スズキが国内販売した軽自動車の歴代車種一覧
1955年、鈴木自動車工業は、軽自動車のパイオニアともいえる「スズライト」を誕生させました。以降、魅力的かつ低価格な軽自動車を多数開発し、日本人の生活を支えてきました。
スズライト(1955~1959)
日本初の軽四輪量産車。空冷2サイクル2気筒エンジンを搭載した軽自動車の原点。日本で初めてFF式を採用した車でもある。最高出力15.1馬力、発売価格42万円。庶民の月収数万円の時代には高嶺の花だった。スズキ歴史館に展示車両あり。
スズライトTL(1959~1968)
フルモデルチェンジしたスズライト。空冷2気筒エンジンとFF式は変わらず、最高出力は15から21馬力にアップ!「イギリスのミニの模倣では?」とも言われるが、スズライトの方が発売が1ヶ月早く、開発時期から逆算しても偶然の一致と思われる。
スズライト・フロンテ TLA型/FEA/ FEA-II型(1962~1967)
スズライトTL型の乗用車版として登場した初代フロンテ。当時の軽自動車規格に合わせて排気量360cc、空冷2ストローク直列2気筒エンジン。1965年以降のFEA-II型はエンジンオイル直接噴射方式を採用した。
フロンテ360(1967~1970)
実質2代目フロンテだが、初代スズライト・フロンテのFF式からRR式に駆動方式を変更し、エンジンも直列2気筒から3気筒へ。車名を「フロンテ360」へと改めた。アメ車に多い「コークボトル(コーラ瓶)」と呼ばれるくびれラインを採用した珍しい日本車。
フロンテバン(1969~1973)
フロンテシリーズの商用モデルとして設定された3ドアハッチバック。FR式。フロンテ360の空冷エンジンを縦置きから横置きへ変更(後に水冷エンジンも追加)。発売当時の価格は368,000円。求めやすい価格と直線基調のすっきりとしたラインが好評。
フロンテ71/72(1970~1976)
実質3代目フロンテで、フロンテ360と同じくRR式。このモデルをベースに派生車「フロンテクーペ」も発売。当初は空冷エンジンだったが、1971年5月に水冷直列3気筒エンジン採用車も追加。ラジアルタイヤ装着のスポーティーグレードも存在した。
フロンテクーペ(1971~1976)
ホンダN360による軽の馬力競争、Zによる軽スペシャリティカー流行を受けて、スズキが開発した初の軽クーペ。原案はイタルデザインのジウジアーロで、全高1,200mmは異例の低さ。発売当初は2シーターだったが、後に2+2に統合。最高時速120km/h。
フロンテハッチ(1973~1979)
フロンテバンの後継として設定されたFR式の商用モデル。1979年発売のアルトの前身とも呼べる。アルト開発に技術や経験が活かされたのはもちろん、スズキはフロンテハッチで固定客を得ており、大ヒットへの礎を築いていた。
フロンテ7-S(1976~1979)
軽規格改定に合わせて改良された4代目フロンテ。全車水冷エンジンとなり、総排気量も443ccにアップし、ボディサイズも拡大。昭和53年排出ガス規制への適合が間に合わず、ダイハツ製4サイクルエンジンを搭載したレアなグレードも存在。
セルボ(1977~2009)
イタリア語で牡鹿を表す軽クーペ。フロンテクーペ生産終了後、新軽自動車規格の排気量550ccに合わせて開発。初代デザインはフロンテクーペでも原案を描いたジウジアーロ。スズキは女性をターゲットにしていた。3代目以降はハッチバックスタイルに変更。
スズキ・フロンテ(1979~1989)
5代目以降は「スズキ・フロンテ」が正式車名となり、駆動方式はFFで固定。姉妹車アルトとは、居住空間の広さや装備の豪華さで差別化。最終的にはアルトに統合される形で7代目フロンテ、1989年をもって生産終了。
マイティボーイ(1983~1988)
軽クーペ2代目セルボをベースにした軽ピックアップトラック。「アルト・47万円」よりも安い45万円なのに当時は販売不振。今ではカスタムカーのベースとしても人気爆発中。愛称はマー坊。2015年東京モーターショーにはマー坊を彷彿させる車が登場した。
