アドブルーはクリーンディーゼルに必要なNOx還元剤
アドブルーとは、ディーゼルエンジンが排出する窒素酸化物(NOx)を水と窒素に変えるために使う高品位尿素水のことで、次世代のクリーンディーゼルエンジンに搭載されている「尿素SCRシステム」に欠かせない液体です。
国産車では、トヨタのディーゼルエンジンを搭載している「ランドクルーザー プラド」、「ハイラックス」、「ハイエース」などの車種、三菱車では「デリカD:5」(2019年2月以降のモデル)と「エクリプスクロス」に搭載されています。
ここでは、それぞれの車種のアドブルータンク容量や、搭載していないディーゼル車がどのようにNOxを低減しているのかを紹介します。
尿素SCRシステムでアドブルーを触媒内に噴射して窒素酸化物を低減
アドブルーは、尿素SCRシステムに使われる高品位尿素水のことで、触媒内で排気ガスにアドブルーを噴射し、窒素酸化物(NOx)を水や窒素に変える装置が尿素SCRシステムです。アドブルーを噴射されたNOxは複数の触媒を通って最終的には、水(水蒸気)や窒素、二酸化炭素になりマフラーから排出されます。
アドブルータンクを使ってNOxを低減している車種は、タンクにアドブルーが入っていないとエンジンを再始動できないように制御されるため、定期的な補充が必要となります。
アドブルーの補充方法は簡単!アドブルー警告灯が点灯したら自分でやってみよう
トヨタのランドクルーザープラドやハイラックス・ハイエースのディーゼルエンジン搭載車に装備されている尿素SCRシステムは、充填しているアドブルーが不足するとエンジンを再始動することができません。しかし、アドブルーが足りている時は補充する必要はなく、アドブルー残量警告などが出たときが補充するタイミングです。
用意するものはアドブルーとジョウゴの2つのみで、アドブルーは保存しにくいため、購入した分を使い切るのがおすすめです。乗っている車のアドブルータンク容量に合わせた量を購入してください。
アドブルー残量警告が出たらタンクの容量を調べて「アドブルー」と「ジョウゴ」を購入
アドブルーはマイナス11℃以下の気温では凍結したり、開封後に何ヶ月も保存することが難しいため、購入した分を使い切りで運用したほうがお得です。アドブルー残量の警告が出たら、乗っている車のアドブルータンク容量を調べてから購入するほうがいいでしょう。
ジョウゴも太い差し込み口のものを購入するとアドブルー補充口にハマらないこともありますので、ある程度細いものがおすすめです。
代表的な国産車のアドブルータンク容量
- ランドクルーザープラド:12L
- ハイラックス:13L
- ハイエース:7.4L
- デリカD:5:16L
- エクリプスクロス:16L
分からない時は、必ず満タンにしなくてもいいため5L分(約5,000km走行可能)だけ補充し、警告が出たらその都度5Lを補充する方法がおすすめです。
エンジンを停止させボンネットを開けてアドブルーの補充口を探してDIYで補充してみよう
安全のためにエンジンを切ったらボンネットを開けてAd Blueの補充口を探してみましょう。アドブルーの補充口は青い筒状のキャップが付いているため、すぐに見つけられると思います。エンジンルーム内に無かったらガソリンを補充する給油口付近にある場合もあります。
ランドクルーザープラドの場合はエンジンルーム内にアドブルー補充口があり、キャップを外すと注入口が見えます。そこにジョウゴを差し込みゆっくりと補充していきます。コーヒードリップのようにゆっくりと補充するのがコツで、一気にアドブルーをドバッと入れるとあふれるため注意してください。
アドブルーの補充が終わったらキャップを確実に閉めたか確認してボンネットを閉める
アドブルーの補充が無事に終わったら、しっかりとキャップを閉めたか確認してからボンネットを閉じてください。もししっかりと閉まっていないと走行中に緩んでキャップが外れるなどのトラブルが起こる可能性があります。ボンネットを閉めたらエンジンをかけてアドブルー警告灯が消えているか確認して終了です。
アドブルーを補充し終わった後は、手荒れなどをする場合があるため、しっかりと石鹸を使って手を洗ってください。
アドブルーによる尿素SCRシステムを搭載する国産ディーゼル車
日本国内メーカーでもディーゼルエンジンを搭載している車種が増えてきており、その中でもアドブルーを使う車種と使わない車種があります。アドブルーを使ってNOxを低減している車種をチェックしておきましょう。
ランドクルーザー プラド
ランドクルーザー プラドのディーゼルモデルには「1GD-FTV」のエンジンと、尿素SCRシステムが搭載されていて、排気ガスを酸化触媒とDPR触媒(粒子状物質除去フィルター)でPMを低減したあと、尿素水SCR触媒でNOxを水と窒素に還元します。
ランドクルーザープラドのアドブルーは1,000km走行すると1リットル消費し、12,000kmほどで無くなるため12リットルのタンク容量があります。走行可能距離が5,000km以下になると警告してくれるので、トヨタディーラーなどで補充しましょう。
なお、以前ディーラーでアドブルーを補充した際は、10リットルで2,200円(安い時期でしたので現在この価格ではない可能性があります)でコーヒー付きでした。自分でアドブルーを購入しても価格に大差ない場合や、作業予約なしでも受け付けてくれる場合があるため、アドブルーの補充はディーラーを活用するのもおすすめです。
