ティアナは日本で生産を終え後継も未設定 一方で2025年に中国で名称が復活
日産のローレルやセフィーロの後継として2003年に誕生したのがティアナです。
日産のFFセダンとして最大級のボディを持ち、中国などのアジア、オーストラリアなどのオセアニア、そして北米では「アルティマ」として売られてきたグローバルモデルでした。
かつては「北米のアルティマ(2015年マイナーチェンジ)や中国仕様(2016年7月28日マイナーチェンジ)に続き、フルモデルチェンジ版の新型アルティマが次期ティアナとして日本に投入されるのでは」と期待されていました。しかし本日時点で、その日本導入は実現していません。日本仕様のティアナは2019年末に生産を終え、在庫販売を経て2020年7月に販売を終了。後継となるセダンも設定されず、日産は日本のこのクラスから事実上撤退しました。
その一方で、2025年には中国市場で「ティアナ」の名が約7年ぶりに復活しています。ここでは、まず最新の中国での復活を押さえたうえで、日本に来なかった当時の予想を検証し、初代からの歩みを整理します。
2025年 中国でティアナが約7年ぶり復活 アルティマ上位の「天籟PLUS」として登場
日産と中国・東風汽車の合弁会社「東風日産」は、2025年8月18日にティアナの公式画像を公開し、同年11月21日の広州モーターショー2025で発売しました。中国名は「天籟PLUS」で、これまで「天籟」を名乗ってきたアルティマの上位に立つプレミアム仕様という位置づけです。つまり中国では、従来の「天籟」がアルティマを、「天籟PLUS」がティアナを指す形に整理されました。名称としてのティアナの復活は約7年ぶりです。
ボディサイズは全長4,920mm×全幅1,850mm×全高1,447mm、ホイールベース2,825mmで、かつて日本にあったフーガに迫る堂々たる体格です。フロントには日産の新しい「デジタルVモーション」を採用し、グリル内にヘッドライトを取り込む専用フェイスや、約2mにおよぶ横一文字のLEDライトを備えます。リアには宝石を思わせるLEDテールと、赤く発光する「NISSAN」ロゴを配しました。内装は触れる部分の約9割をソフトパッドで覆い、内燃機関車としては珍しくファーウェイのスマートコックピット「HarmonySpace 5.0」を搭載します。
パワートレインは、可変圧縮比機構を持つ2.0L直4「VCターボ」で、圧縮比を8対1から14対1の間で変化させて燃費と出力を両立します。最高出力は243ps、最大トルクは371Nmとされ、価格は17万9,800元〜23万9,800元(日本円でおおむね400万〜560万円前後)です。なお、この新型ティアナは東風日産が生産する中国向けモデルであり、日本導入は決まっていません。もっとも、中国で開発・生産した車を世界へ輸出していく——という方針が日産から示されていることもあり、いずれ日本にも入るのではないか、という見方はくすぶっています。
予想の下敷きとなった新型アルティマとコンセプト「Vmotion 2.0」 だが日本には反映されず
海外向け新型アルティマの力強いVモーショングリル
斜め後方から見ると流麗なデザインが強調される
切削光輝加工のアルミホイール
2018年のニューヨークモーターショーで世界初公開されたフルモデルチェンジ版のアルティマ(中国では後にティアナからアルティマへ改称)は、Vモーションが鋭くなり、ヘッドライトとの一体感を高めた先進的なスタイリングでした。フォグランプもシンプルな意匠に改められています。
当時はこの新型アルティマが次期ティアナとして日本に導入される予定と見られていました。しかし結果として日本仕様のティアナは改良も後継投入もないまま終売となり、この予想は成立しませんでした。参考までに、ティアナのデザインソースとされたコンセプトカー「Vmotion 2.0」も見ておきましょう。
キレのある鋭いボディラインが印象的で、フロントのVモーションもボリュームを増しています。左右に大きく開いたエアインテークがフロントフェイスに迫力を与えていました。
市販ティアナとしてはインパクトが強すぎるデザインでしたが、より大きなVモーションへ向かう方向性を示したショーカーでした。実際、その思想は日本のティアナではなく、2025年に中国で復活した新型ティアナのデジタルVモーションへとつながっていったと見ることができます。
先進性を感じさせたインテリアの予想 上質さは中国の新型ティアナで結実
厚みのある上質なフロントシート
インフォテインメントも充実
ステアリングにあるプロパイロットのスイッチ
内装はドアトリムまでしっかり作り込まれている
海外向けの新型アルティマは、インパネやドアトリムにラインを追加して質感を高めていました。ステアリングスイッチには運転支援「プロパイロット」の操作系も見えます。
もっとも、こうした上質なインテリアが日本のティアナに反映されることはありませんでした。皮肉なことに、素材やコックピットの上質化は、2025年に中国で復活したティアナが約9割ソフトパッドの内装やファーウェイ製スマートコックピットという形で、当時の想像を超えて実現しています。

