ヨーロッパの自動車メーカーで使われるセグメントの意味
ヨーロッパの自動車メーカーが販売している車には、「Bセグメント」や「Cセグメント」といった分類がよく使われます。これらは何となく車をカテゴリー分けしているのだろうと察しはつくと思いますが、その詳しい定義や目的を知らない方は多いのではないでしょうか。
この記事では、セグメントが何を意味するのかを詳しくご紹介します。なぜセグメントという概念が用いられているのか、そして、どのような基準やルールで各セグメントに車を分類しているのかを中心に解説しますので、欧州車のセグメントについて理解を深めていただくきっかけになれば幸いです。
セグメントは統計調査を目的としたマーケティング会社が導入

セグメントとは、マーケティングの分野で一般的に使われる用語です。日本語では「対象とする商品群全体を、特定のルールに従って分類したもののうちの一つの部分」という意味合いを持ちます。このセグメントに分類することで、商品のメインターゲットとして想定している顧客層に対する販売戦略をより緻密に立案・実行することが可能になります。
また、セグメント化は、販売データなどの統計調査の精度を向上させることにも役立ちます。自動車業界でセグメントという概念を積極的に導入しているのはヨーロッパです。車のセグメント分類方法にはいくつかの種類がありますが、最も一般的に使われているのは、グローバルインサイト社やマーケティングシステムズ社といった主要な調査会社が用いる手法です。
例えば、グローバルインサイト社の分類法では、車のボディサイズや車の価格、ブランドイメージなど複数の要素を判断材料として、「A」「B」「C」といった記号でセグメントに車をカテゴライズします。これにより、特定の市場の状況や消費者の動向を把握しやすくなります。
車の全長(ボディサイズ)によるセグメントの分類法

日本の軽自動車は、車高を最大限に高く設計するなどして、上位に分類されるコンパクトカーよりもボディサイズが大型化している車が数多く見られます。海外でも同様の現象が起きており、従来のボディサイズだけでセグメントを分けるのが難しくなってきました。そのため、最近のトレンドでは、ボディサイズ全体で判断するのではなく、車の全長のみにスポットをあててカテゴライズする手法が主流になりつつあります。
この分類法では、区分けした範囲内に全長が収まれば、セグメントCやセグメントDなどにも、コンパクトカーだけでなく、セダン、クーペ、SUVなどの様々な車種が分類されます。この全長基準の分類法は、特に欧州車におけるセグメントを理解する上で重要です。下記の表に、ボディサイズによる車のセグメント分類の目安をまとめました。
| セグメント | 全長 | 分類される車のイメージ |
|---|---|---|
| Aセグメント | ~3.70m | 軽自動車 |
| Bセグメント | 3.71m~4.20m | コンパクトカー |
| Cセグメント | 4.21m~4.50m | サイズの大きいコンパクトカー |
| Dセグメント | 4.51m~4.80m | 小型セダン、ステーションワゴン |
| Eセグメント | 4.81m~5.00m | 中型セダン |
| Lセグメント | 5.01m~ | 大型セダン |
車の販売価格帯によるセグメントの分類法

車の販売価格も、各セグメントに区分けする際の重要な判断材料になります。車の価格による分類法では、セグメントAが最も手頃な価格帯で、セグメントLは1,000万円以上の最も高価な価格帯として位置づけられています。
価格帯のルールに従えばセグメントEの次は「F」が続くように思えるかもしれませんが、セグメントは「L」となります。これはLがLUXURY(ラグジュアリー)という高級品を意味する単語の頭文字であるためです。セグメントLの価格には上限はなく、ランボルギーニ・ヴェネーノのように数億円という超高額な輸入車も分類されます。
セグメントAの価格帯の上限は250万円、セグメントBの価格帯の下限は200万円と設定されており、セグメントAの上限を下回っています。これは、セグメントを分類する際には、車の価格帯だけではなく、ボディサイズやイメージなど複数の要素を総合的に判断するためです。下記の表は、価格帯によるセグメントの目安を示しています。
| セグメント | 車体価格による分類の目安額 |
|---|---|
| Aセグメント | 150万円~250万円 |
| Bセグメント | 200万円~300万円 |
| Cセグメント | 250万円~350万円 |
| Dセグメント | 350万円~600万円 |
| Eセグメント | 550万円~1,000万円 |
| Lセグメント | 1,000万円~ |
ヨーロッパの自動車メーカーが製造する各セグメントに分類される代表的車種

