BMW iNEXTは市販名「iX」として登場 2025年の大幅改良で航続723kmへ
開発コードネーム「iNEXT」で進められてきたBMWの次世代クロスオーバーEVは、2020年11月に市販名「BMW iX」として世界初公開され、2021年11月に日本発売を迎えました。2025年には大幅改良が加えられ、現在はiX xDrive60 Mスポーツ(1,498万円)とiX M70 xDrive(1,966万円)の2グレード体制で、BMWのフラッグシップEVとして販売が続いています。生産終了の予定は発表されていません。
ここではiXが辿ってきた道のりを新しい順に整理したうえで、ヴィジョンiNEXT時代から受け継がれた技術と、この一台が示した価値を振り返っていきます。
BMW iXは現行モデルとして継続 その下にノイエ・クラッセのiX3が加わる
iXは2026年に入っても現行モデルとして販売が続いており、フルモデルチェンジや生産終了の発表はありません。2025年の改良で内外装と電動パワートレインが刷新されたばかりで、当面はこの仕様が継続する見通しです。
一方でBMWのEV戦略そのものは次の段階へ進みました。次世代コンセプト「ノイエ・クラッセ」の第1弾となる新型iX3が2026年7月22日に日本発売され、価格は50 xDriveが982万円、50 xDrive M Sportが1,034万円。一充電走行距離は906kmに達し、第6世代BMW eDriveと800Vアーキテクチャを採用しています。数値だけを見ればiX3が上回る場面もありますが、ボディサイズはiX3が全長4,780mmであるのに対しiXは4,965mm。iXは車格とラグジュアリー性で明確に上位に立つフラッグシップという役割分担で、両者は併売されています。
2025年9月に日本で大幅改良モデルが登場 xDrive60は航続723kmでBMW最長
iXは2025年1月末に改良新型が世界初公開され、3月に米国で披露、春から順次販売が始まりました。グレード名は出力向上を反映して刷新され、従来のxDrive40/xDrive50/M60に代わりxDrive45/xDrive60/M70 xDriveの3本立てとなっています。新世代バッテリーセルの採用でバッテリー容量はxDrive45が94.8kWh(約30%増)、xDrive60が109.1kWh、M70が108.9kWhへ拡大。新設計のベアリングとインバーター、低転がり抵抗タイヤの採用で走行効率を約10%高め、WLTP航続距離は最長701kmに達しました。
日本ではビー・エム・ダブリューが2025年9月24日に注文受付を開始し、納車は同年11月から。導入されたのはiX xDrive60 Mスポーツ(1,498万円)とiX M70 xDrive(1,966万円)の2グレードです。xDrive60は一充電走行距離723km(WLTCモード)を実現し、これはBMWの日本導入モデルとして当時最長の数値でした。M70はシステム・トータル最大トルク1,015Nm(ローンチ・コントロール作動時1,100Nm)でBMW最強、システム出力は485kW(659ps)、0-100km/h加速は3.8秒、一充電走行距離は602kmです。
エクステリアは縦型4灯のデイタイム・ランニング・ライトと、発光演出「アイコニック・グロー」を組み合わせたキドニー・グリルで表情を一新。安全装備には最新の「ドライビング・アシスト・プロフェッショナル」が標準で備わります。
あわせて導入記念の限定車「iX M70 xDrive The First Edition」も設定されました。ボディカラーにiX初採用となるBMW Individualフローズン・ディープ・グレー、足元に23インチBMW Individualエアロダイナミック・ホイール1028I マルチカラー3Dポリッシュを special装備し、価格はベース比32万円高の1,998万円。日本全国5台限定で、受注は2025年10月16日まで、申込が予定台数を超えた場合は抽選という扱いでした。
2024年8月の一部改良でiX M60は1,788万円に
2024年は大きな設計変更こそなかったものの、装備の見直しと価格改定が実施されました。2024年8月1日付でラインナップが更新され、最上位のiX M60は1,740万円から1,788万円へ。カタログ諸元は同年3月14日付で改訂されています。
この時点でのラインナップはiX xDrive40(76.6kWh)、iX xDrive50(111.5kWh)、iX M60(111.5kWh)の3グレード構成。タイヤはxDrive40とxDrive50が255/50R21、M60が275/40R22という設定で、翌年の大幅改良までこの体制が維持されました。
2023年 日本では価格改定が中心 モデルそのものの変更はなし
