ランチアの名車特集~世界ラリー選手権を制覇した「デルタ」「ストラトス」など計11車種の歴史と魅力
ランチアは、知る人ぞ知る1906年に設立された歴史あるイタリアの自動車メーカーです。
モノコックボディ・独立式サスペンション・5速トランスミッションなど、多数の先進的な技術を世界で初めて導入した自動車メーカーとしても知られています。
そんなランチアの車は、1970年代~1990年代初頭までに世界ラリー選手権などのモータースポーツで輝かしい功績を収めてきました。
ここでは、世界ラリー選手権で一時代を築いた「デルタ」や「ストラトス」の魅力だけではなく、大統領専用車両としても利用された「テージス」や、世界のコンパクトカーに影響を与えた「イプシロン」など、計11車種の歴史を紹介します。
ランチアは世界ラリー選手権で活躍する車を多数誕生させたイタリアの自動車メーカー
イタリアの自動車メーカー「ランチア」は世界ラリー選手権で総合優勝したことでも有名
ランチアは、世界ラリー選手権で総合優勝した車両や、イタリアの公用車を開発していた自動車メーカーです。イプシロンやデルタなど、ギリシア文字をモデル名として採用するなど、クルマ造りに徹底的にこだわる姿勢が特徴的です。
創業者のヴィンチェンツォ・ランチアは、フィアットの契約ドライバーとして活躍しながら技術者としても腕を磨いた人物です。「もっと自由な発想でクルマを創りたい」という思いを実現するために、1906年にランチアを創業しました。
オーナーと技術統括責任者を兼務したヴィンチェンツォが掲げた理念のもとで、ランチアは世界ラリー選手権(WRC)で史上初の6連覇を達成した「デルタ」や、大統領も乗車する最上級セダン「テージス」など、数々の名車を世に送り出してきました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー名 | ランチア(イタリアの自動車メーカー) |
| 特徴 | 世界ラリー選手権で多数活躍、総合優勝経験あり |
| モデル名の特徴 | ギリシア文字をモデル名に採用(例:イプシロン、デルタ) |
| 創業者 | ヴィンチェンツォ・ランチア(元フィアット契約ドライバー兼技術者) |
| 創業理念 | 自由な発想で自由に車を創ること |
| 代表車種 | 世界ラリー選手権6連覇のデルタ、大統領も乗る最上級セダンのテージス |
独創性と先進性によって自動車産業の発展に大きく貢献したランチアの名車シリーズ
創業者が掲げた理念のもと、ランチアは独創的かつ先進性も兼ね備える数々の名車を誕生させてきました。利益を生み出す車よりも、独創性と先進性を備える車の開発を最優先とするランチアが誕生させた車は技術力に優れ、その後の自動車産業の発展に大きく貢献しました。
ここでは、他の自動車メーカーのクルマ造りにも影響を与えたランチアの名車たちの歴史と魅力を紹介します。
白州次郎も愛した「ラムダ」は創業者が開発を主導して誕生させた1920年代の最高傑作
日本では白州次郎が所有していたラムダはランチアの技術力を世界に知らしめた名車
創業者であるヴィンチェンツォが開発を主導した「ラムダ」は、軽量・高剛性を実現するモノコック構造を世界で初めて量産車に採用し、前輪にも量産車として初めて独立懸架式サスペンションを導入した、自動車工学の歴史を塗り替えた名車です。先進的なオーバーヘッドカムシャフトエンジンも搭載し、その後の自動車工学の発展に強い影響を与えました。
ランチア自慢の狭角V型4気筒エンジンを搭載するラムダは操縦性に優れ、ロングドライブでも身体に負担がかかりにくいと当時の人たちから評判でした。1922年に誕生したラムダは、シリーズ9まで進化を続け、1931年に生産を終了しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | ラムダ |
| 開発主導者 | 創業者ヴィンチェンツォ |
| 技術的特徴 | 世界初のモノコック構造(量産車)、量産車初の前輪独立懸架式採用 |
| エンジン | 狭角V型4気筒エンジン、先進的なオーバーヘッドカムシャフト |
| 評価 | 操縦性に優れ、長距離走行でも身体に負担が少ないと評判 |
| 製造期間 | 1922年誕生、1931年生産終了(シリーズ9まで進化) |
| 愛好者 | 日本の白州次郎も所有 |
「アプリリア」は風洞実験を実施して空気特性を考慮した当時としては画期的なボディラインを実現した
創業者ヴィンチェンツォの遺作として語り継がれているアプリリア
ランチアにとっては初めての小型乗用車であるアウグスタの後継モデルにあたります。1937年に誕生した「アプリリア」は、風洞実験を行って空気特性を考慮した流線型のボディデザインを採用した世界初の量産車だと言われています。実現した空気抵抗係数(Cd値)は0.47と、第二次大戦前の市販車としては特に優れた数値です。
