ガラスコーティングの持続性を保つ正しい洗車方法
車のボディや塗装は、紫外線や酸性雨などによって長い年月をかけて劣化していきます。この劣化を防ぎ、いつまでも新車のような輝きを保ってくれるのがガラスコーティングです。
ガラスコーティングは、かつて主流であったワックスやポリマー系コーティングと比較して耐久性が非常に高く、簡単なメンテナンスで車の輝きを長く保つことができます。今やカーメンテナンスの主流となりつつあるガラスコーティングの特性と、その効果を長持ちさせるための正しい洗車方法について解説します。
ガラスコーティングとは:従来のコーティングとの違い
ガラスコーティングが登場する前は、ワックスやポリマー系、フッ素系のボディコーティングが主流でした。これらのコーティング剤には油分などの有機溶剤が多く含まれており、効果の持続性が低いことや、塗装面に悪影響を及ぼす可能性も指摘されていました。
一方、ガラスコーティングは、主成分にシロキサン結合を持つガラス質の被膜を形成します。これにより、従来のコーティングよりも油分が少なく、高い耐久性と持続性を実現しました。
ガラスコーティングは、薄いながらも硬いガラス質の被膜を張るため、塗装面を物理的に保護し、微細な傷(洗車傷など)がつきにくくなります。また、深みのある自然なツヤでボディを美しく見せられることも特徴です。メンテナンスも容易で、基本的には適切な水洗い洗車(シャンプー洗車を含む)を行うだけで効果を長く維持できます。
ガラスコーティングの効果を長持ちさせる手洗い洗車方法
ガラスコーティングを施工した車は、撥水性や親水性によって通常使用による軽微な汚れであれば水洗いだけで落ちやすい傾向があります。しかし、泥汚れや排気ガス由来の油汚れ、鳥のフンなどは水だけでは落ちません。
これらの汚れを放置すると、コーティング被膜を劣化させたり、シミや水垢の原因になったりするため、汚れが固着する前にシャンプー洗車で早めに除去することが、コーティングの耐久性を高めるポイントです。
1.たっぷりの水で予備洗車を行う
最初に、水をたっぷりとかけ、ボディに付着した大きな砂やホコリ、泥などの汚れを浮かせ、洗い流します。この予備洗車をしっかり行うことで、その後のシャンプー洗車時にスポンジやムートンが汚れを巻き込み、ボディに微細な傷をつけるリスクを大幅に減らすことができます。
上から下へ水の流れを見ながら、高圧洗浄機などで勢いよく水をかけるのがコツです。
2.カーシャンプーを泡立て優しく洗う
カーシャンプーをバケツに入れ、上から勢いよく水を流して、きめ細かく豊富な泡を作ります。泡は汚れを包み込み、洗車時の摩擦を減らすクッションの役割を果たします。
泡を車全体に塗布し、スポンジなどでボディの状態を確認しながら優しく撫でるように洗います。力を入れ過ぎると傷の原因になるため、力を抜いて洗うのが最大のポイントです。汚れがひどい箇所は、スポンジの面を変えて丁寧に洗いましょう。
3.シャンプー成分を完全にすすぐ
汚れを落としたら、たっぷりの水でシャンプー成分を完全に洗い流します。シャンプー成分が残ったまま乾燥すると、それがシミや水垢の原因となるため、特に注意が必要です。
ドアの隙間やハンドル周り、サイドミラー周り、バンパーやリヤ部分など、入り組んだ箇所は泡や水の流し残しがないよう、念入りにすすぎましょう。
4.速やかに拭き取る(乾燥を防ぐ)
洗車後の最も重要な作業が、水滴の拭き取りです。水滴がボディに残ったまま乾燥すると、水道水に含まれるミネラル成分が固着し、強固な水垢(ウォータースポット)となってコーティング被膜を傷める原因になります。
吸水性の高いマイクロファイバータオルや専用のクロスを大きく広げ、優しく撫でるように水滴を拭き上げます。拭き上げ時の微細な擦り傷を目立たせないために、力を入れすぎず、一方向に優しく拭き上げることを意識してください。
ガラスコーティングの施工業者は4つに分類されます
ガラスコーティングの施工を依頼できる業者は、大きく分けて以下の4種類があります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、ご自身の予算や求める品質に応じて選ぶと良いでしょう。
1.コーティング専門店:高品質な仕上がりを求めるなら
コーティング専門店は、高度な専門知識と熟練の技術を持つスタッフが施工を行うため、仕上がりの品質が最も高い傾向にあります。お客様の車の状態や要望に合わせて最適な下地処理を行い、コーティング剤を選定してくれるため、ガラスコーティングが初めての方にも最適です。
デメリットとしては、他の業者と比較して施工料金が高くなる傾向がある点です。
2.カーディーラー:納車時の一括施工と安心感を重視するなら
カーディーラーでも、新車販売時に合わせてガラスコーティングの施工を行っています。車の納車と同時にコーティングが完了するため、手間が少なく、忙しい方におすすめです。新車購入時には、値引きの一環としてコーティング施工をサービスしてくれる場合もありますので、営業担当者と相談してみましょう。
ディーラーは全国的なネットワークを持ち、アフターフォローがしっかりしているため、安心感があるのが大きなメリットです。