2023年はフルモデルチェンジもパワートレインの刷新もなく、日本市場では価格と仕様の見直しが中心の一年でした。2023年4月27日にはiX xDrive50が1,398万円となり、2021年の発売当初の1,116万円から段階的な引き上げが続いた格好です。同年7月と11月にも仕様および価格の改定が行われています。
この間もソフトウェアはOTA(無線通信によるアップデート)で更新され続けており、購入後に機能が追加されていく点はiXが打ち出した価値のひとつでした。車載コンピューターの処理能力は従来モデル比で20倍、一度に処理できるセンサーデータ量は約2倍とされ、ハードウェア面ではレベル3自動運転にも対応可能な素地を備えています。
2022年 最上位「iX M60」が日本上陸 5月24日発売で1,740万円
iXの第3のバリエーションとなるiX M60は、2022年1月5日に米ラスベガスで開幕したCES 2022で初公開されました。最高出力619hp、最大トルク1,100Nm、0-100km/h加速3.8秒、電子制御による最高速度250km/h、WLTP航続距離は最長566km。M専用のサスペンションセットアップが与えられ、BMW i・BMW X・BMW M GmbHという3つの世界が交わるモデルという位置づけです。
日本発売は2022年5月24日、価格は1,740万円でした。これによりiXはxDrive40(981万円)、xDrive50(1,116万円)、M60の3グレード体制となります。
コネクティビティ面でも動きがありました。2022年3月、BMWとNTTドコモがiXおよびi4向けに、日本初となる5GとコンシューマeSIMに対応したコネクテッドカーサービスの提供を開始。スマートフォンを接続しなくても車内で音声通話やインターネット通信が利用できる環境が整いました。CES 2020で予告された5Gは、こうしたかたちで実際のサービスとして結実しています。同じ月には欧州で自動駐車システム「パーキング・アシスタント・プロフェッショナル」も導入されました。
2021年11月 BMW iXが日本発売 981万円から 日本カー・オブ・ザ・イヤーでデザイン賞
BMW iXは2021年11月4日に日本発売されました。価格はiX xDrive40が981万円、iX xDrive50が1,116万円。生産は予告どおりドイツのディンゴルフィング工場で行われ、5シリーズなどと同じラインで組み立てられています。エンジン車とプラットフォームを共通化するCLARベースの設計が、既存ラインの流用を可能にしました。
評価も伴いました。2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーで10ベストカーに選出され、あわせてデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
一方、開発段階で語られていたレベル3の自動運転は、発売時点では搭載されませんでした。実際に利用できるのは交通標識や歩行者を認識するレーンキープアシストやアダプティブ・クルーズ・コントロールを含むレベル2+相当の運転支援システムで、レベル3は将来のソフトウェア更新に委ねられるかたちとなっています。
2020年11月 iNEXTの市販モデルは「BMW iX」として世界初公開
BMWは2020年11月11日、デジタルイベント「#NEXTGen 2020」において、iNEXTの名で開発が進められてきた新世代電動クロスオーバーSUVを「BMW iX」として世界初公開しました。ヴィジョンiNEXTのコンセプトを市販モデルへ落とし込んだ一台です。
公表されたスペックは、第5世代BMW eDriveテクノロジーによる2基の電気モーターでシステム出力370kW(500ps)以上、0-100km/h加速は5秒未満。エネルギー量100kWh以上の高電圧バッテリーによりWLTPで600km以上の航続距離を確保します。充電性能は最大200kWのDC急速充電に対応し、バッテリー容量の10〜80%までを約40分で、10分の充電で120km分の航続距離を回復できるという内容でした。
発表時点では量産開発段階であり、市場投入は2021年後半とアナウンス。生産はドイツ・ディンゴルフィング工場で、同工場は電動車の生産拠点として面積を大幅に拡張する計画が示されていました。
BMWの次世代EV車「iNEXT」の基本スペック
BMW iNEXTは、BMWグループが2018年秋にロサンゼルスモーターショー2018でワールドプレミアした「BMWヴィジョンiNEXT」の市販モデルにあたるクロスオーバーSUVです。開発期間中は一貫して「iNEXT」の名で呼ばれ、2020年11月の正式発表で市販名が「iX」に決まりました。
