トヨタe-Palette Concept

e-Palette(イーパレット)徹底解説 価格・スペック・自動運転対応から補助金まで

トヨタのe-Paletteが2025年9月に市販開始。17名乗り・航続距離約250km・受注生産で2,900万円から。自動化レベル2で現在お台場エリアを実際に運行中、2027年度にはレベル4搭載車の投入を目指すe-Paletteの全スペックと活用事例を解説します。

e-Palette(イーパレット)徹底解説 価格・スペック・自動運転対応から補助金まで

トヨタe-Paletteとは——2025年9月発売の次世代モビリティEV

「e-Palette(イーパレット)」は、トヨタが2018年のCES(国際電子技術見本市)でコンセプトを初公開し、東京2020オリンピック・パラリンピックでの選手村内輸送を経て、2025年9月15日に市販車として正式発売したバッテリーEVです。シャトルバス・移動型店舗・サービス拠点など、1台で複数の用途に対応できるマルチユース設計が最大の特徴で、乗用車でもバスでもない、新しいカテゴリーのモビリティといえます。

受注生産で販売価格は2,900万円(消費税込み)から。金額だけを見ると高額ですが、環境省「商用車等の電動化促進事業」の補助対象モデルとなっており、補助金1,583万5,000円が適用可能です。実質負担は約1,300万円台となる計算で、事業者が路線バスや送迎車を代替する用途であれば、コスト面での現実性は高まります。

e-Palette(イーパレット)が2025年9月15日発売 バッテリーEVの次世代モビリティ

  • 2025年市販化されたe-Paletteのエクステリア移動だけでなく様々なサービスの活用が期待されるe-Palette
  • e-Paletteの座席(最大17名乗車可能)e-Paletteは最大17名乗車可能
  • e-Paletteのコックピット先進的なコックピット
  • e-Paletteのデジタルサイネージデジタルサイネージは用途に応じた表示が可能

市販版e-Paletteは全長4,950mm・全幅2,080mm・全高2,650mmで、定員は17名(座席4名+立席12名+運転サービス士1名)。最高車速80km/h・航続距離約250km・バッテリー容量72.82kWhというスペックは、市街地での循環運行や施設内シャトルに十分対応できる水準です。急速充電(約40分)と普通充電(約12時間)の両対応で、非常時は停車したまま外部給電できるため、災害時の電源確保にも活用できます。

自動運転については、現時点ではレベル2相当の自動化システムに対応。トヨタは2027年度にレベル4準拠の自動運転システム搭載車の市場導入を目指しており、将来的にはドライバーなしでの完全自律運行を視野に入れています。実際の使われ方としては、2025年10月からお台場・青海エリア(ゆりかもめ台場駅からTOYOTA ARENA TOKYOや有明エリアをつなぐルート)で無料の運行サービスが始まっており、日常的な移動手段としての社会実装が動き出しています。

トヨタ e-Palette(イーパレット)スペック
全長 4,950mm
全幅 2,080mm
全高 2,650mm
室内長 2,865mm
室内幅 1,780mm
室内高 2,135mm
車両重量 2,950kg
フロア高 370mm
ドア開口幅 1,280mm
開口高 1,900mm
最小回転半径 6.5m
最高車速 80km/h
航続距離 約250km
バッテリー容量 72.82kWh
バッテリー種類 リチウムイオン電池
モーター種類 交流同期電動機
モーター最高出力 150kW
モーター最大トルク 266N・m
充電時間 急速:約40分/普通:約12時間
乗車定員 17名
販売価格 2,900万円(消費税込み)〜
補助金 環境省「商用車等の電動化促進事業」適用で1,583万5,000円

e-Paletteのエクステリア——前後対称デザインと歩行者への配慮

e-Palette(東京2020仕様)のエクステリア写真は東京2020オリンピック・パラリンピック仕様のe-Palette(市販版とはボディサイズが異なります)

