直列エンジンとV型エンジンの違い

直列型とV型の違いは?エンジンのシリンダーレイアウトによる性能・コスト面での差

直列型エンジンとV型エンジンの違いを解説。乗用車や軽自動車に用いられるエンジンのシリンダーレイアウトには直列・V型・水平対向型・W型等がある。自動車メーカーや車種により搭載するエンジンは異なり、生産コストや性能にも違いが出る。それぞれのエンジンの特徴を理解。

直列型エンジンとV型エンジンの違いを解説!シリンダーレイアウトで性能差はどのように現れるのか

自動車における直列型エンジンとV型エンジンの違いを、性能差について触れながら紹介します。「直列型」「V型」というのは自動車のエンジンのシリンダーがどのように並んでいるのかを示すレイアウトのことです。直列型エンジンやV型エンジンのほかに、スバルやポルシェが採用している「水平対向エンジン」やフォルクスワーゲンが採用している「W型エンジン」もあります。

車のエンジンにおけるシリンダーの配列が直列型かV型かによって、性能面でどのような違いが現れるのでしょうか。直列型とV型の具体的な性能差や生産にかかるコスト、どの形式がどのような車に搭載されているのかについて詳しく解説していきます。ここでは直列型やV型のほか、一部の自動車メーカーが搭載する水平対向エンジンやW型エンジンの特徴にも触れていきます。

直列型エンジンは最もスタンダードなシリンダー配列でたくさんの車種に採用

シリンダーが一列に並べられている直列型エンジンは、一般的な乗用車に採用されているシリンダーレイアウトです。軽自動車は直列3気筒、1500cc~2000ccクラスのコンパクトカーや乗用車には直列4気筒が採用されています。排気量によって直列5気筒、直列6気筒、直列8気筒とシリンダーの数が増えていきます。7気筒エンジンは他の気筒数よりも搭載性が悪く、音や振動が大きくなるという理由から採用されていません(V型エンジンの7気筒も同様)。

ダイハツの軽スポーツカーのコペンは2012年8月まで直4を搭載していましたが、それ以降に生産されたモデルは全て直3で統一されています。
また、トヨタ・スープラは初代から4代目まで全て直列6気筒搭載車でしたが、2019年発売の新型モデルに直4を初めて設定したことで話題となっています。

直列型エンジンの場合、シリンダーブロックがひとつなのでパーツの数が少なく済み、低コストで生産できることや、構造も単純になりメンテナンスがしやすいことのほか、軽量性に優れているといった点もメリットとして挙げられます。

ただし、直列型エンジンはエンジンの全長が長いので、エンジンルームにある程度のスペースが必要となります。これにより、エンジンルームの寸法や車のデザイン上の制約は厳しくなりがちです。
さらに、エンジンの主軸となるクランクシャフトにねじれが生じやすかったり、2気筒や3気筒などの少ない気筒数では振動が大きくなり、乗り心地に影響が出てしまうなどのデメリットもあります。

現在直列6気筒エンジンを搭載するFR車は減少傾向にあるがBMWなどの一部自動車メーカーでは製造され続けている

直列6気筒エンジンは、かつて多くのメーカーで上級車種の後輪駆動車に採用されていました。しかし、時代の流れとともに衝突安全性能の向上を優先するべく各メーカーが適宜対応を始め、近年では搭載車が減少しています。

他の自動車メーカーが次々とV型6気筒エンジンへと移行していく中、長年にわたりFR車への直6エンジンの搭載を続けてきたのがBMWです。BMWの直6エンジンは、その美しいサウンドとシルクのような滑らかで気持ちの良い吹け上がりから「シルキーシックス」と呼ばれ、今も数多くのドライバーを魅了し続けています。

また、最近ではおよそ20年ぶりにメルセデス・ベンツが直列6気筒エンジンを復活させ、Sクラスに直6搭載モデルである「S450」を追加したことも記憶に新しいニュースです。エンジン設計の技術がさらに進んでいけば、再びFR+直列6気筒エンジン搭載車の普及が進んでいく可能性も考えられます。

2019年5月9日には、マツダが商品におけるブランド価値向上への投資として、直列6気筒エンジン搭載のFR車を投入していくことを公表しました(2020年3月期~2025年3月期の中期経営方針より)。

V型エンジンは直列型エンジンよりも全長が短くコンパクトなため大排気量の乗用車にも搭載

V型エンジンは、シリンダーを左右交互にV字型に傾けて配置しているエンジンです。直列エンジンと比べるとコンパクトに収めることが可能なため、多くの大排気量車にはV型エンジンが採用されています。

