FFとFRの違いは?エンジンがどこにあるのか・どの車輪が動くのかで決まる
車の駆動方式にはFFやFRという呼び方があるが一体なんなのか?「FRは車の基本」「FFのほうが燃費がいい」と言われていて、オーナーによって好みが分かれる。FFやFRのほかにも、MRやRR、そして4WDがあります。駆動方式のそれぞれの違いや特徴、代表的な車種を紹介。
自分の乗っている車はどんな駆動方式なのかを知ることで、タイヤチェーンをつける車輪はどれなのか分かったり、どんな風に走れば快適に走行できるのかなどを知ることができる。FFやFRなどの駆動方式の違いをチェック。
FFとFRの違いはアクセルを踏んだときに前輪が動くのがFF車で後輪が動くのがFR車と呼ばれていてどちらもメリット・デメリットがある
FFとFRの違いはアクセルを踏んだときに動く車輪に違いがあります。FFとFRはどちらもエンジンは同じくフロントに設置してありますが、アクセルを踏んだときに前輪が動くのがFFで、後輪が動くのがFRです。
2019年では、軽自動車・コンパクトカー・ミニバン・SUV・商用車のほとんどがFF方式で、スポーツカーやセダンと一部のSUVと商用車にFR方式が採用されています。比率ではFF車が9割、FR車が1割です。
FFとFRの決定的な違い
- アクセルを踏んだ時に「前輪」が回るのがFF車
- アクセルを踏んだ時に「後輪」が回るのがFR車
FF車のメリットは操縦安定性が良いこと・デメリットはアンダーステア
FF方式は軽自動車からミニバン、コンパクトカーやSUVなどほとんどの車種に採用されている駆動方式
FF車の特徴・メリット・デメリット
- 雪道でスタックしにくい
- 雨・凍結路面などの滑りやすい路面でスピンしにくい
- スピンしにくいが限界を超えて車が回り始めると立て直しにくい
- 前輪の摩耗が激しいためタイヤ交換時にはローテーションが必要
- 前輪が曲がる・進む役割を同時に担っているためアンダーステアの傾向がある
前輪が動く・後輪が動くというたったそれだけの違いのように思えますが、実は走行面においてもかなり違います。FF車は前輪だけで舵取りと駆動の2つの役割を担っていて、曲がりながら車を引っ張っていくことができるため、滑りやすい路面で大雑把なハンドル操作をしてもスピンしにくく、車の操作に自信がない人にとっても安心感があります。
しかし、スピンまでの限界が高いことがメリットのFF車ですが、逆に限界を超えてスピンしはじめると立て直しが難しく、ブレーキで大きく減速して態勢を立て直すか、それが無理であれば運を天に任せるほかないこともしばしばです。自車にとってはもちろん、後続車や対向車、歩行者にとっても大変危険なため、特に凍結路面や滑りやすい路面では、無理せず慎重な運転が求められます。
また、前輪が2つの役割を担っているということはFRに比べて前輪が減りやすいことになります。タイヤ交換のときに再び同じ場所へ取りつけると前輪だけ摩耗が激しくなり、後輪はまだ使えるのに交換しなければならない事態になるため、前後左右を入れ替えるローテーションは必須です。
ほかにも、FF車は前輪が進む・曲がる役割を担っているため曲がりながらアクセルを踏み込むと、曲がろうとする力と進もうとする力が同時に前輪に働き、外側に膨らむ(アンダーステア)傾向があります。曲がるときはスピードを落としてアクセルオフを心がけてください。
FF車でのコーナリングのポイント
- スローイン・ファストアウトが大原則
- コーナー手前で減速しフロントホイールに荷重をかけると同時にステアリングを切り始める
- アクセルを出来る限り一定に保つ
- アンダーステアを感じたらわずかにアクセルを緩めフロントホイールに荷重かけると同時にステアリングをほんの少し切り増しする
- コーナー出口が見えたらステアリングをゆっくり戻すと同時に加速を始める
FR車のメリットはコントロール性が良いことでデメリットはオーバーステア
FR駆動の車は前輪が舵取り・後輪が進む役割に分かれているためコントロールがしやすい
