モノコック構造のメリット

モノコック構造の特徴とメリット・デメリット 車のモノコックボディについて

モノコック構造は、車以外でも「住宅」・「鉄道」・「小型飛行機」などの製造過程で採用されるモノを作る際の方式。外形的特徴や外から力が加わった際に、力を分散させるなど特徴を紹介。ラダーフレームとの比較やメリットやデメリットも解説。

モノコック構造の特徴とメリット・デメリット 車のモノコックボディについて

モノコック構造とは?ラダーフレーム構造との違いとメリット・デメリットを解説

現在の自動車製造において主流となっている「モノコック構造」は、製造過程でどのように活かされているのでしょうか。その基本的な仕組みから、車体剛性や安全性に与えるメリット・デメリットを含めて紹介します。また、よく比較される「ラダーフレーム構造」との違いについても詳しく取り上げます。

このモノコック構造は、自動車だけでなく航空機や鉄道など、幅広い分野で採用されている基本的な「モノづくり」の技術です。「モノコック構造の車への採用」の背景にある技術的な考え方を知ることで、身の回りの工業製品がどのように作られているのか、その仕組みへの興味が深まります。

モノコック構造とは外皮が力を受け止める「応力外皮構造」のこと

モノコック構造のフレーム(半モノコックフレーム)

モノコック構造は、構造物を形作るための基本的な仕組みの一つです。元々は航空機の機体を製造する過程で開発され、「飛行機」にも採用されたその優れた特性から、自動車業界、鉄道業界、建築業界などにおいても幅広く導入されるようになりました。

モノコックはフランス語を語源としており、「mono(モノ)=単一の」「coque(コック)=船体,殻」という意味を持つ単語で形成されています。その名前の通り、構造物の形が、全体的に一つのまとまった殻のように見えるのが特徴です。

モノコック構造は、日本語に訳すと応力外皮構造(おうりょくがいひこうぞう)あるいは張殻構造(はりがらこうぞう)とも呼ばれます。車や住宅などに外から力が加わった場合、その力を車体全体の外皮(シェル)で受け止め、構造全体に分散させる立体構造をしています。これが、モノコック構造の最大の特長であり、高い「モノコック構造の剛性」を実現する源となっています。

応力とは外からの力に反発する抵抗力のこと

車が事故を起こした場合や、建物にいるときに地震が発生した場合など、外部から構造物に「外力」が加わります。その外力の強弱に応じて、車や住宅などの物体内部から生じる抵抗力のことを「応力」と呼びます。

モノコック構造では、外部から加わった一定程度の応力であれば、外皮全体で受け止めて分散することが可能です。しかし、外部から加わった力が大きくなりすぎて、内部の応力が許容範囲を超えてしまうと、物体は塑性変形(元に戻らない変形)を起こしたり、破壊されたりします。「応力集中」を防ぎ、力を分散させることがモノコック構造の重要な役割です。

この応力分散の仕組みにより、モノコックボディは万が一の衝突時に乗員を保護する高い安全性を確保します。「モノコック構造の安全性」は、現代の車作りにおいて非常に重視されている要素の一つです。

モノコック構造の最大の特徴はボディとフレームの「一体化」

トヨタの新プラットフォームTNGA

モノコック構造は、バスなどの大型車や本格的なクロスカントリーSUVなどの一部車種を除く、乗用車の製造において現在最も広く採用されている構造です。車の外側(ボディパネル)を重視し、ボディそのものにフレーム(骨組み)としての役割を持たせることで、専用のフレームを極力持たせていないのが最大の特徴です。

フレームを少なくすることは、車体の「モノコック構造の軽量化」につながり、結果として低燃費性能や運動性能の向上にも結びつきます。フレームを少なくすると、車の強度不足が懸念されますが、モノコック構造は万が一事故が起こってしまった際の衝撃をうまく分散させるため、あえて変形しやすい箇所(クラッシャブルゾーン)や高強度鋼材を組み合わせるなどして対応しています。

また、車のボディとシャーシが一体になっていることも特徴です。シャーシとボディを一体化させることで、車内スペースを効率的に確保し、広い居住空間を実現することが可能となります。「モノコック構造による室内空間の広さ」は、多くの乗用車ユーザーにとって大きなメリットです。

