トヨタ アイゴXがハイブリッド専用車へ 116ps・CO2 86g/kmでAセグメント初のフルHVに
欧州向けAセグメントカーとして親しまれてきたトヨタ「アイゴ」は、2021年に2代目(AB40型)の生産を終え、2022年からクロスオーバー路線の3代目「アイゴX(アイゴ クロス)」へバトンを渡しました。そのアイゴXが2025年6月2日の発表で大きく生身を変え、1.0L直3ガソリンを廃してヤリスと同じ1.5Lフルハイブリッドへ全面移行。2025年11月13日にチェコ工場で生産が始まり、欧州各国で順次販売されています。結論から言えば、アイゴは車名としては現行のアイゴXへ引き継がれて健在、パワートレインはハイブリッド専用へ切り替わり済み、そして日本導入の予定は依然として発表されていません。
この記事はもともと、2代目アイゴが2018年にマイナーチェンジを受けた時点の内容を軸にしています。まずは現在に至るまでの動きを新しいものから整理し、そのうえで当時の2代目後期型の内容へ進みます。
アイゴXハイブリッドが2026年ワットカー・アワードで「スモールカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞
2026年1月、英国の自動車専門誌What Car?が主催する「Car of the Year Awards 2026」で、アイゴXハイブリッドがスモールカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。
評価の中心は、プラグインなしのクルマとして市場最少レベルのCO2排出量87g/km(英国仕様値)と、公称約74.3mpg(WLTP複合。日本式に換算すると約26km/L相当)という燃費性能です。同誌のロードテストでは5つ星評価を獲得し、信頼性調査でも99.7%という高いディペンダビリティ・レーティングを記録している点も加点材料になりました。1.0L時代の71bhpから114bhp(116DIN ps)へ出力が跳ね上がり、0-62mph(0-約100km/h)が9.2秒まで短縮されたことで、「遅さ」という積年の弱点が解消された点が決め手になったと言えます。Aセグメントのエントリーモデルが総合誌のクラス賞を獲る例は多くなく、ハイブリッド化がいかに商品力を押し上げたかを示す出来事です。
アイゴXハイブリッドは英国で21,595ポンドから 2025年12月受注開始・2026年1月納車開始
トヨタは2025年11月25日にアイゴXハイブリッドの英国向け価格と装備を公表し、12月1日から受注を開始しました。オン・ザ・ロード価格は21,595ポンドからで、顧客への納車は2026年1月にスタートしています。
グレードは下から「Icon」「Design」「Excel」「GR SPORT」の4本立てで、従来の「Pure」「Edge」「Exclusive」「JBLスペシャルエディション」という体系から刷新されました。エントリーのIconでも切削光輝仕上げの17インチアルミ、7インチのデジタルコンビメーター、オートエアコン、リサイクル素材のシート表皮、USB-Cポート2口、9インチのマルチメディアが標準。上位のExcelとGR SPORTでは10.5インチへ拡大します。先進安全のトヨタ・セーフティ・センスも刷新され、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール、緊急時操舵回避に対応するドライバー異常時対応システム、プロアクティブドライビングアシストなどが加わりました。
生産は2025年11月13日、チェコ共和国コリーンのトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・チェコ(TMMCZ)で立ち上がっています。同工場でのアイゴ生産開始は2005年2月ですから、ちょうど20年の節目でハイブリッドへ移行した格好です。トヨタ・モーター・ヨーロッパは同工場を将来のBEV生産に向けた準備段階にあるとしており、アイゴXの次の一手がバッテリーEVになる可能性は小さくないと見ています。
アイゴXが2025年6月2日に大幅改良 1.5Lハイブリッド化で116ps・MTは廃止
アイゴXの改良版は2025年6月2日に世界初公開されました。最大の変更は、初代アイゴから数えて20年使い続けた1.0L直列3気筒(1KR-B52型)を降ろし、ヤリス/ヤリスクロスと同じ1.5L直列3気筒ハイブリッド(M15A-FXE型)へ全面的に置き換えたことです。Aセグメントでフルハイブリッドを積む乗用車は事実上これが初めてで、CO2排出量は欧州値で86g/km、システム最高出力は85kW/116ps。従来型比で44psの上乗せとなり、0-100km/h加速は10秒を切ります。トランスミッションは電気式無段変速のみとなり、欧州小型車の定番だったMTは姿を消しました。