| セグメント | 代表的な車種 |
|---|---|
| Aセグメント | VW「UP!」、FIAT「パンダ」「500」など |
| Bセグメント | VW「POLO」「MINI」、シトロエン「C3」、プジョー「208」など |
| Cセグメント | VW「ゴルフ」、BMW「1シリーズ」、ボルボ「V40」、メルセデス・ベンツ「A・Bクラス」など |
| Dセグメント | アウディ「A4」、BMW「3シリーズ」、メルセデス・ベンツ「Cクラス」など |
| Eセグメント | アウディ「A6」、BMW「5シリーズ」、メルセデス・ベンツ「Eクラス」など |
| Lセグメント | アウディ「A8」、BMW「7シリーズ」、メルセデス・ベンツ「Sクラス」など |
以前、輸入車といえば、メルセデス・ベンツやBMWなどのラグジュアリーメーカーが販売するセグメントD、セグメントE、セグメントLに分類される車の販売が好調でした。しかし、近年では日本でいうコンパクトカーや軽自動車にあたる、セグメントA、セグメントB、セグメントCの外国車にもユーザーの注目が集まっています。
特にセグメントCは、フォルクスワーゲン(VW)のような大衆車を主に製造・販売するメーカーと、メルセデス・ベンツやBMWといった高級車ブランドの両方がラインナップを揃えており、競争が最も激しいセグメントの一つです。セグメントCは顧客層も厚く、市場規模も大きいため、各自動車メーカーは力を入れた車種を数多く投入しています。このクラスは、まさに欧州車市場の激戦区といえます。
セグメントの概念を日本の車に当てはめた時の代表的車種

セグメントという概念は、日本ではヨーロッパほど広く浸透していません。そのため、日本の国産車をきっちりと分類することは難しい面がありますが、各セグメントの基準に当てはめた場合に、分類される可能性の高い代表的な国産メーカーの車をご紹介します。ここで紹介する国産車の分類は、あくまで欧州車のセグメント基準を適用した場合の目安としてご覧ください。
| セグメント | 代表的な車種 |
|---|---|
| Aセグメント | ダイハツ「ムーヴ」、スズキ「アルト」、ホンダ「N-BOX」など |
| Bセグメント | トヨタ「ヤリス(旧ヴィッツ)」、日産「ノート」、ホンダ「フィット」、マツダ「MAZDA2(旧デミオ)」など |
| Cセグメント | トヨタ「カローラスポーツ(旧オーリス)」、マツダ「MAZDA3(旧アクセラ)」、スバル「インプレッサ」など |
| Dセグメント | レクサス「IS」、トヨタ「カムリ」、日産「スカイライン」など |
| Eセグメント | レクサス「GS」、トヨタ「クラウン」、日産「フーガ」など |
| Lセグメント | レクサス「LS」「LC」、日産「GT-R」など |
セグメントの知識はビジネスシーンでも役に立つ

ヨーロッパの自動車メーカーから輸入車の購入を検討する際には、セグメントの意味をある程度把握しておくと、車選びにおいてやはり安心感があります。セグメントに分類することは、単に車にランク付けをしているように感じて、抵抗感を覚える方もいるかもしれません。
しかし、車のセグメント分類は、単純に価格だけで車を区分けしているわけではありません。ポジティブに考えれば、「次に車を乗り換える際には、仕事を頑張ってセグメントLの高級車に乗ろう」と、自身のモチベーションにつなげることも可能です。セグメントという概念は自動車業界以外にも応用が可能ですので、欧州車の知識が広がるだけでなく、セグメントの考え方を自身のビジネスシーンにも活かすことができます。





























