車のドアの開き方種類

車のドア10種類~独創的な開き方の特徴や採用する名車もピックアップ!

車のドア種類と開き方の特徴を説明し、そのドア設計を採用している車種を紹介。ガルウィングドア、シザードア、バタフライドア、ラプタードアなどスーパーカーに多いドア、コンセプトカーに見られるキャノピードア、観音開きなど国産車でも採用例があるスーサイドドアなど、車のドアは多種多様!

車のドア10種類~独創的な開き方の特徴や採用する名車もピックアップ!

車のドア種類はガルウィングだけじゃない!ユニークな開き方をするドア10種類

車のドアの種類は多種多様で、ガルウィングドアやシザードア、バタフライドアなどはその一部に過ぎません。近年では、ラプタードアやファルコンウィングドアなど、新たなドアも話題です。

特殊なドアは、多額の製造費をかけられるスーパーカーに採用されることが多いですが、それ以外にも現代ではあまり見かけなくなったものの、クラシックカーや旧車に多い特徴的なドアも存在します。

なお、勘違いされやすいのですが「上に開くドア=ガルウィングドア」ではありません。
ドアが前方真上にあがるものはシザードア、ドアの外側斜め前方に持ち上がるドアはバタフライドアであり、この点は画像つきで後述します。

カモメの翼を意味する「ガルウィングドア」

「ガルウィングドア(gull wing door)」は、ドアを全開に開いた様子カモメが翼を広げた姿に似ていることから名付けられました。

ガルウィングドアは1954年にメルセデス・ベンツが初採用

メルセデス・ベンツ300SL世界初のガルウィング採用車メルセデス・ベンツ300SL

ガルウィングドアを初採用したのは、1954年発表のメルセデス・ベンツ300SLで、それ以降スーパーカーのドアの形としてお馴染みになりました。また、レーシングカーでの採用例も多いです。

ガルウィングドア最大のメリットは、ボディ剛性を高めながらも、乗降しやすい点にあります。もちろん一般的な横開きのヒンジドアに比べれば乗降性は悪いですが、スーパーカーやレーシングカーは、重心を低くとる必要があり、低車高になります。
そんななか、ドアが横に開くより、上に開いた方が乗り降りしやすいのです。

ガルウィングドアといえばスーパーカーだが、国産車は意外な車種で採用

デロリアン・DMC-12ガルウィングドアの存在を爆発的に広げたデロリアン・DMC-12

ガルウィングドア採用車といえば、『バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ』のタイムマシンカーのベースとなったデロリアンDMC-12を思い浮かべる人が多いでしょう。

オートザムAZ-1軽自動車でありながらガルウィングドアを採用したオートザムAZ-1

一方、国産車でのガルウィングドア採用したのは意外なクルマです。
1つ目は、1992~1995年にマツダから発売されたオートザムAZ-1。「軽自動車のレーシングカー」をテーマに開発しており、日本では唯一限定販売ではない、量産車のガルウィングドア採用車種です。スズキからも「CARA」としてOEM販売されました。

2つ目は、三菱が販売したスタリオンガルウィングとエクリプスガルウィング。ドラマ『ゴリラ・警視庁捜査第8班』で改造されたガルウィングドアのスタリオン&エクリプスが人気を博したため、発売されました。市販化されたのは各5台ですが、中には自力で改造を成し遂げたファンもいます。

ハサミの開閉をイメージする「シザードア」

ハサミを意味する英語Scissorsから名付けられたシザードア(「シザーズドア」とも呼ばれる)。ガルウィング同様、スーパーカーによく見られる跳ね上げ式のドアです。