コンセプトの「Vmotion 2.0」は、アウディなどでも採用された大型のバーチャルコクピットを備え、メーター表示や車両情報、ナビゲーションを一体で表示していました。

前後ドアを観音開きとし、乗り降りしやすい設計としていたのもショーカーらしい提案でした。

室内はセダンとは思えないほど広く、家族でゆったり過ごせる空間を想定していました。

センタークラスターは中央まで伸び、後席にもディスプレイを配置していました。

コンサートホールのような臨場感をうたうBOSEのプレミアムスピーカーも搭載していました。

ステアリングは円形ではなく台形とするなど、既存の常識にとらわれない提案が随所に見られました。
「Vmotion 2.0」はあくまでコンセプトカーであり、そのまま市販されたわけではありません。当時「新型アルティマは内装を市販向けに落とし込む」と語られていましたが、いずれにせよ日本のティアナには反映されないまま歴史を終えています。
予想された「日本のティアナへのプロパイロット搭載」は実現せず終了
かつては、日産の運転支援「プロパイロット」がミニバンのセレナ、SUVのエクストレイル、EVのリーフへと広がった流れを受け、セダンのティアナにも搭載されるのでは、と期待されていました。しかし日本仕様のティアナは大きな改良を受けないまま2020年に姿を消し、この装備が日本のティアナに載ることはありませんでした。
プロパイロットはその後、スカイラインなど他のモデルで進化を続けています。結果として、単一車線での運転支援を含む最新世代の技術は、日本のティアナではなく他車種へと展開されていったという整理になります。
「日本に直噴ターボなど新パワートレインを追加」という読みも不成立 VCターボは中国側で実用化

日本仕様のティアナ(L33型)は2.5L直4のみの構成でしたが、当時は「フルモデルチェンジ版には2.0L直4のVCターボと、新開発の2.5L直4直噴の2種類が用意される」という予想がありました。VCターボは圧縮比を可変とする野心的なエンジンで、注目を集めていました。
ただし、これらが日本のティアナに追加されることはありませんでした。日本仕様は最後まで2.5Lのみで、新パワートレインの日本展開は起きていません。一方でVCターボ自体は実在の技術として結実し、海外のアルティマや、前述の2025年復活の中国ティアナ(243ps/371Nm)に搭載されています。「日本で花開く」という当時の期待は外れ、その舞台は中国市場へと移った格好です。
日本仕様ティアナ(L33型)の最終スペックとグレード・価格