写真は東京2020オリンピック・パラリンピックで使用されたe-Paletter(全長5,255mm・全幅2,065mm・全高2,760mm)です。市販版は全長4,950mmとやや短く、実際に間近で見ると角張ったシルエットながら圧迫感は少なく、停留所に並ぶ人々と自然に溶け込む雰囲気があります。

ヘッドライトとリアライトで車両状態を表示するe-Paletteの外観

大きく開くスライドドアとフロア高370mmの低床設計は、車いすユーザーの乗降に実用的な配慮です。フロア高370mmはミニバンの一般的な乗降ステップ(450〜500mm前後)よりも明確に低く、高齢者や荷物を持った利用者にとっても乗り降りしやすい水準といえます。また、「走行中」「停車中」「充電中」の状態をヘッドライト・リアライトの点灯パターンで周囲に伝える機能は、歩行者が車の動きを読みやすくするための工夫で、自動運転車両の社会実装を見据えた設計です。

e-Palette エクステリアの特徴
デザイン 前後対称の箱型シルエット。停留所に馴染む実用的な外観
乗降性 フロア高370mm、大型スライドドア(開口幅1,280mm・開口高1,900mm)で車いすユーザーにも対応
歩行者配慮機能 走行中・停車中・充電中の状態をヘッドライト・リアライトで表示し、周囲に車両状況を伝達

e-Paletteのインテリア——「Mobility for All」を体現した誰でも使いやすい空間

e-Palette(東京2020仕様)のインテリア。色弱者にも配慮した明度差のあるカラー設計e-Palette(東京2020仕様)のインテリア

室内は「Mobility for All(すべての人に移動の自由を)」をコンセプトとし、色弱の方でも識別しやすいよう内装カラーに明度差を設けています。シートや手すりもさまざまな体格の利用者を想定した設計です。走行中は周囲の障害物を常時検知し、異常を検知した場合は緊急停止ブレーキが自動で作動します。

市販版では、デジタルサイネージ(外観側面+室内)と5スピーカー(車内+車外放送機能付き)がセットのメーカーオプションとして設定されています。サイネージの内容は事業者が自ら編集できるソフトも付属するため、路線情報・商品紹介・観光案内など用途に合わせた表示を柔軟に切り替えられます。

e-Palette インテリアの特徴
アクセシビリティ 色弱者に配慮した明度差のある内装カラー。多様な体格に対応したシート・手すり設計
安全機能 障害物の常時検知、異常時の緊急停止ブレーキ
デジタルサイネージ 外観側面+室内に設置(メーカーオプション)。事業者が内容を自由に編集可能
給電機能 急速・普通充電に対応、停車状態での外部給電が可能(災害時の電源確保に活用可)

e-Palette Conceptの誕生——CES2018での初公開とパートナー戦略

トヨタは2018年1月、米ラスベガス開催のCES2018で「e-Palette Concept」を世界初公開しました。当時の豊田章男社長(現会長)は「これまでのクルマの概念を超え、お客さまにサービスを含めた新たな価値が提供できる未来のモビリティ社会実現に向けた大きな一歩」とコメントし、モビリティサービス企業への転換を宣言する場となりました。

CES2018に展示されたコンセプトモデルは全長4,800mm・全幅2,000mm・全高2,250mmで、市販版より一回り小さいサイズでした。この段階では「将来は全長7mクラスの大型車両も展開する」という構想も示されていましたが、市販化にあたっては需要の多い中型サイズ(全長4,950mm)に集約されています。

e-Palette Conceptの初期パートナー企業——Amazon・Uber・Pizza Hutが参加

e-Palette Conceptの内装イメージ(CES2018展示モデル)

トヨタがe-Palette Conceptで重視したのが、モビリティサービス事業者との「アライアンス」構築です。CES2018発表時に名を連ねたパートナー企業は通販のAmazon、ピザデリバリーのPizza Hut、配車サービスのUber、カーシェアリングのDidi Chuxing(ディディ・チューシン)など多岐にわたり、1台の車両を複数のビジネスシーンで活用できることを世界に示しました。技術パートナーにはマツダ・Didi Chuxing・Uberが加わっています。