シザードアは「通称ランボドア」と呼ばれるほどランボルギーニでの採用が多い

カウンタック世界でもっとも有名なスーパーカーの1つ「カウンタック」はシザードア採用

ランボルギーニ・ディアブロランボルギーニ・ディアブロ

シザードアを採用している自動車メーカーといえば、スーパーカー専門ブランドのランボルギーニがもっとも有名です。

カウンタック、ディアブロ、ムルシエラゴ、レヴェントン、アヴェンタドールなど多くの車種でシザードアを採用してきた歴史があります。

日本車のシザードア採用車はコンセプトモデルのみ

光岡オロチヌードトップロードスター市販化されていれば日本初のシザードア採用車だった光岡オロチヌードトップロードスター

日本でシザードアを採用し、市販化に至ったクルマは残念ながら存在しません。
2005年に発表された光岡オロチのコンセプトモデル「オロチ ヌードトップロードスター」がシザードアを採用していましたが、市販化には至りませんでした。

羽ばたく蝶の形の「バタフライドア」

時には「ガルウィングドア」と呼ばれ、時には「シザードア」と混同されやすいのがこの「バタフライドア」です。ディヘドラルドア、インセクトウイングドアなどの別名があります。

バタフライドアは、基本的にはドアの付け根とルーフの2点を支点にして、斜め上に広く持ち上がるのがポイントです。

「バタフライドア」と「ガルウィングドア」と「シザードア」との見分け方

ラ フェラーリバタフライドアのラ フェラーリ

バタフライドアは全開になった状態で、前から見ると蝶々の羽のように見えます。

ガルウィングの場合は、地面に平行なルーフの線に沿ってドア本体を支えています。この点がドアの付け根とルーフという異なる「2点」を支点にするバタフライドアとは大きく違います。

シザードアの場合は、ドアの付け根にあるヒンジ1点が「支点」となり、前方から見るとドアは地面に対して真上に持ち上がっている状態です。構造的には太い金属アームで支えています。
バタフライドアの場合は、2点のヒンジによって外側斜め上に広がっていますし、ドアがフロントガラスより前に迫り出していることも多いです。

マクラーレンのバタフライドアは「ディヘドラルドア」と呼ばれることが多い

マクラーレン720Sマクラーレン720S マクラーレンはダブルヒンジ式ディヘドラルドアと表現

マクラーレン車の特徴の1つ「ディヘドラルドア」と呼ばれるドアがあります。
一般的には「ディヘドラルドア」は「バタフライドア」と同じものと理解されていますが、マクラーレンは「ディヘドラルドア」という呼び名を好んで使う傾向があります。

マクラーレンMP4-12C1点のみで支えるディヘドラルドア マクラーレンMP4-12C

また、マクラーレン車のディヘドラルドアには、ドア付け根とルーフに2つの「支点(ヒンジ)」を持つドア(=バタフライドア)以外に、MP4-12Cなど1つの「支点」でドアを持ち上げているものも存在します。
しかし、これもバタフライドアと同じく、外側斜め上に広く持ち上がっています。

バタフライドアは多くの高級車に存在し、日本ではトヨタ・セラに採用

セラ1990年発売セラ コンセプトカーをほぼそのまま市販化している

バタフライドアは、マクラーレンやフェラーリ、メルセデスベンツなどの高級自動車メーカーの車種に採用例があります。日本では、トヨタが1990~1994年まで販売したトヨタ・セラに採用されました。

猛禽類の翼を意味する「ラプタードア」

ラプタードアは、猛禽類の翼をイメージした設計で、正式名称「ディヘドラル・シンクロ・へリックス・アクチュエーション・ドア」と言います。

ラプタードアはケーニグセグのみが採用しているユニーク設計

ラプタードアを採用しているのは、スウェーデンのスーパーカー専門ブランドであるケーニグセグのみで、今では同ブランド車のアイコンとも呼べるべき存在です。

ラプタードアは、前部分が下がる形でドア本体が垂直になり、そこから乗り降りする仕様です。手動ならクルッという効果音が聞こえてきそうで、オート開閉時には、近未来的な雰囲気が漂います。

派手さはありませんが、バタフライドアなどと比較すると乗り降りは比較的しやすいでしょう。
ただし、ドアの厚さやミラーの存在を考えると、あまり狭いスペースでの開閉はできません。

ガルウィングの弱点を克服した利便性の高い「ファルコンウィングドア」

ファルコンウィングドアは、ファルコンドアとも呼ばれる新しいドアの種類です。「ハヤブサの翼」を意味し、「カモメの翼」ガルウィングドアの利便性の悪さを解消した、進化系とも呼べる存在です。

