自動車用語でよく使われる「A・B・C・Dピラー」の意味と車の部位を徹底解説

自動車における「ピラー(Pillar)」とは、英語で「柱」を意味し、ルーフ(屋根)を支え、乗員の安全性を確保する上で欠かせない車体構造の一部です。ピラーは、万が一の事故の際の耐衝撃性や、走行中の車体剛性に直接関わる非常に重要な部分です。多くのセダン、コンパクトカー、軽自動車ではAピラーからCピラーまでが存在します。また、ミニバン、ステーションワゴン、大型SUVなどの車室が長い車には、AピラーからDピラーまで、あるいはそれ以上の柱が設計されています。
ピラーは、車の安全性能やスタイリング、「車の剛性」といったキーワードで語られることが多くあります。そこで、この記事では、ピラーごとの詳しい場所、その機能的な意味、特定の車種に見られる「ピラーレス」構造とは何か、さらにはピラーごとに可能なカスタマイズ例を紹介し、自動車の基本構造についての理解を深めていきます。
ピラーは車体の剛性や強度、安全に関わる最も重要な部分


ピラーは、初期の自動車で屋根を支える柱として始まりましたが、フレームとキャビンが一体化したモノコックボディ構造が主流になってからは、車体のねじれ剛性や衝突安全性を飛躍的に高める最も重要な構造部品として機能しています。特に近年の自動車は、衝突安全基準の厳格化に伴い、ピラーに超高張力鋼板(ハイテン材)を多用するなど、強度向上に多大な工夫を凝らしています。
ピラーがあるのとないのとでは、事故の際の強度が全く異なります。運転席や助手席付近のAピラーは、主に前方からの衝撃に対するキャビン(室内空間)の保護に効果を発揮します。また、前席と後部座席の間にあるBピラーは、側面からの衝突(側突)に対して乗員を守るために効果を発揮します。もし、これらのピラーが存在しなかったり、強度が不足したりした場合、衝撃によって室内空間が大きく変形し、乗員が潰される危険性が高くなるため、ピラーは「乗員の生存空間を守る砦」と言えます。
Aピラーの場所はフロントウィンドウの左右にある柱
軽自動車のAピラー
Aピラーと呼ばれるフロントピラーは、フロントウィンドウ(前方の窓ガラス)の左右両脇にあり、運転席や助手席の乗員にとって最も近い柱です。乗員を前方や斜め前からの衝突から守るため、非常に高い強度が求められます。しかし、Aピラーを太く設計すると、その分だけ死角が増えてしまい、特に右折時やカーブを曲がる際に、横断歩道を渡る歩行者や自転車などを見落としやすくなります。「Aピラーの死角」は、多くのドライバーが意識する安全上の問題です。
この死角を減らすために、自動車メーカー各社は、Aピラー付近に三角窓(クォーターウィンドウ)を設置したり、ピラー自体を細くしたり、あるいは高張力鋼板で強度を確保しつつ断面を最適化したりするなど、様々な工夫を凝らしています。運転中に見えにくいと感じる時は、顔や身体をずらして確実に視界を確保しながら進行することが重要です。
Aピラー付近の三角窓
また、SUVやトラックなど車高が高く、乗降時に体を持ち上げる必要がある車種では、Aピラーの内側に乗り降りを補助するためのアシストグリップ(ハンドル)を取りつけていることもあります。
Aピラーに取りつけられたハンドル

オープンカーなどのコンバーチブル車では、ルーフを開けた際にAピラーが唯一のルーフ構造を担う柱となります。このAピラーは、万が一の横転事故の際に乗員が押しつぶされないよう、特に強化された設計(ロールバー機能)が施されていることが一般的です。
Bピラーの場所は車体を横から見たときの中心部分

Bピラー(センターピラー)とは、運転席・助手席のドアと、後部座席のドアの間にある柱を指します。車体を横から見たときのほぼ中心に位置し、車体の側面衝突強度に最も大きく関わる部分です。「Bピラーの役割」は側突時の乗員保護です。洗車の際などにドアを開け、ドアの内側の水滴を拭き取る時に、前後のドアの間にこのBピラーを目にしたことがある人も多いでしょう。
また、Bピラーは、運転席と助手席、そして車種によっては後部座席のシートベルトの取り付け部でもあります。側突時の衝撃から乗員の安全を守るための構造体であり、その内部には、側面衝突から乗員を守るためのサイドエアバッグやカーテンエアバッグなどの安全装備が格納されていることもあります。
Cピラーの場所は車体後部にありボディ剛性の要となる重要な役割

Cピラー(リアピラー)とは、後部座席付近に位置し、リアウィンドウ(後方の窓ガラス)の手前にある柱のことです。このCピラーは、車体のねじれ剛性を保つために非常に重要な役割を持っています。「Cピラーのデザイン」は、特にセダンタイプの車では、後部座席の乗員のプライバシーを守る目的や、クーペのような流麗なデザインを表現するために、太く設計されていることが多くあります。