3.板金業者や塗装業者:技術力に幅があるため見極めが必要
車の板金業者や塗装業者も、車の美観に関わる業務の一環としてコーティングを施工している場合があります。しかし、個人の業者や小規模な工場では、コーティング技術に差があるため、依頼する前に実績や口コミなどを確認し、ご自身で見極める必要があります。専門店並みの高度な技術を持つ業者も存在しますが、コーティングに特化していない場合もあるため、事前にしっかり打ち合わせましょう。
4.ガソリンスタンド:費用対効果とスピードを重視するなら
ガソリンスタンドでのコーティングは、施工時間の短さと料金の安さがメリットです。しかし、中にはポリマー系やフッ素系のコーティングを「ガラス系」と称し、ガラスコーティングとして施工しているケースもあるため、コーティング剤の種類を事前に確認することが大切です。
施工料金の安さは大きなメリットですので、とりあえず手軽に車の保護とツヤ出しをしたい方には選択肢の一つとなります。
ガラスコーティングを長持ちさせるための洗車頻度と注意点
ガラスコーティングを施工したからといって、「メンテナンスフリー」になるわけではありません。ガラスコーティングを長持ちさせるには、定期的なシャンプー洗車が必要不可欠です。
水洗いだけでも汚れは落ちやすいですが、油汚れや鉄粉、固着しやすい鳥のフンなどは水だけでは落ちません。これらの汚れを放置すると、コーティング被膜の性能を低下させ、シミやウォータースポットの原因となり、結果的に塗装面にも悪影響を及ぼします。そのため、ガラスコーティングの効果を長持ちさせるためにも、適切な頻度でのシャンプー洗車が必要です。
洗車後は、水滴が水垢になるのを防ぐため、「走って水滴を飛ばす」のではなく、必ず拭き上げ作業を行いましょう。
洗車機でのメンテナンス:利用時の注意点
ガラスコーティング車は手洗い洗車が最も推奨されますが、時間がない場合は洗車機を利用することも可能です。いくつかの注意点を守ることで、洗車機でもボディへの傷つきリスクを減らし、コーティングを長持ちさせることができます。
1.洗車機のブラシの種類を確認する
一昔前の洗車機は、硬いナイロンブラシやプラスチックブラシを使用しており、洗車傷の原因となる可能性がありました。しかし、現在では、車のボディに優しいスポンジブラシや布ブラシ、あるいはブラシを使用しない「ノンブラシ洗車機」が登場しています。
利用する洗車機がどのようなブラシを使用しているのか、事前に確認するか、可能であれば洗車機を管理しているスタッフに尋ねると間違いありません。
2.汚れがひどい車の直後を避ける
洗車機自体が傷の原因となる可能性は低いですが、洗車ブラシに、直前に洗車した車のボディに付着していた大量の砂や泥、鉄粉などが紛れ込んでいる可能性があります。これらの固形物が付着したブラシで次の洗車を行うと、車に傷が付くリスクが高まります。
ご自身が洗車する直前の車が極度に汚れている場合や、大量の泥を落としている様子が見られた場合は、時間を空けるか、一旦その洗車機を避けることで、傷つく可能性を減少させられます。
3.事前に水洗いをする
自分の車が非常に汚れており、大量の砂やホコリが付着している場合は、洗車機に入れる前に、高圧洗浄機などで軽く水洗い(予備洗車)をすることが大切です。これにより、自分の車のホコリや砂をブラシに巻き込ませて、ボディに傷つくことを防ぐことができます。
4.洗車機のコース選びに注意する
洗車機を利用する際、ワックス洗車や他のコーティングコースは選ばないようにしましょう。ワックスやポリマーなどの油分を含むコーティング剤は、ガラスコーティングの上に一時的に付着し、ガラスコーティング本来の撥水性や親水性といった特性(水弾き)を邪魔したり、シミの原因になったりする可能性があるためです。
洗車機のコースを選ぶ際は、純粋な「シャンプー洗車コース」を選ぶことが、ガラスコーティング本来の性能を維持するために推奨されます。
愛車を傷つけない秘訣は「適切な頻度」の洗車
車を大切に思うあまり、必要以上に毎日洗車をすることは、実は逆効果となる可能性があります。理由は、いくら丁寧に優しく洗車をしても、洗車は車に微細な傷(洗車傷、スクラッチ)がつく可能性を伴う行為だからです。
とはいえ、洗車を行わなければ、鳥のフンや虫の付着、鉄粉などの頑固な汚れは落ちず、これらを放置することは塗装面に深刻なダメージを与えます。また、拭き上げをしなければ水垢となります。
愛車を綺麗に保つ秘訣は、過度に神経質になるのではなく、「汚れたら洗う」という適切な頻度と、正しい手順で洗車を行うことです。必要以上に洗車を繰り返さないことが、車を傷つけずにボディの美しさを長期的に保つことに繋がります。
適切なメンテナンスで輝くボディが持続します
ガラスコーティング剤には「〇年間輝きが持続する」「メンテナンス不要」とうたっている商品や施工もありますが、その効果を最大限に発揮し、長期的に持続させるためには、日々の適切なメンテナンスは欠かせません。汚れを放置せず、シャンプー洗車と拭き取りを欠かさないことを念頭に置けば、愛車のボディはいつまでも輝きを保つことができます。