ファルコンウィングドアは「テスラ・モデルX」に採用

ファルコンウィングドアガルウィングドアに比べて狭いスペースでも開閉可能なファルコンウィングドア

ファルコンドアを採用している車種は、米国のテスラモーターズが2015年より発売している電気式クロスオーバーSUVのモデルXのみです。

一見すると、ガルウィングと同じようにルーフにヒンジがありますが、実はファルコンウィングドアは、別々の動きをする2種類のヒンジが存在しています。

開閉時にドアが外側に大きく張り出すことがなく、左右30cmのスペースがあれば開閉可能と非常に機能的です。頭上で広げられた翼は、雨のときには傘代わりにもなります。

航空機のコックピットをイメージした「キャノピードア」

キャノピーとは、小型航空機などで、パイロット席頭上を覆う部分を指します。パイロットが透明のキャノピー部分を開けて、コックピットへ乗り込むのを見たことがある人もいるでしょう。

この航空機のキャノピーでの乗り降りをヒントに、自動車のルーフ部分をドアにしてしまったのがキャノピードアです。

キャノピードアはキットカーやトヨタのコンセプトカーで採用例あり

スターリング・ノヴァキャノピードアを採用したキットカー スターリング・ノヴァ

キャノピードアは、フォルクスワーゲンタイプ1をベースにしたキットカー「スターリング・ノヴァ」などで採用例があります。

ただし、量産型自動車としては採用例がなく、ほとんどコンセプトカー限定のドアタイプと言えます。
スウェーデンのサーブがコンセプトカー「エアロX」を発表した際には、同社が航空機メーカーとしての歴史を持つこともあり、市販化が期待されました。
しかし、サーブは2014年にブランド廃止となりました。

コンセプトカー トヨタCamatteコンセプトカー トヨタCamatte

意外なところでは、2012年の東京おもちゃショーに出展された「トヨタCamatte(カマッテ)」でキャノピードアを採用しています。

最低地上高が低くてもドア下部をこすらない「スワンウィングドア」

スワンウィングドアは、ヒンジに角度をつけることで、やや斜め上方向にドアが開くのが特徴です。
スワンドア(Swan doors)とも呼ばれ、その名の通り白鳥の羽のような形で、優雅なデザイン。最低地上高が低い車でも、ドア下部を縁石などのぶつけないというメリットがあります。

「スワンウィングドアといえばアストンマーチン」だが、マツダも特許を取得

アストンマーチンV8ヴァンテージアストンマーチンV8ヴァンテージのスワンウィングドア

開閉したドアに12~14度の角度がつく「スワンウィングドア」の特許は、イギリスの高級車ブランドであるアストンマーティンが取得しています。

しかし、日本のマツダも5~15度に開く特殊ドアのヒンジ部に関する特許を米国の特許庁に申請し、許可されています。

革新的なドア構造ではありませんが、「最低地上高を低くすべき車」となるとやはりスポーツカーが思い浮かびますので、マツダがどの車種にこの技術を投入してくるのか気になるところです。

普通のドアとは逆開きの「スーサイドドア(コーチドア)」

スーサイド(コーチドア)は、通常のドアとは逆方向に開くのが特徴。
現代の車のサイドドアの多くは、ヒンジがドア前方側に存在し、ロックやドアハンドルなどが後ろ側に装備されています。

