逆開きボンネットと前開きボンネットの違い

逆開きボンネットと前開きボンネットの違いやメリットデメリットを解説

逆開きボンネットとは何か、前開きとの違いを基礎から解説。走行中の跳ね上がりに強い反面、整備性や衝突安全・歩行者保護では不利になる点、2ロック方式で前開きが主流になった理由、チルトアップキットによるカスタムの注意点まで紹介します。

逆開きボンネットと前開きボンネットの違いやメリットデメリットを解説

逆開きボンネットと前開きボンネットの違いは?メリット・デメリットと採用車種

逆開きボンネットは「チルトボンネット」や「逆アリゲーターボンネット」とも呼ばれ、一般的な前開きボンネットとヒンジの位置が逆になっているボンネットのことです。現在では採用する量産車は非常に少なくなっていますが、スポーツカーやカスタムカーの世界では根強い人気を誇ります。この記事では、逆開きボンネットと前開きボンネットの仕組みの違い・それぞれのメリット・デメリット・現在の採用状況まで詳しく解説します。

逆開きボンネットと前開きボンネットの違いはヒンジの位置

両者の違いは、ボンネットをボディに固定するヒンジ(蝶番)の位置です。ヒンジが前にあるか後ろにあるかで、開く向きも、走行中にロックが外れたときの動き方も正反対になります。

逆開きボンネットのクラシックカー運転席側からボンネットを開く逆開きタイプ

逆開きボンネット(チルトボンネット)とは

フロントバンパー側にヒンジがある「前ヒンジ式」で、後ろから前へ向かってボンネットが開く構造。運転席側(後方)からボンネットを開くため「逆アリゲータータイプ」とも呼ばれます。

ヒンジが運転席型にある車前開きはヒンジが運転席側(後方)にある

前開きボンネット(アリゲータータイプ)とは

運転席側(後方)にヒンジがある「後ろヒンジ式」で、フロントバンパー側からボンネットが開く構造。現在の主流で、ワニの口のように見えることからアリゲータータイプとも呼ばれます。

逆開きボンネットの歴史と採用車種

チルトボンネットに改造した車逆開きボンネットは70〜80年代のスポーツカーに多く採用された

逆開きボンネットが開発された背景には、安全性への懸念がありました。前開きボンネットでは、走行中にロックが外れるとボンネットが風圧で跳ね上がり、ドライバーの視界を遮って大事故につながるリスクがありました。このリスクを構造から排除するために生まれたのが逆開きボンネットです。

日産スカイラインをはじめとする一部のスポーツカーや、クラシックカー・ヴィンテージカーを中心に採用が見られました。その後、二段階で解除するロック(セーフティキャッチ)が一般化し、前開きでも走行中の跳ね上がりがほぼ起こらなくなったことで、逆開きを採用する新型車は次第に減っていきました。この仕組みは後述します。

現在、逆開きボンネットを採用する量産車はごくわずかです。かつて逆開きを採用したジャガー Fタイプは、ジャガーが電気自動車(BEV)ブランドへ移行する戦略のもと、内燃機関を積む最終モデルとして2024年モデルで生産を終えました。また、シボレー コルベット(C8)のようにミドシップ化された車では、フロントがエンジンルームではなく収納スペース(フランク)になっており、前側に開く蓋はあってもエンジン整備のためのボンネットとは役割が異なります。

逆開きボンネットのメリット

逆開きボンネット最大のメリットは、走行中にボンネットが跳ね上がる事故リスクを構造的に排除できることです。前開きボンネットは風圧でフロントバンパー側へ開こうとする力がかかりますが、逆開きは風圧がボンネットを閉じる方向に働くため、万が一ロックが外れても跳ね上がりません。

現在は前開きでも安全対策が進んでいますが、逆開きボンネットはそのスポーティな開き方と視覚的なインパクトから、今ではカスタムカーのパーツとしても人気が続いています。

逆開きボンネットのデメリットはメンテナンス性の悪さ

逆開きボンネットの最大のデメリットはメンテナンス性の低さです。構造上、開いたフードが前方をふさぐため、整備の現場ではボディの横から手を伸ばして作業することになり、エンジン奥やバッテリーまで手が届きにくくなります。エンジンオイルやバッテリーの点検・交換のたびに後方へ回り込む必要が生じる点も、地味に効いてきます。旧車や輸入車に多く採用されているため、部品の取り寄せに時間がかかりやすい点もあわせて見落とされがちです。