トヨタはこれらのパートナーに対し、車両制御インターフェース(VCI)を開示することで、各社が独自の自動運転システム(ADK)を搭載・開発しやすい環境を提供しています。「プラットフォームを公開してパートナーを増やす」というこの戦略は、AndroidがスマートフォンOSを開放してエコシステムを広げた手法と重なります。

e-Palette Conceptの初期パートナー企業(CES2018時点)
分野 企業名
EC・通販 Amazon
カーシェアリング Didi Chuxing(ディディ・チューシン)
フードデリバリー Pizza Hut
配車サービス Uber
技術パートナー マツダ、Didi Chuxing、Uber

e-Palette Conceptが実現する多様なサービスシーン

e-Palette Conceptと買い物をする人たちのイメージCG

e-Paletteが特徴的なのは「1台のクルマを時間帯・用途によって使い分けられる」点です。たとえば朝・夕は通勤シャトル、昼間は充電しながら移動型店舗として運用——という柔軟な運用は、路線バスや送迎車では難しかった発想です。以下はコンセプト段階で示された主な活用例です。

REAL E-COMMERCE(リアル電子商取引)

REAL E-COMMERCEで使用されるe-Palette Conceptのイメージ

REAL E-COMMERCEのオンラインショップと連動したe-Paletteのイメージ

オンラインショップでユーザーが興味を示した商品を積んだショップカーが自宅や指定場所へ向かうサービスです。決済をEコマースで事前に済ませておけば、気に入った商品をその場で受け取れます。「試着してから買う」という体験をEC上で再現するイメージです。

FAB LAB(移動型製造ラボ)

FAB LABで使用されるe-Palette Conceptのイメージ

室内に加工機械を搭載した移動型ファブリケーションラボとして機能させるユースケースです。オーダーメイドの商品を現地で加工し、その場で手渡すことができます。

モバイルホテル

MOBILE HOTELで使用されるe-Palette Conceptのイメージ

ベッドを備えた室内でくつろぎながら目的地へ移動するモビリティホテルのコンセプトです。夜行での都市間移動や観光地への移動中に宿泊費と移動費を一体化させる発想で、自動運転レベル4実現後の活用イメージとして位置づけられています。

移動型フードデリバリー(ピザ屋仕様)

ピザ屋仕様のe-Palette Conceptのイメージ。ピザ窯を搭載して焼きたてを届ける

室内にピザ窯を搭載し、移動しながら調理・デリバリーを行うフードトラックの進化版です。Pizza Hutがパートナーとして参加していた理由がここにあり、「焼きたてを届ける」という体験価値に着目したコンセプトです。

1台で複数の用途に対応——時間帯別の活用例

街を走るe-Palette Conceptのイメージ

病院へ向かう高齢者を乗せたe-Palette Conceptのイメージ

e-Paletteの多用途性が最も活きるのは、限られた車両数で最大限の稼働率を確保したい事業者です。朝・夕の通勤時間帯はシャトルバス、昼間は医療施設への送迎バスや移動型店舗——と1台の車両が時間帯ごとに異なる役割を担えます。現在お台場・有明エリアで運行中の実証サービスでも、こうした柔軟な運用が試されています。

e-Paletteの時間帯別活用例(イメージ)
時間帯 用途 概要
朝・夕 ライドシェアリング・通勤シャトル 同方向の通勤者を乗せて移動
ホスピタルシャトル・移動型店舗 病院送迎や充電しながらの店舗営業
エンターテインメント・フードデリバリー 特定の場所・シーンに合わせたサービス提供

e-Paletteの車両制御インターフェースと自動運転対応のしくみ

e-Palette Conceptの車両制御インターフェース(VCI)の構成を説明したイメージ

e-Paletteは、トヨタが開発した「VCI(Vehicle Control Interface:車両制御インターフェース)」を外部の自動運転キット開発会社に開示しています。開発会社はVCI上に公開されたAPIから車両の状態データや制御情報を取得し、独自のADK(Automated Driving Kit:自動運転システム一式)をルーフトップ等に搭載する形で自動運転に対応させます。

