フォルクスワーゲンID.4はID.CROZZの市販版として2020年に登場 現在は世界戦略EV SUVに
VWがオンラインで公開したID.4プロトタイプ(2020年3月)
フォルクスワーゲンは2020年3月3日にID.4のプロトタイプをオンラインで公開し、同年9月23日にはデジタル・ワールドプレミアを実施しました。ID.4はコンセプトカー「ID.CROZZ」をベースとした電動コンパクトSUVで、EV専用プラットフォーム「MEB(モジュラー・エレクトリック・ツールキット)」を採用したVW初の本格電動SUVです。
当初「2020年内発売予定」とされていたとおり、ID.4は2020年に欧州で発売され、その後アメリカや中国など主要市場へ順次投入されました。日本にも2022年11月に上陸しており、この記事で「発売予定」として紹介していた内容は、すでにすべて現実のものとなっています。以下では、ID.CROZZがどのようにID.4として結実したのか、当時の情報を振り返りながら現在の姿へと整理していきます。
ID.4の原点となったコンセプトカー「ID.CROZZ」
ID.CROZZ(アイディークロス)は、フォルクスワーゲンのEVブランド「ID.」シリーズのクロスオーバー(CUV)コンセプトでした。最初のID.CROZZは2017年4月の上海モーターショーで発表され、続いて2017年9月のフランクフルトモーターショー(IAA)で改良版「ID. CROZZ II」が公開されています。このID.CROZZ系コンセプトの量産版こそが、現在のID.4です。
市販名は「ID.4」に決定 中国では「ID.4 X」「ID.4 Crozz」の2種で展開
市販化前には、ID.CROZZの量産名が「ID.4X」になるのではないかとささやかれていました。結果として、グローバルでの車名は「ID.4」に決まりましたが、この「4X」という予想もまったくの的外れではありませんでした。中国では合弁2社体制のもと、SAIC-VW(上汽フォルクスワーゲン)が「ID.4 X」、FAW-VW(一汽フォルクスワーゲン)が「ID.4 Crozz」という2種類の名称で、それぞれ細部の異なるモデルを展開しています。つまり「ID.4 X」は中国版の実車名として現実になったわけです。
ワールドプレミアの時期についても、当時は「2020年後半」と見込まれていましたが、実際には2020年9月23日にオンラインで世界初公開されました。開発段階では、ID.ファミリー第1弾のID.3とともにカモフラージュを施したプロトタイプがテストを重ねており、SUVらしい厚みのあるボディラインが徐々に姿を現していった経緯があります。
ID.CROZZのパワートレインとプラットフォーム、ボディサイズ
ID.4には次世代プラットフォーム「MEB」を採用
コンセプトのID.CROZZは、フロントモーター(102ps)とリアモーター(204ps)を組み合わせた合計306psの4MOTION(電動4輪駆動)を掲げていました。この高出力AWDの構想は、後に高性能版「ID.4 GTX」として現実になります。ただし、量産ID.4がまず発売されたのは、リアに1基のモーターを積む後輪駆動(最高出力204PS)の仕様からでした。デュアルモーターのAWDは、その後に追加されています。
電池についても、コンセプトでは83kWhで航続500km超を掲げていましたが、量産の主力は77kWhクラスとなり、150kWの急速充電により約30分で最大80%まで充電できる実用性を備えました。実際のID.4 GTXは、77kWh電池と前後デュアルモーターで220kW(299PS)を発生し、0-100km/h加速6.2秒、WLTPで最大480kmという性能で2021年4月に登場しています。
プラットフォームは、ID.3と共通の「MEB」を採用。このMEBはフォードにも供給されることが当時から報じられており、実際にフォードはMEBをベースとした電動SUVを欧州で展開しています。ボディサイズはティグアンとティグアン・オールスペースの中間にあたるコンパクトさで、荷室容量は515Lと実用性の高いスペースを確保しました。
ボディタイプは複数展開。欧州ではクーペ型の「ID.5」も加わった
「ボディタイプは2種類」とされていた構想も現実になっています。欧州ではSUVの「ID.4」に加え、ルーフ後方を傾斜させたクーペSUV「ID.5」が2021年11月に加わり、走破性と実用性、そしてスタイリッシュさを両立するラインナップへと広がりました。
ID.CROZZのエクステリアはコンセプトからどう変化したか
上海モーターショーで世界初公開されたID.CROZZ
市販化前には、ID.CROZZの市販型プロトタイプの姿が段階的に明らかになり、すでにデザインが公開されていたID.3と比べて、より力強いフロントまわりを持つことがうかがえました。

リヤまわりはコンセプトカーの時点からルーフラインなどが見直され、量産に向けて現実的な形へと最適化されていきました。最終的に登場した市販ID.4は、SUVらしい安定感とID.シリーズ共通のクリーンなデザインをまとって仕上げられています。
ID.4は2020年に発売、日本には2022年11月に上陸
ID.4は世界戦略車として各地で生産・販売されている
ID.4は世界戦略車として、ヨーロッパやアメリカ、中国などで生産・販売されています。「2020年後半から2021年前半」と予想されていた市販時期のとおり、2020年9月の世界初公開を経て各市場へ展開され、北米や中国を主要ターゲットに据えたVWのボリュームEVとして成功を収めました。2021年にはワールドカー・オブ・ザ・イヤーも受賞しています。
日本市場には2022年11月22日に導入記念の「ローンチエディション」(499万9000円〜)として上陸し、その後に標準グレードの「Lite」「Pro」を追加。さらに2026年1月9日の一部仕様変更では、上級の「Pro」がモーター出力を150kW(204PS)から210kW(286PS)へ、最大トルクを310Nmから545Nmへと大きく引き上げ、急速充電性能の向上や12インチモニターの採用なども行われました。かつて「EVの年間目標10万台」と語られていた当時から、ID.4はVWの電動化を担う中核へと着実に育っています。
ID.CROZZから始まったID.4は、拡大するID.ファミリーの一翼へ

フォルクスワーゲンは、ID.CROZZ(→ID.4)のほかにも、ゴルフと同じCセグメントの「ID.3」、ワーゲンバスの精神を継ぐ「ID.Buzz」など、数々のコンセプトを市販化してきました。いまやID.シリーズは、ID.3、ID.4/ID.5、中国専用のID.6、フラッグシップの「ID.7」とワゴンの「ID.7ツアラー」、ミニバンの「ID.Buzz」までを擁する一大ファミリーへと成長し、欧州では有数のEVブランドとなっています。
さらにVWは、2025年以降、EVの車名を数字ベースから「ID.ポロ」のように親しみのある名前へと回帰させる新戦略へ舵を切りました。日本市場でも、2022年のID.4に続き2025年にはID.Buzzが加わり、今後の展開が続きます。ID.CROZZという一台のコンセプトから始まった物語は、こうしてブランド全体の電動化へと着実につながっているのです。





