ホンダのS660のようなタルガトップ(ルーフの一部が脱着可能)と呼ばれるタイプのオープンカーでは、AピラーとCピラーが存在します。Bピラーがないフルオープンの車に比べて車体の剛性を保てる利点があり、また、Bピラーがないことでオープン時には乗り降りが比較的楽になるというメリットも生み出します。
DピラーはCピラーの後ろにありステーションワゴンやミニバンなどに多くみられる

Dピラーとは、Cピラーのさらに後方にある柱で、主にステーションワゴンやミニバン、大型SUVといった、3列目シートや広大なラゲッジスペースを持つ車室の長い車種に設計されています。これは、後部座席の窓とリアウィンドウの間に、もう一枚の窓(クォーターガラス)がある車種に存在することが多い柱です。
Dピラーを倒して設計している車種(トヨタ・ランドクルーザープラド)
Dピラーを直角に設計している車種(トヨタ・ハイエース)
Dピラーを寝かせて(傾斜させて)設計すると、スポーティーなクーペやハッチバックのような流麗な印象を与えます。一方、Dピラーを直角に近い角度で設計すると、トヨタ・ハイエースなどのワンボックスカーや、荷室を最大限に活用するステーションワゴンのような、実用性の高いスクエアなスタイリングとなります。このように、Dピラーは、車のスタイリング(外観デザイン)と機能性を大きく左右する非常に重要な柱です。
乗り降りの利便性を高めたピラーレス構造を採用している車種もある

国産車のピラーレス構造を採用していた代表的な車種(Bピラーレス)
- アイシス(トヨタ)
- タント(ダイハツ)
トヨタ・アイシス
ダイハツ・タント
Bピラーは、前席と後部座席の間の側面衝突強度を担う柱ですが、一部の車種では、助手席側のBピラーをボディ内部に格納する「ピラーレス構造」を採用し、乗り降りがしやすく、大きな荷物の積み下ろしがしやすい設計を実現しています。
ピラーは車体の強度を保つ上で非常に重要な部分です。そのため、Bピラーレス構造を採用している車は、ピラーがない代わりにドアやルーフ、フロアなどに補強材や高剛性の部材を組み込むことで、側面衝突時でも同等以上の安全性が確保できるように設計されています。現在の販売車種では、ダイハツ・タントやウェイクなどが、助手席側のピラーレス構造を採用しています。
Aピラーカバーを活用したカスタマイズと注意点
Aピラーの内側カバーは取り外し可能
Aピラーの車内側には、内装の一部としてピラーカバーが取り付けられています。このカバーは、カスタマイズのベースとして利用されることが多く、主に音響系(オーディオ)や計器系のカスタムが行われています。具体的には、高音域を再生するツイーター(スピーカー)の取り付け、または追加のメーター類(ブースト計、水温計、タコメーターなど)を取り付けるための加工が行われています。
Aピラーに取りつけられたスピーカー
Aピラーに取りつけられた計器類
しかし、Aピラーの内部には、側方衝突時の安全装備であるサイドエアバッグやカーテンエアバッグが収納されている車種が非常に多いです。これらのエアバッグを装備している車両でピラーカバーを取り外し、カスタマイズを行う際には、配線やエアバッグの展開機構を妨げないよう細心の注意を払う必要があります。安易な取り外しや加工は、万が一の際の安全性能を損なう可能性があるため、専門の業者に相談しましょう。
B・Cピラーに装着するメッキガーニッシュは手軽なドレスアップ


メッキパーツの他にも、カーボンファイバーのような織り目模様を再現したカーボン調のパーツもありますので、自分の車のスタイルに合わせてスポーティに仕上げることも可能です。「ガーニッシュ」は、手軽に行える外装カスタムとして人気があります。
BピラーやCピラーの外装部分には、ステンレス、シルバーメッキ、クロームメッキのガーニッシュ(装飾部品)を装着するカスタマイズが人気を集めています。多くの場合、ピラー部分は艶消しブラックの樹脂パーツですが、ここに高級感のあるメッキパーツを装着することで、サイドビュー全体が引き締まった印象となり、手軽に高級感を演出することができます。
ピラーは車体強度や乗員安全に直結する車体の大切な骨格

ピラーは、車のルーフを支える、車体の剛性を補強する、衝突時に乗員の生存空間を確保する、後部座席のプライバシーを保護するなど、非常に多様で重要な役割を果たします。フロントウィンドウの横にある「Aピラー」、前席と後部座席の間にある「Bピラー」、後部座席の横にある「Cピラー」、そしてワゴンやミニバンのリアクォーターガラスの後ろにある「Dピラー」と、前側からアルファベット順に呼び方が移動していきます。
車内側のAピラーをカスタマイズして、オーディオ用のツイーターや追加メーターを取り付ける、外側のBピラーやCピラーにメッキパーツやカーボンシートを貼り付けるなど、ピラー周りには様々なカスタマイズの楽しみがあります。しかし、ピラーは車の安全性を担う骨格であることを理解し、特にエアバッグが内蔵されている部分の加工には、細心の注意を払いながらカスタマイズを楽しみましょう。





























