S1000のモデルチェンジ

ホンダS1000は2026年も未発売 EV100%撤回でBEV化予想も消滅、答えは617万円のプレリュードか

ホンダS1000は結局発売されたのか。答えは未発売で、S660の普通車版が出る気配はありません。代わりに登場したのが617万9800円のプレリュード。ライバルと目されたトヨタS-FRも未市販のままです。

ホンダS1000は2026年も未発売 EV100%撤回でBEV化予想も消滅、答えは617万円のプレリュードか

ホンダS1000は2026年7月時点で未発売 公式発表もなく実現の可能性は遠のく

ホンダが発売していた2シーターオープンの軽自動車「S660」の普通車版として、「S1000」の登場が長く噂されてきました。2009年に生産を終えたFRスポーツカー「S2000」の再来を予感させた2シータースポーツカーのS660(2022年3月に生産終了)は、根強い支持を集めていたモデルです。

そこで、日本でのみ生産される軽自動車ではなく、グローバルに展開するにあたりエンジン排気量を拡大した「S1000」が開発されているという話が出てきました。ここでは、当時語られたS1000の予想エクステリアや搭載エンジン、価格帯を整理しつつ、その後どうなったのかを追いかけていきます。

先に結論を書いておくと、2026年7月時点で、ホンダからS1000に関する公式発表は一度も行われておらず、市販化もされていません。噂が最初に盛り上がった2017年の東京モーターショーから数えると、すでに9年近くが経過しました。その間にホンダの商品計画は大きく方向を変えており、S1000という車名が実際に世に出る可能性は、当時よりもさらに低くなったと見るのが自然です。

ホンダが2040年のEV・FCV100%目標を撤回 S1000のBEV化予想は前提から崩れる

S1000がBEV(電気自動車)として登場するかもしれない、という予想の土台にあったのは、ホンダが2021年4月に掲げた「2040年に新車販売のすべてをEVとFCVにする」という宣言でした。しかし、この前提そのものが2026年に消滅しています。

まず2026年3月12日、ホンダは北米で生産を予定していたEV3車種「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」の開発・発売中止を決定。三部敏宏社長は2040年のEV・FCV100%について「現実的には達成困難」と述べ、長期ロードマップの引き直しに着手したことを明らかにしました。この戦略見直しに伴う損失は最大2兆5,000億円と試算されています。

そして2026年5月14日に発表された「2026 ビジネスアップデート」で、ホンダは2040年度のEV・FCV100%という目標を正式に撤回しました。2025年度(2026年3月期)の連結決算は、EV関連損失1兆4,536億円を計上した結果、営業損益4,143億円の赤字、当期損益4,239億円の赤字となり、上場以来初めての赤字決算となっています。今後は2030年度までHEV(ハイブリッド車)を四輪事業の中核に据え、EV向けに配分していた資源をハイブリッドへ振り向ける方針です。3年間の資源投入額6.2兆円のうち、EV投資は0.8兆円規模に抑え、ICEとハイブリッドに4.4兆円を充てるとしています。

この文脈で考えると、「脱エンジンの流れでS1000もBEVになるのでは」という当時の読み筋は、根拠そのものが失われたことになります。かといってエンジン版が浮上したという話も出ておらず、いずれの形でも動きは見えていない、というのが現状です。

ホンダのスペシャリティスポーツ枠はプレリュードが埋めた 2025年9月5日に24年ぶり復活し617万9800円

S1000を待ち望む声が続くなか、ホンダが実際に投入したスポーツモデルはプレリュードでした。2025年9月4日に発表、翌9月5日に発売され、2001年の生産終了から実に24年ぶりの復活を遂げています。

グランドコンセプトは「UNLIMITED GLIDE」。パワートレインは2モーターハイブリッド「e:HEV」で、仮想8段変速によってダイレクトな駆動レスポンスを生む新機能「Honda S+ Shift」をブランド初採用しました。シャシーはシビックTYPE Rをベースに専用セッティングを施し、ブレンボ製大容量ブレーキや19インチホイールを標準装備しています。

