トヨタ2000GTの歴史

トヨタ2000GTの歴史と伝説:稀代の名車の開発、変遷、そして現代のレプリカ事情

トヨタの2000GTは、生産終了から半世紀近く経過している今も高い人気を誇る稀代の名車です。スパイ映画「007は2度死ぬ」でボンドカーとして登場した歴史や、世界記録を樹立した性能を紹介。また、現代技術で復刻されたロッキーオート社によるレプリカ車「R3000GT」についても取り上げます。

トヨタ2000GTの歴史と伝説:稀代の名車の開発、変遷、そして現代のレプリカ事情

トヨタの2000GTの歴史と日本が世界に誇る名車の魅力

トヨタ 2000GTは生産を終了してから半世紀近くが経っているにもかかわらず根強いファンを持つ特別な車です。そのほとんどが手作りによる生産体制であったため、車を作るたびに赤字が発生していました。

生産のたびに赤字が発生していたにもかかわらず2000GTを製造していた理由は、2000GTがトヨタの企業イメージを向上させる意味合いを強く含めて開発された車だからです。この宣伝効果によってトヨタのブランドイメージが定着した1970年には、その役目を十分に果たして生産を終了しました。この歴史的な名車トヨタ 2000GTが誕生した背景や、走行性能、希少性などの魅力について深く掘り下げて紹介します。

2000GTとは発売当時から語り継がれている歴史的な名車

トヨタ 2000GT(MF12L型)1969年式のフロントビュートヨタの名車2000GT

発売されてから半世紀ほど経過しているにもかかわらず、トヨタの「2000GT」は今も多くの車好きの方々から支持を集めています。2000GTの愛称で親しまれるこの車は、日本の自動車史に残る傑作です。トヨタ 2000GTの歴史は、日本のモータリゼーションの進化を象徴しています。

車の名前はそれほど凝ってはおらず、排気量が2,000CCクラスのGT車(長距離運転に適した高性能な車)であることから「2000GT」と命名しました。そんな2000GTは、トヨタとヤマハ発動機が共同で1964年から開発を行い、3年後の1967年5月に販売を開始しました。トヨタ 2000GTの開発には、両社の持てる技術のすべてを注ぎ込みました。

社内で行われたデザインコンペの結果、車のボディとして選ばれたのは当時の技術力としては極限まで車高を低く抑えたX形バックボーンフレームです。エンジンは2000CC直列6気筒DOHCで、サスペンションは四輪ともダブルウィッシュボーン方式を採用し、4輪ディスクブレーキやマグネシウムホイールは日本の車に初めて導入したことでも話題を集めました。これらの先進的な技術は、2000GTを世界に通用する本格スポーツカーたらしめました。トヨタ 2000GTのスペックは当時の水準を大きく超えていました。

発売以前には、国内外のカーレースに参戦して華々しい功績を収めました。2000GTの最高速度は220km/h、0-400m加速は15.9秒と、当時としては世界トップレベルの実力を誇っていました。また数多くの速度記録にも参加して3つのジャンルで世界記録を更新しました。この走行性能の高さこそが、トヨタ 2000GTの価値と歴史を決定づけました。

2000GTのプロトタイプモデルはオープンカー仕様に改造し、スパイ映画である「007は2度死ぬ」で劇中にボンドカーとして登場しました。映画のためにオープンカー仕様で造られた2000GTは2台あり、そのうちの1台はトヨタ博物館に展示されています。世界に向けてトヨタの技術力をアピールする役割を果たしました。

2000GTはトヨタのイメージアップとブランド力を高めるために開発された車でもあります。圧倒的なハイパフォーマンスを達成しながらも、その役目を十分に果たした1970年に生産を終えるまでの期間中にわずか337台しか生産されなかった希少性もファンの心を離さない理由の一つです。この生産台数の少なさが、現在のトヨタ 2000GTの価格を押し上げています。オリジナルの2000GTは非常に希少な存在です。

