アドブルーはクリーンディーゼルに必要なNOx還元剤
アドブルーとは、ディーゼルエンジンが排出する窒素酸化物(NOx)を水と窒素に変えるために使う高品位尿素水のことで、次世代のクリーンディーゼルエンジンに搭載されているシステムです。
国産車ではトヨタのディーゼルエンジンを搭載している車種に装備されていて「ランドクルーザー プラド」、「ハイラックス」、「ハイエース」の車種、三菱車では「デリカD:5」と「エクリプスクロス」に搭載されています。
それぞれの車種のアドブルータンク容量や、搭載していないディーゼル車はどのようにNOxを低減しているのかを紹介します。
尿素SCRシステムでアドブルーを触媒内に噴射して窒素酸化物を低減
プラドのアドブルータンク トラブルを防ぐため定期的な補充が必要
アドブルーは、尿素SCRシステムに使われる高品位尿素水のことで、触媒内で排気ガスにアドブルーを噴射し、窒素酸化物(NOx)を水や窒素に変える装置が尿素SCRシステムです。アドブルーを噴射されたNOxは複数の触媒を通って最終的には、水や窒素、二酸化炭素になりマフラーから排出されます。
アドブルータンクを使ってNOxを低減している車種は、タンクにアドブルーが入っていないとエンジンがかからないので定期的な補充が必要となります。
アドブルーの補充方法は簡単!アドブルー警告灯が点灯したら自分でやってみよう
アドブルーが少なくなると警告灯が表示される。アドブルーは1000kmで1L消費する。
トヨタのランドクルーザープラドやハイラックス・ハイエースのディーゼルエンジン搭載車に装備されている尿素SCRシステムは、充填しているアドブルーが不足するとエンジンを再始動することができません。ですが、アドブルーが足りている時は補充する必要はなく、アドブルー残量警告などが出たときが補充するタイミングです。
用意するものはアドブルーとジョウゴの2つのみで、アドブルーは保存しにくいため使い切ることがおすすめです。乗っている車のアドブルータンク容量に合わせた量を購入してください。
アドブルー残量警告が出たらタンクの容量を調べて「アドブルー」と「ジョウゴ」を購入
アドブルーはマイナス11℃以下の気温では凍結したり、開封後に何ヶ月も保存がしにくいため、購入した分を使い切りで運用したほうがお得です。アドブルー残量の警告が出たら乗っている車のアドブルータンク容量を調べてから購入するほうがいいでしょう。
ボンネット内にアドブルーの液体を落とすと白くなってしまうのでジョウゴは必須。
ジョウゴも太い差し込み口のものを購入するとアドブルー補充口にハマらないこともありますので、ある程度細いものがおすすめです。
代表的な国産車のアドブルータンク容量
- ランドクルーザープラド:12L
- ハイラックス:13L
- ハイエース:7.4L
- デリカD:5:16L
- エクリプスクロス:16L
ランクルプラドの場合、アドブルーのタンクは12Lのため、残り2000kmの警告灯が点灯したら10L補充ができる。10Lのアドブルーは重いので、重いのが苦手な方は割高になるが5Lのアドブルーがよい。
分からない時は、必ず満タンにしなくてもいいため5L分(約5,000km走行可能)だけ補充し警告が出たらその都度5Lを補充する方法がおすすめです。
エンジンを停止させボンネットを開けてアドブルーの補充口を探してDIYで補充してみよう
安全のためにエンジンを切ったらボンネットを開けてAd Blueの補充口を探してみましょう。アドブルーの補充口は青い筒状のものですぐに分かると思います。エンジンルーム内に無かったらガソリンを補充する給油口付近にある場合もあります。
アドブルーの補充口はボンネットの中の青いキャップの部分。
プラドのアドブルーの蓋の外し方はキャップの根元を回すと外れる(キャップの上は空回り)。
上の部分を回してもカチカチとなるだけなので根元を回す
ランドクルーザープラドの場合はエンジンルーム内にアドブルー補充口があり、キャップを外すと口が見えます。そこにジョウゴを差し込みゆっくりと補充していきます。コーヒードリップのようにゆっくりと補充するのがコツで、一気にアドブルーをドバッと入れるとあふれるため注意してください。
アドブルーはジョウゴなしの補充は難しいのでジョウゴをセット。
アドブルーは溢れないようにゆっくり入れる。
アドブルーはゆっくり入れないとジョウゴから溢れ周辺が白くなる。
アドブルーの補充が終わったらキャップを確実に閉めたか確認してボンネットを閉める
作業が終わったらジョウゴを外し周辺を清掃。
蓋をしてアドブルーの補充完了。
アドブルーの補充が無事に終わったらしっかりとキャップを閉めたか確認してからボンネットを閉じてください。もししっかりと閉まっていないと走行中に緩んでキャップが外れるなどのトラブルが予想できます。ボンネットを閉めたらエンジンをかけてアドブルー警告が出ていないか確認して終了です。
アドブルーを補充し終わった後は、手荒れなどをする場合があるためしっかりと石鹸を使って手を洗ってください。
アドブルーによる尿素SCRシステムを搭載する国産ディーゼル車
日本国内メーカーでもディーゼルエンジンを搭載している車種が増えてきていて、その中でもアドブルーを使う車種と使わない車種があります。アドブルーを使ってNOxを低減している車種をチェックしておきましょう。
ランドクルーザー プラド
プラドのディーゼルエンジンは走行距離に応じてアドブルーを消費
ランドクルーザー プラドのディーゼルモデルには「1GD-FTV」のエンジンと、尿素SCRシステムが搭載されていて、排気ガスを酸化触媒とDPR触媒でPMを低減したあと、尿素水SCR触媒でNOxを水と窒素に還元します。