1949年まで生産が続けられたアプリリアは、観音開きを実現するピラーレス・モノコックボディや完全独立式サスペンションなど、当時の先端技術を多数導入していました。創業者ヴィンチェンツォの遺作としても語り継がれている一台です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | アプリリア |
| 発売年 | 1937年 |
| 特徴 | 風洞実験に基づく流線型ボディデザインで空気抵抗を低減 |
| 空気抵抗係数(Cd値) | 0.47(第二次大戦前の市販車として高性能) |
| 技術 | ピラーレス・モノコックボディ、完全独立式サスペンション搭載 |
| 生産期間 | 1937年~1949年 |
| 背景 | アウグスタの後継モデル。創業者ヴィンチェンツォの遺作として評価 |
アウレリアは4ドアセダン以外にもクーペモデルやカブリオレなどのボディタイプも展開していた
1950年に誕生したアウレリアはアプリリアの後続モデル
1950年に登場した「アウレリア」のベルリーナ(4ドアセダン)は、先代モデルと同様にフルモノコック構造と観音開き式ドアを採用しています。世界で初めてV型6気筒エンジンを搭載し、デフとギアボックスを一体化させたトランスアクスルを導入した先駆的な一台です。
「アウレリア」からは、4ドアセダン以外にも2ドアクーペモデルやカブリオレといったボディタイプも登場しました。エンジンの改良を重ねて排気量を増やし最高出力を向上させたクーペモデルは、後に「GT」というモデル名が付けられ、グランツーリスモカーの先駆け的な存在として知られています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | アウレリア |
| 発売年 | 1950年 |
| ボディタイプ | 4ドアセダン(ベルリーナ)、2ドアクーペ、カブリオレ |
| 構造・特徴 | フルモノコック構造、観音開き式ドアを採用 |
| エンジン | 世界初のV型6気筒エンジン搭載 |
| トランスミッション | デフとギアボックスを一体化したトランスアクスル |
| クーペモデルの特徴 | 排気量アップで最高出力向上、後に「GT」と命名。グランツーリスモカーの先駆け |
| 背景 | アプリリアの後続モデル |
最後のピュアランチア車「フルビア」はラリー選手権で数々の功績をおさめた
フルビアは1963年から1976年までの約13年間にわたり製造・販売されていた車
フルビアはラムダ以来の伝統である狭角V4気筒エンジンを徹底的に改良し、ダンロップ製の4輪ディスクブレーキを装備するなど、コストを無視した開発者の職人魂が存分に発揮されている最後のピュアランチア車です。
数々のフルビアシリーズの中でも圧倒的な支持を受けているのが、WRCチャンピオンカーとなるなどラリー選手権で輝かしい功績を収めた「フルビアクーペHF」です。1963年から1976年の約13年間にわたり製造・販売されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | フルビア |
| 製造期間 | 1963年~1976年(約13年間) |
| エンジン | ラムダ以来の狭角V4気筒エンジンを徹底改良 |
| 技術 | ダンロップ製4輪ディスクブレーキ装備、開発者の職人魂が反映された設計 |
| 特徴 | 最後のピュアランチア車として高い評価を得る |
| 功績 | WRCチャンピオンカーとなった「フルビアクーペHF」をはじめ、ラリー選手権で多くの勝利 |
「ベータ」はフィアット傘下となってからリリースされた初めての車種で日本市場にも導入された
ベータは、ランチアが1969年に経営難に陥ってフィアットグループに属するようになってからリリースされた初めての車
1972年に登場した「ベータ」は、フルビアの後継モデルにあたる小型車で、フィアット製のエンジンなどを共有して開発・製造の効率化と合理化を図りました。1969年に経営難からフィアットグループ傘下となったランチアが最初に送り出した車です。
1984年まで製造された「ベータ」は、フィアットの高級車部門に属する車として販売されました。日本市場には北米仕様車をベースとした1800クーペや、本国イタリア仕様に近い性能を持つ1300クーペが導入されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | ベータ |
| 発売年 | 1972年 |
| 背景 | 1969年にフィアット傘下となってから初めてリリースされた車種 |
| モデル | フルビアの後継小型車 |
| 特徴 | フィアット製エンジン共有による開発・製造の効率化と合理化 |
| 生産期間 | 1972年~1984年 |