3気筒ずつV型に並ぶ6気筒や、4気筒ずつV型に並んで排気量4,000cc超の車に採用される8気筒のほか、スーパーカーや最高級車となると10気筒や12気筒を搭載するモデルもあります。全長が短いので横置きでも縦置きでもクラッシャブルゾーンを確保でき、衝突安全性能が高いことから、後輪駆動車においても搭載されるようになっています。

コンパクトで大排気量車のエンジンに向いている反面、直列型エンジンよりもパーツの数が多くなるので構造が複雑化し、コストも重量も増えるという難点もあります。エンジンルームが狭くなるとメンテナンス性も悪化します。

水平対向型エンジンはスバルやポルシェが採用するシリンダーレイアウトで優れた運動性能を持つ

水平対向エンジンを搭載する乗用車(オートバイを除く)は、現時点でスバル(トヨタとの共同開発車86を含む)とポルシェの2社のみが生産しています。過去にはシボレーでも強制空冷式水平対向6気筒エンジンを搭載した「シボレー・コルヴェア」というコンパクトカーを生産していましたが、こちらは1969年に生産終了となっています。

水平対向エンジンは、左右対称に行われるピストン動作がパンチを繰り出すボクサーの姿に似ていることから「ボクサーエンジン」とも呼称されています。水平対向型エンジンの全長は直列型エンジンよりも短くV型エンジンよりも長めです。
水平対向型は2つのシリンダーが対になっているため、水平対向4気筒、水平対向6気筒といったように必然的に偶数気筒となります。ポルシェ911は従来モデルから現行型に至るまで水平対向6気筒を採用し続けています。

回転バランス・重量バランスに長けているのが利点として評価されています。さらに振動が少なく高剛性で、重心の位置が低く安定感があるなど、エンジンとして非常に優れた性能を持っているのが特徴です。

性能面におけるメリットの多い水平対向型エンジンですが、横幅が広いのでコンパクトな車にはエンジンルームに収まり切りません。また、パーツが多く生産コストがかさむといったデメリットもあります。こうした理由から、直列型エンジンやV型エンジンと比較するとそこまで普及は進んでおらず、前述の通りスバルやポルシェなど限られたメーカーの車にのみ搭載されているのが現状です。

W型エンジンはフォルクスワーゲン社が採用している独自のシリンダーレイアウト

W型エンジンはV型エンジンを2つ並べたようなシリンダーレイアウトが特徴で、フォルクスワーゲン社が採用しています。V型とエンジンの基本構造は同じですが、パーツの数はV型よりも増えるため複雑になります。

W型エンジンには、3つのシリンダーバンクを有する古典的な「3バンク型」と、フォルクスワーゲンが開発し2001年に発表された「4バンク型」の2つのタイプがあります。4バンク型はフォルクスワーゲンが1991年に発表した6気筒の狭角V型エンジン(VR6型エンジン)を2つ組み合わせたものです。W型はエンジンの全長を抑えて気筒数を増やせるのが長所ですが、V型と比較すると横幅が広いので大型車やスポーツカーにのみ採用されています。

直列エンジン・V型エンジン・水平対向型エンジンのメリット・デメリット

  メリット デメリット
直列エンジン
  • パーツ数が少なく低コストでの生産が可能
  • メンテナンスが容易
  • 全長が長いため車両のサイズやデザインの制約がある
  • 気筒数が少ないと乗り心地が悪くなる
V型エンジン
  • コンパクトなレイアウトで大排気量の車に対応できる
  • クラッシャブルゾーンをしっかり確保できるので衝突安全性能が高い
  • パーツ数が多いためコストがかかる
  • 構造が複雑でメンテナンス性が悪い
水平対向型エンジン
  • 低重心でコーナリング性が向上する
  • 回転・重量のバランスに優れ、振動が少なく安定性がある
  • パーツ数が多く生産コストが落ちる
  • コンパクトカーへの搭載は向かない
  • V型エンジンよりもさらにメンテナンス性が劣る

PHEVの普及により乗用車のエンジンのさらなる多様化が期待

「直列型」「V型」「水平対向」「W型」などエンジンの形式は多種多様で、搭載される気筒数によって性能なども大きく違ってきます。
エンジンはそれぞれの車の特徴に合わせて搭載されるものであり、音や振動に対するフィーリングもドライバーそれぞれです。そのため、どのエンジン型式が最も優れているのかという明確な物差しはなく評価が難しいところですが、これからの時代、PHEVが普及するにつれて各エンジンの改良もさらに進んでいき、より優れたエンジン型式が生まれる可能性もあるでしょう。