FR車の特徴・メリット・デメリット
- ステアリング特性はオーバーステアの傾向
- 車が素直に動いてくれるため走る楽しみがある
- 前輪は舵取り、後輪は進む役割を担いよく曲がってくれる
- 曲がりやすいため滑りやすい路面ではスリップ・スピンしやすい
- スピンまでの限界が早いがコントロールもしやすいため立て直しやすい
グリップしやすい乾いた路面では、曲がりながらも後輪が力強く押してくれるためグイグイ進むことができ、素直に曲がってくれます。車を滑らせて曲がる技術のドリフトがしやすいのも曲がるタイヤと進むタイヤの役割が分かれているFR車です。車が自分の思い通りに動いてくれるため走っていて楽しいのもFR駆動です。
その反面、滑りやすい凍結路面ではアクセルをグッと踏み込むとお尻(リヤ)を振りやすく、コントロールを誤るとスピンしやすいデメリットがあります。ですが、前輪は舵取りだけに集中できるため軽く滑ったときの立て直しもしやすいです。
また、雪道に弱いのはどちらかというとFR車で、凍結路面からの発進では少しの登り坂でも進めなくなることもあります。FF車は動こうとする前輪の上に重たいエンジンがあるため駆動輪は路面に押さえつけられ凍結路面でもグリップが効きますが、FR車の後輪の上には後部座席やトランクでエンジンのように押さえつけるものがないため、凍結路面では駆動輪のグリップが効きにくいため登れずにスタックしやすいのです。
FR車はオーバーステアの傾向があり、アクセルを踏みながら曲がろうとするとリヤが滑っていき思ったより内側に車が向く特性があります。この時にアクセルを離すとハンドルを切っている方向に向かってグッと車が動くため、車は内側に切っていればスピン直前の状態に、逆側に切っていればお尻を振る状態になります。逆にハンドルを切ってカウンターステアを当てて態勢を立て直しましょう。曲がりやすいFR車でもスピードの出しすぎに注意です。
FR車でのコーナリングのポイント
- FF車と同様スローイン・ファストアウトが原則
- コーナー手前で減速しフロントホイールに荷重をかけると同時にステアリングを切り始める
- アクセルを出来る限り一定に保つ
- オーバーステアを感じたらステアリングをわずかに切り戻すと同時にゆっくりとアクセルを戻す
- コーナー出口が見えたらFF車より早めのタイミングでアクセルを開け、後輪のトラクションを意識しつつ加速を始める
FFやFRは駆動方式とも呼ばれていてMRやRRそして4WDがある
駆動方式の違いは走行性能だけではなく、車のデザインにも影響を与える
車の駆動方式は「エンジンがある場所」「アクセルを踏んで動く車輪は前後どちらか」で決まります。駆動方式には5つの種類があり、それぞれFFやMRと呼ばれています。
車の構造によって違う5つの駆動方式
- FF(フロントエンジン・フロントドライブ)
- FR(フロントエンジン・リヤドライブ)
- MR(ミッドシップエンジン・リヤドライブ)
- RR(リヤエンジン・リヤドライブ)
- 4WD(四輪駆動)
現在販売されている車のほとんどはFFレイアウトで、高級車など一部の車種にFRレイアウトを採用、MRレイアウトもS660など極一部の車種で、RRレイアウトはポルシェ911やルノーのトゥインゴなどが販売されています。
そして4WDですが、これも細かく分けられていてスタンバイ方式・パートタイム方式などがあり、車種によってFFベースの4WDやFRベースの4WDがあります。
ほかにも、駆動方式は車のデザインにも影響を与えていて、FRは車体中央に通るプロペラシャフトを使って後輪を動かしていますが、FF方式はエンジンからミッションまで全てフロントに詰め込まれているため、ボンネットが大きくなる傾向にあります。
現代の車はほぼFFレイアウトで走行している!フロントにエンジンがあり前輪が動き車を引っ張っていくイメージ
FFレイアウトの車は、室内より前にエンジンがあり前輪がエンジンの動力を伝えて進む車です。コンパクトカーや軽自動車、ミニバンやSUVなど、日本で販売されている車のほとんどはFFレイアウトの駆動方式が採用されています。