ハイラックス
ハイラックスは2017年9月に日本でもモデルチェンジした車種で、国内の車種で唯一のピックアップトラックです。搭載しているエンジンは「2GD-FTV」で、ランドクルーザープラドと同様の尿素SCRシステムを搭載しています。
ハイラックスのアドブルーは、1,000km走行で1リットルを消費し、13,000kmほどで無くなるため13リットルのタンク容量があります。警告は6,000kmからしてくれるので、仕事で遠出している時でも安心ですし、年間1万km以内の走行なら年に1回補充するだけで済みます。
ハイエース
2017年12月に新型のディーゼルエンジン搭載や、トヨタセーフティセンスPの搭載で安全面が強化されたハイエースには、ランドクルーザープラドと同様の「1GD-FTV」エンジンが搭載されています。
ハイエースのアドブルータンクは7.4リットルと、プラドやハイラックスに比べて小さめで、1,000kmで1リットルとすると、7,400kmで空になる計算です。そのため、半年に1度などこまめな補充が必要になります。
デリカD:5、エクリプスクロス(三菱車)
三菱車では、デリカD:5(2019年2月以降のモデル)とエクリプスクロスのディーゼルモデルに尿素SCRシステムが搭載されています。どちらもアドブルータンク容量は16Lと比較的大きく、補充頻度は少なめです。
アドブルーを使用しない国産ディーゼル車
国内メーカーのディーゼル車でもアドブルーを使った尿素SCRシステムを搭載しない車種もあります。どのような車種があるのか、どうやってNOxを低減しているのかチェックしてみましょう。
パジェロ(生産終了モデル)
パジェロは2006年にモデルチェンジしたモデルで、2008年10月からディーゼルエンジンが復活しています(現在は生産終了)。従来のエンジンよりNOxやPMを低減したクリーンディーゼルエンジンを搭載しています。
型式は4M41で排気量は3,200cc、最高出力は190PS、最大トルクは450Nmあり、排気ガスを酸化触媒、NOxトラップ触媒、DPF(粒子状物質除去フィルター)、酸化触媒の順番に通してクリーンなガスを排出します。
デリカD:5(2019年01月までのモデル)
デリカD5は2007年から販売を開始したモデルで、2012年にディーゼルエンジンが追加されました(2019年1月までのモデル)。4N14型エンジンは、排気量が2,267cc、最高出力は148PS、最大トルクは360Nmです。
パジェロと同様に、DPFやNOxトラップ触媒によりPMやNOxを低減したクリーンディーゼルエンジンを搭載しており、アドブルーは必要としません。ただし、新型デリカD:5(2019年02月以降のCV1W)では尿素SCRシステムが採用され、アドブルーが必要となります。
SKYACTIV-Dエンジン搭載車(マツダ車)
マツダのCXシリーズやMAZDA2(デミオ)、MAZDA3(アクセラ)・MAZDA6(アテンザ)などに搭載されているディーゼルエンジンである「SKYACTIV-D」も、排気ガスがクリーンなディーゼルエンジンとして有名です。
マツダのクリーンディーゼルエンジンは、低圧縮比化による均等な燃焼や、2ステージターボチャージャーによる排気ガスのクリーン化などにより、NOxの発生そのものを抑えることで、尿素SCRシステムを使わずとも規制をクリアしたクリーンなエンジンになっています。
2021年末に起きたアドブルーの不足問題は大丈夫か?
アドブルーの製造にはアンモニアが使われており、そのアンモニアの精製には石炭が使われています。
2021年末、アドブルーの原料となる尿素の主な生産国である中国が、国内の尿素不足を理由に輸出制限を行ったことにより、日本国内でもアドブルーが一時的に不足する問題が発生しました。これは、中国が石炭輸入をストップしたことや、国内での自然災害が重なり、尿素の精製が間に合わなくなったことが発端でした。
日本のアドブルーは三井物産プラスチックなどが輸入により供給していましたが、中国の輸出停止問題によってアドブルーの供給が不足していきました。
しかし、日本はもともと国内需要を賄えるだけのアドブルーの精製能力があり、国内でアドブルーを製造する三井化学などがアドブルーの増産に踏み切り、1月からは供給量が正常化する見通しと発表されました。
国内生産事業者をはじめとする関係者との連携によって日本でのアドブルーの不足問題は解決する見通しと経済産業省が発表し、不足問題は解消されました。
アドブルーは警告灯が付いてから補充するのでも十分間に合う
尿素SCRシステムを搭載したディーゼルエンジンは、トヨタでは「ランドクルーザー プラド」、「ハイラックス」、「ハイエース」、三菱では「デリカD:5」「エクリプスクロス」などとなっています。
尿素SCRシステムを搭載している車種は、アドブルーが切れた状態でエンジンを切ると再始動できなくなる問題がありますが、AdBlueタンク満タンの状態からプラドで12,000km、ハイラックスで13,000km、ハイエースで7,400kmとかなり余裕があります。また、アドブルーの警告灯が付いてからも2,000km走行できる猶予があるため、慌てずに補充しても十分に間に合います。
アドブルーの警告灯が付いたら毎回エンジン始動の度に警告が出るため、きちんと忘れずに補充することで、タンクが空になりエンジン始動ができなくなるトラブルを防ぐことができます。