アルトハッスル(1991~1994)
3代目アルトに追加されたハッスル。2000年以降カングーの流行により日本でも知名度を増すフランスのフルゴネットスタイルを早くから取り入れていることに驚き!販売時には「キュービックワゴン」とPRした。フルタイム4WDもあり。
カプチーノ(1991~1998)
軽スポーツカーの名車。平成ABCトリオのC担当で、唯一のFRであり、前輪51:後輪49の重量配分を実現。車両重量700kgとかなり軽いが、マイナーチェンジで更に10kgの軽量化に成功。フルオープン、タルガトップ、Tトップと1台で3つの形を楽しめる。
キャラ(1993~1995)
マツダ・オートザムAZ-1のOEM。エンジンはもともとスズキ製アルトワークス譲りのF6A型3気筒DOHCターボ。中古で人気が高騰した軽スポーツクーペAZ-1だが、新車販売時は存在感が薄いクルマであり、キャラの総生産台数もわずか531台。
Kei(1998~2009)
クロスオーバーSUVの軽自動車であり、ハスラー(2014~)の開発に大きなヒントを与えたクルマ。トールワゴンのような広さや開放感はないが、悪路走破性を重視。ギリギリ立体駐車場に入る高さ。Keiスペシャル、Keiスポーツ、Keiワークスなどのホットモデルが存在。
MRワゴン(2001~2016)
歴代モデルすべてに自然吸気エンジンとターボエンジンを設定。3代目はムーミンシリーズのミィやきゃりーぱみゅぱみゅが登場するCMが女性に話題。日産モコにOEM供給していたが、モコは日産のウインググリルを採用するなど、フロント周りの印象が異なる。
ツイン(2003~2005)
2シーターの軽クーペ。最小回転半径3.6m、全長2,735mmで、マイクロカーを思わせる外観。軽自動車初のハイブリッドモデルが存在し、34km/Lの燃費を実現。税抜129万円で世界一安いハイブリッドカーとも呼ばれた。ガソリン車の燃費は26km/L。
パレット(2008~2013)
後席両側スライドドアが特徴の軽トールワゴンで、3代目ソリオとはドアパネルを共有している。専用アルミホイール装着の派生モデルにパレットSW(2009~2013)も存在。ライバル車はダイハツ・タント。後継はスペーシア。
アルトエコ(2011~2014)
7代目アルトに追加された低燃費なエコカー。アイドリングストップも搭載し、JC08モードで最終的に35.0km/Lとハイブリッド並みの燃費を実現。ダイハツ・ミライースと激しく競争。アルトのガソリンタンク30Lに対し、エコは20Lなんて軽量化のための裏技も。
アルトターボRS(2015~2018)
8代目アルトに追加されたターボエンジン搭載モデル。発表時はアルト唯一のスポーツモデルだったが、後に15年ぶりにワークスが復活。ターボRSはワークスより扱いやすく、価格も20万円以上安かったが、役目を終えたとみなされたのか2018年終売。
アルト ワークス(1987~2021)
アルトのホットモデル。初代RS-Xグレードは、規格550ccで50PSぐらいが標準の時代に、軽自動車唯一のツインカムターボで、最高出力64PS。異次元すぎて軽の馬力規制のきっかけを作る結果に。
スズキが国内販売した普通車(登録車)の歴代車種一覧
軽自動車以外に、鈴木自動車工業(スズキ)が開発した歴代車種を解説します。
鈴木自動車工業は、1965年に小型車「フロンテ800」を開発するも、トヨタ自動車などの大手自動車メーカーの販売力を前に厳しい戦いを強いられました。
それゆえ、軽自動車を作りながら小型車開発のノウハウを蓄積し、1980年以降に再度、本格的な普通車(登録車)販売へ参入します。
フロンテ800(1965~1969)
スズキ初の登録車。800は総排気量の意味で、200m加速は13.9秒とリッターカー並の速さを誇った。競合車としてはトヨタ・パブリカ、マツダ・ファミリア、ダイハツ・コンパーノがおり、熾烈な販売競争の末、スズキは軽自動車への注力を決意。
カルタス(1983~2002)