スーサイドドアは、それとは逆構造で、ドアの後ろ側にヒンジが存在し、ドアの前側から乗り込むように設計されています。

スーサイドドアは旧車に多く、現在はロールスロイスの特徴

「ドーン」2016年発売 ロールスロイスのオープンカー「ドーン」

スーサイドドアは、クラシックカーでは比較的よく見られるドアの種類です。国産大衆車として人気だったスバル360などにも採用されていました。

また、スーサイドドアは、一般的なサイドドアに慣れていると違和感を覚えますが、足元が大きく開くため、乗り降りしやすいドア形態です。

現代でもスーサイドドアを採用してるブランドとしては、イギリスの超高級車ブランドであるロールスロイスが代表的です。

観音開きとは、4ドア車のリアドアが「スーサイドドア」の時に成り立つ

観音開きのRX-8観音開きのRX-8 マツダは「フリースタイルドア」と命名

観音開きとは、2枚のドアが左右端を軸に中央から開く形態を指します。
バンなどのバックドアに時折見られる形式ですが、乗降用ドアにも採用例があります。

国産車の乗降用ドア観音開き採用例としては、トヨタ・オリジン、FJクルーザー、マツダRX-8、ホンダ・エレメントなどがあります。

乗降用ドアの観音開きは、スーサイドドアの1種に分類していいでしょう。4ドア車の場合、フロント側ドアが一般的なヒンジドアで、リア側が逆開きのスーサイドドアの場合に、「観音開き」が成立します。

ただし、観音開きのリアドアは、フロントドアが開かないと開閉できない構造のものが多く、独立したスーサイドドアに比べると、利便性が劣るものが多いです。

冷蔵庫から着想を得たといわれる「前面開きドア」

前面開きドアは、その名前の通り車両の前部分が開き、ドライバーが前から乗り込む構造のドアです。1953~1955年まで販売されたイソ・イセッタで初めて開発・製造されたドア種類であり、イソ社は冷蔵庫の生産を手掛けていたため、冷蔵庫の扉から着想を得て設計されたと言われています。

なお、BMWが1955~1959年までライセンス生産しているため、「BMW・イセッタ」と記憶している人も多いでしょう。

イソ・イセッタから時を超えて、現代の超小型車で採用される可能性あり

イソ・イセッタ冷蔵庫から着想を得た設計のイソ・イセッタ

BMWイセッタのエクステリア前面開きドアを採用したBMWイセッタ

今ではまったく馴染みがない前面開きドアですが、今後開発が進むであろう2人乗りの超小型車(超小型モビリティ)の分野で採用される可能性もあります。

スイスのマイクロ・モビリティ・システム社が開発した「マイクロリーノ」は、イセッタの復刻版とも呼ばれる電気式のEVミニカーです。

市販化はされていませんが、日本でも株式会社STYLE-Dが開発した超小型車「ピアーナ(Piana)」は前開きのドアを採用しています。

ボタン1つでドアが消える「引き込み式ドア」

引き込み式ドアは、BMW Z1(1989~1991年)で採用されたドアの形です。
スイッチを押すと、ドアが下方にスライドし、前輪と後輪の間にあるドアシルに垂直に引き込まれて格納されます。乗降時にはまるで「ドアがない」状態になるのが最大の特徴です。

引き込み式ドアを採用した市販車はBMW・Z1のみ

BMW・Z1ドアを収納した状態のBMW・Z1

スイッチを押して電動でドアが下降していく様子スイッチを押して電動でドアが下降していく様子

引き込み式ドアを採用した市販車は、BMW Z1のみです。
米国ではドアがない状態(開けたままの状態)で走行することは違法でしたが、欧州ではドアがない状態でも当時の側面衝突の安全基準をクリアしていました。緊急時には手動開閉も可能です。

Z1の総生産台数は約8000台。奇抜なドアではありますが、BMWの技術力の高さを広く知らしめ、後の特許技術の開発・取得にも繋がっています。

車のドアの開き方は多種多様!新しいドアが誕生する可能性も

珍しい車のドア

車のドアには様々な種類が存在し、今後も新たな形のドアを装備したクルマが市販化される可能性は十分にあります。

ドアは車の重要部品であり、個性をアピールできる場所の1つです。
ですが、新しいドアは、利便性を追求した結果としてだけ生まれるわけではありません。
ガルウィングドア、シザードア、バタフライドアなど、スーパーカーのドアはあくまでデザイン重視で、「乗り降りしやすい」とは実は言えないものばかりなのです。

自動車の設計は日々進歩しており、ユニークな設計と安全性、利便性など、すべてを両立させることもできるはず!今後はどんなドアが生み出されるのか、非常に楽しみです。コンセプトカーにも注目してみましょう。