搭載上のハードルは、Aセグメントの車体にハイブリッド一式をどう収めるかでした。トヨタは電池セルを前後方向に積み上げるのではなく、リヤシート下に車幅方向へ並べて寝かせる新レイアウトを採用(トヨタのハイブリッド車では初)、12Vバッテリーはラゲッジ床下へ移設しています。この工夫でホイールベースは2,430mmのまま、荷室容量も231Lを確保。延長したのはフロントオーバーハングの76mmのみに留めました。
走りの面では四輪ディスクブレーキ化(従来リヤはドラム)、サスペンション・ステアリングの再チューニング、5m未満の最小回転半径といった実用域の改良が入りました。内装は7インチのデジタルメーター、電動パーキングブレーキ、USB-Cポート2口を標準化し、ワイヤレス充電、デジタルキー、nanoe™ Xによる空気清浄をオプション設定。新設のGR SPORTグレードは専用の外装意匠で走りのイメージを担います。生産・物流・素材の見直しも合わせ、ライフサイクル全体のCO2フットプリントは先代比18%減としています。
特別仕様車「アイゴX JBL」を2024年10月11日にオンライン受注開始
ハイブリッド化の前年、2024年10月11日には欧州の一部市場で特別仕様車「アイゴX JBL」がオンライン受注を開始しました。従来はエクスクルーシブ系のオプション扱いだったJBLプレミアムサウンドシステムを標準装備化したのが主眼で、フロントドアのフルレンジスピーカーとAピラーの25mmツイーター、リヤの200mmサブウーファー、助手席下の6チャンネル300Wアンプという構成です。
外装は新色ジャスミンシルバーとブラックのバイトーンで、フロント・リヤ・サイドのアンダーランにブラックの加飾を配し、18インチのブラック/ダークジャスミンアルミホイールを装着。テールゲートとリヤクォーターにJBLのロゴをあしらい、内装のシートバックにもロゴを配しています。ローンチに合わせて「The Sound of Noise」と題した3曲構成のプレイリストが配信されるなど、音を軸にしたプロモーションが展開されました。
2代目アイゴが2018年にマイナーチェンジ 全長3.5mの小型ハッチバック
ここからは、この記事のもともとの主題である2代目アイゴ後期型の内容です。欧州で販売されていたトヨタのAセグメントカー「アイゴ」は、ジュネーブモーターショー2018での発表を経てマイナーチェンジを受け、2018年6月4日に欧州で販売が始まりました。
初代は2005年から2014年、2代目は2014年4月からの販売でしたので、およそ4年でのマイナーチェンジということになります。なお2代目の生産は2021年に終了しており、以下の内容は当時の情報である点にご留意ください。
2代目アイゴ後期型のエクステリアやインテリア、搭載装備や発売日・価格帯、日本発売の可否について、順に見ていきます。
特別モデルのアイゴ「x-style」と「x-cite」がジュネーブモーターショー2019でお披露目
ジュネーブモーターショー2019では、アイゴの「x-style」と「x-cite」がトヨタモーターヨーロッパの発表とともに初披露されました。
「x-cite」のボディカラーは鮮やかなオレンジをベースに、フロントスポイラーやルーフ、ドアミラーをブラックで締めることで、オレンジがいっそう際立つ仕立てになっています。
「x-style」はホワイトを基調とし、フロントバンパー、電動キャンバストップ、ドアミラー、ボディサイドにアクセントとしてダークオレンジを配色。存在感のあるエクステリアに仕上げられました。
インテリアは「x-style」「x-cite」ともにブラックを基調にオレンジのアクセントを効かせた配色で、特別感を演出していました。
また、予防安全パッケージ「トヨタ・セーフティ・センス」の当時の最新版を標準搭載。10〜80km/hでの走行中に衝突の危険を検知するとドライバーへ警報を出し、反応がなければ自動でブレーキが作動します。ウインカー操作なしで車線を逸脱した際にも警報で知らせる仕組みでした。
マイナーチェンジした2代目アイゴのエクステリアはライト位置やバンパー形状を変更
2代目アイゴのエクステリアは、当時のヴィッツ(現在のヤリス)をひと回り小さくしたようなスタイリングで、3ドアと5ドアが用意されていました。ヘッドライトの外周を縁取るようにLEDが配置され、先進的な表情をつくっています。前期型ではバンパー内にLEDデイライトが組み込まれているのに対し、後期型ではその位置から消えているのが分かります。