BMWグループは2025年までに25車種の電動化モデルをラインナップする戦略を掲げており、そのうち12車種がEV、13車種がPHVやハイブリッドという構想でした。iNEXTはその中核として開発されたモデルです。
2021年に登場したBMW i4とは第5世代BMW eDriveテクノロジーを共有し、1回の充電による航続可能距離は600km以上を達成。車載コンピューターはレベル3の自動運転に対応可能な処理能力を備えますが、実際にレベル3の機能が搭載されて発売されたわけではなく、市販時点ではレベル2+相当の運転支援システムが提供されています。
BMWがiNEXTのプロトタイプイメージを公開
BMWは開発の途上で、次世代クロスオーバーEV「iNEXT」のプロトタイプが砂漠地帯で耐熱テストを行う画像を公開しました。極端な高温環境でバッテリーと熱管理システムを追い込む工程で、市販車ではヒートポンプを用いた熱管理により走行中のバッテリー温度制御と急速充電前のプレコンディショニングが行われています。
iNEXTは1度の充電で600km超の航続距離を達成し、レベル3相当の自動運転にも対応可能な演算能力を備える一台として開発されました。キャビン内には新開発のカーブドディスプレイを採用したデジタルコックピットや多角形のステアリングホイール、音声アシストシステム「BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント」といった装備が盛り込まれています。生産は予定どおり2021年からドイツのディンゴルフィング工場で開始されました。
BMWがCES2020でiNEXTに5Gテクノロジーを搭載すると公表
ラスベガスで開催されたCES2020で、BMWはiNEXTに「5Gテクノロジー」を搭載することを明らかにしました。5Gはレベル3以上の自動運転に欠かせない技術で、その他の快適機能やエンターテインメント機能の強化にも貢献します。クラウドベースのゲームやテレビ会議なども想定されていました。
このアナウンスは実際の製品として結実し、市販されたiXには5G通信機能が搭載され、無線通信によるソフトウェアアップデートに対応しています。日本では2022年3月にNTTドコモと連携した5G・コンシューマeSIM対応のコネクテッドサービスが始まりました。
プロトタイプは最大100台が製造されて世界各地でのテストに投入され、正式な生産は2021年からドイツ・ディンゴルフィング工場で行われています。
フランクフルトモーターショー2019でBMWが「ヴィジョンiNEXT」を出展
フランクフルトモーターショー2019では、BMW「ヴィジョンiNEXT」が新型EVモデルiNEXTを示唆するコンセプトカーとして出展されました。
ヴィジョンiNEXTはローズカラーのボディを纏い、インテリジェンスパネルの役割を担う大型のキドニーグリルを搭載。切れ長のヘッドライトがスタイリッシュなエクステリアデザインです。左右のドアは観音開きとなっていてBピラーがありません。
ヴィジョンiNEXTでは手動運転の「ブースト」と自動運転の「イージー」の2つの走行モードを選択できました。ブーストモードをセレクトすると運転手主体のコックピットレイアウトとなり、イージーモードを選ぶとステアリングが後退し、広々とした空間へと切り替わります。
また、ヴィジョンiNEXTには「BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント」を搭載。「ハイ、BMW」と声をかけるとシステムが起動し、走行中もスマートかつ安全に操作できます。観音開きドアのような要素は量産化に際して見送られましたが、大型キドニーグリルと一体型ディスプレイという骨格は、そのままiXへ引き継がれました。
BMWがついに新型EVモデル「iNEXT」のプロトタイプを正式に公開
独BMWは2019年8月20日、BMWのパイロットプラントで製造されているiNEXTの写真を初公開しました。
このパイロットプラントではiNEXTのプロトタイプを最大100台製造し、生産開始までに完成度を高める工程が組まれていました。第5世代電動パワートレイン「BMW eDrive」による航続距離は600km以上、レベル3の自動運転に対応する演算基盤を搭載します。量産は予定どおり2021年に開始され、日本では同年11月4日から販売が始まりました。
BMWの最高級クロスオーバーSUVであるiNEXTのエクステリアは大型のキドニーグリルが特徴的
市販型iXのエクステリアは、低めに抑えた車高が航続距離の延長に貢献し、薄型のヘッドライトと大きなキドニーグリルが強い個性を放ちます。フラッシュサーフェス化されたドアハンドルや専用設計のディフューザーなどにより、Cd値は0.25という数値に抑えられました。