2018年に販売台数ナンバーワンとなった日産のノートや、ライトウェイトスポーツで有名なスズキのスイフトスポーツ、ニュルブルクリンク北コースで何度も記録を塗り替えているホンダのシビックタイプRなどがFFレイアウトです。
- 2018年に新車販売台数ナンバーワンになった日産のノートはFFレイアウトの車である
- ノートオーラの説明
FFレイアウトはエンジンのすぐ近くに駆動輪があるためフロントだけで構成パーツを済ませることができ、室内空間を低床化・フラット化させることもできるなどのメリットがあります。また、大きく重たいプロペラシャフトなどのパーツがないためFR車よりも燃費がいい傾向があります。
最近ではセダンやスポーツタイプに少しだけラインナップしているのがFRレイアウト!フロントにエンジンがあり後輪が車を押して進むイメージ
FRレイアウトの駆動方式は、FFレイアウトが流行る前に主流だったもので、キャビンのフロントにエンジンがあり、後輪が回って進んでいきます。フロントにあるエンジンの動力をプロペラシャフトで後輪に伝えるため、車体真ん中にプロペラシャフトを通す空間を作る必要があり、キャビン内でもセンターは盛り上がっていることが多いです。
少し前のミニバンではFRレイアウトの車が多く、E51エルグランドは床面フラットですがプロペラシャフトを避けるため床が高い位置になっていて、フルモデルチェンジしたE52エルグランドではFF化され床を上げる必要がなくなったため低床化されています。
トヨタのマークXはFRレイアウトのミドルクラスセダンで、GRMNなどのスポーツグレードも設定されている
2019年1月の時点では、トヨタのマークXやクラウン、日産のフーガやスカイラインなどのミドルクラス・アッパークラスのセダンに採用されていて、FR駆動といえば高級車というイメージになっています。
FF方式と比べると雪道や砂地などトラクションが低い道が苦手で、停止すると凍ったちょっとの坂道でもスリップし発進できなくなる可能性もあります。
MRレイアウトはホンダのS660が該当していてエンジンが後輪より前でキャビンより後ろに設置してある後輪駆動の車がそう呼ばれる
MRレイアウトはミッドシップにエンジンを搭載し、後輪が駆動する車のことで、客室(キャビン)と後輪の間にエンジンがあるため、後部座席のスペースがないことが多く運転席と助手席の2人乗りの設計が多いです。
2019年1月では、新車で購入できるMRレイアウトの車両はホンダのS660だけですが、過去にはトヨタからMR2やMR-S、初代エスティマでミッドシップレイアウトの車両が販売されています。ほかにも四輪駆動ですが、ホンダのNSXや外車まで目を向けるとランボルギーニのウラカンがミッドシップにエンジンが搭載されています。
軽自動車では、ホンダのバモスやアクティ、2代目Zと三菱のiがMR方式を採用していて、ビートやAZ-1もミッドシップ方式の車でした。
ホンダのS660は新車販売する中で手軽に買えるMRレイアウトの車種
MRレイアウトの車種
- ホンダ・S660、バモス、アクティ、Z(SUV)
- トヨタ・MR2、MR-S
- 三菱・i
運転席の後ろ、後輪の前にエンジンがあるためプロペラシャフトを短くすることができ、車体の重心が中央寄りのため他の駆動方式に比べてコーナリング性能が高くなっています。その反面、車の向きが変わりやすい回頭性能が高いためノーブレーキで曲がった時や冬道などはスピンしやすくなります。
RRレイアウトはリアにエンジンがあるのはMRと一緒だが後輪よりも後ろにエンジンが配置
RR方式の車は、後輪の後ろにエンジンが搭載され、後輪を動かして進む車です。2019年現在では、日本車にRRレイアウトの車種はありませんが、かつては日野コンテッサ、スズキフロンテ(アルトの前身)、スバルR2(初代)、スバルから360や、2012年まで自社生産していたサンバーなどがラインナップされていました。