リアビューでは、マイナーチェンジの前後でテールランプの造形が変わっていることが見て取れます。MC前は上部がテールランプ、下部がウインカーとバックランプという構成と考えられますが、後期型ではテールランプとバックランプの間にLEDのラインが入るように見えます。後期型は縦方向へ跳ね上がるテールランプ形状によって、後ろ姿のワイド感を強調する狙いだったようです。
2代目前期型のボディサイズは全長3,455mm、全幅1,615mm、全高1,460mmのコンパクトサイズで、当時のヴィッツよりもひと回り小さい寸法でした。
| アイゴ | ヴィッツ | |
|---|---|---|
| 全長 | 3,455mm | 3,945mm |
| 全幅 | 1,615mm | 1,695mm |
| 全高 | 1,460mm | 1,530mm |
| ホイールベース | 2,340mm | 2,510mm |
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White Flash -
Red Pop -
Electro Grey -
Silver Sparkle -
Bold Black -
Dark Blue Twinkle -
Cyan Splash
ボディカラーは当時7色設定で、ホワイトやシルバーといった定番色に加え、赤や水色といった愛嬌のある色も揃えられていました。
2代目アイゴはマイナーチェンジでポップで親しみやすいカラーのインテリアに進化
後期型アイゴのインテリアは、ブルーのアクセントを効かせたポップなデザインで、青のほかオレンジなどの設定も用意されていました。写真の個体のトランスミッションはマニュアルで、センタークラスターにはディスプレイオーディオ、ハザードスイッチ、エアコンコントローラーが配されています。
センターコンソールは持たずハンドブレーキが立つレイアウトで、ドリンクホルダー類はセンタークラスター下部に備わると考えられます。
2代目アイゴ後期型は欧州市場で2018年6月4日から販売 当時、日本発売の予定はなし
後期型も前期型と同じ1KR型を継続採用しました。排気量998ccの1.0L直列3気筒で、圧縮比の見直し、デュアルインジェクター、クールドEGR、バランスシャフトの改良、低フリクション部品の採用などによってEuro 6.2に適合させ、最高出力は前期型の69PSから72PSへ、わずかながら引き上げられています。
| 前期型 | 後期型(2018年MC後) | |
|---|---|---|
| 型式 | 1KR | 1KR |
| 種類 | 直列3気筒 | 直列3気筒 |
| 排気量 | 998cc | 998cc |
| 最大出力 | 51kW(69PS)/6,000rpm | 53kW(72PS)/6,000rpm |
| 最大トルク | 95Nm/4,300rpm | 93Nm/4,400rpm |
1KR系は日本のパッソにも搭載されていたエンジンの仲間にあたります。トランスミッションは5速MTと5速のオートマチックMT(シングルクラッチ式)で、MTが根強い欧州らしいラインナップでした。なお、この1.0Lは3代目アイゴXにも1KR-B52型として引き継がれましたが、前述のとおり2025年の改良で1.5Lハイブリッドに置き換えられ、20年にわたる1KR時代に幕が下りています。
2代目アイゴ後期型はジュネーブモーターショー2018での発表を経て、2018年6月4日に発売されました。
当時、海外専売車であるアイゴの日本発売について公式アナウンスはなく、その状況は3代目アイゴXへ移行し、ハイブリッド化された現在も変わっていません。
欧州で展開されているアイゴのモデルチェンジ遍歴
アイゴはトヨタが欧州で展開してきたAセグメントの乗用車です。3代目からは「アイゴX(クロス)」へ改称され、クロスオーバー路線に舵を切りました。ヤリスの下に位置づけられる、欧州トヨタで最も手の届きやすいモデルです。
アイゴ 初代 AB10型/2005年~2014年
2005年2月、アイゴの生産がチェコのコリーン工場(当時はトヨタとPSAの合弁TPCA)でスタートし、3月のジュネーブモーターショーで公開されました。シトロエンC1、プジョー107と基本を共有する軽量・低コストなモデルです。
2009年1月にはマイナーチェンジを実施し、フロントバンパーとテールランプが変更されました。
2012年春には2度目のマイナーチェンジを実施し、ディーゼルエンジンモデルの廃止とフロントバンパー形状の変更が行われています。
アイゴ 2代目 AB40型/2014年~2021年