ボディサイズは全長4,520mm×全幅1,880mm、グレードは1種類のみで価格は6,179,800円(税込)。オンラインストア「Honda ON」専用の数量限定モデル「Honda ON Limited Edition」は6,480,100円です。月販計画は300台と、量を狙わない象徴的な位置づけになっています。

「300万円前後の軽量ミッドシップオープン」を期待していた層からすると、600万円超のFFハイブリッドクーペというのは、正直まったく別の答えです。ただ、ホンダが電動化時代に「操る喜び」をどう残すのかという問いに対して、現実的な回答を出したのがプレリュードだったとも言えます。S1000に割かれるはずだった開発資源が、こちらへ流れたと見るのは自然な解釈でしょう。

ホンダS1000の予想エクステリア ボディサイズは5ナンバー枠に収まるとされていた

S1000の予想エクステリア

S1000のエクステリアは、S660をベースとしてロング・ワイド化されたボディになると予想されていました。S660は軽自動車枠いっぱいのボディサイズでしたが、S1000では5ナンバー枠の車幅になり、全長も少し拡大されると考えられていました。

S1000の予想ボディサイズ(当時の予想値)
全長 4,100mm
全幅 1,695mm
全高 1,190mm

ボディサイズは全長4,100mm、全幅1,695mm、全高1,190mmの5ナンバー枠に収めるという読みでした。2017年に販売を終えたハイブリッドカー「CR-Z」と近いサイズ感ですが、CR-Zは全幅が1,700mmを超えるため3ナンバー枠です。
なお、S1000の予想ボディサイズは媒体によって幅があり、全長3,500mm前後というS660にごく近い数値を挙げるものもありました。公式情報が一切存在しない以上、これらはあくまで各社の推測の域を出ません。

ボディタイプは、S660と同様にタルガトップの2シーターオープンになると見られていました。S660と比べてワイドボディ化するぶん、フロントトランクルームの容量も増えると考えられていました。

ホンダS1000の予想搭載エンジンは1.0L直列3気筒 BEV化の可能性も語られたが方針転換で立ち消えに

S1000に搭載されると予想されたエンジン

S1000に搭載されるエンジンは、直列3気筒1,000ccのVTECターボエンジンという予想が主流でした。S660は軽自動車であるため最高出力は64PSに抑えられていますが、S1000では約2倍の128PSになり、最大トルクも196Nmまで引き上げられるという見立てです。

トランスミッションはS660と同じくCVTと6速マニュアルが用意され、燃費は30.0km/Lを目標に、駆動方式はS660からの流れを汲んで「MR」を採用する、というのが当時の読みでした。
ただし、この予想の根拠とされた1.0L直3ターボは、その後もフィットやヴェゼルといった主力車種に採用されておらず、S1000に載る前提そのものが宙に浮いた形です。

S1000の予想エンジン(当時の予想値)
種類 直列3気筒VTECターボ
排気量 998cc
最大出力 128PS
最大トルク 196Nm

もう一つ語られていたのが、100%モーターで走るBEV(電気自動車)になるという予想です。
カーボンニュートラルを目指すホンダは、かつて2040年までにEVとFCVの比率を100%にすることで脱エンジンを果たすと宣言していました。そのためS1000もエンジンを積まず、モーターで走るBEVに生まれ変わるのではないか、という筋書きです。
しかし前述のとおり、ホンダは2026年5月にこの100%目標を撤回し、2030年度まではハイブリッドを中核に据える方針へ舵を切りました。BEV版S1000という想定は、現時点では成立しづらくなっています。

ホンダS1000の予想価格は300万円前後だったが、現在のスポーツカー価格帯とは開きが生じている

S1000のボンネットの予想イメージ

S1000が発売された場合の価格についても考察されていました。
ライバルにトヨタの86、マツダのロードスターを想定した場合、当時の86は2,799,000円から、ロードスターは2,689,500円からという設定でしたから、S1000も300万円を切る価格をスターティングプライスにするのではないか、というのが妥当な線でした。
BEVになった場合は少し上がって340万円前後になるかもしれない、とも語られています。

