レクサスLF-SAのモデルチェンジ

レクサスLF-SAの市販化は2026年も未発表 全長3450mmの小さな高級車とレクサス最小LBXの現在地

レクサスLF-SAは市販化されるのか。GA-B採用という予想は的中した一方、1L直3エンジンの見立ては外れ、レクサス最小の座は全長4,190mmのLBXが担いました。比較対象だったCTの生産終了もあわせて整理します。

レクサスLF-SAの市販化は2026年も未発表 全長3450mmの小さな高級車とレクサス最小LBXの現在地

レクサスLF-SAの市販化は2026年7月時点でも未発表 レクサス最小モデルの座はLBXが担っている

2015年3月に開催された「ジュネーブモーターショー2015」で披露された、レクサスブランドからは初となるウルトラコンパクトクラスのコンセプトカー「Lexus LF-SA」。全長3,450mmという軽自動車に迫るサイズの高級車という提案は、当時から市販化を望む声を集めてきました。

しかし結論から書くと、LF-SAは公開から11年が経った2026年7月時点でも市販化が発表されていません。レクサスが実際に投入したブランド最小モデルは、2023年12月に発売されたコンパクトSUV「LBX」で、こちらは全長4,190mmとLF-SAより大幅に大きい一台です。LF-SAが提示した「軽自動車サイズの高級車」という領域は、現在も空席のままになっています。

ここではまずLF-SAをめぐる現在の状況を整理したうえで、コンセプトモデルの内外装の特徴や搭載が予想されていたパワートレインについて、当時の見立てがどうなったかも含めて紹介します。

LF-SAは市販化されないまま11年 レクサス最小モデルはLBXが2023年12月に登場

LF-SAは、企画からモデル製作までをフランス・ニースに拠点を置くトヨタの欧州デザイン拠点ED2(EDスクエア)が手掛けたデザインスタディです。2+2シーターという割り切ったパッケージで、レクサスにはそれまで存在しなかったサイズ帯を提案しました。レクサスからは市販化の可否について公式な発表がなく、中止のアナウンスもないまま現在に至っています。

一方、レクサス最小モデルという肩書きは別のクルマが引き受けました。2023年6月5日にイタリア・ミラノで世界初公開され、同年11月9日に日本仕様が発表、12月下旬に発売されたコンパクトSUV「LBX」です。価格は460万円からでスタートし、ボディサイズは全長4,190mm×全幅1,825mm×全高1,545mm、ホイールベース2,580mm。従来レクサス最小だったUX(全長4,495mm)より全長で305mm短く、レクサスのラインアップで最もコンパクトなモデルとなりました。

興味深いのは、本記事が予想していた「GA-Bプラットフォームの採用」が実際に的中している点です。LBXはヤリスクロスやアクアにも用いられるコンパクトカー向けTNGAプラットフォーム「GA-B」に専用の改良を加えて採用しており、ボディ剛性の強化と軽量化によって操縦安定性と乗り心地を両立させています。最小回転半径5.2mという取り回しの良さも、小さな高級車という発想の延長線上にあります。

LBXはその後もラインアップを広げました。2024年8月には1.6L直列3気筒ターボを積む高性能版「MORIZO RR」が加わり、同年10月31日の一部改良では新グレード「ELEGANT」が420万円からと、レクサスで最も手の届きやすい価格帯に設定されています。小さなレクサスに確かな需要があることは、LBXの好調によって証明されたと言えます。

それでも、LF-SAが描いた全長3.4m級の領域には誰も踏み込んでいません。LBXとLF-SAの間には全長で740mmもの差があり、両者は同じ「小さなレクサス」でもまったく別の提案です。日産サクラやホンダN-ONE e:のように300万円を超える高級志向の軽EVが定着してきた市場環境を踏まえれば、LF-SAが示した方向性は当時よりむしろ現実味を帯びているという見方もできます。

ただし、レクサスの電動化は上位・中核クラスから進んでいるのが実情です。2023年10月のジャパンモビリティショーで公開された次世代BEV「LF-ZC」は2026年の市場導入が予告され、2026年5月にはブランド初の3列シートBEV「TZ」が世界初公開されました。リソースの向く先を見る限り、超小型プレミアムへの再挑戦は当面のテーマになっていないとみられます。LF-SAの市販化が実現するとすれば、次世代BEV技術が下のクラスまで降りてきた後になる可能性が高いでしょう。