2014年3月のジュネーブモーターショーで発表され、5月27日に生産を開始。若者層を狙ったスタイリングで、日本の若者文化やマンガの意匠が発想源になったと説明されました。3ドアと5ドアを設定し、シトロエンC1、プジョー108が兄弟車にあたります。
2018年3月、ジュネーブモーターショー2018でマイナーチェンジ版を公開し、6月4日に欧州で発売。立体的な「X」フェイス、LEDデイライト、縦に跳ね上がるテールランプへ改め、1.0LエンジンはEuro 6.2適合とともに69PSから72PSへ出力を高めました。
2019年3月、ジュネーブモーターショー2019で特別モデル「x-style」「x-cite」を披露。
2021年、特別仕様車「x-sport」をスペインで設定し、ボディカラーも追加されました。同年、生産を終了。販売在庫の消化は2022年まで続き、後継は3代目アイゴXとなります。
アイゴ 3代目(アイゴX) AB70型/2022年~
2021年3月17日にコンセプト「アイゴX プロローグ」を公開し、同年11月5日に市販版「アイゴX」を発表。GA-Bプラットフォームの短縮版を用い、PSA(現ステランティス)との合弁解消によって兄弟車を持たない独自モデルとなりました。2022年1月にスペインで予約受注が始まり、3月に生産開始、4月から欧州各国で納車。ボディカラーの新色追加も行われました。11月にはキャンバストップを備える「エア エディション」をイギリスでオンライン限定販売。
2023年3月、アパレルブランドとコラボした特別仕様車「UNDERCOVER」を5,000台限定で発売。
2024年10月11日、JBLプレミアムサウンドを標準化した特別仕様車「アイゴX JBL」を欧州の一部市場でオンライン受注開始。
2025年6月2日、大幅改良を発表。1.0Lガソリンを廃して1.5Lハイブリッド(M15A-FXE型)専用とし、システム出力116ps、CO2排出量86g/km(欧州値)、フロントオーバーハングを76mm延長、リヤをディスクブレーキ化、GR SPORTグレードを新設。MTは廃止されました。11月13日にTMMCZで生産を開始し、2025年末から欧州で順次発売。英国では11月25日に価格を公表(21,595ポンド〜)、12月1日受注開始、2026年1月から納車を開始しています。
2026年1月、What Car? Awards 2026でスモールカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
| アイゴのモデル | 販売年表 |
|---|---|
| 初代 AB10型 | 2005年~2014年 |
| 2代目 AB40型 | 2014年~2021年(生産終了。販売は2022年まで) |
| 3代目 AB70型(アイゴX) | 2022年~現在(2025年にハイブリッド専用化) |
アイゴX/アイゴXハイブリッドが日本で発売される可能性は現在も低い
2018年時点の本記事は「アイゴはパッソと競合するため、日本発売の可能性は限りなく低い」と予想していました。この読みは結果として当たり、アイゴもアイゴXも日本には導入されていません。ただし前提は変わっています。競合相手として挙げたパッソは2023年9月下旬に生産を終え、10月末で販売も終了。後継車は現れておらず、実質的にヤリスのガソリン仕様が受け皿となりました。つまり「パッソと食い合うから入らない」という当時の根拠は、すでに成立していません。
それでも導入の可能性は低いままだと見ています。理由は三つです。第一に、アイゴXは欧州で企画・設計・生産まで完結した左ハンドル前提のモデルで、右ハンドル化と日本の認証対応にかかるコストを、Aセグメントの薄い利幅で回収するのは難しいこと。第二に、全長3,700mm・全幅1,740mm級のアイゴXは日本では5ナンバー枠こそ収まるものの、軽自動車とヤリスに挟まれる価格帯(欧州価格から素直に換算すれば300万円台後半に届きかねません)で居場所を見つけにくいこと。第三に、日本のエントリー層はダイハツ製の軽自動車とヤリスで手当てするというトヨタの車種整理の流れが、パッソ終了以降も変わっていないことです。
むしろ注目すべきは、アイゴXを生産するコリーン工場が将来のBEV生産の準備段階に入っている点でしょう。トヨタが公式に「次期アイゴXはEV」と述べたわけではありませんが、2035年に西欧の新車CO2を100%削減する目標を掲げていること、Aセグメントでは電動化コストが価格に跳ねやすいことを踏まえると、次の世代でバッテリーEVへ踏み込む可能性は高いと見る余地があります。かつてIQを思い起こさせた小さなアイゴは、今やAセグメント初のフルハイブリッドという看板を背負い、欧州のシティカーの中でも独自の立ち位置を築いています。