シャーシとは車の足回り関連の部品を指す用語

「シャーシ」という用語は、時代や文脈によって意味合いが変わります。もともとの意味は、自動車の骨格となるフレーム全体を指していました。

しかし、モノコック構造が主流となってフレームの役目をボディが担うようになってきてからは、意味合いが変化し、現在では「サスペンション」「ステアリング」「ブレーキ」「タイヤ」「ホイール」など、走行に関わる足回り関連の部品を総称する言葉として使われることが多くなりました。ボディとは別に、車両の走行性能を決定づける重要な要素です。

モノコック構造のメリット・デメリット

フェラーリF40のミニチュア

モノコック構造のメリット

  • 車体を軽量化できるため、燃費性能や運動性能が向上します
  • 事故時の衝撃を車体全体で受け止め、乗員保護性能が高まります
  • フレームがない分、室内空間や荷室を広く設計できます
  • 振動が少なく、静粛性や乗り心地が優れています

モノコック構造のデメリット

  • 衝突でボディが大きく変形すると、構造全体に影響し走行できなくなることがあります
  • 小さなへこみや歪みであっても、全体の剛性に悪影響を与えることがあります
  • 修復作業において、高い溶接技術と車体修正技術が求められます
  • 本格的な悪路走行や重い積載(牽引)には不向きな面があります

モノコック構造を採用すれば、車のフレームとボディを別々に作る必要がなくなり、部品点数の削減や組み立ての効率化にもつながります。別々に作られた車体は、走行中にボディとフレームの間で振動が発生しやすくなりますが、モノコック構造で作られている車は振動が少なく、静粛性にも優れており、優れた乗り心地を体感できるのが大きなメリットです。

モノコック構造ではボディがフレームの役目も兼ねているため、激しい衝突やねじれを受けると車体全体が歪んでしまい、修復が困難になったり、走行性能や安全性能が著しく低下したりすることがデメリットとなります。そのため、大破してしまった場合、走行ができなくなってしまうリスクが高まります。

モノコック構造とよく比較される「ラダーフレーム構造」について

モノコック構造と比較されるラダーフレーム構造

ラダーフレームは梯子(はしご)状の構造が特徴

モノコック構造と車の基本骨格としてよく比較されるのが、「ラダーフレーム構造」です。ラダーフレーム構造は、古くから行われていた自動車の製造法であるフレーム構造の一種です。「ラダーフレーム構造のメリット」は、その堅牢さにあります。

ラダーフレーム構造では、梯子(はしご)状の強固なフレーム(シャシー)がまず存在し、その上にパワートレインであるエンジンやトランスミッション、他の主要な部品を搭載させます。そして、最後にフレームの上から車のボディ(キャビン)を被せるのが、ラダーフレーム構造の仕組みです。この梯子状のフレームを採用することで、車体の強度と耐久性を極めて高めることに成功しています。

車体は重くなってしまうというデメリットはありますが、バスやトラックなどの車体の強度が求められる大型車、またはトヨタのランドクルーザーやスズキのジムニーといった本格志向のクロスカントリーSUVで、今もなお採用され続けている方式です。「ラダーフレームを採用している車種」を探すユーザーも多くいます。

ビルトインラダーフレームはモノコックとラダーフレームを組み合わせた構造

車の骨格構造のイメージ

「ビルトインラダーフレーム」は、モノコック構造とラダーフレーム構造の利点を組み合わせることで、お互いのメリットを共存させることを目指した車作りの方法です。モノコック構造の床下に、梯子状の強固なフレームの一部を組み込むことで、ボディ全体の強度を向上させます。

ビルトインラダーフレームを採用することで、純粋なラダーフレーム車よりも車体の重量化を最低限に抑えながらも、モノコック構造の弱点であるねじれ剛性や車体下部の強度を最大限に高めることが可能となります。これにより、重い牽引やオフロード走行にも耐えうる頑丈さと、乗用車としての快適な乗り心地を両立させます。

モノコック構造は現代の自動車産業と日本のモノづくりを支える基盤技術です

モノコック構造

モノコック構造は、現代の車作りにおいて欠かせない基盤技術であり、車以外でも航空機や鉄道の車両、住宅などにも広く用いられています。軽くて強い構造を実現できるこの技術は、「モノづくり大国」と言われる日本を支える欠かすことのできない技術です。

モノコック構造とラダーフレーム構造を組み合わせる「ビルトインラダーフレーム」のように、それぞれのメリットを活かした技術開発にも興味をそそられます。「モノコック構造の応用」は、自動車業界以外においても常に進化しています。これからも進化を遂げるモノコック構造が、安全性、快適性、そして環境性能の向上にどんな風に活かされていくのかが楽しみです!