比較対象だったレクサスCTは2022年10月に生産終了

本記事はもともとLF-SAのサイズをレクサスCTと比べていましたが、その比較相手であるCTは2022年10月をもって生産を終了しています。2022年3月3日に生産終了が発表され、同日には最後の特別仕様車“Cherished Touring”が4,223,000円で設定されました。

CTは2011年にレクサス初のハイブリッド専用ハッチバックとして登場し、フルモデルチェンジを受けないまま11年9か月にわたって販売され、約65の国と地域で累計約38万台を売り上げています。ブランドのエントリーモデルという役割は、その後SUVのUX、そしてLBXへと引き継がれました。現在、CTを新車で買うことはできません。

レクサスLF-SAが提案したのはレクサスで最も小さく最も排気量の少ないコンパクトカー

正式な車名は公表されないまま今日に至っていますが、もしLF-SAの市販化モデルが発売されていれば、レクサスで最もコンパクトな車になっていたことは間違いありません。
ここからは、レクサス「LF-SA」のコンセプトモデルの内外装の特徴や、当時予想されていたパワートレインについて、その後の答え合わせも交えて紹介します。

レクサスLF-SAはウルトラコンパクトSUVで新開発プラットフォーム「GA-B」を採用する可能性が高いとみられていた

LF-SAが市販化された場合は、欧州で販売するアイゴやアイゴX、ヤリスなどにも採用する新TNGAプラットフォームの「GA-Bプラットフォーム」をベースにしたウルトラコンパクトSUVになる、というのが当時の見立てでした。

レクサスLF-SA

レクサスの新たなプラットフォーム「GA-B」を採用する事でLF-SAの市販化モデルは、低重心の走りと高い空力性能を実現させて走る楽しみを追求して、ねじり剛性を強化して安全性と走行性能を高い次元で両立するミニSUVになる、と考えていました。

この読みは、対象こそ変わったものの方向としては当たりました。レクサスが実際に投入した最小モデルLBXは、まさにGA-Bプラットフォームに専用開発を施して採用しています。レクサスがブランド最小のモデルを仕立てる際、コンパクトカー向けTNGAを土台に選ぶという判断そのものは、当時の予想どおりだったわけです。

LF-SAのコンセプトモデルのエクステリアはコンパクトながらボディに大胆さがあって力強い

LF-SAのコンセプトモデルのボディサイズは、レクサスのコンパクトクロスオーバーSUV「UX」よりも大幅に小さくなります。そのエクステリアの特徴をコンセプトカーから読み解きます。

レクサスLF-SAのフロントマスクLF-SAのフロントマスク スピンドルグリルは中央に集約する蜘蛛の巣のような新しいデザイン

LF-SAのフロントビューは、エンブレムを起点として放射線状にスピンドルグリルを形成させて、フェンダーを立体的とする事でコンパクトな車体をより華やかにして、迫力をアップさせています。L字のポジションランプやテールランプと合わせ、レクサスの記号性を凝縮した造形です。

サイドビューはL字状のコンビネーションランプや、大胆に削り込まれたリヤホイールアーチを連ねてメリハリを付け、ダイナミックさと力強さを表現しています。

レクサスLF-SAのリヤビューLF-SAのリヤビュー 後ろが低くなるクーペスタイルが特徴的

同車のリヤビューには、クーペのようなスタイリッシュな湾曲が与えられ、彫りの深い立体加工によって見る角度で印象が変化する深みのあるデザインが採用されています

もっとも、レクサスのフロントまわりの表現はその後大きく変わりました。放射状のグリルを突き詰める方向ではなく、グリルの枠そのものを消してボディと一体化させる「スピンドルボディ」へと移行しており、LBXもその流れを汲んでいます。LF-SAの蜘蛛の巣状のスピンドルグリルは、結果的にひとつの分岐点を示す試作にとどまりました。

LF-SAのインテリアはドライバーの冒険心を刺激するエッジの効いたパーツを多用

ジュネーブモーターショー2015で披露されたコンセプトカー「LF-SA」の名称はLexus Future Small Adventurer(未来の小さな冒険者)の頭文字をとったものです。

レクサス「LF-SA」は、自動化の進む未来の車社会においてもドライバーに車を運転する歓びを積極的に与えたいとの思いを込めてネーミングされました。

インテリアにも、ドライバーの冒険心を刺激するようなエッジの効いたパーツが多用されています。

レクサスLF-SAのダッシュボードレクサスのデザインフィロソフィーが活かされるダッシュボードやドアトリム

ダッシュボードやドアトリム等のパーツは、先鋭(Leading-edge)・精妙(Finesse)・美しさを追求するレクサスのデザインフィロソフィーを全面的に採用した都会的なものに仕上げられています。