フロンテ800生産中止から14年ぶりに開発したスズキの普通車(登録車)。初代はGMとの共同開発で、1.0L直3エンジン3ドアと1.3L直4の5ドアを設定。海外ではスズキ・スイフトの名前で販売し、米国での人気車種に。1992年2月には北米で先行販売していたコンバーチブルが日本でも発売。
カルタスクレセントワゴン(1995~2002)
3代目カルタスに追加されたステーションワゴン。後期型はクレセントのサブネームが外れて、カルタスワゴンと呼ばれる。月間目標販売台数500台のマイナー車だが、欧州車チックなリアビューが美しい。
X-90(1995~1997)
93年の東京モーターショーでお披露目して、海外勢からも好評。要望に応える形でそのまま売ったら、国内販売台数1348台と撃沈。2シーターのクーペ型クロスオーバーSUV、パートタイム4WDはユーザーを限定しすぎた模様。でも好きな人は絶対にいる。
エブリイプラス/エブリイランディ(1999~2005)
軽ワンボックスのエブリィをベースにした7人乗りミニバン。発売当初は「エブリイ+」、2001年に「エブリィランディ」に改名している。1.3リッターの直4 SOHCエンジンを搭載。低排出ガス認定を受けるなど環境性も高評価。
グランドエスクード(2000~2005)
2代目エスクードをベースにした派生車種として登場。3列シート7人乗りモデルで、自社最大の2.7リットルV6エンジンを搭載。3列目シートは予備用だが、新車価格約250万円はお買い得感あり。エクステリアは北米受けを意識。
エリオ(2001~2007)
セダンとハッチバック(2006年生産終了)が存在。日本では1.5Lと1.8Lのみだが、北米は2.3Lエンジンあり。スズキの社用車や工場のある静岡県牧之原市の公用車として活躍。地味車扱いだが、実は『トップ・ギア』で世界中のセレブが搭乗。欧州車名はリアナ。
SX4セダン(2007~2014)
初代SX4に設定されたセダン。スズキと所縁の深い地域や企業などで公用車・社用車として活躍したエリオセダンの後継。中国やインドで積極的に発売し、後継シアズは海外専売車となった。
キザシ(2009~2015)
2.4L直4DOHCエンジンを搭載したフラグシップセダン。国内では超レア車なのに、警察の捜査車両に採用されたから大変。噂では現場の捜査官がスズキのロゴを外したり、フロントグリルを交換したりと、少しでも街に溶け込めるようがんばっていたらしい。
スプラッシュ(2008~2014※国内販売)
2代目スイフトをベースにした小型ハッチ。製造はハンガリーのマジャールスズキ。日本では輸入販売。ややマイナーだが、走りは一級品。OEM契約を結んだオペラの厳しい要望をクリアすべく、素直にがんばったスズキはえらい。
バレーノ(2016~2020)
インドで生産されている5ドアハッチバック。日本や欧州でも輸入販売中。スイフトより全長・全幅はやや長く、全高は低め。ラゲッジスペースは広く、背の高さに頼らない居住性の良さを目指した。日本仕様は1.2L直4と1.0L直3エンジン搭載車が存在。
SX4 S-CROSS(2006~2020)
初代は2006~2014年販売のフィアットと共同開発したSX4。初代はセダンも存在したが、2代目(2013年~2020年)はボディサイズを拡大し、クロスオーバーSUVのみに。ハンガリーのマジャールスズキで生産されており、日本では輸入車として販売していた。
スズキの歴代名車を実際に見たいならスズキ歴史館がおすすめ!
スズキの歴史や旧車に興味があるのなら、静岡県浜松市にあるスズキ歴史館がおすすめです。
1階~3階のブースは時系列になっており、初代社長の鈴木道雄が創業した「鈴木式織機製作所」から、「鈴木自動車工業」としての自動車産業への進出、世界的な自動車メーカー「SUZUKI」となるまでの躍進が丁寧に描かれています。
予約制ではありますが、入館料は無料で、自動車に興味がない人でも楽しめる隠れた名所です。スズライトや初代ジムニーなどのヒストリックカーも展示されています。
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