| 日本市場導入 | 北米仕様の1800クーペ、本国仕様に近い1300クーペを導入 |
世界ラリー選手権での勝利を義務付けられた「ストラトス」はコレクターズ心理を刺激するスーパーカー
世界ラリー選手権での勝利を至上命題として1971年に誕生したストラトスは3回の総合優勝を飾るなど華々しい功績を遺した
ストラトスは、過酷なサファリコースにも耐え得るボディをモノコック構造に堅固なスチールフレームで補強することで実現しています。エンジンやトランスミッションを搭載する車体後部は、補修や点検を容易に行いやすい整備性を備えています。
搭載エンジンは、フェラーリ・ディーノ246GT/GTSで使用されていたV6 DOHCエンジンをチューニングし、中低速を重視して出力性能を高めたもので、カムシャフト・クランクシャフト・シリンダーヘッドは専用パーツに変更されました。
ストラトスのボディの特徴は「ショートホイールベース・ワイドトレッド」です。2,180mmというホイールベースは、軽自動車よりも短い数値で、世界ラリー選手権で勝利するために直進安定性よりもコーナリングのしやすい回頭性を重視した設計となっています。
| エンジン | V6 DOHC |
|---|---|
| 総排気量 | 2,418cc |
| 最高出力 | 190ps/7,000rpm |
| 最大トルク | 23kgm/4,000rpm |
| 最高速度 | 230km/h |
| 車両重量 | 980kg |
| ホイールベース | 2,180mm |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | ストラトス |
| 発売年 | 1971年(量産市販化:1974年) |
| 目的 | 世界ラリー選手権での勝利を至上命題とした車 |
| ボディ構造 | モノコック構造に堅固なスチールフレーム補強を施した耐久性の高いボディ |
| 整備性 | エンジン・トランスミッション搭載部は後部に配置し点検や補修が容易 |
| エンジン | フェラーリ・ディーノV6 DOHCエンジンをチューニングし中低速重視に最適化 |
| ボディの特徴 | ショートホイールベース(2,180mm)、ワイドトレッドで回頭性を重視 |
| ラリー性能 | 直進安定性よりコーナリング性能を優先し、3回のWRC総合優勝を達成 |
ストラトスは総生産台数が500台以下の希少価値の高いコレクターズカー
伝説のラリーカー「ストラトス」の総生産台数は492台です。1974年に量産市販化されてから50年以上が経過しているため、現存する車両はさらに少数になっていると見られます。そのため、ストラトスがオークションに出品されれば5,000万円以上で落札されることも珍しくありません。
カスタム・チューンメーカーが「ストラトス」を限定25台で復活させた
伝説のラリーカーであるストラトスが限定25台で復活しました。ストラトスを復活させたのは、顧客から依頼を受けた車をカスタマイズするマニファットゥーラ・アウトモビル・トリノ(MAT)です。
MATが誕生させた「ニューストラトス」の販売価格は日本円で約7,200万円です(2018年当時)。2018年4月より納車が開始された同車のエクステリアの特徴は、アルミフレームが多用されるシャシー、存在感のあるフロントグリル、機能性も備わるテールスポイラーです。
「ニューストラトス」は、フェラーリF430と同系の4.3リッターV8エンジンを搭載し、0‐100km/h加速は3.3秒、最高速は330km/hを実現しています。
| ストラトス | ニューストラトス | |
|---|---|---|
| 全長 | 3,710mm | 4,181mm |
| 全幅 | 1,750mm | 1,971mm |
| 全高 | 1,114mm | 1,240mm |
| ホイールベース | 2,180mm | 2,400mm |
「デルタ」は世界ラリー選手権で史上初の6連覇を達成したランチアを代表する車
フォルクスワーゲンのゴルフを意識して1979年に誕生したデルタ
ランチアの代表的な車「デルタ」はターボエンジンやフルタイム4WD、ブリスターフェンダーを採用するなど進化を続け、世界ラリー選手権で史上初の6連覇(1987年から1992年)を達成しました。
走行性能だけでなく、上品さの伴うインテリアデザインも魅力的な「デルタ」は、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーも獲得しています。デルタシリーズの生産は2014年に終了しており、現在は購入できません。シリーズの中で最も支持されているのは、世界ラリー選手権6連覇を達成した「デルタHFインテグラーレ」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | デルタ |
