任意保険の等級制度 ~ 車に乗るなら知っておきたい保険の仕組み
任意保険は、自賠責保険では対応しきれない事故内容や、対応できない額を補償してくれます。任意保険の最大の特徴は、上下する等級という制度に任意保険の割引率・割増率が連動するシステムを導入している事です。
車に乗るなら加入すべきである任意保険。今回は、任意保険の等級制度について詳しく丁寧に解説します!
任意保険は負担者の公平性を保つため等級制度を導入
任意保険に等級制度を導入するのは、保険料負担の公平の原則を実現するためです。保険の仕組みは万が一の事態に備えて加入者が拠出金を払うことで、誰かに何かが起こった時にみんなで貯めたお金の一部を使って救済しようというものです。
車の保険の加入者の中には「事故を起こしやすい人」「事故を起こしにくい人」「事故を起こしてしまった人」がいます。全ての加入者が同一の負担額だとすると、不公平が生じてしまいます。同一の負担額であれば、事故を起こしにくい人が事故を起こしやすい人を手厚くサポートする仕組みとなってしまいます。
そういった仕組みを是正し、加入者全体の公平性を調整する仕組みが等級制度です。事故を起こしやすい人・事故を起こしてしまった人の保険料を、事故を起こしにくい人達よりも割高にすることで、保険料負担の公平の原則が実現します。
任意保険の等級制度の仕組みはボードゲームに近い
任意保険の等級制度のルールは、以下のようになります。
- 最低は1等級~最高は20等級の20段階に保険加入者を区分けする。
- 等級が上がるにつれて、保険料が割引かれる率が大きくなる。
- 前年に事故がなければ等級は1つ上がる。
- 前年に事故を1回起こして保険を使った場合には、原則として等級は3つ下がってしまう。
※1等級ダウン事故、ノーカウント事故もあります。 - 初めての契約では6等級からスタートする。
※一定の要件を満たしていれば、7等級からスタートすることもあります。
最初のスタート位置が決められ、一定の条件をクリアすれば先に進んで、3つ下がるペナルティーがあるなんて何だかボードゲームみたいです。
事故を起こしてしまっても、保険を使わなければ等級は下がりません。軽い事故で保険金に頼らずに自分で何とかできる額であれば、翌年度からの保険料が上がってしまう事を嫌って、任意保険を使わないケースもあります。
3等級ダウン事故・1等級ダウン事故・ノーカウント事故の事例
任意保険の等級制度は、自分に落ち度が「ある」「なし」にかかわらず保険金を請求すれば、等級を下げられてしまいます。相手に怪我を負わせてしまっても、自賠責保険のみで対応できればノーカウント事故として扱われます。
3等級ダウン事故
- 誰かを怪我させてしまった
- 誰かの車や物を壊してしまった
- 電柱や建物にぶつかった
1等級ダウン事故
- 盗難や車上荒らしの被害
- 台風や洪水などの自然災害
- 落書きやいたずら
ノーカウント事故
- 人身傷害(自賠責保険のみで対応)
- 弁護士費用特約
任意保険は自賠責保険ではカバーできない事故のケースを補償
自賠責保険が強制加入であるのに対し、任意保険は加入の義務はありません。「事故を起こしてしまった際」・「事故に巻き込まれた際」に自賠責保険だけではカバーしきれないケースの方が圧倒的です。任意保険に加入すれば、自分や同乗者・自分の車や相手の車・相手の車に乗っている人々などに生じた損害額を補償する事が可能となります。
加入される保険の種類によっては含まれていない場合もありますが、任意保険がカバーしてくれる補償内容を紹介します。
【対人賠償】事故によって怪我をさせてしまった相手への補償
事故を起こしてしまった際に、相手の車や同乗者に怪我をさせてしまった場合に適用されます。自賠責保険ではカバーできない治療費(入院費も含む)の額を補償します。
【対物賠償】事故によって被害を受けた車や物に対する補償
事故によって相手の車やガードレールなどが破損してしまった場合に適用されます。破損させてしまった対象物の損害額を補償します。
【車両賠償】事故によって被害を受けた自分の車への補償
事故によって被害を受けた自分の車を補償します。単独事故・盗難・当て逃げのケースでも適用されます。
【搭乗者傷害保険】事故によって怪我をしてしまった同乗者に対する補償
事故が起きた際に、自分の車に乗っている同乗者が怪我などをしてしまった際に保険金が支払われます。
【自損事故保険】単独事故などに対する補償
単独事故・相手側に過失がないケース(自賠責保険の適用外)で、自分が怪我などをしてしまった際に対する補償。