初代トヨタ2000GTのボディサイズ・パワートレインなどのスペック

初代トヨタ 2000GTのボディサイズやエンジン出力など、詳細なスペックを紹介します。2000GTの基本スペックを確認しましょう。

グレード トヨタ2000GT・MF10
全長 4,175mm
全幅 1,600mm
全高 1,160mm
ホイールベース 2,330mm
車両重量 1,120kg
エンジン 水冷直列6気筒DOHC
排気量 1,988cc
最高出力 150kw/6,600rpm
最大トルク 18.0kgf·m/5,000rpm
サスペンション前後 ダブルウィッシュボーン
販売価格 238万円

2000GTの当時の販売価格は現在の価値で考えれば約1,800万円

トヨタ 2000GT(MF12L型)1969年式のサイドビューMF12L型はSOHC2.3Lエンジン搭載の輸出仕様車 わずか9台のみの生産

1967年販売当時のトヨタ 2000GTの販売価格は238万円で、トヨタが販売する高級車であるクラウンなら2台買えるほどの価格設定でした。当時の日本では異例の高額な車であったことがわかります。2000GTの価格は当時から特別でした。

その頃の大卒の初任給は2万6,000円前後で、それから半世紀ほど経過した現在の大卒の初任給は20万前後で推移しています。貨幣価値には約7~8倍ほどの開きがあり、その数値で現在の2000GTの販売価格を概算すると約1,800万円程度となります。現代の価格帯から見ても高級スポーツカーに匹敵する価格だったことが理解できます。オリジナル2000GTの価値は、現在の中古車市場では億を超えることも珍しくありません。

2000GTの前期型と後期型の違いを紹介

1967年5月に発売されたトヨタの2000GTは、1969年8月にマイナーチェンジを行いました。このマイナーチェンジは、2000GTの歴史において重要な節目です。

マイナーチェンジ以前の2000GTは「前期型」、以後の2000GTは「後期型」と分けられています。前期型と後期型では外観や装備にいくつかの違いがあります。トヨタ 2000GTの前期型と後期型を比較することで、開発の変遷を知ることができます。

前期型と後期型のエクステリアに関する違い

エクステリアの違いは、前期型の純正カラーは白・シルバーに赤で、後期型はそれらの色にグリーンとブルーを加えた5色のラインナップでした。カラーバリエーションが後期型で増えています。

フロントのフォグランプが大きいのが前期型で、小さいのが後期型です。後期型ではリヤ部分のリフレクターをサイズアップさせています。また、後期型では空気の抵抗を減らすためルーフの中心部分の高さを低く設定することで高速時での安定性を向上させています。その他の変更点は後期型で、フロントグリルの領域にシンボリックにトヨタの社名を表すアルファベットのTをあしらったデザインを採用し、車のエンブレムを前期型よりも上品な仕上がりとしています。後期型は前期型の課題を改良したモデルと言えます。

前期型と後期型のインテリアに関する違い

販売された前期型のうち100台は左ハンドル仕様でしたが、後期型には左ハンドルの車はありません。後期型ではオートマチックのトランスミッションも選べるようになり、オプションでエアコンを追加するなどの選択の幅が広がりました。快適性への配慮が後期型で強化されています。現代の目線から見ても実用的な装備が追加された後期型は、2000GTをより多くの人々に受け入れてもらうための改良でした。

オリジナルに限りなく近いロッキーオートの2000GTレプリカ

ロッキーオートによって復活した2000GT

出典: rockyauto.co.jp

1970年に製造を中止した「トヨタ 2000GT」は希少性が高すぎるため、実車を所有するのは非常に困難です。そこで、オリジナルと本物さながらのレプリカ車であるR3000GTが改造車の祭典である「東京オートサロン」などで一般公開されました。ロッキーオートの2000GT レプリカは、夢の名車を現代に蘇らせたものとして注目されています。