| 発売年 | 1979年 |
| 特徴 | ターボエンジン、フルタイム4WD、ブリスターフェンダーを採用して進化 |
| ラリー実績 | 世界ラリー選手権史上初の6連覇(1987~1992年)を達成 |
| デザイン | 走行性能と上品さを兼ね備えたインテリアデザイン |
| 受賞歴 | ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー獲得 |
| 生産終了 | 2014年(現在は販売・生産終了) |
| 人気モデル | 世界ラリー選手権6連覇の「デルタHFインテグラーレ」 |
WRC6連覇を実現した「デルタHFインテグラーレ」は当時を知るファン達から愛され続ける車
世界ラリー選手権は1986年にグループBが廃止され、1987年からは年間5,000台以上の生産を行う車両を参加条件とするグループA規定へと移行しました。
「デルタHFインテグラーレ」は、グループA規定に移行した世界ラリー選手権での活躍を目指して開発された車です。初期モデルは2.0L DOHCターボエンジンやフルタイム4WDを搭載していました。
その後、フェンダーをブリスター化、大型インタークーラーを採用、エンジンを16バルブ化するなどの改良を重ねることで、「デルタHFインテグラーレ」は世界ラリー選手権で史上初の6連覇を達成しました。
| 全長 | 3,990mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,695mm |
| 全高 | 1,380mm |
| ホイールベース | 2,475mm |
| エンジン | 直4DOHCターボ |
| 排気量 | 1995cc |
| 最高出力 | 185ps/5,300rpm |
| 最大トルク | 31kgm/3,500rpm |
デルタHFインテグラーレの復刻モデル「デルタ フトゥリスタ」が限定20台生産
アウトモビリアモス(AutomobiliAmos)は、スイスで開催されたグランドバーゼルモーターショー2018で「デルタ フトゥリスタ」を世界初公開しました。同車は「デルタHFインテグラーレ」の復刻モデルにあたり、オリジナル車両をベースにカーボンファイバーやアルミ素材を用いた軽量化と2.0L直列ターボエンジンの搭載が特徴です。販売価格は30万ユーロ、限定20台の生産でした。
ラリー037はNSXにも影響を与えたミッドシップレイアウトを採用する車
ラリー037のエクステリアはラリー目的に開発された車としては群を抜いて完成度が高く、流麗で端正なデザインが採用されているのが特徴
1982年に誕生した「ラリー037」は、スーパーチャージャー付きの2リッターDOHC4気筒エンジンを運転席の後ろ側に縦置きして後輪駆動を行うミッドシップレイアウトを採用した車です。
1982年より世界ラリー選手権はより過酷なコース設定に変わり、参戦する車への条件が厳格化されることが決まっていました。そういった環境の変化に対応するために開発されたのが「ラリー037」です。
ラリー037は1983年の開幕戦モンテカルロラリーで1位と2位を獲得し、その後も第5戦・第6戦・第7戦・第10戦で勝利を収めました。
1990年に発売されたホンダNSXの開発責任者であった上原繁氏は、テレビ番組のインタビューの中で「NSXの開発で最も参考にして、影響された車はランチア ラリー」であるとの発言を残しています。ラリー037は、その後のミッドシップカーに大きな影響を与えました。
| 全長 | 3,915mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,850mm |
| 全高 | 1,245mm |
| ホイールベース | 2,240mm |
| 車両重量 | 1,170kg |
| エンジン | スーパーチャージャー付き水冷直列4気筒DOHC |
| 変速機 | 5速MT |
| 総排気量 | 1,995cc |
| 最高出力 | 205ps/7,000rpm |
| 最高速度 | 220km/h |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | ラリー037 |
| 発売年 | 1982年 |
| エンジン | スーパーチャージャー付き2L DOHC 4気筒エンジン |
| レイアウト | ミッドシップ(運転席後方にエンジン縦置き)、後輪駆動 |
| ラリー成績 | 1983年モンテカルロラリーで1位と2位獲得、第5・6・7・10戦でも勝利 |
| 開発背景 | 世界ラリー選手権の過酷化・規則厳格化に対応するための車 |
| 影響 | ホンダNSX開発責任者が影響を認め、ミッドシップカーに大きな影響を与えた |
| デザイン特徴 | 流麗で端正なラリー専用高完成度ボディ |