なお、トヨタ公式情報によれば、現行市販版の自動運転対応は基本的なシステムにティアフォーの「Autoware」を採用しています。この構造は「トヨタが車体を提供し、ソフトウェアは第三者が組み合わせる」というオープンプラットフォーム思想で、参入する開発会社が増えるほど、車両の使われ方の幅も広がる設計です。

セキュリティ面では、自動運転キットからの指令を一定のルールで検証するガーディアン機能を内蔵し、OTA(Over the Air)でソフトウェアを随時更新する環境も整えています。

e-Paletteコンセプトのイメージ

e-Paletteの車両制御・自動運転システムの構成
VCI(車両制御インターフェース) トヨタが外部開発会社に公開。APIで車両状態や制御データを取得可能
ADK(自動運転システム) 開発会社が独自に開発・搭載。現行版はティアフォーの「Autoware」を採用
ガーディアン機能 自動運転キットからの指令を安全ルールに基づき検証し、不正制御を排除
OTA更新 ソフトウェアを常時最新の状態に保てる無線更新環境を整備
自動化レベル 現行:レベル2相当対応。2027年度にレベル4準拠搭載車の市場導入を目指す

e-Paletteの車両データ管理——DCMとTBDC

e-Palette ConceptのDCM(データコミュニケーションモジュール)によるビッグデータ管理の仕組みを説明したイメージ

e-Paletteには、走行中の車両データをリアルタイムで収集・送信するDCM(データコミュニケーションモジュール)が搭載されています。収集されたデータはグローバル通信プラットフォームを経由してTBDC(TOYOTA Big Data Center)に蓄積され、車両メンテナンスの予測・自動運転システムの改善・保険や各種ファイナンスサービスとの連携に活用される設計です。

車両データが蓄積されるほど、整備のタイミングや走行パターンの分析精度が上がる仕組みであり、特に複数台を事業運営する法人にとっては車両管理の効率化につながります。

e-Paletteのデータ管理システム
DCM(データコミュニケーションモジュール) 車両に搭載し、走行データをリアルタイムで収集・送信
TBDC(TOYOTA Big Data Center) グローバル通信プラットフォーム経由でデータを集約・蓄積
活用用途 車両メンテナンス予測、自動運転システム改善、保険・ファイナンスサービス連携

e-Paletteの物流業界への活用と課題

物流用途のe-Palette Conceptのイメージ。大型から小型まで連携した配送システム

e-Paletteが当初から想定する活用シーンのひとつが物流です。大型のe-Paletteで集配基地まで荷物を運び、中型・小型のEVへ積み替えて各家庭へ届けるという「ラストワンマイル分散配送」モデルは、慢性的なドライバー不足と長時間労働が課題となっている運送業界にとって現実的なソリューションとなり得ます。

ただし、物流用途での実用化にはレベル4自動運転の認証取得が前提条件であり、現行のレベル2相当では乗務員の配置が必要です。2027年度のレベル4搭載車投入が実現するかどうかが、物流分野への本格普及を左右します。

e-Paletteの物流活用シナリオと現状の課題
想定する活用シーン 大型で集配基地まで輸送→中・小型EVに積み替えて各家庭へ配送
解決が期待される課題 ドライバー不足・長時間労働(物流2024年問題)への対応
実用化の条件 レベル4自動運転の型式認証取得(2027年度を目標)

e-Paletteのサービス事業者対象は物流・宅配にとどまらず、スケルトン素材を活用した”見える”移動店舗なども想定されています。低床・箱型の室内設計は、内装のカスタマイズ自由度が高く、架装次第でスポーツ観戦車・エンターテインメント車・観光周遊バスなど多様なサービス形態に対応できます。

飲食業など様々な業務で使用されるe-Palette Conceptのイメージ