復活した2000GTのエクステリア

出典: rockyauto.co.jp

レプリカ車を製作したのは、絶版車の復活販売・カスタマイズを主な業務としている愛知県の企業であるロッキーオートです。ロッキーオートの従来のビジネスモデルは、旧車をベースとして、エンジンなど車の中身には現行車の技術を搭載して高性能化し、車のエクステリアやインテリアはオリジナルに近いデザインを採用してノスタルジックな雰囲気を体感させることです。長年の経験と技術を活かし2000GT レプリカの開発に取り組みました。

ロッキーオートがレプリカで再現した現代版の2000GTのコンセプトは「快適に、早く、楽しく、そして普通に乗れる」です。オリジナルのデザインを維持しながら、現代の技術で実用性と安全性を向上させています。

2000GTの構造

出典: rockyauto.co.jp

レプリカ車を作る際には、トヨタ自動車でオリジナルの「2000GT」の開発にも携わっていた細谷氏も開発に加わりました。2000GTの実車に近いボディラインを再現するために、現代のテクノロジーである3D測定を駆使することで、シャーシなどの細かいパーツまでもオリジナルに近い高い精度で再現しています。完成した車はR3000GTと名付けられました。R3000GTは外観はオリジナルと同一ですが、ボディの剛性を増すためにフレーム構造は現代の安全基準に合わせて変更し、ホイールも強度の高いアルミニウム素材へ変更しています。

2000GTのコクピット

出典: rockyauto.co.jp

木目調のインパネ部分にはエアコンの操作パネルを埋め込ませるなど、当時のインテリアの雰囲気を崩さずに車内の快適性も実現させています。R3000GTの販売価格は2,380万円で、オリジナルの2000GTが手に入らないファンにとって現実的な選択肢を提供しています。

ロッキーオートでは、2000GTのレプリカモデルのハイブリッドカー「2000GT RHV ハイブリッド」も販売しています。パワートレインにはアクア仕様のFFタイプを導入し、環境性能を向上させています。完全受注生産スタイルの販売で車の価格は1,680万円からとなっています。

R3000GTの標準車のスペック
エンジン 2J直列6気筒 3000cc
トランスミッション 電子制御4速AT
ステアリング パワーアシスト式ラック&ピニオン
ブレーキ 前後4輪ディスクブレーキ
燃料噴射 EFI(電子制御式燃料噴射装置)
駆動方式 FR(後輪駆動)

トヨタ2000GTオーナーズクラブとオリジナルモデルの価値

日本にはトヨタ 2000GTのオーナーズクラブが存在します。会員数は70名ほどで、そのほとんどの方が自分の親から2000GTを受け継いでいて、できれば自分の子ども達にも譲りたいと思っているそうです。トヨタ 2000GTは世代を超えて愛され続ける存在です。

トヨタ 2000GTは発売から半世紀ほど経過しているため、維持費やメンテナンス費用は当然のようにかかります。販売台数が少なくて、希少価値があるため海外のオークションに出品すると1億円くらいの値がつくとも言われています。それでもオーナーズクラブの中には売りたいと思っている人はいないそうです。トヨタ 2000GTの価値は金銭では測れないほど高いと言えます。オリジナル2000GTの保存と維持は、日本の自動車文化にとって重要な使命となっています。

トヨタ2000GT MF12L型の画像2枚

トヨタ 2000GT(MF12L型)1969年式のフロントビュー1969年式 トヨタ 2000GT(MF12L型)

トヨタ 2000GT(MF12L型)1969年式のリアビュー 1969年式 トヨタ 2000GT(MF12L型)

トヨタ・2000GTは日本が世界に誇る名車

2000GT

トヨタ 2000GTは、維持費がかかったとしても自分の手元に置きたくなってしまう魅力があります。トヨタ 2000GTを愛するファンは多く、その価値は高まる一方です。

販売終了から半世紀近く経った今でも2000GTは話題にのぼります。オリジナルモデルの歴史と希少性こそが、トヨタ 2000GTを今後も後世に語り継がれる日本が世界に誇る名車たらしめる理由です。