レクサスLF-SAのコックピットLF-SAのコックピット

LF-SAのコックピットは、自動化が加速する時代の流れの中においてもドライバー自らが運転する歓びを堪能できるように意識して仕上げられています。運転中の爽快感に関わるデジタルメーターやヘッドアップディスプレイを採用し、ドライバーを主役に据えた室内空間が提案されました。

レクサスLF-SAの内装LF-SAは最適なドライブポジションに設定できる仕組みがある

LF-SAの運転席は固定され、ステアリングホイールやペダルを調整する事でオーナーの体型に合った最適なドライビングポジションへと設定する仕組みです。一方の助手席はスライド可動式として、リヤシートへの乗りやすさを確保しています。

限られた室内空間を有効に使い、フロントシートを主役としながらもリヤシートの居住性にも配慮したこのバランス配置は、2+2シーターという割り切りがあってこそ成立するものでした。運転席を固定してペダル側を動かす発想は量産車では衝突安全や法規対応のハードルが高く、この構造はその後のレクサス市販車には採用されていません。LBXのコックピットは、手綱を意味する「Tazuna(タズナ)コンセプト」に基づき、12.3インチのフル液晶メーターと9.8インチのタッチディスプレイでドライバーへ情報を集約する方向でまとめられています。

LF-SAが搭載を想定されていたのはレクサスブランドで最も排気量の少ないエンジン

コンセプトカー「レクサスLF-SA」が市販化された場合に搭載される可能性が高いと見ていたのは1L直列3気筒エンジンでした。

2.0Lクラス以上の排気量を誇るハイパワーなエンジンを搭載するイメージの強いレクサスのブランド力を保持するために、1L直列3気筒であっても排気量を抑えながら高出力を実現するダウンサイジングされた高性能エンジンになるだろう、という読みです。

この予想は外れました。レクサスで最も排気量の少ないエンジンの座に就いたのは、LBXが搭載する1.5L直列3気筒(最高出力91PS、最大トルク120N・m)をベースとしたハイブリッドシステムです。高性能版のLBX MORIZO RRでも1.6L直列3気筒ターボのG16E-GTSが選ばれており、1Lクラスまで落とし込む選択はされませんでした。

背景を考えれば理由は見えてきます。レクサスが求める静粛性と動力性能、そして衝突安全に必要な車体をまかなううえで、1Lでは電動アシストを前提にしても厳しい。加えて排出ガス規制と燃費規制の要求水準が上がり続けたこの10年で、ダウンサイジング一辺倒だった潮流はハイブリッド重視へと切り替わりました。LF-SAのサイズなら1Lという当時の発想は、いま振り返ると規制と市場の変化に追い越された格好です。

LF-SAはレクサス最小モデルのLBXよりもさらに一回り以上小さいサイズ

レクサスがウルトラコンパクトクラスとして分類したLF-SAのボディサイズは、現在レクサス最小モデルであるLBXと比べても、全長で740mmも短くなります。

仮にLF-SAの市販化モデルが発売されていれば、レクサスにとって圧倒的に小さい車となっていたはずです。全幅1,700mmは日本の5ナンバー枠の上限にあたり、全長3,450mmは軽自動車に迫る水準。狭い住宅街や都市部の駐車場事情を考えれば、いま提案されても十分に通用するパッケージだと言えます。

LF-SAとレクサス最小モデルのボディサイズ比較
LF-SA(コンセプト) LBX CT 200h(参考)
全長 3,450mm 4,190mm 4,355mm
全幅 1,700mm 1,825mm 1,765mm
全高 1,430mm 1,545mm 1,450mm
ホイールベース 2,580mm 2,600mm
パワートレイン 未公表 1.5L直3ハイブリッド 1.8Lハイブリッド
状況 市販化は未発表 2023年12月発売 2022年10月生産終了

LF-SAは市販化されないまま11年が過ぎましたが、コンセプトそのものが古びたわけではありません。LBXが示した「サイズのヒエラルキーを超えた高級車」という価値観が受け入れられたいま、その先にある超小型プレミアムへレクサスが再び踏み出すのかどうかは、引き続き注目に値するテーマです。