iXはEVのため、キドニーグリルは冷却ではなく自動運転や運転支援に必要なインテリジェンスパネルとしての役割を担います。裏側にはカメラ、レーダー、各種センサーが収められており、グリルが大型化されているのは必要なユニットを収めるためです。パネル表面には自己修復効果を持つポリウレタンコーティングが施され、小さなかすり傷であれば室温で24時間以内、温風を当てれば5分程度で目立たなくなります。
ボンネットはユーザーが開けられない構造で、フロントのBMWエンブレム裏に隠された補充口からウォッシャー液を補充する方式。リヤのエンブレムには後方カメラ用のウォッシャーノズルが仕込まれており、洗浄時にエンブレムがポップアップします。ボディサイズは全長4,965mm×全幅1,965mm×全高1,695mm、ホイールベース3,000mmと堂々たる体格ながら、リアステアリングの採用で最小回転半径は6.0mに収まっています。
BMW iNEXTのインテリアは未来を感じさせる新開発の装備が充実
まず注目したいのは、BMWのレースカーにインスパイアされた多角形の幾何学デザインのハンドル「ポリゴナル・ステアリングホイール」です。一般的な円形のステアリングと比べ、操舵角を認識しやすく自動運転と手動運転の切り替えが容易になるとされました。ステアリング横の光ファイバーは、高度自動運転が利用可能かどうかを発光によって視覚的に伝える機能を備えます。この発想は市販車にも受け継がれ、iXはBMWグループの量産車として初めて六角形のステアリングホイールを装備したモデルとなりました。サーキットから着想を得た輪郭が、乗降時のアクセス性とメーターの視認性を高めています。
デジタルコックピットには、マグネシウム製ブラケットで固定された大型曲面ディスプレイを搭載。曲面とすることで視認性とタッチ操作性を向上させています。市販車では12.3インチのインフォメーションディスプレイと14.9インチのコントロールディスプレイを1枚のフレームレスガラスで一体化した「BMWカーブド・ディスプレイ」として実装され、物理ボタンを極力廃したシンプルな運転席まわりが実現しました。
また、情報のコントロール部分は助手席側からも確認できるようになっています。
車載コネクティビティシステムには、BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントを採用。「ハイ、BMW」と声をかけるとシステムが起動し、音声アシストによって走行中でも安全に多彩な情報・機能を利用できます。起動ワードは任意の呼び名に変更することも可能です。
BMW iXの主要諸元(現行2グレード)
| グレード | iX xDrive60 Mスポーツ | iX M70 xDrive |
|---|---|---|
| 車両価格(税込) | 1,498万円 | 1,966万円 |
| 全長×全幅×全高 | 4,965×1,965×1,695mm | |
| ホイールベース | 3,000mm | |
| 最低地上高/最小回転半径 | 200mm/6.0m | |
| 車両重量 | 2,530kg | 2,610kg |
| システム最高出力 | 400kW(544ps) | 485kW(659ps) |
| システム最大トルク | 765Nm | 1,015Nm(ローンチ・コントロール作動時1,100Nm) |
| 0-100km/h加速 | 4.6秒 | 3.8秒 |
| バッテリー容量 | 111.5kWh | |
| 一充電走行距離(WLTCモード) | 723km | 602km |
| ラゲージ容量 | 500L(後席折りたたみ時1,750L) | |
両グレードとも前後アクスルに電気モーターを備える電動四輪駆動で、乗車定員は5名です。上位のM70は加速性能を、xDrive60は航続距離を優先した性格分けとなっており、日常的に長距離を走るならxDrive60、パフォーマンスを求めるならM70という選び方になります。
BMW iNEXTはEV市場を担うBMWのフラッグシップSUVへ
iNEXTの名で構想されたクロスオーバーSUVは、iXとして市場に出て5年目を迎えました。デザイン・走り・居住性のいずれにもBMWの最新技術が投入され、2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストカー選出とデザイン・カー・オブ・ザ・イヤー受賞という結果にもつながっています。
ノイエ・クラッセ世代のiX3が登場した現在も、iXはその上に立つフラッグシップEVとして役割を保っています。カーボンとアルミを組み合わせた専用構造や自己修復コーティングのグリルといった、コストを度外視したような作り込みは後発モデルにそのまま降りてくるものではありません。コンセプトカーの気配を最も色濃く残したBMWのEVとして、iXは今なお特別な位置にあります。