【無保険障害保険】相手側が対物賠償に加入していない場合に補償
相手側が対物賠償を補償する保険に加入していなかった場合に適用される。
等級によって保険料が「安くなる」「高くなる」は割引表一覧から読み解ける
下記の表は、ある保険会社の保険料の割引・割増率を示したものです。等級が上がるにつれ、保険料が割引かれる率が増えていく傾向があります。
割引率 | 等級 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|
無事故係数 | +64 | +28 | +12 | -2 | -13 | |
事故有係数 | +64 | +28 | +12 | -2 | -13 | |
等級 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
無事故係数 | -19 | -27 | -40 | -40 | -42 | |
事故有係数 | -19 | -20 | -21 | -22 | -23 | |
等級 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
無事故係数 | -45 | -46 | -47 | -50 | -50 | |
事故有係数 | -25 | -27 | -29 | -31 | -33 | |
等級 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
無事故係数 | -55 | -55 | -58 | -59 | -63 | |
事故有係数 | -36 | -38 | -40 | -42 | -44 |
※保険料の割引・割増率は保険会社によって異なります。
同じ等級でも事故歴が「ある」・「なし」では割引率が異なる
同じ等級に属するドライバーでも事故歴の「ある人」と「ない人」を比較すると、割引率が異なってきます。前年度も事故を起こさずに等級8から9にランクアップしたドライバーと、前年度に事故を起こしてしまって等級12から3ランクダウンして9になったドライバーの割引率を比較します。
前者の割引率は「-40」であるのに対し、後者の割引率は「-22」です。同じ等級でも、事故歴のないドライバーは今後も事故を起こす可能性が低いと見なされ、事故歴のあるドライバーは事故を起こす可能性があるとみなされます。
等級は各保険会社の間で引き継ぐことができます
A社の任意保険からB社の任意保険へと変更するときは、A社でサービスを受けていた時の等級をそのままB社に引き継ぐことが可能です。外資系問わず、日本で営業活動をしている損害保険会社同士であれば、基本的には加入する人の不利にならないように相互で等級を引き継ぐこと可能です。
保険会社を変えることで、等級がスタート位置に戻るようであれば業界全体が縮小してしまいます。
家族間でも等級を引き継ぐことが可能です
- 保険に契約している人の配偶者
- 保険に加入している人と一緒に暮らしている親族
- 一緒に暮らしている配偶者の親族
上記にあてはまる場合、保険加入者の等級を譲渡することが可能です。
家族間で等級を引き継ぐ際のケースで多いのは、お子さんが進学・就職・結婚を機に親元を離れる時です。家族間での等級引き継ぎ制度を適用するには、同居という条件を満たさなければなりません。
同居と言っても、書類等の手続きをして申請を行う時期に一緒に暮らしていれば問題ありませんので、子供の進学祝いなどで車を購入した際には、同居している期間中に早めに手続きをする事をお勧めします。
セカンドカー割引が適用されると契約時は7等級からスタート
任意保険は本来6等級からスタートしますが、セカンドカー割引が適用されると契約時から7等級でスタートします。セカンドカー割引と言っても、3台目以降の車においても同様に7等級からスタートする事が可能です。車を複数台持っている方あるいは、これからもう1台購入を考えている方にとっては嬉しい制度です。
2台目の保険契約開始日時点で1台目の契約が11等級以上であるなど、保険会社が独自に設定している諸条件をクリアすると制度が適用されます。1台目の車と2台目の車で契約する保険会社が異なっても制度は適用されます。
任意保険の等級制度の恩恵を知って安全運転を心掛けましょう!
任意保険は事故を起こさないと等級が上がっていきます。等級が上がることで保険料の割引率もアップします。そうなると保険料が安くなるので経済的にもお得です。
任意保険の恩恵を受けるためにも、毎日の運転は安全運転に徹しましょう!