ランドクルーザープラドのアドブルーは1,000km走行すると1リットル消費し、12,000kmほどで無くなるため12リットルのタンク容量があります。走行可能距離が5,000km以下になると警告してくれるので、トヨタディーラーなどで補充しましょう。
なお、先日ディーラーでアドブルーを補充しましたが、10リットルで2200円(安い時期でしたので現在この価格では無理でしょう。)でコーヒー付きでした。自分でアドブルーを購入しても大差ない価格で作業予約なしでも受け付けてくれるので、アドブルーの補充はディーラーを活用するのがお勧めです。
ハイラックス
2017年に復活したハイラックにディーゼルモデルをラインナップ
ハイラックスは2017年9月に日本でもモデルチェンジした車種で、国内の車種で唯一のピックアップトラックです。搭載しているエンジンは「2GD-FTV」で、ランドクルーザープラドと同様の尿素SCRシステムを搭載しています。
ハイラックスのアドブルーは、1,000km走行で1リットルを消費し、13,000kmほどで無くなるため13リットルのタンク容量があります。警告は6,000kmからしてくれるので仕事で遠出している時でも安心ですし、年間1万km以内の走行なら年に1回補充するだけです。
ハイエース
ハイエースのディーゼルエンジンはランドクルーザー プラドと同じエンジンを採用
2017年12月に新型のディーゼルエンジン搭載や、トヨタセーフティセンスPの搭載で安全面が強化されたハイエースには、ランドクルーザープラドと同様の「1GD-FTV」エンジンが搭載されています。
ハイエースのアドブルータンクは7.4リットルと、プラドやハイラックスに比べて小さめで、1,000kmで1リットルとすると、7,400kmで空になるので半年に1度などこまめな補充が必要になります。
アドブルーを使用しない国産ディーゼル車
国内メーカーのディーゼル車でもアドブルーを使った尿素SCRシステムを搭載しない車種もあります。どのような車種があるのか、どうやってNOxを低減しているのかチェックしてみましょう。
パジェロ
パジェロは2008年からディーゼルモデルが復活
パジェロは2006年にモデルチェンジしたモデルで、2008年10月からディーゼルエンジンが復活しています。従来のエンジンよりNOxやPMを低減したクリーンディーゼルエンジンを搭載しています。
型式は4M41で排気量は3,200cc、最高出力は190PS、最大トルクは450Nmあり、排気ガスを酸化触媒、NOxトラップ触媒、DPF、酸化触媒の順番に通してクリーンなガスを排出します。
デリカD:5(2019年02月のCV1Wからアドブルーが必要)
2019年までのデリカD:5もPMやNOxを低減したクリーンディーゼルエンジンなのでアドブルーは不要
デリカD5は2007年から販売を開始したモデルで、2012年にディーゼルエンジンが追加されました。4N14型エンジンは、排気量が2,267cc、最高出力は148PS、最大トルクは360Nmです。
パジェロと同様に、DPFやNOxトラップ触媒によりPMやNOxを低減したクリーンディーゼルエンジンを搭載していて、アドブルーは必要としません。ただし新型デリカD:5(2019年02月~CV1W)ではアドブルーが必要となります。
SKY ACTIV-Dエンジン搭載車
マツダのCXシリーズやデミオ、アテンザ・アクセラに搭載されているディーゼルエンジンである「SKY ACTIV-D」も排気ガスが綺麗なディーゼルエンジンとして有名です。
マツダのクリーンディーゼルエンジンは、低圧縮比化による均等な燃焼、2ステージターボチャージャーによる排気ガスのクリーン化などによりNOxの発生を抑えることで尿素SCRシステムを使わずとも規制をクリアしたクリーンなエンジンになっています。
2021年末に起きたアドブルーの不足問題は大丈夫か?
アドブルーの製造にはアンモニアが使われており、アンモニアの精製には石炭が使われています。
中国ではアンモニアの精製に必要となる石炭をオーストラリアからの輸入に頼っていましたが、オーストラリアと中国の政治的対立によって石炭輸入をストップしたことにより、製造量が不足、これに中国の石炭産出地域での自然災害も重なって、アドブルーの精製が間に合わなくなりました。
中国政府は国内の流通の正常化を指示し、海外への尿素の輸出がストップすることになります。
これが韓国を中心に日本でも起きているアドブルーの不足問題の発端となります。
日本のアドブルーは三井物産プラスチックなどが輸入により供給していましたが、中国の輸出停止問題によってアドブルーの供給が不足していきます。
しかし、日本はもともと国内需要を賄えるだけのアドブルーの精製能力があり、国内でアドブルーを製造する三井化学がアドブルーの増産に踏み切り、1月からは供給量が正常化する見通しと発表されました。
国内生産事業者をはじめとする関係者との連携によって日本でのアドブルーの不足問題は解決する見通しと経済産業省が発表し、不足問題は解消されました。
アドブルーは警告灯が付いてから補充するのでも十分間に合う
尿素SCRシステムを搭載したディーゼルエンジンは、トヨタでは「ランドクルーザー プラド」、「ハイラックス」、「ハイエース」、三菱では「デリカD:5」「エクリプスクロス」となっています。
尿素SCRシステムを搭載している車種は、アドブルーが切れた状態でエンジンを切ると再始動できなくなる問題がありますが、AdBlueタンク満タンの状態からプラドで12,000km、ハイラックスで13,000km、ハイエースで7,400kmとかなり余裕があり、またアドブルーの警告灯が付いてからも2000km走るまでしばらく時間のあるので、暇を見てアドブルーを補充しても十分間に合います。
アドブルーの警告灯が付いたら毎回エンジン始動の度に警告が出るので、きちんと忘れずに補充することで、タンクが空になりエンジン始動ができないトラブルを防ぐことができます。