日本仕様のティアナは、1種類のパワートレインを4グレードで展開していました。ハイブリッドはなく全てガソリン車でしたが、JC08モード燃費は14.4km/Lと優秀な数値でした。
ここではベースグレード「XE」のスペックを紹介します。
| XE(2.5L) | |
|---|---|
| 全長 | 4,880mm |
| 全幅 | 1,830mm |
| 全高 | 1,470mm |
| 室内長 | 2,130mm |
| 室内幅 | 1,515mm |
| 室内高 | 1,215mm |
| ホイールベース | 2,775mm |
| 車両重量 | 1,460kg |
| 最低地上高 | 130mm |
| 最小回転半径 | 5.5m |
| 総排気量 | 2.488L |
| 最高出力 | 127kW(173PS)/6000rpm |
| 最大トルク | 234Nm(23.9kgm)/4000rpm |
| 乗車定員 | 5名 |
| ボディカラー | 全6色 |
| JC08モード燃費 | 14.4km/L |
| 価格 | 2,563,920円~ |
| グレード | 駆動方式 | 販売価格 |
|---|---|---|
| XE | 2WD | 2,563,920円~ |
| XL | 2WD | 2,896,560円~ |
| XL ナビAVMパッケージ | 2WD | 3,213,000円~ |
| XV ナビAVMパッケージ | 2WD | 3,513,240円~ |
ティアナの画像4枚
夜明けを意味するティアナのモデルチェンジ遍歴
ティアナは日産の高級大型セダンで、世界戦略車として海外でも展開されました。日本での販売終了後、海外では「アルティマ」の名で継続販売され、さらに2025年には中国市場で「ティアナ(天籟PLUS)」の名称が復活しています。
ティアナ 初代 J31型/2003年~2008年
2003年2月、ローレルやセフィーロの市場を継ぐモデルとしてデビューしました。世界40か国以上で販売され、海外の主力市場は中国でした。10月にはオーテックジャパンによる特別仕様車「AXIS」が追加されています。
2004年6月、中国向け仕様を発表して予約を開始。7月にはタイでの販売を始め、12月には韓国でティアナをベースとした「ルノーサムスン・SM7」が登場しました。
2005年1月、「230JK P-コレクション」「250JK FOUR P-コレクション」を追加。12月のマイナーチェンジではフロントを中心にデザインを変更し、インテリアの色・意匠も改めました。
2006年4月、「230JM モダンコレクション」を発売。12月には運転席パワーシートを備えた「230JK P-コレクションII」「250JK FOUR P-コレクションII」を発売しました。
2007年4月、インドでの販売を開始。7月には「230JK M-Collection クールモダン」「350JM クールモダン」を発売し、11月には特別仕様車「230JK ナビコレクション」「250JK FOUR ナビコレクション」を発売しました。
ティアナ 2代目 J32型/2008年~2014年
2008年6月、2代目が登場します。グレードは「XE」「XL」「XV」の3本立て。12月には仕様向上で安全装備を強化しました。
2009年8月の仕様向上ではHDDナビを充実させ、あわせてオーテックジャパン扱いの特別仕様車「250XL/250XL FOUR プレミアムセレクション」を発売。
2010年7月の一部改良で燃費性能を高め、2012年6月にはマイナーチェンジを実施。同年12月末に3.5Lモデルが姿を消しました。
ティアナ 3代目 L33型/2013年~2020年
2013年3月、3代目の販売が中国で始まりました。グレード体系は2代目を踏襲しています。11月には中国市場専売の上級版「天籟公爵(ティアナセドリック)」を追加。
2014年2月、日本での販売を開始しました。
2015年2月、日本での一部改良でフロントグリルの一部をピアノブラック調とし、安全装備を強化。年末の一部改良では、エマージェンシーブレーキと踏み間違い衝突防止アシストを廉価グレードにも広げ、全車標準としました。
2016年7月、中国仕様がマイナーチェンジし、Vモーションを採り入れてデザインが大きく変わりました。
2018年12月、中国仕様がフルモデルチェンジして車名を「アルティマ」に改称し、中国からティアナの名が一旦消えます。
そして日本仕様は2019年末に生産を終了し、在庫販売を経て2020年7月に販売を終了しました。
その後、2025年8月に中国で「ティアナ(天籟PLUS)」の名称が復活し、同年11月21日の広州モーターショーで発売されています。
| ティアナのモデル | 販売年表 |
|---|---|
| 初代 J31型 | 2003年~2008年 |
| 2代目 J32型 | 2008年~2014年 |
| 3代目 L33型(日本仕様) | 2013年~2020年 |
| 新型(中国・天籟PLUS) | 2025年~ |
日本のティアナは戻らず 名は中国で新たな夜明けを迎えた

ティアナは、日本より先に北米や中国でマイナーチェンジを受け、世界戦略車として期待を集めていました。当時は「新型アルティマが次期ティアナとして日本に来る」という予想もありましたが、その日本導入は実現せず、日本仕様は2019年末に生産を終えて2020年7月に販売終了、16年余りの歴史に幕を下ろしました。日産が国内のセダン整理を進めるなか、後継も置かれないままの退場でした。
とはいえ、ティアナという名前そのものが消えたわけではありません。2025年には中国で「天籟PLUS」として約7年ぶりに復活し、VCターボやファーウェイ製スマートコックピットをまとうプレミアムセダンとして生まれ変わりました。中国生産車を世界へ輸出する日産の方針を踏まえると、将来的な日本導入を望む声も出ていますが、現時点では中国向けモデルであり、日本での販売は決まっていません。「夜明け」を意味する名にふさわしく、ティアナの物語が別の市場で続いている点は、注目に値します。今後の展開を見守りたいところです。






