逆開きは衝突安全性や歩行者保護の面では不利

逆開きボンネットは走行中の跳ね上がりに強い一方、別の安全面では弱点があります。ヒンジが前方にあるため、正面衝突した際に後方のキャッチが外れると、フードがフロントガラス側へせり上がって室内に迫る形になりやすいのです。また、頑丈なヒンジ機構が車両のいちばん前に位置することは、歩行者と衝突したときの衝撃緩和の面でも不利に働きます。

現在の前開き(後ろヒンジ)が主流になった背景には、整備性だけでなく、こうした衝突安全や歩行者保護への配慮もあります。最近の車には、衝突を検知するとボンネット後端を瞬時に持ち上げて歩行者の頭部への衝撃を和らげる「ポップアップフード(アクティブボンネット)」を備えるものもあり、これも後ろヒンジを前提とした設計です。

前開きボンネット(アリゲータータイプ)の特徴

ボンネットのヒンジが運転席側に付いている車フロントバンパー側から開けるためワニの口のように見える

現在ほぼすべての量産乗用車に採用されているのが前開きボンネット(アリゲータータイプ)です。ヒンジが運転席側についており、フロントバンパー側からロックを解除して開きます。

ボンネットを開けるレバーまず車内のレバーでロックを解除する

ボディとボンネットを繋ぐヒンジ続いてボンネット前部のロックを解除して開く2ロック方式

前開きボンネットのメリットはメンテナンス性の高さ

前開きボンネットは可動域が広い前開きボンネットは可動域が広くエンジンルームへのアクセスが容易

前開きボンネットの最大のメリットは整備のしやすさです。可動域が逆開きより広く、エンジンルーム全体に正面からアクセスしやすいため、エンジンオイルの確認からバッテリー交換まであらゆる作業を効率よく行えます。整備士の立場からも前開きボンネットは扱いやすく、修理・メンテナンスにかかる時間と費用を抑えやすいのが利点です。

2ロック方式でボンネット跳ね上がりのリスクを克服

かつて前開きボンネットでは、走行中に風圧でボンネットが跳ね上がり、視界を遮る重大事故のリスクがありました。これを解消したのが2ロック方式(二段階ロック)です。「車内のレバーで第1ロックを解除し、ボンネット前部の第2ロック(セーフティキャッチ)を手動で解除する」という二段構えにすることで、第1ロックが緩んでも第2ロックがフードを押さえ続けます。この仕組みの普及により、現在は前開きボンネットが全車種に広がっています。

逆開きボンネットはカスタムカーに人気

両側で開くカスタムカーカスタムカーには観音開きに開く珍しいタイプもある

量産車での採用はほとんどなくなりましたが、逆開きボンネットのビジュアル的なインパクトはカスタムカー愛好家の間で高く評価されています。前開き車のボンネットを逆開きに変更する「チルトアップキット」も販売されており、旧車や輸入車を逆開きボンネットに改造するカスタムも人気です。

カスタムカーのボンネット開閉方式には、逆アリゲータータイプ(逆開き)・アリゲータータイプ(前開き)・横開きタイプ・観音開きタイプなどさまざまな種類があります。東京オートサロンや大阪オートメッセなど国内のカスタムカーイベントでは、ボンネットの開き方に注目してみるのも楽しみ方のひとつです。

前開き車を逆開きに変えるチルトアップキットを組む場合は、見た目だけでなく確実な固定とメンテナンス性に注意が必要です。重いボンネットを支えるガスダンパーの容量や立て付け、走行中に確実にロックされる構造になっているかは安全に直結します。改造の内容によっては保安基準への適合確認が必要になることもあるため、施工実績のある専門店に相談すると安心です。

逆開きボンネットは前開きにはない特別感がある

逆開きボンネットと前開きボンネット

メンテナンス性や衝突安全の面では前開きボンネットに分がある一方、逆開きボンネットには走行中の跳ね上がりに強いという構造上の特性と、独特のビジュアルという魅力があります。量産新車での採用はごく少数にとどまりますが、中古車市場ではかつて採用していた旧車や輸入スポーツカーが流通しており、一定の人気があります。

前開きボンネット車を逆開きに変更するチルトアップキットを使ったカスタムも依然人気で、唯一無二の個性を表現する手段として注目され続けています。購入や改造を検討する場合は、整備性の低さと部品調達の手間、そして確実な固定という安全面を考慮したうえで判断しましょう。