スバル360は日本に自動車を広めた国民車!乗用車でモノコックボディを採用した軽くて速い軽自動車
1958年に富士重工業(スバル)から発売されたスバル360(K111型)は、当時の規格の中で販売されていた軽自動車でも抜群の性能を持ち、政府が打ち出した「国民車構想」の要件をかなり満たすものでした。
当時の自動車はフレームの上にボディを乗せる構造が多かった中、2018年では主流のボディ構造になっているモノコックボディを取り入れた斬新な設計で、駆動方式はリアエンジン・リアドライブを用いた車となっています。同じような構造を持つ車にかぶと虫と呼ばれていたドイツの「フォルクスワーゲン・タイプ1」があり、スバル360はてんとう虫と呼ばれる車になっています。
国民から車名に似通ったネーミングではない愛称をつけられるくらい愛されていた富士重工業のスバル360とは、どのような車なのでしょうか?販売当時の状況やスペック、2018年では中古車で流通しているのかチェックしていきましょう。
スバル360は庶民には手の届かなかった存在である自動車を人々に普及させた立役者
スバル360は1958年に富士重工業から発売された軽自動車で、当時の軽自動車規格に収めた最先端の車です。
2018年でも高級車の代名詞として名前があがるトヨタのクラウンも初代が1955年に発売され、当時の値段は100万円でした。国民車と呼ばれるスバル360は42.5万円で発売され半額以下で憧れの自動車を購入できるためスバル360に家族を乗せてドライブすることを目標に頑張っていた人も多くいたと考えます。
1958年の大卒初任給は13,500円ほどで、2017年は200,000円ほどですので、当時の1万円は現在の15万円ほどにあたると考えられます。1958年の発売当時の価格は42.5万円なので、現在の価値に直すと638万円ほどになります。
発売当時こそ600万円代で高級車に思えますが、スバル360は1970年まで生産・販売をしているため、その間に国民の給料もグングン伸び、1970年では大卒初任給が4万円ほどになっています。すると1970年ごろのスバル360の価値は現在で約213万円になり、ようやく大衆車としての役目を担った車となっていると考えます。
当時の価格 | 現在の価値 | |
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1958年(発売年) | 42.5万円 | 638万円 |
1970年(生産終了年) | 42.5万円 | 213万円 |
スバル360には、スポーツモデルのヤングSSやスポーティ仕様のヤングS、オープンモデルのコンバーチブルなど様々なバリエーションがあります。
スバル360のスペックは?モノコックボディを採用し軽く・速いてんとう虫は爆発的な人気を獲得
スバル360のボディサイズは当時の軽自動車規格である全長3,000mm・全幅1,300mm・全高2,000mm以下になるよう設計され、全長2,995mm・全幅1,295mm・全高1,335mmのサイズで作られています。2018年での軽自動車は規格ギリギリの全長や全幅に設定しているのと同じく、スバル360でも当時の軽自動車規格ギリギリで設計しているのが分かります。
全長 | 2,995mm |
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全幅 | 1,295mm |
全高 | 1,335mm |
ホイールベース | 1,800mm |
車両重量 | 385kg |
搭載しているエンジンは「EK31」と呼ばれている2ストロークエンジンで排気量は356cc、最高出力は16PS・最大トルクは3.0kg・mです。2018年の軽自動車に搭載しているエンジンは排気量660ccで、最高出力は64PSまで高まっています。
こんな非力なエンジンでスピードは出るのか?という疑問がありますが、問題ありません。車両重量は2018年の軽自動車(約1,000kg)と比べものにならないくらい軽い(385kg)ため最高速度は83km/h出たと言われています。
駆動方式はRRの2WDのみです。この当時は民間用の車で販売していた4WDといえばトヨタのランドクルーザーや三菱のジープくらいのもので、ほとんどの車は2WDで走っていたと考えます。北海道や東北などの雪が降る地域ではどのようにして車を走らせていたのか気になります。
トランスミッションは3速マニュアルで、フロアシフトを採用しています。発売したての頃は、横置きエンジンのためフロアシフトも横向きになっていましたが、1960年に一部改良した際にスタンダードな縦型のフロアシフトへ変更となっています。
スバル360のライバル車は?ホンダから1967年に発売されたNコロ(N360)が最大のライバル
1958年から1970年まで生産・販売されたスバル360のライバルといえば、1967年に発売されたホンダのN360になると考えます。国民車とまで呼ばれるまでに人気となったスバル360の勢いを崩したのが、1967年に発売されたホンダN360は、新車販売価格315,000円でかなり安い価格帯で販売されました。
安いからといって性能が悪いわけではなく、4ストローク354ccのエンジンを搭載したN360は最高速度115km/hに到達し、値段・性能ともに最高峰の軽自動車です。
スバル360 | N360 | |
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全長 | 2,995mm | 2,995mm |
全幅 | 1,295mm | 1,295mm |
全高 | 1,335mm | 1,345mm |
ホイールベース | 1,800mm | 2,000mm |
車両重量 | 385kg | 475kg |
エンジン型式 | EK31 | N360E |
種類 | 2スト2気筒 | 4スト2気筒 |
排気量 | 356cc | 354cc |
最高出力 | 16PS/4,500rpm | 31PS/8,500rpm |
最大トルク | 3.0kg・m/3,000rpm | 3.0kgf・m/5,500rpm |
駆動方式 | RR | FF |
最高速度 | 83km/h | 115km/h |
新車価格 | 42.5万円 | 31.5万円 |
生産台数 | 約34万台 | 約65万台 |
ホンダのN360が発売されるやいなや、スバル360の人気は持っていかれ軽自動車月間販売台数のトップから引きずりおろされました。後継モデルのスバルR-2(1969年~1973年)も、スバル360の後継モデルというイメージからか販売台数は伸びましたがN360やスズキ・フロンテの人気もあり群雄割拠の軽自動車時代でひっそりと販売終了しています。
スバル360やスバルR-2は後発のホンダ・N360やスズキ・フロンテにスペック、価格帯の面で人気に陰りが見えましたが、1950年代後半から1960年代にかけて贅沢品だった自家用車を国民に普及させ社会に大きな影響を与えたモデルといっても過言ではないでしょう。
スバル360は後に続々と発表される「大衆車」の先駆けで軽自動車市場を確立した名車
スバル360は1958年に発売された軽自動車で、当時の庶民には高嶺の花であった自動車を普及させた大衆車としての地位を築いたモデルです。
フォルクスワーゲン・タイプ1にも似たフォルムから「てんとう虫」とあだ名がつけられ、車名をもじったネーミングや型式以外で呼ばれた車種としても第1号ではないでしょうか。のちに発売するホンダのN360はNコロと呼ばれ大人気となっています。
大衆車といえば富裕層だけが購入できる高額車両ではなく、一般的なサラリーマンが購入できる車両のことで、1950年代後半から始まり、各時代で求められる装備を搭載し開発・販売されてきました。
スバル360は途絶えてしまいましたが、スズキ・アルトやジムニー、トヨタ・カローラ、ダイハツ・ミラ、ホンダ・シビックなどは2018年でも脈々と受け継がれています。
2016年に機械遺産にも認定されたスバル360は、中古車市場でも取引されていて2018年の段階で調査した限りでは200万円を超える個体もありますが、数十万円で購入できる個体もあります。日本の軽自動車界の立役者となったスバル360を1度乗ってみるのもいいかもしれません。