れるかどうかが長く乗れるかの分かれ目になります。
テンロク車は中古市場で根強い人気を保ち続けている
バブル景気の恩恵を受けた潤沢な開発費のもと、燃費より走行性能を優先して進化し続けたテンロク車は、全日本ツーリングカー選手権などで磨いた技術を市販車に還元し、若者でも手が届く価格で一時代を築きました。環境性能重視の時代の到来とともに新車市場からは姿を消しましたが、漫画・映画などの作品が再注目のきっかけを生み出し、当時を知る世代や車好きの間では中古市場を中心に根強い人気が続いています。
その一方で、GRヤリスやWRCの車両規定が示すように、1.6Lという排気量は性能を競う舞台から消えたわけではありません。扱いきれるサイズに性能を凝縮するという発想そのものが、形を変えて受け継がれていると見ることもできます。購入を検討する際は、現存台数が減っていることから状態の確認と信頼できる販売店選びが特に重要です。





