ただ、この前提はすでに古くなっています。2026年7月時点で、後継のGR86は293万6000円から361万6000円、ロードスターは商品改良後で295万9000円から407万円という価格帯です。原材料費や安全装備の高度化を受け、ライトウェイトスポーツの入口価格そのものが押し上げられました。
仮にいまS1000が出るとしても、300万円を切る設定は現実的に難しく、プレリュードが617万9800円で登場したことを踏まえれば、400万円前後になっても不思議はないでしょう。

ホンダS1000のライバルはトヨタS-FRとマツダ ロードスターとされたが、S-FRも市販化されていない

S1000のライバルと目されたトヨタS-FRトヨタ・S-FR(2015年に公開されたコンセプトカー)

S1000のライバル マツダ ロードスターマツダ・ロードスター

ライバルとして想定されたのは、トヨタのライトウェイトスポーツカー「S-FR」と、マツダのロードスターでした。このうち実際に販売されているのはロードスターだけで、価格帯が重なることからスペック面でも価格面でもしのぎを削る相手になる、と考えられていました。

S1000と競合想定モデルの現状
S1000 ロードスター
現在の状況 未発売・公式発表なし 4代目(ND型)を販売中
発売時期 2015年(4代目)
駆動方式 MR(予想) FR
価格帯 250万~300万円(予想) 2,959,000円~4,070,000円

トヨタのS-FRは、2015年の東京モーターショーでコンセプトカーとして公開され、発売間近と噂されながら、2026年になっても市販化されていない幻のライトウェイトスポーツです。
2017年7月にトヨタ社内で正式に開発中止が決まったと伝えられており、その後も公式なアナウンスは一切ありません。近年になって「ダイハツやスズキと組んで開発が再開した」「2027年に登場する」といった話がささやかれてはいますが、公式発表の裏付けはなく、S1000と同様に噂の域を出ないままです。

一方、比較対象のロードスターは着実に歩みを進めています。2026年6月26日にはNDロードスターとロードスターRFの商品改良を発表し、同日から予約受付を開始。発売は2026年9月上旬が予定されています。最新の車外騒音規制へ対応しつつ、「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」で培った知見を織り込んだMT専用の特別仕様車「PS」を新設定し、新色ジンクグリーンメタリックも追加しました。累計販売は126万台を超えています。

結局のところ、S1000とS-FRという「出る出る」と言われ続けた2台は、どちらも一度も市販されないまま10年近くが過ぎました。ライトウェイトスポーツというカテゴリーで生き残ったのは、地道な改良を積み重ねてきたロードスターだけだった、というのが現実の答えでしょう。

ホンダS1000はグローバルモデルのS660になるはずだった

HONDA S1000

ホンダのS1000は、軽自動車枠であるS660を世界でも販売できるよう見据えたグローバルモデルになるはずでした。しかし、S660が2022年3月に生産を終えてから4年以上が経ち、その普通車版が登場する気配は今もありません。

周辺の噂についても、現時点の結論を書いておきます。BEVとして復活すると言われたNSXは、2026年7月時点でホンダから後継モデルの公式発表がなく、登場していません。S2000の復活や、その後継として語られた「ZSX」も同様で、いずれも実車として世に出ていない状態が続いています。
現在ホンダが国内で販売するスポーツモデルは、2025年9月に復活したプレリュードと、シビックTYPE Rが中心です。2026年5月の「2026 ビジネスアップデート」でハイブリッド重視へ舵を切ったことを踏まえると、次にホンダから出てくる走りのモデルも、e:HEVをベースにしたものになる可能性が高いと考えられます。
S1000という車名が復活する日が来るのかどうか。期待は残るものの、少なくとも現時点では、その手がかりは見当たりません。