バスもRRレイアウトを採用していることが多く、座席をたくさん確保することができるメリットがあります。海外に目を向けると有名なところではフォルクスワーゲン ビートル(タイプ1)、フィアット 500(2代目チンクエチェント)、アルピーヌA110(初代)、ポルシェ356などがありました。現在では、ポルシェ911が伝統的にRR方式を採用していて、ほかにはルノーからトゥインゴや、タタモータースからはナノが発売され、シティコミューターのスマートにもRRが採用されています。
ポルシェのフラッグシップモデル911は伝統的にRRレイアウトの駆動方式を採用している車種
RRレイアウトの車種
- フォルクスワーゲン ビートル(タイプ1)
- キューベルワーゲン、シュビムワーゲン
- スバル 360、スバル R2(初代)、サンバー(2012年まで)
- スズキ フロンテ(2代目~4代目)
- 日野 コンテッサ
- アルピーヌ A110(初代)
- フィアット500(2代目チンクエチェント)
- ポルシェ 356、ポルシェ 911
- タタ ナノ
- スマート フォーフォーなど
後輪の車軸より後ろにエンジンが配置されているため、地面にグッと力を伝えやすい構造をしていますが、フロントが軽いためステアリング操作に敏感で、MR以上のオーバーステアな上、重心が後ろにあることにより、いったんリアが滑り始めると立て直しが困難というトリッキーなステアリング特性を持っています。また、ラゲッジルームも、荷室近くにエンジンがドーンとあるためスペースが狭く、実用性はフロントエンジン車に劣る傾向にあります。
アルピーヌ A110のエクステリア
4WDは4輪すべてが駆動する方式のことでオフロードに強くSUVやクロカンのほかにコンパクトカーやミニバンなどにも採用
4WD車はオフロードや雪道などを走行する際に駆動力を発揮する方式で、初期は軍用車などに採用されていましたが、のちにクロスカントリー車が生まれ、乗用車に4WDを搭載したモデル、そして現在では雪道を走るユーザーのニーズに応えコンパクトカーや軽自動車をはじめほとんどの車種に4WD(AWD)が設定されています。
四駆の方式は、センターデフを用いたフルタイム4WD、トランスファーを使ったパートタイム4WD、カップリングを使ったスタンバイ式など、様々に分かれています。4WD(Four Wheel Drive)のほかにAWD(All Wheel Drive)とも呼ばれていて、メーカーによって違いがあります。
4WD車の代表格ともいえるトヨタのランドクルーザー。日本だけではなく世界的に人気の車種である
4WDは色々な種類にわかれている
- フルタイム式(ランドクルーザー・パジェロなど)
- パートタイム式(ジムニー・パジェロなど)
- スタンバイ式(主に軽自動車やコンパクトカーに搭載)
- トルクスプリット式(オールモード4x4、ALL GRIP搭載車など)
- アクティブトルクベクタリング式(エクリプスクロスなど)
- 電気式(日産のe-4WD、エレクトリック4WD)
フルタイム式とパートタイム式にパジェロが並んでいますが、この車種は後輪駆動の2WDとセンターデフを使った4WDの切り替えができるモデルで、2種類の側面を持っています。燃費性能の高い2WDと必要なときに4WD性能を引き出せる実用性が高い車種です。
駆動方式の違いによって車の挙動はまったく違う!FRは雪道でのスタックに特に注意が必要
車は駆動方式の違いによって動きかたがまったく違うため、普段乗り慣れていない車に乗る時は注意が必要です。FFとFRでも凍った雪道で発進しやすいのは、駆動輪に荷重がかかりやすいFFの車ということになります。
FFやFRのほかにも、MRやRRというレイアウトもあり少数ですが採用している車もあります。そして駆動方式としても有名な4WD(AWD・四駆)には、様々な種類に分かれていてフルタイム式やパートタイム式があります。
自分の車はどの駆動方式で、どのように動いているのかを知れば、より自分の車に愛着がわきますし、もし滑って危ないと思った時には、対処できるかもしれません。