「ラリー037」は四輪駆動のラリーカーが活躍していく中、MR方式で最後にタイトルを獲得した車
ラリー037は、1983年の世界ラリー選手権で輝かしい功績を収めました。しかし、その後はアウディ クワトロが4WDシステムを完成させ、プジョーのミッドシップ4WDカー「205ターボ16」が圧倒的なパフォーマンスを発揮するなど、本格的な4WD時代へと突入していきました。
舗装されていないコースも走行するラリー競技では、トラクション性能に優れる4WD車の方が有利です。四輪駆動のラリーカーが主流となっていく中で、ラリー037はミッドシップ・リヤドライブ方式で最後にタイトルを獲得した車として語り継がれています。
ランチア「テーマ」は高級家具メーカーやファッションブランドとコラボした内装が魅力的
1984年に誕生したランチアのテーマは本国イタリアでは紳士のクルマとも呼ばれ2014年に生産を終了するまでに長年親しまれてきた
ガンマの後継モデルとして1984年にデビューした「テーマ」は、イギリスとアイルランドを除くヨーロッパ市場で販売されていました。内装の一部には、イタリアの名門家具メーカーのパーツや、ファッションブランド「エルメネジルド・ゼニア」のアルカンターラを使用するなど、室内空間の雰囲気は洗練されていて、高級感が漂っていました。
紳士のクルマとして親しまれてきた「テーマ」は走行性能にも優れ、空気抵抗係数(Cd値)は0.32と当時のセダンボディとしては最高値を示します。ステーションワゴンタイプが装備するリアウィングは、当時の先端空力技術によって完成したパーツでした。
2014年10月に生産を終了した「テーマ」は、2.0L NAエンジン・2.0Lターボエンジン・ディーゼルエンジンなど様々なタイプのパワートレインを展開していました(現在は販売・生産終了)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | テーマ |
| 発売年 | 1984年 |
| 販売地域 | イギリス・アイルランド除くヨーロッパ市場 |
| 内装 | イタリア名門家具メーカーのパーツ使用、エルメネジルド・ゼニアのアルカンターラ採用 |
| 特徴 | 洗練された室内空間と高級感、紳士のクルマとして親しまれる |
| 空力性能 | 空気抵抗係数(Cd値)0.32、先端空力技術を用いたリアウィング装備(ステーションワゴン) |
| 生産終了 | 2014年10月(現在は販売・生産終了) |
| パワートレイン | 2.0L NAエンジン、2.0Lターボ、ディーゼルエンジンなど多様 |
フェラーリ製の3.0L V8型32バルブエンジンを搭載する「テーマ8.32」はスポーツ走行を楽しめる高級サルーン
ユニークな車名、フェラーリ製のエンジンを搭載していたことから、テーマの中でも特に人気が高いモデルとして知られているのが「テーマ8.32」です。
「テーマ8.32」がフェラーリ308クアトロバルボーレと同一の3.0L V型8気筒32バルブエンジンを搭載できたのは、フェラーリもランチアと同様にフィアットグループに属していたからです。
「テーマ8.32」はエンジン以外でも、星型のホイールデザインや格子状グリルなどフェラーリを意識させるパーツが多数配置されています。実際に間近で見ると、フロントグリルの造形や内装の質感から「フェラーリのDNA」が随所に感じられる仕上がりです。
| 全長 | 4,590mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,750mm |
| 全高 | 1,435mm |
| ホイールベース | 2,660mm |
| 車両重量 | 1,410kg |
| エンジン | 水冷V型8気筒DOHC |
| 総排気量 | 2,926cc |
| 最高出力 | 200ps/6,750rpm |
| 最大トルク | 26.8kg/5,000rpm |
「イプシロン」はカラーコーディネートを楽しめるヴィッツやマーチにも影響を与えたコンパクトカー
ランチアがイプシロンで提言したコンパクトカーの新たな商品戦略はヴィッツやマーチといった日本を代表するコンパクトカーにも影響を与えた
1994年に初代モデルが誕生した「イプシロン」は、12色の標準ボディカラー、100色にも及ぶオプションカラーに、内装色を組み合わせて自分好みにアレンジする「カレイドス」を楽しめるコンパクトカーとして登場しました。ヴィッツやマーチなど日本を代表するコンパクトカーのカラーコーディネートにも影響を与えたとされています。
2002年のフルモデルチェンジで誕生した2代目イプシロンでは、カレイドスは採用されませんでしたが、2トーンカラーが採用され、内装デザインのクオリティが向上しました。
4代目イプシロンがEVとしてデビューし、ランチアが本格復活
