エアインテークの設置効果とスバルが積極的に取り付ける理由
ボンネットなどに設置されるエアインテークは、車外のフレッシュな空気を取り込み、エンジンを冷却するための入り口です。「エア・インレット」や「エアスクープ」「エアインテークダクト」とも呼ばれるエアインテークの設置効果について紹介します。
世界に数ある自動車メーカーの中で、積極的にボンネットにエアインテークを取り入れているのはスバルだけです。スバルがエアインテークにこだわり続ける深い理由についても詳しく解説します。
エアインテークはエンジン内部にフレッシュな空気を取り入れるための入り口

エアインテークは、自動車などの乗り物のボディ表面に設けられる、空気の出入り口です。自動車ではエンジンルームに外気を取り入れるため、主にボンネット上に設置されます。エアインテークの構造は、走行中の車にかかる空気の一部を効率的にエンジンルームに流入させるために設計されています。
車でいうところのエアインテークは、エンジンルームや室内へと空気を積極的に取り入れるためにボンネット部に設置される開口部を指す場合と、エンジンの吸気管など空気の取り入れを必要とする内部パーツのことを表現する場合もあります。フレッシュな空気を取り込むことで、エンジンのパフォーマンスを維持し、熱ダレを防ぐ重要な効果があります。
エンジンを車体のフロント部に設ける構造を採用する車は、開口部をフロント部に設けて空気をエンジンルームに送り込む方式を採用します。エンジンがフロント部ではない車、例えばミッドシップ車などは、外気をうまく取り入れるため、エアインテークをサイドボディかリヤ部分に設けます。設置位置は、エンジンのレイアウトと密接に関連しています。
エアインテークの設置効果は「エンジンの冷却」と「室内環境のクリーン化」

エアインテークから取り入れられた空気は、熱を持ったエンジンを冷却して、よどんだ空気を入れ替えるためにも用いられます。特に高性能な車にとって、熱対策は性能を維持する上で欠かせない要素です。
高圧状態のフレッシュな空気の流入が必要となる、過給機を搭載するターボエンジンは、エアインテークの設置効果が非常に高まります。ターボエンジンは、高密度の酸素を送り込むために空気を圧縮しますが、圧縮すれば分子の運動が活発になり熱が発生します。インタークーラーは、このターボエンジンの要とも言える過給機で発生した熱を冷やす役目を果たします。
熱源と接触するインタークーラー自体も、時間経過とともに高い熱を持ってしまいます。そこでエアインテークを設置して外の風をエンジンルームに送りこむことで、恒常的にインタークーラーを冷やします。冷却が不十分だとターボエンジンの性能が低下してしまうため、エアインテークはターボ車にとって重要な部品です。
エンジンの熱が上がれば異常燃焼の頻度が増し、エネルギー効率が低下するため、燃費が悪くなります。エアインテークを設置することで、エンジンが異常燃焼する頻度が減り、燃費の悪化を防ぐこともできます。インタークーラーやオイルクーラー、ブレーキなどに空気を送り込むため、複数のエアインテークを設けている車もあります。後付けすることも可能なエアインテークは、ボディにメリハリがつくことからドレスアップ目的で設置するケースも増えてきています。
スバルが自社の車にエアインテークを設置し続ける理由はボクサーエンジン(水平対向エンジン)を採用しているから

世界に数ある自動車メーカーの中でも、自社の車に積極的にエアインテークを設置し続けているのは日本ではスバルだけです。スバルがボンネットに大型のエアインテークを設置し続ける理由には、同社が採用しているボクサーエンジン(水平対向エンジン)が深くかかわっています。
一般的な直列エンジンと比べれば、縦サイズに余裕のある水平対向エンジンでは、エンジンの上にインタークーラーを設置することが可能です。この配置が、ボンネットへのエアインテークの設置を必然的に導きました。熱を持ったインタークーラーを効率的に冷やすために、スバルのターボ車ではボンネットにエアインテークを取り付けています。
ただ、一般走行ではエアインテークの取り付けの有無による影響で、運動性能や燃費が著しく悪化してしまうことはありません。また、技術が進化しターボエンジンのダウンサイジング化や熱効率が向上したため、エアインテークの冷却効果は、以前よりも必要性が低くなっています。しかし、スバルは新型レヴォーグでもエアインテークを採用しています。
ボクサー型ターボエンジンを搭載する車種をラインナップし続けるスバルの姿勢には、レガシィRSから続くターボ車のイメージと伝統をかたくなに守り続けようとするこだわりを感じます。エアインテークは、もはやスバルの象徴的なデザイン要素の一つとなっているのです。
エアインテークは「空気を取り入れ」エアアウトレットは「空気を排出する」

ボンネットに設けられている空気の通り道が、全て「エアインテーク」であるとは限りません。空気を車の中に取り入れるエアインテークではなく、排気目的で隙間を設けている「エアアウトレット」の可能性もあります。エアインテークとエアアウトレットは、目的と構造が異なる部品です。

空気を効率的に車内に取り込むエアインテーク(エアスクープ)は、ボンネットの構造を活かして気流が集中するフロントガラス付近に設置されるケースが多いです。一方、熱を持った空気を外へ放出するために設けている「エアアウトレット」は、取り入れた空気をスムーズに排気できるようにボンネットの前面やサイドに取り付けるのが一般的です。両者の役割を理解することが重要です。
エアインテークの設置ブームがやってくる事を期待

エアインテークは、大量の熱を持ったエンジンを冷却させるなどの効果を狙って設置されます。日本の自動車メーカーで積極的にボンネットに取り入れているのはスバル車だけです。
以前はスバル車だけではなく、「日産 ブルーバードSSS-R」「トヨタ セリカGT-FOUR」「三菱 ランサーエボリューション」といった、ラリーカーのボンネットにはエアインテークが採用されていました。そういったラリーカーが海外のレースで活躍するに伴って、ラリーカーの特徴の一つであるエアインテークを車に付けることが、カッコ良さに繋がっていた時代もあります。これは、機能とデザインが融合した好例でした。
しかし、車には環境性能が強く求められるようになってきて、プリウスのようなハイブリッドカーの人気が出始めるのに伴い、ターボエンジンを搭載する車が少なくなり、エアインテークを取り付ける車も少なくなってきました。EV(電気自動車)が全盛の時代となれば、エンジン冷却という機能的な必要性はさらに薄まっていきます。
最近は、エアインテークの機能性よりも、デザイン性に魅かれて後付けで取り付けるという方が徐々に増えてきています。そういった方達の影響力が強まって、エアインテークの設置ブームがいつの日かやってくることを期待します。ボンネットのエアスクープは、車の個性を引き出す重要な要素です。





