2011年にフルモデルチェンジが行われて誕生した3代目イプシロンは、フィアットグループ内での競合を避けるためにボディタイプを3ドアから5ドアハッチバックスタイルへと変更しました。先代モデルが採用してきたビビッドカラーを効果的に用いるのではなく、ピアノブラックを基調とする落ち着いた雰囲気で室内空間を演出したモデルです。
そして2024年2月、ランチアはイタリア・ミラノで4代目となる新型イプシロンを世界初公開しました。ステランティス傘下となったランチアブランドの復活を象徴する一台で、ランチア初のBEV(バッテリーEV)および48Vマイルドハイブリッドの2パワートレインを設定したプレミアム5ドアハッチバックとして登場しています。ボディサイズは全長4,080mm×全幅1,760mm×全高1,440mmで、欧州Bセグメントのプレミアムモデルとして位置づけられています。
EVパワートレインのモーター最高出力は156hp、バッテリー容量51kWhで、WLTP複合サイクルの航続距離は最大403kmを実現しています。さらにスポーツグレード「イプシロンHF」(最高出力240馬力)も設定されており、ランチアがWRCで用いた「HF(ハイ・フィデリティ)」の名称が復活した点もファンにとっては大きな話題です。
なお、4代目イプシロンの日本への正規導入については、現時点では未定です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | イプシロン |
| 初登場 | 1994年(初代モデル) |
| 初代の特徴 | 12色の標準ボディカラーと100色のオプションカラーで内装も組み合わせ可能な「カレイドス」搭載 |
| 2代目モデル | 2002年発売。カレイドスは廃止され2トーンカラーを採用、内装クオリティ向上 |
| 3代目モデル | 2011年発売。5ドアハッチバックに変更、ピアノブラック基調の落ち着いた内装 |
| 4代目モデル | 2024年2月発表。ランチア初のBEV+48Vマイルドハイブリッド。航続最大403km(WLTP) |
| 影響 | ヴィッツやマーチなど日本の代表的コンパクトカーのカラーコーディネートに影響 |
ランチアの最上級セダン「テージス」は大統領専用車やローマ教皇の御料車として採用されていた
2002年に誕生したテージスは前輪駆動方式の大型高級乗用車
テージスは、1998年のパリ・サロンに出展されたコンセプトカー「ディアロゴス」のデザインテーマを受け継ぎ、上品さを伴うモダンさと先鋭的な大胆さが見事に融合したエクステリアを完成させています。
ランチアの最上級セダンは伝統的にイタリア本国で公用車として用いられてきました。テージスは、カッパなどの最上級セダンと同様に、ローマ教皇が乗用する御料車や大統領専用車としても採用されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | テージス |
| 発売年 | 2002年 |
| 車種 | 前輪駆動の大型高級セダン |
| デザインテーマ | 1998年パリ・サロンのコンセプトカー「ディアロゴス」のデザインを継承 |
| 特徴 | 上品でモダンかつ大胆なエクステリアデザイン |
| 用途 | イタリア公用車、ローマ教皇の御料車、大統領専用車として採用 |
| 伝統 | ランチアの最上級セダンとしての地位を継承 |
ランチアは数々の名車を誕生させてきた自動車メーカー「デルタ」や「ストラトス」以外の復活も期待

フィアットグループに属する自動車メーカーであるフェラーリと比較すれば、ランチアの認知度は低いのが現状です。しかし、ステランティス傘下に移行したランチアは、ブランドの本格復活に向けて着実に歩みを進めています。
2024年2月に4代目イプシロンがBEV+ハイブリッドとして登場し、ランチアの新時代が幕を開けました。さらに、2026年にはミドルクラスクロスオーバーの「ガンマ」がSTLAミディアムプラットフォームをベースに復活を予定しており、イタリア南部のメルフィ工場での生産が確認されています。ガンマにはEVとハイブリッドの両パワートレインが設定される見込みです。
そして2028年には「デルタ」の名を冠した新型コンパクトモデルの投入が計画されています。ただし、ステランティスの戦略変更の影響でデルタ復活の詳細は現時点では流動的な部分もあり、最新情報の確認が必要です。ランチアはイプシロンHFに続き、ガンマとデルタにも「HFインテグラーレ」の名称を冠する高性能グレードを設ける計画を公式に発表しており、WRCで培った「HF」の血統がEVの時代に蘇る可能性に注目が集まっています。
創業者ヴィンチェンツォが掲げた「自由に考え、自由に創る」という理念のもとで開発されてきたランチア車が、電動化という新たな時代を迎えてどのように進化していくのか、今後の動向が注目されます。






















